魂を満たす物語   作:よヨ余

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評価感想等よろしくお願いします!励みになるので。

後、三人称視点にするかシズの視点にするかすっげぇ悩む。重要な時はシズ視点にするんだけど……、普段使いどうしよう。


お話

みんなは私の言葉に反応できていなかった。反応が遅れていたというべきだろうか、何を言うべきかわからなかったというべきだろうか。

 

ある人は俯くだけで、ある人は気まずそうにそわそわしていた。人によって反応は様々で、お調子者としての地位を確立している上鳴と峰田も普段の調子を失っていた。

 

「あれ、なんもないの?私に聞きたいことたくさんあるんじゃない?」

 

「シズ……」

 

響香が言いにくそうに私の名前を呼ぶ。ただ言葉は続かず、途切れてしまう。

 

「な、なんでそんな軽く振舞えるんだよぉ……」

 

そう言うのは峰田。お調子者のキャラクターは全くなくなったわけではなく、本調子ではないもののこういった聞きにくいことを聞くことができる。実に話しやすい。

 

「みんなはテレビとか見たのかな?じゃあわかるでしょ。今まで忘れてたんだから感慨深いものもない。確かにあの時の痛みとか苦しさとか絶望とか……そういう感情も思い出されたけど、大丈夫だし」

 

この言葉を聞いてみんなは余計に苦しそうな顔をする。私はそれに心を痛めることはしなかった。

 

薄情かもしれない。人の心がないかもしれない。でも、この話し合いにおける私の目的のためにこうする必要がある。嫌々やっているわけでもないけれど。

 

この話し合いでの私の目的は私の本音を伝えること。私のありのままを伝えること。私という存在がみんなに知られれば、それでいい。

 

嫌われてもいい。嫌悪されてもいい。疎まれてもいい。憎まれてもいい。

 

彼ら彼女らがどんな反応をしようと、私はそれを受け入れるつもりだ。みんなのそれぞれの判断を受け入れるつもりだ。

 

「きっと、オールマイトの活躍と一緒に私の過去も晒されていたんでしょう?病室のテレビで見たけど、ニュースで私の過去が放映されていたね。子供たちが見たらどう思うのやら。トラウマになってしまうかも」

 

「そこじゃ…ないでしょう!?」

 

ヤオモモが声を少しだけ張り上げて言う。その瞳には涙が浮かんでいて、この話し合いの前まで泣いていたのか目が少しだけ腫れていた。鼻も少しだけ赤くなっていて、そんな少し崩れた顔で私を見る。

私もそれに応えてヤオモモを見る。彼女の発言を真摯に受け入れるためだ。

 

「あなたのことが、大事なのです!あなたの感情が!考えが!あなたにも考えがあるのでしょう!?感情があるのでしょう!?あなただって人間です!それを教えてください…!あなたのことが知りたいのです!」

 

胸の奥底にしこりがあるような違和感を感じる。とても小さく、無視することもできるような矮小な存在だが。

 

「私を知りたい…ね」

 

ヤオモモの本音を聞いた。周りのみんなも、細かいところは違えど大筋は同じのようだ。私の言葉を待っている。一言でも聞き逃してなるものかと、耳を澄ませる。

 

嗚呼、つくづく。

 

つくづく私は恵まれている。

 

こんなにも友を思える人はこの世にどれだけいるだろう。このように他者を思いやれる人はどれだけいるのだろう。

 

このような正しい人間はこの世にどれだけいるのだろう。

 

正しくない人間が多い中、このような人間はどれだけいるのだろう。

 

 

そして、これに胸を張って向き合うことができない人間は、私以外にいないのだろう。

 

 

「あの夜の映像がすべてだよ。あれが、私だ。君たちがおおよそ3か月もの間を共に過ごした級友の正体。人を傷つけることにも、人を殺すことにさえ躊躇がなく、抵抗がない。いわゆる壊れてしまった人間さ」

 

今の私はひどく無表情なのだろう。声色も平坦で、抑揚も抑えられていた。

 

みんなの表情に、魂に、恐怖が宿る。それは、敵を相手にしたときのそれと同じだった。

 

「躊躇がないって…そんなわけない……!」

 

お茶子が私に物申す。否定したかったから、――いや、他でもない私自身に否定してほしかったから。

 

