魂を満たす物語   作:よヨ余

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準備期間

私は緑谷たちのインターン先であるサーナイトアイと合流した。

 

「治崎と接触したそうだな」

 

「ええ」

 

ナイトアイがそう訊ねる。私はぶっきらぼうにそう答えた。

 

ナイトアイがそれにやや不満そうにしている。結果的に余計なことをしてしまったのかもしれない。だが私は引くつもりはない。壊理を助けるためにも彼らの協力は必要だからだ。

 

情報がいる。

 

「治崎、と言いましたね。彼について詳しく教えてもらっても?」

 

ナイトアイは渋る。雄英高校在籍で仮免持ちとはいえ、私は本来なら部外者だ。伝える理由がないし必要もない。

だが私の行動によって私が協力してくれる可能性を見出したはずだ。事実、私は協力を惜しむつもりはないのでその判断は正しい。

 

ナイトアイは私に情報を与える決断をした。

 

「治崎は指定敵団体、死穢八斎會の若頭だ……先日強盗団が逃走中、人を巻き込むトラック事故を起こした。巻き込まれたのは治崎ら八斎會のメンバー…だが死傷者はゼロだった。強盗団の連中は激痛を感じ気を失ったが、何故か傷一つなく持病のリウマチや虫歯などが一切きれいに治っていたそうだ。治崎の個性だと思われるが、結果的にけが人ゼロの敵逮捕となったため特に罪には問われなかった」

 

「でも奪われたお金だけはきれいに無くなっちゃったんだって。警察は事件性なしと結論付けたけど、どう考えても怪しいってことでナイトアイ事務所は本格マークを始めたの。何考えてるかわかんないけど、やるときはやるやつってこと」

 

私はナイトアイとサイドキックであるバブルガールの説明を聞く。

 

なるほど、指定敵団体か。そしてやはり、ナイトアイ事務所は調査を進めているらしい。私と目的は違えどやることは一緒か。

 

となれば、やはり協力を申し込む必要があるだろう。

 

「ナイトアイ。貴方と話がしたい。治崎とその関係者、そして私のことで話がある」

 

私は彼にそう言った。

 

「……分かった。ミリオと緑谷は事務所に戻っていろ。私とバブルガールで話を聞き、調査を続ける」

 

「……イエッサー」

 

 

 

 

緑谷たちが事務所へと戻った後、私は二人に情報を与えた。

 

「関係者っていうのは私の妹のことです。治崎の娘だと偽称されています」

 

「娘…そして妹か。偽称だと言える根拠は?君の父親は所在不明だろう。治崎が君の父親だという可能性も否定できないのでは?」

 

「いや、それはないです。魂を見ればわかるというのもそうですが、そもそも私の父親はすでに妹によって他界しているらしいので。私のお母様がそう言ってました」

 

「どういうことだ?君の母親はあの脳無だったんだろう?会話もできないはずだが……」

 

「魂に干渉して会話しただけですよ。原理に関してはややこしいので説明を省きますが。同じように、壊理……妹とも現在会話中です」

 

「何?それは本当か!?」

 

私の言葉にナイトアイ達は心底驚いたようだ。バブルガールなんて口をあんぐりと開けている。

 

「詳しい位置を聞けるか?」

 

「位置は常に把握できますよ。なので準備さえ整ったら直ぐにでも救出に行くことができます。もちろん、この情報の対価として私が救出に参加することを求めます」

 

「それについては問題ない。君のインターン先に連絡しよう。……君がインターンを行っていないとしたら私の責任で参加を容認する。それは保証しよう」

 

位置を常時把握可能。その言葉でナイトアイはこの件の早期解決が見込めそうだと判断したらしい。そして私の救出作戦参加を認めた。私が位置情報を牛耳っている以上私を無下にすることはできないからだろう。そもそも実力も申し分ないので断る意志はさらさらなかったと思われるが。

 

……ヒーローらしからぬ考えをしてしまったな。壊理への仕打ちが多少明確になったことで少々心が乱れている。よくない精神状態だ。

 

「インターンは行っていないのでよろしくお願いします。それで、他のヒーローへの協力についてですが……」

 

「それについては私に任せてくれ。ちょうど申請をしているところだ。申請し、協力を取り付けた後作戦を練るために会議を行うつもりだ。その時には情報提供として出席してもらう」

 

「分かりました。よろしくお願いします」

 

私はナイトアイにそう言って別れた。ナイトアイ事務所に行き緑谷と業務終了時間まで待機した。

 

――もちろん、ケーキを買った後に。

 

 

