私が一次試験を合格してから数分後。合格者待機所の扉が開き、新しく合格者が入ってきた。
轟あたりだろうと思っていたが、違った。そいつは先ほどまで戦っていた相手だったので流石に忘れない。夜嵐が入ってきたのだった。
「いよっし2番乗り!1番はとられちゃったけど2番取れてよかったっス!流石は雄英!それも夜月!感服しましたっス!」
彼は開口一番にそう言う。やはりアツクルシイ。ただ、それは悪意から来るものではないため悪い気はしなかった。
「お疲れ様。やっぱり早かったね。流石雄英推薦試験首席」
「知ってるんスか!?」
「ああ、ごめん。うちの担任が言ってたんだ。差し支えなければなんで合格を蹴ったのか聞いてもいい?士傑も雄英に劣らない名門だけど雄英が好きって言ってたからさ。気になって」
「それは……」
彼の反応を見て私は先の発言を呪った。発言する前に彼の心情や境遇はある程度推測はついたはずなのに私はそれを怠った。不快にさせてしまったかもしれない。
「ごめん、野暮だった。忘れてくれ」
「全然大丈夫っス!それより、さっきの技について聞いてもいいっスか!?俺も風の個性なので参考にしたいっス!それに、シズさんの個性についても聞きたいっス!」
「オッケー」
私は彼から許しをもらい、彼の頼みを聞く。これで彼が喜ぶのなら安いものだ。それに、おそらく彼は私が残した20人の内、数人あるいは全員を倒してきたのだろう。ボールはその辺に散乱させておいたから彼の個性なら他の誰よりも早くボールを取ることができるだろうしね。
「私の個性は『魂』。その人の心臓に存在する魂を知覚する個性だよ。そして、私はその魂の中にあるエネルギーを操る。風とかそういった事象はそのエネルギーによって引き起こされたものだ。さっきの風もね」
言葉に間を持たせて彼に質問の余地を与える。彼は空気の読めない人間ではないため正しい質問を正しい時にぶつけられる。話していて楽しい存在だ。
「確かエネルギーって大気に存在してるものを使ってるんスよね?それはどこから生まれるんですか?まさか自分の……」
「アハハ、流石にそれは最終手段だよ。もともと、魂の終わり――つまり死を経ると魂は拡散するんだ。その中に滞在するエネルギーを放出してね。私が使ってるのはそれ。だから、私が使っているのは今までに生きた人間たちの残りカスなんだよ」
言い方は悪いけどね、と続け、私は彼の疑問を解消する。すると、彼はもう一つ疑問が残っているようだった。虚無についてだ。
「ああ、虚無はエネルギーを媒体として新しく作ったエネルギーだよ。手間をかけた分もちろん威力も上がっている。少なくとも倍以上だね。でもその分制御が難しいんだ。あの夜でそれは克服したけどね」
「できることが多い分混乱しそうっスね……。でもそれを使いこなせるなんてすごいっス!やっぱアツいっスね!!」
「ありがと。さっきの風も虚無で作った暴風だよ」
彼の反応はとても素直で心地がいい。とてもまっすぐで純粋な魂をしている。
――だからこそ、轟に向けた嫌悪の感情が理解しがたい。
轟と顔を合わせたのは推薦試験の時だろう。…もしかしたらそれ以前から顔を合わせておりそこで何かしらの確執があったのかも知れないが、轟が顔なじみかのような反応を示さなかったのできっと推薦試験が初だろう。
轟が彼に何かをしたのだろうか。
彼はアツい存在が好きだから轟に内在するアツさを認識できたはず。それを認識する以前で轟を嫌ったのだろうか。
もう一つ疑問なのは、その嫌悪が轟だけに向けられたものではないこと。もっと言うなら、轟の目だ。彼は轟の目を見て嫌悪を露わにしていた。目。初期の轟の目は父であるエンデヴァーの嫌悪が前面に押し出されていた。その目が嫌いなのだろうか。
