魂を満たす物語   作:よヨ余

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魂を満たす物語
寮生活


神野事件。

 

死柄木を筆頭とした敵連合の親玉、オールフォーワンの策謀によって引き起こされた事件。その事件で親玉であるオールフォーワンの捕縛には成功したが、その代償は平和の象徴であるオールマイトの引退。大きな悪を倒した代償は小さいとは言えない。それに加え、No.4ヒーローであるベストジーニストが活動休止に追いやられた。シズの懸命な治療によって活動可能な範囲まで回復したものの、オールマイトがオールフォーワンに追い詰められ、それをかばった際に肺が欠けたようだ。ただ本人に命の別状はなく、活動復帰に向かっているとのこと。

 

事件は雄英高校ヒーロー課1年A組、爆豪とシズが拉致されたことで起こった。直前で雄英は林間合宿を行っており、その3日目の夜に敵連合から奇襲を受け、上記2名が拉致された。事件後、両名ともに無傷で生還。シズに関しては怪しいが。

 

爆豪は多少の事情聴取後、公安による帰宅指示。シズは爆豪と違い、帰宅指示はなかなか出なかった。彼女の過去がそれ相応のものだったからだ。

 

シズは病室にいた。公安直属の病室だが一般的な間取りと同じようなつくりで、テレビも花も窓もある。

 

シズはテレビのニュースを見ていた。そのニュースの話題はもちろん神野事件についてのこと。その中でシズの過去についての言及もあった。シズが、死刑囚とはいえ人を殺したという事実。そのことについてSNSで多くの議論を呼んでいる。人を殺した人間にヒーローをやってほしくない。本人の環境のせいだ。本人に罪はない。そんな言葉が飛んでいる。

 

「アホらし」

 

シズはそう言葉を零す。

 

(私がヒーローを目指すことは他ならない私が決めたのだから、それについて喧嘩する必要ないのに)

 

シズは言葉の後にため息を零す。

 

つくづく、疑問だ。

 

この社会は正しいのか。民衆は正しいのか。

 

お師匠の所在を聞いて、その理由を察して、より疑念は濃くなりつつある。

 

答えは出せないし、出してはいけないのかもしれない。

 

(…考えても仕方ないか。やることが多すぎる)

 

まず、妹のこと。そして今行っている公安による事情聴取だ。

 

今回の事件の件でシズとオールフォーワンにつながりがあったことが明らかになった。そのことについて公安が他につながりがないか疑い、シズに調査を受けてもらうことを要請したのだ。シズはそれを承諾し、病室にて待機。今は結果を待っている最中だった。

 

「入りますね」

 

ノックしながらそう言い、この部屋に入ってきた人がいた。公安職員の目良善見だ。いつも寝不足気味でそろそろよくないかもしれない。シズは彼と会うたびに負担を少しだけ軽くしていた。

 

「結果出ましたか?」

 

「ええ、本来なら会長が来るべきことなんですが、担当が私であること、また会長が多忙であることを踏まえて私の口から報告しますね。結果はシロ。貴方の協力で魂とやらを調べた結果、オールフォーワンの息はかかっていませんでした。公安に所属している看破系の個性の持ち主からもお墨付きをもらっています。承諾してもらったとはいえ、このような生活はストレスがかかったでしょう。公安を代表して、そして一人の大人として謝罪します」

 

そう言って目良は頭を下げる。

 

「…監視状況には慣れているので問題ありません。それも正当性があり、私のためでもある。感謝こそすれ、文句などございません」

 

「……慣れている、ですか」

 

目良はシズの言葉にどう反応すればいいのか、少しだけ言葉に窮した。

 

「気にする必要はありません。……それにしても、変わっていませんね。あの時も色々見てくれたでしょう」

 

思い起こされるのは、ナガンがいなくなって精神が参っていた時だった。ナガンと関わりのあった公安職員がシズの面倒をしばらく見ててくれたのだ。目良はシズのことを特段気にしていた。

 

オールフォーワンによって記憶を奪われていたことが影響してそのことも朧気だったのだが、先日取り戻したおかげで鮮明に思い出せる。

 

その時と同じように、目良はシズのことを真摯に考えてくれている。結果を発表するまでの数日間も、こうして病室まで来て雑談に興じてくれるほどだ。彼も暇ではないだろうに。こういった利他の面も、彼の寝不足を増長させるのかもしれない。

