魂を満たす物語   作:よヨ余

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林間合宿!

夢を見る。

 

それは、中学2年くらいから見ていた夢。毎回毎回同じところから始まり、終わりも一緒。大体3分の2くらいの確率でその夢を見ては、飛び跳ねるように起きる。

 

だが、内容を鮮明に覚えるようになったのはここ最近になってからのことだ。

 

その夢では、私は赤子。3人の人間に囲まれている。女性が一人、男性が二人。

 

年は二人が約40代。一人が20代前半くらいだろうか。所々聞こえる会話の中から家族であることがわかる。

 

柔らかい照明に包まれた空間で、私は女性に抱かれていて、私の顔を三人がのぞき込む。その後は、決まってふにゃりと笑っていた。

 

いや、この表現は適切ではないか。

 

三人の顔は私からは見えず、もやがかかったようにぼやけていたからだ。

 

夢を見るたびにそれをもどかしく思うが、私は夢に干渉出来ないので甘んじて受け入れるしかない。

 

ただ、その空間が幸せそうに見えたのは確か。

 

いったい誰なのだろうか。

 

そう考えるのは必然である。しかし、そう考えた瞬間に視界は暗転する。

 

まるで私がそう考えるのを防ぐように。それがタブーであるかのように。

 

視界が回復すると、今までの空間は崩れ去る。

 

柔らかい照明は私の瞳の色にそっくりな赤に変わり、おどろおどろしい雰囲気を醸し出すが、人の顔はよく見えるようになった。

 

しかし、それは今までの私の想像とは違ったものだった。

 

まず目に入るのは40代くらいの男性の姿が消えてしまったこと。男性は服だけを残して消え、服がパサリと音を立てて落ちていく。

 

そのことに気を留める間もなく、次に認識するのは残った二人の顔。

 

―――その顔は、ひどく醜いものだった。

 

ひどい言い方だが、そういう他ない。

 

眼球は半ば飛び出て、脳みそは半分ほど露出している。最近気づいたが、USJの脳無に似ている。

 

そして、二人の怪物は私に手を伸ばし。

 

私はその怪物の後ろに鎮座している配管工のようなマスクを着けた人間――恐らく男――と目が合ったような錯覚に陥り―――――――

 

 

 

 

 

 

 

―――

 

 

 

 

 

 

 

目が覚める。

 

シズはいつも通り飛び跳ねるように起床し、何かに動きを阻害される。

 

「……!」

 

シズの動きを阻んだのはバス座席にあるシートベルトだった。

 

バスの中で転寝をしていたがいつもの夢を見て起きてしまったようだ。

 

(痛い)

 

心の中でそう呟く。心臓の鼓動は跳ね起きたせいか早く、呼吸も過呼吸気味になっていた。

 

「大丈夫か」

 

そんなシズに声をかけるのは轟。バスの座席は自由席であり、女子の余りとなってしまったシズは空いていた轟の隣を陣取ったのだ。峰田が轟を恨めしそうに凝視していたが、二人はそれを知らない。

 

「……大丈夫」

 

「…魘されてたけど、ホントに大丈夫か?」

 

シズの言葉にまた心配の声を上げる轟。シズは頷き、落ち着くために外を見る。

 

(魘されてた、か……)

 

最近どうも、調子がおかしい。

 

ナニカ嫌なことがあるような、またそれを予感しているような。

 

どちらにしても。

 

(らしくないな……)

 

 

 

 

 

―――

 

 

 

 

 

「ここでいったん休憩だ。お前ら、いったん降りろ」

 

「はーい!あれ、B組は?」

 

「てかここ、パーキングじゃなくね?どこだ?」

 

バスは辛うじて車2台を停められる程度のスペースがあるところで止まった。あたりには何もなく、公衆トイレすらなかった。

 

いや、バスのほかに車が一台停車していた。その車の扉が開き、中から人が出てくる。猫のようなコスチューム?を着ている二人組だ。立ち姿から、ヒーローなのだろうと予想できる。

 

「よーーう、イレイザー!」

 

「ご無沙汰してます」

 

女性二人と、その後ろに子供がいた。恐らくまだランドセルも背負っていないくらいか背負い始めたかくらいの年齢だ。

 