 

 

 

邂逅から少し経った夜。私は寮にてこれまた恒例となりつつある雑談に興じていた。

 

「お茶子と梅雨ちゃんはもう即戦力なのか。すごいな」

 

「ね。泊まり込みだってさ」

 

「さっきもニュースやってたよ!巨大化敵の抗争をすぐに止めたって!」

 

私は透の言葉を聞いてテレビをつけてみる。タイムリーなことに丁度そのニュースが映っていた。よくテレビで見るような新人のデビューについてのことだ。毎年のように見ていたソレにクラスメイトが出ているのはなんだか不思議な気分だ。

 

「本当にすごいな。民衆への被害も少ない。サイドキックたちの避難誘導の賜物かな」

 

「連携がすごいよね。インターン行ってたらこういうの間近で見れたのかな」

 

「帰ってきたら聞いてみよっか」

 

本来なら素直に喜んでいいものの、壊理のこともあって真剣な反応をしてしまった。皆も悪い顔せず真剣に乗ってくれたからいいもののやはり私の精神状態がよくない。早く招集がかかってくれないだろうか。

 

「……シズさん?」

 

ヤオモモが私の機微に反応した。

 

ヤオモモの言葉を聞いて皆が私の方を神妙な顔をしてみてくる。緑谷はある程度状況を察しているので気まずそうな顔をしていた。口外禁止だからだ。

 

「…なにかありましたの?日曜日から少し優れないようですわ」

 

「…問題ない」

 

私の言葉にヤオモモは不満そうな顔をした。隠し事をしているのは明確で、あの時の話でそれは禁忌になりつつある。

 

「本当に問題ない。時間が解決してくれることだし、ただストレスがかかっているだけ。すぐに解消されるはずだ」

 

「本当ですか?……不安です」

 

消え入りそうな声でヤオモモはそう答えた。私には信用がないので無理もない。

 

だが心配ないのは本当だ。それを示すために何をすればいいのだろうか。示す必要は必ずしもあるわけではないが示しておきたい。

 

お師匠ならどうしていただろうか。

 

私は少しだけ思考の海に沈む。引き出しの中の記憶を探り出すためだ。

 

ああ、確か抱きしめていたな。お師匠のぬくもりが直に伝わってくる感触が鮮明に思い出せる。私にはない豊満な胸の柔い感触が伝わってくるんだ。それに文句を言った私にお師匠は……

 

……思い出しただけで少し腹が立ってきたな。

 

そのせいか、ヤオモモを抱きしめるときに力がこもってしまった。私の胸の中にヤオモモを包み込んだが少しだけ苦しそうだった。

 

「し、シズさん!?」

 

「ああ、ごめん。信じてなかったから信じ込ませようかと」

 

「だからといってこれは……!」

 

「でも鼓動を聞いたらわかるでしょ?嘘はついてないよ」

 

ヤオモモは耳を澄ました。ついでに響香がイヤホンジャックを胸に当ててくる。響香も信じてないんかい。

 

「ね?」

 

私の念押しで二人は信じてくれたようだ。

三奈と透は信じる信じない関係なく私に抱きしめられたかったらしいのでその願いは叶えてやった。

 

過度なスキンシップかもしれないがお師匠以外とそれをやったのは初めてだったので少しだけくすぐったい気分だ。

 

今この瞬間だけは、本音を言おう。

 

問題ないといったが強がりだった。少しだけ無理をすれば助けられるから、今は苦痛を受け入れるつもりだった。

 

だって他ならない壊理がそうだから。

 

今は私と楽しく会話してくれているが、時々その会話が途切れるときがある。そして連絡が再度ついた時にはその思念には必ず疲弊がにじんでいる。私がそれに言及すると決まって大丈夫と言うのだ。だってお姉ちゃんが来てくれるからと。

 

私は今、何もできていないというのに。壊理が苦しんでいるのを見ていることもできず、支えになることも、その解決策になることも、身代わりになることもできていないというのに。

 

壊理は6歳のようだ。

本来なら、ピカピカのランドセルに心を躍らせる時期だ。

本来なら、小学校でお友達ができるかなと不安になる時期だ。

本来なら、お姉ちゃんに甘える時期だ。

 

壊理はそれを一つも出来ていない。

 

壊理への仕打ちは予想がついている。彼女の個性もわかっているし、切島のインターン先での事件で確信に至った。至ってしまった。

 

個性を壊す弾丸。壊理の個性は『巻き戻し』。

 

ピースをはめるとわかる。わかってしまう。信じがたい事実を。信じたくない事実を。

 