 

「……その節は、申し訳ない。あの状況になったのは、少なからず公安のせいでもあるでしょうから」

 

「私はお師匠がそうなった理由を知らないので責めることはできません。私がお師匠の負担になっていたことは少なからずあるでしょうし、責める権利もありません」

 

「……きっと、それだけはないのでしょうね」

 

シズの言葉に目良はそう小さく零すが、あまりに小さい声量だったためシズの耳には届かない。

 

「これからはどうするのですか?シロと判断した以上、公安はヒーローを目指してもらいたいと考えています。世間の声にはそれを否定的に見る声もありますが…こうして関わってきた一人の人間からすると、私にはどうしても否定的に見ることができません」

 

「世間なんて関係なく目指しますよ。まだやらなければならないことがある」

 

シズは目良の言葉に即答した。その表情に迷いはなく、もう揺らぎはしない。

 

「余計な言葉でしたね。……差し支えなければ教えてもらっても?」

 

そんなことはない。この言葉を言う人がいるのかいないのかで相当変わってくる。

 

「まず、私には妹がいるようなので探そうかと。そしてNo.1ヒーローにでもなって、タルタロスに行けるだけの権力を得ます」

 

「なるほど、妹さんが……。…タルタロスには、そこまでしなくても行けると思いますがねぇ……」

 

「かもしれませんね。でも、私がそうしたいんです。お師匠に胸を張れるようになるまで会いたくない。その基準の最たる例がNo.1というだけ」

 

「…これまた、余計な言葉でしたね。……最後に、一つだけ」

 

目良は言いにくそうに言った。

 

 

「――もし、あなたのお師匠さんが変わっていたら、どうしますか?」

 

 

この言葉を言うということは、本当に変わっているのかもしれない。それが事実だとして、重要なのは――

 

「それがいい変化だったら、笑って受け入れます。でも、それが悪い変化だったら……」

 

シズは人差し指を顎に当てて考える。数秒考えた後、答えを出した。

 

 

「その時は、『馬鹿野郎』とでも言ってほっぺたをぶん殴ってあげます」

 

 

シズは、少しだけ微笑んでそう言った。

 

 

 

 

 

―――

 

 

 

 

 

8月も中旬に差し掛かった。まだまだ暑さが残っていて、人々はそれを鬱陶しく思う季節だ。夏休みももうすぐ終わってしまう。あんなことが起こった後なので夏休みの実感はとても薄いが。

 

シズは退院し、帰宅した。帰宅するとそこには相澤がいた。本来なら驚きの一つや二つあってもいいが、シズはそれを出さなかった。退院を知った相澤がシズに連絡を入れていたからだ。

 

その内容は、雄英の全寮制の承諾。雄英生徒に大きな実害が出たこと、オールマイトが引退したことを考えると正しいといえる。親によっては雄英のことを信頼できず、それに納得できない者もいそうだが、親を喪ったシズからすれば関係ない。唯一の保護者も今はいないので、シズ一人の判断で決められる。…最も、ここでシズがごねても半強制的に寮生活になったと思うが。

 

雄英に対する不信感もないシズはこれを即承諾。そこで気になることを相澤に聞いてみた。世間の声は無視できるシズでも、流石に担任の声は無視しにくいからだ。

 

「……私は、まだ雄英でヒーローを目指してもいいのですか?」

 

「………世間は二分化しているが、俺、ひいては雄英としては問題ない。むしろ、雄英以外にお前を預けるのは怖いしな。士傑なら大丈夫だろうが、お前も雄英のほうがいいだろう。……ああ、過去のことを気にしてんのなら、なおさらヒーローになれ。そんで、殺した以上に人を助けろ。俺が言えんのはそんくらいだ」

 

相澤は何でもないかのようにそう言った。普段通りに接してくれているのだ。シズにとってはそれがとてもうれしい。つくづく、彼が担任でよかったと思う。

 

「……そうですか」

 

余計な心配だったようだ。まあ、全く心配しないのもどうかと思うので聞いたのは間違っていないが。

 

「寮生活になるが…何か不都合なことはあるか?可能な範囲で叶えるつもりだ」

 

その問いかけに、少しだけ考える。ないと思っていたが、探したらあった。

 