取り繕うことは簡単だ。ただ前言を撤回すればいい。

 

でも、私はそれをしない。本音を、本心をみんなに伝えたいから。

 

「あるよ」

 

「ッ…」

 

たじろいだ。

 

「ある」

 

たじろぐお茶子に私はそう追い打ちをかける。追い詰めるためでなく、正しく私を知ってもらうため。結果的に追い詰めているが、そこは許してもらおう。

 

「たとえそれが、あの時のような死刑囚だとしても、善良な一般市民だとしても、老後を穏やかに過ごすご老体だとしても、生まれたばかりの幼子だとしても、誰であろうと」

 

お茶子だけでなくみんなが私に絶句する。前も絶句されたことはあったが、これとは程度が違う。

 

この後に続くであろう言葉を、聞きたくないと思ってしまう。

 

「私は、殺せてしまう」

 

 

 

 

 

―――

 

 

 

 

 

俺はあるクラスメイトの話を聞いていた。そいつは俺が超えるべき存在で、超えたいと死ぬほど思える存在、いわば格上の存在だ。

 

もしかしたら超えることは生涯をかけても出来ないのかもしれない。その疑念は、あいつのあの夜の戦闘を見て深まった。もしかしたら、その前から察してたのかもしれねぇが。

 

だが、超えようと努力することが、足掻くことが、俺という存在を上にあげる。No.1により近づく。

 

だから、こいつの素性なんてどうでもいい。

 

――どうでもいいというのは違うかもしれない。こいつを超えるために素性を、過去を、強さの秘密を知りたいと常々思っていた。それがどんなものでもすべきことは変わらないだけだ。

 

こんなにも重いものだとは思っていなかった。歪さは時々感じていたが、これに起因するとは想像できなかった。

 

だけど、それに何が関係するのだろうか。

 

こいつの話は聞いた。多分、俺たちがどう思おうとこいつには関係ないのだろう。俺も、それに興味はない。

 

だが、誰も声をかけることができていなかった。だから気まずい雰囲気が漂い、話が前に進まない。

 

そう考えていると、ふと一つの考えが浮かんできた。

 

そういえば、俺はこいつからの誕プレをもらっていない。こいつに限らずではあるが。

 

俺が欲しいもの……

 

 

 

 

 

―――

 

 

 

 

 

私はみんなの反応を見て、これ以上の進展はないと思っていた。みんながみんな納得したわけではない。私だって、全てを話せたわけじゃない。心残りがないと言えば嘘になるが、ここいらでお開きにする方がよさそうだ。

 

「オイ」

 

そう思っていると、爆豪が声をかける。どうやらまだお開きにしなくてもいいようだ。

 

「何?」

 

爆豪は私の言葉を聞きながら紙に何やら文字を書いていた。

そして、その内容を私に見せる。突き出すような見せ方で、爆豪の性格が如実に表れていた。

 

その内容は、『俺と戦う券』というチープなもの。爆豪らしいと言えば爆豪らしいのだが……。

 

「……へ?」

 

「お前の俺への誕プレな」

 

爆豪はそう言って自室に戻ろうとする。しかし、何か忘れものでもあったのかこちらを振り返った。

 

「オイ、あの夜の最後の技。1億分の1って本当か?」

 

「……本当だけど」

 

「そうか」

 

うろたえる私をよそに爆豪はその紙を持って自室に戻った。誕プレのアレは恐らく今ではなく、爆豪が願ったときに叶えてもらう魂胆だろう。もしかしたら回数は無制限かもしれない。

 

それと最後の質問の意味。自室の方向に振り返った時に不敵な笑みを浮かべていた。もしかしなくとも超えるつもりなのだろう。威力だけなら天地がひっくり返っても不可能だが、ヒーローとして勝利するなら可能だと考えたのだろうか。絶対負けない。

 

「ま、あいつは気にしてないってことね」

 

あまりにも自分勝手な振る舞いに私はため息を吐く。だが、私の過去を知っても尚気にしない人がいて少しだけ嬉しかった。

 

「話は終わりだね。じゃ、私も行くから」

 

「待ってください!」

 