……わからないな。彼に聞けば教えてくれるかもしれないが、聞かないほうがいいだろう。
そう思考していると、また合格者が入ってきた。A組ではなく、士傑でもない。赤の他人のようだ。
「オッ!新しい人だ!オレ、ちょっと話してくるっス!」
「いってらっしゃい」
彼は行ってしまった。話しかけられた人は彼の破天荒さに少し戸惑っているようだった。気持ちはわかる。
さて、私はみんなを待つとしよう。ついでに、二次試験の内容の考察でもしてようか。
―――
扉が開き、入ってきた人数が50に達した頃、私以外のA組がようやく来たようだ。やはりというべきか、最初に来たのは轟。少なくとも25位以内には来ると思っていたため、少しだけ意外だった。
「轟。遅かったな」
「夜月、他のみんなは?」
「まだだ。うちは個性の詳細が割れているからな。少しだけ苦戦しているかもしれない。でも、直に来るだろうさ」
そっか、と轟は言い、私の隣に腰掛ける。そのまま私たちは試験について話していた。主に轟がどのような戦いをしたのかだ。
どうやら、一つの学園と戦っていたようだ。その生徒たちは十人全員が忍者のような恰好をしていて素早かったらしい。轟は氷結で動きを鈍らせることができるが、彼らもバカではなかったようで対策は入念に練っていたらしい。金属などを大きくする個性持ちがリーダーで、タングステンの金属を操ったんだとか。確かに、熱に極端に強いタングステンは轟の天敵となるだろう。ただ、それは最初だけで、場数の違いで轟が勝利した。敵襲来を複数経験しているのだ。そこらの上級生よりも経験数は段違い。それに加えて轟は幼いころから父であるエンデヴァーによって常人では経験しないであろう訓練を積んでいる。やはりそこはこちらの方が数段上のようだ。
しかし成程。なかなかに面白い。
(私の方は実力が下の方だったんだな。話を聞く限り、順当に試験に臨めば十分に合格できる人材だったのだろう。轟が戦ったのは上澄みの方だったわけだ。となると、なかなか捨てたものではないのかもしれない)
私はそう認識を改めた。
思えば、ここにいる人はみんな相応の実力を持っている。2年生や3年生がほとんどだがそれでも雄英のような高度な教育を受けていないのにもかかわらずここにいるということは相応の才能があるのだろう。
話も落ち着き、暇ができたところで私は少しだけ切り込んでみることにした。
「さっき相澤先生が話していた夜嵐イナサってやつ。どう思う?」
「実力はあるだろ。ただ、少し気になることがある」
「視線?」
私が聞くと轟は驚いたように目を見張った。そして、言葉を紡いだ。
「お前も向けられてんのか?」
恐らく轟に向けられた嫌悪の視線のことだろう。しかし、私は違う。
轟だけに向けられた視線だったからだ。
そのことを伝えると、
「俺だけか……。でも、心当たりなんてないぞ」
「うーん、訳もなく嫌うような心の狭いやつには見えなかったんだけど……、なんか理由があるのかもな。あとで聞いてみなよ」
「ああ」
話はまた落ち着き、今度は二次試験の考察を二人で行うことになった。
途中でヤオモモたちが合格の扉をくぐり、緑谷たちが。その後に爆豪がくぐって、最後にはみんなのサポートに回っていた飯田が合格の扉をくぐった。飯田の集団でA組の全員が揃い、めでたいことに全員が一次試験を合格することになったのだった。
―――
『えー、一次選考を無事に通過した百人の皆さん。これを、ご覧ください。』
目良さんのアナウンスに従い、私たちはモニターを見る。そこには先ほどまで一次試験を行っていた会場が映っていた。不合格者はすでに撤収させられており、そこには誰もいない。
次の瞬間。各地で続けざまに爆発が起こっていた。
(((何故ー!?)))