「不都合というか、お願いがあります。週に2回は外に出る権利が欲しいのです」

 

「……理由は?」

 

相澤はこめかみを押さえながら訊ねる。恐らくかなりのグレーゾーンで、相澤一人では判断できないのだろう。学校側に聞いて判断できるようにシズの言い分を聞いておくようだ。

 

シズは妹のことを話した。現在シズの妹のことを知っているのは、目良と相澤のみ。相澤が学校側に話すので最低でも根津校長は知るだろう。

 

妹に関して、見た目や名前はわかっているが、魂を見て判断するしかない。同姓同名かつ姿が似通っている可能性がないとは言い切れないからだ。そして魂で判断をするにはシズが散策するしかない。魂で判断する以上、シズ自身が視る必要があるからだ。

 

相澤はその提案を持ち帰り、寮生活が始まって少ししたら判断を下すようだ。流石に一人で外出させるわけにはいかないので、許可が出た際に見守り、もとい監視役が必要になるだろう。シズとしてはそれでもいいが。

 

「とりあえず、荷物まとめろ。すぐに移動すんぞ。荷物は段ボールに詰めたら業者が寮に運んでくれるから安心しろ」

 

どうやら今日の内に寮生活が始まるようだ。A組の面々は昨日のうちに入ったらしく、荷物まとめはみんな終わっているらしい。

 

荷物まとめはすぐに終わったのだが、問題が一つだけあった。

 

「家はどうする。寮生活が始まる以上向こう3年はここで暮らすことはないと思うが…」

 

「……そのことなんですが、公安の方にこの家を守ってもらいます。先程まであった調査の対価として私がお願いしました。思い出が詰まった家なので手放すのはちょっと……」

 

「分かった。んじゃもう行くぞ。忘れ物ないな?」

 

「はい」

 

そう言ってシズたちは家を後にする。シズは家を出る直前に振り返り、言葉を残した。

 

「行ってきます」

 

 

 

 

 

―――

 

 

 

 

 

そして場面は変わり雄英の敷地内。シズはこれからの生活の場であるハイツアライアンスの前にいた。

 

「随分と大きいですね」

 

「21人入るからな」

 

そうして寮の中に入る。風呂、ご飯についてのこと、洗濯、ゴミ出しなどの生活のためのことについて説明を受けた後、自室に入る。相澤は学校にシズの要望のことを伝えに行くようだ。

 

「新しい生活…か」

 

シズはそう独り言つ。今までは一人暮らしだったが、今日からはクラスのみんなと共同生活をすることになる。突然訪れた非日常にシズは心を躍らせていた。

 

(……でも、みんなはまだ私と仲良くしてくれるのかな)

 

シズの過去が赤裸々に広められた以上、今までのように仲良くするのは難しいかもしれない。それは少しだけ悲しいが、当然と言えば当然だ。受け入れるほかない。

 

そんなことを考えながら荷解きを始める。荷物は少なかったのですぐに終わり、一人の時間を過ごしていた。

 

そして夕方になり、その時間は唐突に終わる。

 

ふいに扉からノック音が聞こえたのだ。

 

「相澤先生かな?」

 

相澤が学校の意向を伝えに来たのだと予測し、扉へと向かう。扉を開けると、そこには予想と違う人達が立っていた。

 

「ああ、みんな」

 

「シズ……」

 

訪ねてきたのは女子陣と少しの男性陣。どうやら残りの人たちは広場のようなリビングにいるらしく、そこに来てもらうようにお願いする。シズはそれを承諾し、リビングへと向かう。

 

リビングには爆豪も含めて全員が揃っていた。

 

沈黙。重く苦しい雰囲気が漂う中、シズは軽やかに口を開く。

 

 

「それで、話って?」

 

 

お話の時間だ。




超かぐや姫!がすっげぇ面白い。ネトフリで見たけど映画館で見る価値あるわ。

Vとかボカロとか、そういうのに過激に反応するならお勧めできないけど(オレはそういうの好き)、キャラの関係とか成長とか伏線とかで全然楽しめる。正直舐めてた。

ただなあ、絶対映画で描写しきれなかったことあるだろうからアニメとか4コマ漫画とかやってくんねぇかなぁ…。

小説は絶対買う。

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