体操服に着替えた私は試験会場Gに来た。都市を模したような場所で、所々に高いビルが建っていた。
準備運動を済ませた私はいつスタートが来てもいいように構えておくことにした。
……周りからは変な奴を見る目で見られたけど。
「スタートダ」
試験官らしき人の声が聞こえた瞬間に私は疾駆した。後ろで戸惑う受験者の声が聞こえた気がした。
「何ヲシテイル。本番デハヨーイドン等存在シナイ。賽ハ投ゲラレテイルゾ」
試験官の声が聞こえたけど、私には関係ない。気にせず走る。
走っていると、何やら機械が見えてきた。1ptと書いてある。
「標的発見!ブッ殺ス!!」
「随分と物騒だね?」
私は随分と言葉遣いが悪い仮想ヴィランを殴ってみた。
「ふーん。流石雄英」
少しひしゃげたけど、さすがに硬かった。
「斬るか」
私は弧月を作り出し、ヴィランに斬りかかる。
ヴィランは豆腐のように斬れて、活動を停止した。
「これで1ptってことでいいんだよね」
「標的発見!ブチノメス!」
「標的補足!ブッ飛バス!」
ヴィランを倒すと、感傷にふける間もなくまたヴィランが出てきた。しかも2体。
「妙にセリフが凝ってるな……」
2体だけど、1体1体の動きは単調なので、対処は簡単。
私は難なく2体を倒す。2ptと3ptだったのでこれで合計6pt。
「思ったよりも柔らかいから、一気に倒せるね」
周りを見ると、ほかの受験者も1ptなら対処ができてた。
「おらぁ!…うしっ!」
1ptを倒して油断していた受験者に襲い掛かる2ptが見えた。
「標的補足!ブッ飛バス!」
「エスクード」
私はヴィランの攻撃を防ぎ、弧月で2ptを斬る。
「気を付けないとケガするよ。私もずっと見れるわけじゃないからね」
「わ、悪い!助かった!」
「グラスホッパー」
私は彼のお礼を聞き流してグラスホッパーでビル上に向けて跳ぶ。
「ここからなら全体に攻撃が通る」
私はレーダーでヴィランの場所を把握して、トリガーを発動する。
「バイパー」
現れたキューブを細かく分割し、レーダーに映るヴィランに向けて放つ
バイパーは私の意のままに進路を変えてそれぞれヴィランのもとにたどり着き、ヴィランをハチの巣にした。
「あと半分ぐらいかな」
もう1度バイパーを展開し、同じように放つ。先ほどと同じようにヴィランはハチの巣になる。
「……おしまいだね」
レーダーにヴィランの反応がなくなったことを確認し、一息つく。
……そういえば、お師匠はバイパーをほめてくれたっけ。
『自分で弾道操作できるってすごいな!』
『いや、お師匠のほうがすごいよね?しかも狙撃だから難易度高いし』
『まあな。私はシズの師匠だからな!それぐらいできなきゃダメだろう』
『そんな決まりはないし、私はどんなお師匠でも尊敬するけどね』
『!?お、おう?ありがとな?』
『…?お師匠どうしたの?』
『何でもねえよ!』
お師匠とのやり取りを思い出して少し笑っていると、私の後ろから轟音が聞こえてきた。
「!?」
振り返ると、後ろにはビル1個と少しくらいの高さのヴィランがいた。
「ああ、あれが0ptてやつ?」
0ptは周りのビルを物ともせずに進む。
「人が思い出にふけってたってのに、邪魔しちゃって。……高くつくよ?」
私はレーダーで0ptの周りに受験者がいないことを確認する。
ほかの受験者たちは0ptを見て一目散に逃げだしたようだ。
「崩れた瓦礫に巻き込まれた人もいない。周りには私と0ptだけ」
私は弧月を構えた。
「じゃあ、ちょっと頑張ろうかな」
私はその場で弧月を振るった。
「旋空弧月」
0ptの大きいからだが両断される。
活動は完全に停止したが、このまま放置すると下に甚大な被害が出そうだったので、スパイダーで0ptの上半身を宙吊りにする。
……重い。
幸い、0ptがビルを壊したことで更地ができていたから、そこに置くことができた。0ptを作る予算やばそうだったからきれいに無力化できてよかった。きれいに結合できれば、再利用できるはず。
「終了ダ」
0ptを丁寧に置いた後、試験官さんの声が響いた。
私はビルから地上に降りて出口に向かう。
「怪我人はいるかい?」
出口付近に杖を突いたおばあさんがいた。服装的に養護担当の先生かな?