恐らく私たちのほとんどの思考が一致しただろう。笑い事ではなく、その被害はとても甚大だった。
建物は崩落し、瓦礫が辺りを支配している。崩れた建物の一部からは火災が発生し、山崩れの類も起こっていた。
『最終試験になります。皆さんにはここでバイスタンダーとして救助演習を行ってもらいます』
「へえ」
想像していた通りで拍子抜けだが、同時にとても厄介だと言える。
何せ、本番では命にかかわるのだ。できる限り効率よく、最大の人数を助ける必要がある。
今まで命を奪ってきた私が今度は命を助ける番となるのだ。演習はいくらかやってきたがこのような本番に近しい演習は初めてと言える。
『ここでは一般市民としてでなく、仮免許を取得したものと仮定して試験に臨んでもらいます。どれだけ適切な救助活動ができるのか。どれだけ自分の能力を十全に活用して行動することができるのかを評価します。評価方法は明かさないのでご了承ください』
救助活動を行うには要救助者が必要だ。もちろんこれは試験なので模擬的なものだが……、どうするのだろうか。
私の懸念は杞憂だったようだ。モニターを凝視すると老若男女問わず多くの人で溢れかえっていた。彼らが要救助者の役をこなすのだろう。
『彼らはあらゆる訓練において今や引っ張りだこの要救助者のプロの“HELP US COMPANY”。略して
この言葉の後にアナウンスは途切れ、モニターも消えた。
この後に続く合格者の行動は大きく分けて主に二つ。
一つは言われたとおりにお手洗い等の準備を済ませる者。その中には瞑想をして集中力を高めたり、個人のルーティンをこなすなどしてコンディションを最大まで高める者も居た。
もう一つは次の試験に向けて行動を開始する者。
私は後者だった。
「ヤオモモ、ちょっと」
「夜月さん、どうしたんですの?」
私はヤオモモの手を取って行動を開始した。ヤオモモは私の行動に疑問を覚えたようだ。
「今回のような他者と協力するような試験で必要なことは何だと思う?」
「ええっと……協力…でしょうか。やはり数は力になりますし、それだけ最上の結果を得ることができます」
私の質問に彼女は律儀に答えてくれた。彼女らしい答えで、それでいて大半がそう答えるだろう。私も、それは正しいと思う。
ただ、それは正しくないともいえる。
「正解は、私たちが動きやすいように協力者を得ることさ」
「動きやすいように……?」
「そう。私の作戦を先に伝えておこうか」
私はヤオモモの耳に顔を近づけ、作戦を伝えた。
彼女は目を開き、その作戦に賛同を示す。
さて、一人は完了。
もう一人、必須の人材がいる。勧誘しに行こうか。
私たちは行動を開始した。
そして、最終試験が始まった。
―――
緊急事態を告げるアナウンスとブザーが鳴った。
『道路の損壊が激しく、旧休戦着帯の到着に著しい遅れ。到着するまでの救助活動はその場にいるヒーローたちが指揮を執り行う。1人でも多くの命を救い出すこと!試験開始!』
夜月さんは受験者たちが動き出す前に飛翔し、可視のベールを張ることで皆の進行を阻む。そして、彼女は状況の確認を急ぎ、行動を開始していた。
夜月さんの行動は本来ならば救助活動に著しく害をもたらす悪質なもの。しかし、私は彼女から事情と作戦を聞き及んでいたので落ち着きを失うことはなかった。
ただ、他の人たちはそうでもない。作戦も何も知らないため、彼女の行動は血迷った結果起こってしまった凶行だと認識しているだろう。A組のみんなも、そこまではいかずとも疑問には思っているようだった。爆豪さんが個性で破壊しようと行動したが、ベールには罅一つはいらず全く効果を残していなかった。
私は皆が落ち着いてきたタイミングを見計らって最前線へとたどり着く。そして創造で台を作りその上に乗った。朝礼でよく見るような台なので、皆が私の姿を視認することができるだろう。
「八百万……?」
困惑する皆様を置いて、私は私に課せられた仕事をこなすことにした。拡声器を創造し、台の上へと登る。
「私は雄英高校ヒーロー科1年A組、八百万百、ヒーロー名『クリエティ』です!おなじく1年A組、夜月静江さん、ヒーロー名『シズ』に頼まれ、作戦の説明の任に預かりました。どうか話を聞いてください!」
私の精一杯の叫びは、一定の人には届いたようだ。ただ、一部の頑固な人には届かない。不満を漏らし、それを露わにしている。かなり後方にいる人の非難の声も聞こえてきた。やはり、一般的に経験の浅い1年生では信用が足りないのだろう。それは雄英生とはいえ変わらない。
ただ、それは何も仕込みを入れなかった場合だ。彼女の作戦を達成するために立案した作戦はもう一人の協力者によって達成される。