違う可能性だってあるかもしれないと人は言うだろう。だが、

 

それを認識しているのはまだ私だけだ。緑谷も、恐らくナイトアイも認識していないだろう。そして、私はそれを話してはならない。

 

その息苦しさが私を追い詰めた。壊理に何もできない無能な現在が私を苦しめた。壊理を苦しめている現状が私と、そして壊理を追い詰めた。

 

そして私だけが今救われている。救いを求めてしまった。

 

(弱くなってしまった)

 

だが不思議と悪い気はしていなかった。壊理に対する罪悪感が膨れ上がるだけで。

 

(壊理にも、こんな弱さがあれば。こんな弱さを与えてやれれば……)

 

――どんなにいいだろう。

 

「……みんな、ありがと」

 

私は一度引き出した本音を引き出しにしまい、皆に語り掛ける。

 

「これで、ちゃんとできる」

 

皆は私の言葉の真意をつかめなかったようだが、元気ならよかったと言ってくれた。

 

その後も談笑を続ける。話題は先ほどまでのお茶子と梅雨ちゃんに加えて、切島についてのことでもあった。常闇はインターンでのニュースがなかったので話すことができなかった。でも彼のことだからなんだかんだ活躍しているだろう。

 

そして私は眠りについた。来るべき日を待ち望んで。

 

そしてそれはすぐに訪れる。

 

 

 

 

 

ようやく招集がかかった。一週間にも満たない間だが、永遠にも等しい感覚を持っていたのでなんだか不思議だ。

 

切島、緑谷、お茶子、梅雨ちゃん。

 

この四人と同じ道を歩き、同じ電車に乗り、同じ乗り換えをし、同じ駅に降り、同じ角を曲がる。

 

そして着いた場所には、ビッグ3が全員そろっていた。

 

私を除く人たちの共通点は、インターンをしているということ。天喰先輩と切島、波動先輩とお茶子と梅雨ちゃん、そして通形先輩と緑谷。それぞれが同じ事務所で活動している。インターン先のヒーローはそれぞれ、ファットガム、リューキュウ、そしてサーナイトアイだ。

 

招集がかかった際に集合場所も指定されていた。そこに入ると多くのプロヒーローたちの姿が見える。緑谷曰く、有名ヒーローから地方のマイナーヒーローまでいるらしい。ナイトアイが動いてくれたのだろう。

 

そしてその中には我らが相澤先生までいた。

 

「先生!?なんでここに!?いや、それはシズもだけど!」

 

「急に呼び出されてな。ざっくりとだが、事情も聞いてる」

 

お茶子がそう言うと相澤先生は答えた。私も答えようと思ったがその前にリューキュウが話してしまった。

 

「あなた達、前にも言ったでしょう?」

 

お茶子たちはその言葉を聞いて思案する。

答えはすぐに出たようだ。

 

「あの案件?」

 

恐らく要請を受けてのことだろう。そうか、インターン生も作戦に加わるのか。

 

そして頃合いになり、会議が始まる。

 

「あなた方に提供していただいた情報のおかげで、捜査が大幅に進みました。死穢八斎會という小さな組織が何を企んでいるのか。知り得た情報の共有とともに、協議を行わせていただきます」

 

嫌な話が始まる。

 

バブルガールからの前提説明から始まった。私がこの前聞いた内容と同じだ。どうして捜査に至ったのかなどが全員に共有される。

 

そして曰く、死穢八斎會はここ一年で外部の組織との繋がりが増えたらしい。その中には、敵連合も入っているようだ。

 

話の中で聞きなれない単語が出てくることがあり、私たち雄英1年生は質問し、会議を遅らせることが増えてしまった。申し訳が立たない。

 

「雄英生とは言え、ガキがこの場にいるのはどうなんだ?話が本題に入る頃には日が暮れてるぜ」

 

そう言うのは『錠前ヒーロー』ロックロック。敵を作るような嫌味な言い方だがその魂には思いやりが前面に出ている。大方、子供である私たちに危険になりそうな仕事をやらせるのは反対より意見なのだろう。

 

「抜かせ!この二人はスーパー重要参考人やぞ!」

 

そういうのは切島のインターン先であるヒーロー、ファットガムだった。彼は簡単な自己紹介に入った。彼の活動場所は大阪で私たちのほとんどと初対面だからだ。丸くてかわいいというと飴をくれた。もらってすぐに口の中で転がし始める。甘くておいしい。

 

「八斎會は認可されてない薬物の捌きをしのぎの一つにしていた疑いがあります。そこでその道に詳しいヒーローに協力を要請しました」

 