『煌めく眼でロックオン!キュートにキャットにスティンガー!ワイルド・ワイルド・プッシーキャッツ!』

 

決め台詞を決めてポーズまで決めた女性――ワイルド・ワイルド・プッシーキャッツのマンダレイ。そしてピクシーボブ――に対してぽかんと口を開けて呆けるA組の面々。緑谷だけは興奮して口早に彼女たちのことを説明していたが。

 

彼女たちは本来4人組で、主に山岳救助を得意とするチームのようだ。キャリアは今年で12年にもなる。……緑谷がそこに言及すると彼女たちは渋い顔をしていたが。主にピクシーボブが。

 

「今回お世話になるプロヒーロー、プッシーキャッツだ。お前ら、挨拶」

 

「「「よ、よろしくお願いします!!」」」

 

相澤の言葉で慌ててあいさつするA組に、彼女たち笑顔で応える。流石はプロだと、シズは認識した。

 

「ここら一帯は私らの所有地なんだけど、あんたらの宿泊施設はあの山の麓ね」

 

「と、遠ッ!?」

 

「ハハ…、バス、戻ろっか?な?」

 

慣れてきたのか、勘のいい者はこの後の展開を読んでいた。

 

「今は9時30分。そうねぇ、早ければ……12時前後かしらん?」

 

「私有地につき個性の使用は自由。ただ、轟や爆豪を筆頭とした炎上を誘発する可能性のある個性持ちは用心しろ。山火事になったら笑えないからな」

 

予測は確信に変わり、それを回避するためにバスの中に駆けこもうとするが、そうは問屋が卸さない。

 

「12時30分までに戻れなかったキティはお昼抜きね!」

 

「悪いね諸君。試験はもう始まっている」

 

みんなの前に躍り出たピクシーボブが地面に手を当てると、突如としてシズたちの地面が蠢く。隆起した地面はみんなを押し上げ、崖から放り出す。

 

「よし、――逃げんな。夜月」

 

「つい反射で……」

 

相澤はため息をつき、ピクシーボブは意外そうにシズを見ていた。体育祭でその優秀さを見ていたとはいえ、まさか避けられるとは思えなかったのだろう。

 

「はあ…。自分で降りろ。お前だけやらないわけにはいかん」

 

「…はい」

 

シズは下に人がいないことを確認してから飛び降りる。

 

 

飛び降りる直前、シズに向けられたシズではない何かに向けた悪意のこもった視線が口を一度も開かなかった子供から向けられることにシズは当惑したが、下に見える土くれの魔獣のような何かを視認し、それに集中し始めた。

 

 

 

 

 

―――

 

 

 

 

 

シズが下に降りたころには、およそ4つのチームに分かれて土くれの魔獣に立ち向かっていた。

 

「……私いらないかも」

 

「そんなことありませんわよ!?」

 

シズの言葉に反応する八百万。彼女は全体の指揮を執っていたようで、シズのことを探していたようだ。

 

「夜月さんには右の2チームのカバーをお願いします。カバーの仕方はお任せしますが、安定しているので崩れた時に補助する形がよろしいかと。左には爆豪さんや轟さんがいるので大丈夫かと思われます。右に集中なさってください」

 

「了解」

 

シズは八百万の指示を受け、右の2チームに向かって疾駆する。

 

「バイパー」

 

バイパーを展開し、二体の魔獣に放つ。しかし、バイパーでは魔獣の足を4本中2本穿つだけで精いっぱいだった。

 

「思ったよりも硬いな……」

 

「夜月か!」

 

索敵に殉じていた障子が声をかける。

 

「うん。八百万からカバーに入るようにって。なにかすることある?」

 

「それなら、ほかの奴よりもでかいやつを頼む。常闇と砂藤が戦っている」

 

「了解」

 

シズは指示通りに動き、またもやキューブを展開する。

 

「コブラ」

 

バイパーとアステロイドを合成させたコブラ。バイパーの軌道でアステロイドのような火力を出すことが可能だ。

 

コブラは巨大魔獣の羽と爪を抉り取り、好機と定めた常闇と砂藤が同時攻撃をすることで完全に破壊した。

 