「話を聞かせてくれ」
そう声を張り上げたのは士傑高校のリーダー的存在である毛原さんだ。彼は士傑高校に在籍しており、経験も豊富。そして、その雰囲気に交じっている実力者特有の覇気の類。初対面の私でさえそう感じたのだから、恐らく大多数もそう思うだろう。実際、彼の発言で不信派の様子も変化した。いい方向へとだ。
しかし、それは全員ではない。未だ不信感を抱いている人はいる。
これが私だけの行動だったら、その少数の人に悩みを抱いていただろう。
しかし、彼女の言葉を聞いて、それは間違っていたのだと気が付いた。
彼女との会話を思い出す。
私たちが毛原さんに協力を要請し、それを取り付けた後のことだ。私たちは説得に関して煮詰めていた。
『全員を納得させる必要はないんだ。爆豪のように我の強いような奴でなければ、大抵は同調圧力に屈する。そうじゃなくともそれは少数だ。気にする必要などない』
彼女は言葉の後に『そもそもこれを納得できないのならそれ程度の実力だし』と独り言をつぶやいていた。
『何故ですか?全員が足並みを揃えなければ最善の結果を残せません』
私の疑問に彼女は人差し指を唇に当てながら答えた。
『今回に限らないが、私たちが目指すのは満点ではなくてハイスコアだ。今私たちが持っているものを十分に活用してハイスコアを目指す。それに、多くの年月を共にした歴戦の仲間でなく、初対面の他人と協力する必要がある以上、満点を取ることはできない。だから目指すのはハイスコアでいい』
『満点でなく、ハイスコア……』
私は彼女の言葉を吟味していた。そして、彼女はその読心術を思わせるような察知能力で、私の心情を的確に理解していたのだった。
『まあ、ヤオモモだったら満点を目指しに行くんだろうけどね。私はそれを否定しているわけじゃない。ただ、今回はハイスコアを目指してもらおうかな』
彼女は微笑んでそう言った。誰もが見とれてしまうような、妖艶な微笑だった。
私は彼女との会話に従い、ハイスコアを目指すべく動いていた。
そして、それをした結果、普段よりもかなり動きやすくなったことを自覚した。
変に気負うことなく、私の最上の行動をとることに集中することができる。
私と毛原さんの説得は驚くほど簡単に達成できた。説得をしたのは私だが、私は彼女の予測能力や人心掌握術に冷や汗をかく。
――もし、彼女がオールフォーワンの手に落ちていたら――
高い、いや高すぎる能力に無情さ。それが合わさった最強の敵になっていたのではないか。
そう考えないことはなかった。
それがとても愚かで浅はかで、絶対にありえない空論であることは重々承知しているのだが、やはりどうしてもそう考えてしまうのが人間だ。そして、それは私だけではないのだろう。
また、彼女はそれを認識しているのだろう。
でも何も言わない。
きっと満点を目指していないからなのだろう。少数――多くとも半分――が疑おうと、私たちのような近しい人間が信じていればそれでいい。
そう考えているのかもしれない。もしかしたら違うのかもしれない。全員が疑おうと構わないのかもしれない。
寮生活が始まって、彼女と話す機会が増えた。
その中で、彼女を知りたいと考えることが増えてきた。
彼女は。普通とは程遠い過去を持つ彼女は。施設以外に、お師匠という人との過去が不明なままの彼女は。
私たちに、本来の姿を見せてくれるのだろうか。
……そこまで考えてハッと気づく。まだ作戦の説明を始めていなかった。時間にしてはわずかな時間だが、少しだけロスをしてしまった。
試験に関係ない思考を無理やり頭の隅に追いやり、私は試験に集中する。
「シズは今、上空にて要救助者の位置を探索しています。私たちが行動するころには全員の探索が終了していることでしょう。また、探知系個性の方の仕事が残るように大雑把な位置を指定するようです。そして、皆さんには私が創造する小型の通信機を装着してもらいます。その通信機で上空のシズに物資や人手などの要求が可能です。彼女の情報処理能力なら私たち全員が一斉に話しかけたとしても問題ないので、臆せず使ってください」
私は通信機を創造しながら言う。夜月さんの分を除いた99個を創造するのは少々骨が折れるが、この程度でへこたてるわけにはいかない。
「集団で行動を開始したら通信機でシズからの指示があるはずです。その通りに動いてもらって構いません。また、今見えるように上空に伸びている光は、トリアージタグです。その周辺にトリアージに対応した要救助者がいます。参考にしてください。説明が長くなりましたが、不明点があればシズへと質問を願います。私はこの後設営する仮救護所にて医療器具の創造に徹しますので各自の判断に委ねます」