私の手を握ることで動きを阻害する者が現れた。八百万百。私のクラスメイトで、先ほど張り上げた声で私に意見を出した生徒の名前。どうやら、あの夜に爆豪を助けに現場に赴いたらしい。緑谷、轟、切島、飯田もらしいが。

 

私は振り返り、「何?」と言うつもりだった。そこで私の異変が急激に顔を出す。

 

チクリと、チクリと。

 

魂の奥底がざわついた。今まで感じたことのない感覚だった。少しの違和感。それは私の心の中で起こっていて、不思議と煩わしいものでもない。むしろ、少しだけ心地いいと感じるものだったかもしれない。

 

あの夜明けの日の感覚に似ている?私はそう思う。彼女の顔に、その端正な顔に大粒の涙が流れているその顔に、私は何を感じているのだろう。

 

私は彼女の顔をじっと見る。その顔に秘密があるのだろうか?その表情だろうか?私はそれを確かめるためにじっと見た。

 

嗚呼、そうか。

 

「……殺せないな」

 

「え?」

 

私の言葉にヤオモモは困惑する。そんなヤオモモをよそに私はお茶子に語り掛ける。先程の発言を撤回するためだ。

 

「誰でも殺せるわけではないようだ。大事な人は殺せない」

 

みんなは私の心変わりに驚いた。私のことが理解できないかもしれない。私が変わったのだから、気付いたのだから当然だろう。

 

「私がお前たちを殺す未来を想像できないな。たった3か月を過ごしただけとはいえ、私の中でみんなは特別な存在になっているのだろう」

 

みんなはこの後に続くであろう私の言葉を待っていた。

 

「私はこの話し合いで、嫌われてもいいと思っていたんだ。むしろ、嫌われた方が生活しやすいとさえ思っていた。何も気遣わなくていいからだ。でも…でも、なんなんだろうな」

 

私は続く言葉に少しだけ詰まった。これを言うのはとても恥ずかしいからだ。もしかしたら卒業までからかわれるかもしれない。それは受け入れがたいが、致し方あるまい。

 

「私は、皆に嫌われたくないと思っている。ウソだと思うかもしれないけど、ホントなんだ。なんだろうな、こんなこと思ったことないから言語化が難しいや」

 

私は勢いのまま本音を伝える。少しだけ照れが入っていたので俯きながらの発言だったから、余計に恥ずかしく感じる。

 

「シズ…」

 

 

「――こんな私だけど、改めて友達になってくれないかな?」

 

 

笑うことはできなかった。泣くこともできなかった。つくづく壊れている。まだ魂が満たされていない空っぽの魂だから当然と言えば当然だが。

 

私は久々に他者の反応にビクビクする。お師匠に居候をお願いしたとき以来だろうか。他者にどう思われてもいいなんて思っている私だが、お師匠にだけはそう思えていなかったな。当然のことすぎて忘れていた。

 

その対象に、A組のみんなが増えただけだ。なんてことはない。

 

「も……」

 

芦戸が声を出す。正確には一音だが。

 

しかし、それは芦戸からその周辺に、そして全員に伝播する。

 

「もちろんだよぉ!!」

 

この言葉を聞いた私は安堵する。私の本音を、願いをみんなが叶えてくれたようなものだからだ。

 

「本当に?私だよ?人殺しなんだよ?」

 

「確かにそうだな。でも、これまで関わってきたお前はいい奴だった。記憶がなかったからってわけじゃねぇだろ。今日話してみてもそれは何となくわかる」

 

私の言葉に反論するのは轟。その言葉にみんなが賛同する。みんな気持ちは同じのようだ。

 

「……そっか」

 

私は呆れる。みんなの思考にだ。でも、それは不快なものでなくて、心地のいいものだった。

 

嗚呼そうか。

 

私は恵まれてるんだった。

 

お師匠にも、家族にも、先生にも、クラスメイトにも。

 

多くの人に恵まれて私は生きている。

 

たとえどんなに不幸とされる過去があったとしても。

 

私は恵まれている。

 

「―――これからもよろしく」

 

「「「よろしく」」」

 

私の言葉に返答するみんなの声がハモった。

 

嗚呼。

 

これが幸せってやつなのかな?

 

もっと知りたいな。

 

 

 





シズ視点メインにしようかな…。途中から何書いてんのかわかんなくなってきたけど。
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