「珍しいね。一人も怪我人がいないのかい?」
おばあさんは私たちを見渡して言った。それに、一人の受験生が返答する。
「俺たちがケガする前にあいつが大体倒しちゃったので……」
そう言って私を指さした。
……私のせい?
「へえ。この子がねえ……。まあなんにせよ、怪我人はいないってことだね?それなら、出口通っていいよ」
おばあさんの許可をもらって、私たちは筆記試験の会場に向かった。
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雄英入試が終わってから1週間ほど経った。
筆記試験は簡単だった。1問だけマークミスがあったけど、それ以外はあっているだろう。少なくとも合格点は余裕で越している。
私は入試後も個性の訓練だけは続けていた。一応滑り止めでもヒーロー課を受けて合格したためだ。
外から郵便バイクの音が聞こえたので、外に出てポストを確認した。
「来てる」
郵便の中身は雄英からの手紙だった。
リビングに戻って手紙を開くと、丸くて小さい何かが出てきた。
『雄英高校教師、相澤消太だ』
「わ、びっくりした」
この何かは小型モニターだったらしい。
『無駄なことは言わない。合格だ。それも首席でな。』
合格。本来はもっと喜ぶべきなんだろうけど、相澤先生の言い方で反応が薄くなっちゃう。
『筆記は1問を除いて満点。実技も圧倒的だ。気づいていたと思うが、実技試験には2つの評価項目があった。1つはマイクも言ってたヴィランポイント。もう1つはライバルであるほかの受験者を助けること等で加算されるレスキューポイント。どちらも高水準だった。文句なしの結果だ』
「やっぱり」
評価項目は2つあった。当たっててよかった。後で恥ずかしくなることはなくなった。
『来い。ここがお前のヒーローアカデミアだ』
その言葉を最後に、モニターは消えた。
「……お師匠に胸を張れるヒーローになるんだ」
私は新生活に胸を膨らまして就寝した。
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「今年の1年は粒ぞろいだな!まさかレスキューポイント0で2位とはな!」
入試が終わってから、雄英の会議室で雄英教師たちは実技試験の総評を行っていた。
「ああ、汎用性が高く優秀な個性を使いこなして、最後までペースを落とさずに仮想ヴィランを倒し続けてた。圧倒的なタフネスだ」
「反対にヴィランポイント0で8位」
「最初は典型的な不合格者の動きだったんだけどな」
「過去に0ptに立ち向かったのはいたけれど、ぶっ飛ばしちゃったのは久しく見てないわね」
「思わずYEAH!!って言っちゃったぜ!」
「ただ、なんであんなに自分の個性で壊れるかね……」
ほかにも、合格が確定した面々の実技試験ハイライトを見て、クラス分けなどを進めていく。
「……で、この子だな」
「1位の子ね」
「俺のライヴに乗ってくれた子だな!!」
「どんな個性なんですか?ハイライトを見てもよくわからなくて……」
「資料見てもよくわかんないぞ」
「えーと、個性『魂』。魂の元である『正のエネルギー』と『負のエネルギー』を利用してあらゆる事象を起こすことが可能……つまり?」
「そのエネルギーを使って剣やジャンプ台を作っているんだろうな。伸びる斬撃も」
「かなり汎用性が高いですね」
「ああ、しかも複雑な個性を使いこなしている」
「剣の扱いも上手だった」
教師たちが少女について話していると、一人の教師が疑問を投げかけた。
「だが……いったいどこであんな剣の使い方を学んだんだ?」
「……」
一人の教師の発言に一同は黙った。
「何処で学んだのか。それは大した問題じゃない。ここを受験した以上、ヒーローを目指しているのは間違いないのさ。……それなら、私たちがすべきことは適切に教え導くことなのさ。違うかい?」
ここで、校長が発言したことで、教師たちは冷静になった。
そして、入学後に様子を見て、問題があればそれ相応の対処をすることが決まった。