私の発言はとても一方的で、完全な理解が得られたとは言えないかもしれない。ただ、そのことも彼女から言及されていたので問題はない。もともと私もそうするつもりだった。
説明が終了し、夜月さんの方を向くと彼女はベールを解いた。
「行動開始です!!」
私の言葉で、全員が行動を開始した。
―――
流石はヤオモモだ。
私はそう嘆息していた。やはり彼女に任せて正解だったと改めて認識する。
フム、ここまでで作戦はほとんど終了した。あとはみんなに救護を任せ、試験終了するまでサポートに徹する。
懸念点は、私を見ている試験官が私を何もしていないと判断してしまうことだろうか。
ただ、それは問題ない。私の思考を試験官に可視化させれば十分だろう。その思考内容の濃密さに試験官は多少驚いたようだが、加減をしていたので問題ない。少しだけ戸惑ったが、すぐに落ち着いたようだ。
後で少し謝っておこう。
そんなことを考えながら、私は下を向き、みんなの様子を見ていた。
ヘリの離着地点を作る者。
暫定危険区域を作る者。
仮の避難所を作り、そこで医療事務に携わる者。
動きの幅が少ない者はそのような行動をとっていたが、動きが激しい者は救助に赴いていた。緑谷がHUCの人にダメ出しをされている。とはいっても、それは仮免を取る可能性が高い者がプロになってへまをしないためのありがたい格言だった。彼にとっていい薬となるだろう。
とはいえ、大したトラブルもないようだ。絶え間なく連絡は続いているが、こうして無駄な思考をするだけの余裕はある。私の演算能力にかかれば朝飯前だ。
(あーあ、爆豪暴言で減点くらってる。落ちるかもな)
とはいえ、きっと救済措置はあるだろう。
試験官の動きから減点方式であることが予測できるが、それでは『精神面で運営が求めている基準を満たしていないが、優秀な人材』が仮免を取れない事態が予測される。それはよろしくない。
ただ公安もバカではないだろう。優秀な人材を無下にするような愚行は犯さない。きっと補講のような形をとるはずだ。そのために100名に絞り優秀な人材をリストアップしたのだろう。
だから心配はない。どちらかと言うと補講をする価値があると判断されるようにある程度のお膳立てをする必要があるだろう。まあ、彼の場合判断だけは間違っていないので必要ないとは思うが。
まあいいか。この考えはいったん隅に追いやろう。
私は少しだけ難航しているエリアに指示出しをしようか。
「響香」
『シズ!?』
「3人がノルマね。5分以内!」
『……5人は見つけるっつうの!』
「その意気その意気。頼んだよ」
そう言って通信を切る。その後も障子や口田といった索敵要員にも同じように煽って士気を高める。
それと並行して分身体の作成。要請された区域に向かわせた。
そのほかにも仮避難所にて治癒を行わせ、トリアージが変化しても問題ない様に要救助者を監視し、力仕事を求めている者には
かなりリソースが食われているが、問題はないだろう。翼を生やすことで飛翔の負担を軽減しているし、連絡はヤオモモが創った通信機で行うことで同じく負担を軽減している。そういった細かいことで情報処理の質を落とさないようにしている。
――それが境界線となった。
轟音が響き渡る。そして、各地で起こる爆発の類。
私は即座に行動し、まずは要救助者に被害が及ばないように最速で対策をした。きっとその必要はなかったのだろうが、念のためだ。
そして、轟音の発生源の確認。それは避難所の近くで起こっており、場合によっては最悪の状態になる恐れすらあった。
そして、その恐れは現実となる。
『敵による大規模テロが発生』
シナリオか。
「救護と対敵。――すべてを並列処理できるかな?」
『敵が姿を現し追撃を開始。現場のヒーロー候補生は敵を対処しつつ、救助を続行してください』
敵はギャングオルカ。チャートは10位でトップテンに名を馳せる実力者だ。そして敵と救護の両立。プロでも手を焼くレベルの難題だろう。実際、引率の先生方も絶句していたし、当事者である私たちの中にはうろたえている者も居た。
『全体通信。敵はギャングオルカ。第一避難所付近にサイドキックとともに登場。遠隔射撃で足止めを行うので戦闘可能あるいは戦闘に特化した者はすぐに駆け付けるように』
節々から了解という言葉が聞こえた。轟と夜嵐が即座に行動していたので彼らならすぐに来るだろう。
さて、分かりやすい活躍の場が来た。暴れるとしようか。
私は上空――私の周辺――にアステロイドよりも極小の水玉のような物質を浮かべながら、敵を見下ろした。
対敵の時間だ。
最近文字数多い。今回9000くらいあった。過去一。