「夜月か!?ありがとな!」

 

「感謝する」

 

「うん。この調子でどんどんいこう」

 

そうして、次々と魔獣を破壊していく。ピンチの人の元にはすぐに駆け付けカバーし、全員で魔獣の森を攻略していく。指をさされただけで詳しい場所すら不明な宿泊施設に向けて駆けるシズ達であった。

 

 

 

 

 

―――

 

 

 

 

 

「まさか16時になるとはな」

 

「プッシーキャッツたちの実力差が浮き彫りになったよね……」

 

時刻は変わって18時ほど。魔獣の森を何とか突破したシズたちは昼食を抜き、夕食を食べ、今はお風呂に興じている。

 

タオルのみで身を包んだ女性の集まりであるその桃源郷は野郎どもを魅了することだろう。

 

「でも、シズはあまり疲れてるように見えないね。なんで?」

 

「…私はみんなのサポートに回ってたしね。別に全部倒してもよかったけどそれじゃみんなのためにならないし」

 

「あ~」

 

雑談しながら汗を流していると、何やら男子風呂のほうから声が聞こえてきた。

 

「峰田君やめたまえ!君のしていることは己も女性陣も貶める恥ずべき行為だ!」

 

「やかましいんすよ……」

 

声の感じから飯田と峰田だろうか。飯田が峰田の行動を非難しているようだ。

 

「峰田…また何かやるのか……?」

 

シズが峰田の行動を危惧している間にも、峰田は即座に行動を起こしていた。

 

「壁とは超えるためにある!プルスウルトラ!!!」

 

「速ッ!?校訓を汚すんじゃない!!」

 

峰田の言葉と同時に壁からポムポムという言葉が聞こえる。しかし、そんなかわいらしい音からは想像もできないような極悪なことが起こっているのは簡単に想像できた。

 

シズはすぐに状況を把握し、己のすべきことをすることにした。

 

「威力は普通のバイパー、威力が高いコブラ、どっちがいい?」

 

「二つの違いは?」

 

「威力だけ」

 

「「「コブラで」」」

 

「了解。――コブラ」

 

シズはみんなに意見を募ってからコブラを放つ。魂の場所から峰田の場所は把握しているため確実に当たるだろう。

 

しかし、コブラを放った瞬間にある人間が峰田に正義の鉄槌を下した。

 

「ヒーロー以前に人のあれこれから学びなおせ」

 

「クソガキイイィイィ!?」

 

「あ」

 

シズは即座にコブラの軌道を変え、峰田に直撃させる。図らずも追撃の形になってしまった。

 

「#△$□◇%&$%!!!」

 

「峰田くーん!?」

 

峰田は当たり所が悪く悶絶してしまったようだが、シズたちは気にしない。それどころか、峰田の淫行を阻んだ少年に感謝を告げる。

 

「やっぱり峰田ちゃんサイテーね!」

 

「ありがとー!洸太くーん!」

 

洸太。マンダレイとピクシーボブと一緒にいた少年。シズが魔獣の森に入るときに鋭い視線を向けていた少年でもある。

 

洸太は蛙吹と芦戸の声に思わず振り向き、そして仰天する。隠すべきところを隠していなかったからだ。

 

「わっ…あっ!?」

 

「危ない!!」

 

洸太は自身が見た景色に思わずのけぞり、その勢いのまま男子風呂のほうに落下してしまう。

しかし、何とか緑谷がキャッチしたようだ。緑谷は洸太をマンダレイのほうに届けるためにお風呂から出るようだ。

 

「ちくしょうあのガキャァ…、オイラでも見れなかった楽園(サンクチュアリ)をよくもぉぉぉ……」

 

「お前そろそろやばいぞ。本格的に。マジで」

 

峰田はまだ反省をしていないのだろうか。

 

「次の処罰はトマホークで爆撃かなー!?」

 

「すみませんでしたああぁぁ!!」

 

峰田の絶叫がお風呂場に響き渡った。

 

 

 

かくして、林間合宿の1日目が終了した。




今年も終わりですね~。来年も頑張るぞ~!
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