「昔はゴリゴリにそういうんぶっ潰しとりました。そんで先日のレッドライオットデビュー戦…!今まで見たことない種類の弾が、環に打ち込まれた…!」

 

個性を消失させる弾丸のことだ。

打ち込まれた天喰先輩に後遺症はないらしい。一時的なものと言うことだろう。

 

「回復するなら安心だな。致命傷にはならねぇ」

 

そのあたりはイレイザーヘッドが話してくれるらしい。

 

イレイザーヘッドの個性『抹消』は、個性因子を一時的に停止させること。個性因子に直接攻撃をするわけではない。

 

しかし、天喰先輩はその個性因子が傷ついてしまっていたようだ。幸い、今は自然治癒で元通りらしい。

 

撃った銃の弾丸は先輩に撃たれて粉々。撃った人も何もしゃべらず予備もなかった。よって情報を得られないはずだったが、切島が身を挺して弾いた弾丸があったので、きれいで解析可能な弾丸ができたらしい。切島の硬化のお手柄だと言えるだろう。

 

そして、その中には――

 

――人の血や細胞が入っていたらしい。

 

(嗚呼……!)

 

私はもらった飴玉を早くも噛み砕く。

 

ウソであってほしかった。私の杞憂であってほしかった。

 

私が気を散らしている間にも、今来た人たちの管轄で起きた事件の犯人たちの組織が八斎會との小さな関わりがあるという話があった。裏付けはある程度取れているらしい。

 

「若頭、治崎の個性は『オーバーホール』。対象の分解、修復が可能な個性です。そして、個性を壊す薬」

 

皆もだんだんと話が見えてきたようだ。

 

そして、私がこの場に呼ばれた意味がやってきた。

 

「そして、治崎の計画については、夜月静江から話があるようです」

 

ナイトアイの繋ぎで私は席を立ち、皆の前に行く。プロジェクター操作のためだった。

 

「雄英高校1年A組、夜月静江。ヒーロー名『シズ』です。今から話すことは現実味がなく、信用できないことかもしれませんが、全て事実であることを保証します」

 

私はプロジェクターを操作し、壊理の写真を写した。

 

「彼女が治崎の計画の核です。名前は壊理。まだ6つの少女です。手足にはおびただしい包帯が巻かれていました」

 

写真を見てみんなは驚いた。きっと、私に酷似していたからだろう。目元は全く似ていないが、髪質、髪色、瞳の色などの特徴が多くある。推測するのはたやすいだろう。

 

「察している方もいるかもしませんが、彼女は私の肉親、妹です。義理でもなんでもなく、実妹です。先日、直接接したときに確かめたので真実です。一応、DNA鑑定書も」

 

またプロジェクターを操作する。私と壊理が実の姉妹であることを証明する証書が映し出される。

 

聴衆の中には私と壊理の関係に驚いているものも居た。特に学生連中だ。切島はその中でも顕著だった。

 

すると、ロックロックが突っ込んできた。

 

「おいおい、一回接触したって!?そん時に助けときゃよかったんじゃねぇのか?」

 

「それも出来なくはないが、根本の解決にはならないと判断した。治崎の計画には壊理が必須だ。私が独自に救出しようと何度も逆襲にしにくる可能性がある。壊理にその恐怖で負担をかけたくない。あの子は自罰的だからな」

 

そういうとロックロックは黙った。

 

そして私も黙る。目上の存在にタメ口を使ってしまったのだ。痛いところを突かれてしまったから少々心が揺らいでしまったようだ。

 

「……失礼。ただ私が壊理を見捨てたのは事実。ただ、それは肉体だけです」

 

「肉体だけ?はあ?どういうことだよ」

 

「私は壊理の肉体が分解され、個性消失弾の材料として使われている。ここまで察することはできませんでしたが、彼女が外道の道具にされていると察しながら私は彼女を一度見捨てました。それは、必ず助け出すという意志によるものです。実際、彼女には秘密裏にそう伝えています。今も、私は彼女と会話しています。それにより、彼女の精神状態は良好。精神は見捨てませんでした。だからと言って肉体を見捨てたことを帳消しにできるわけではありませんが」

 

「今も会話してる?その壊理って子もいないのにか?」

 

「私の個性は『魂』。その本質は、魂を知覚すること、そして魂に干渉することです。私は私の魂の一部を壊理につなげることで会話を可能にしています。ああ、並列思考を使っているので今この場の会議も、壊理との会話も全く疎かにはなっていません」

 

「……いろいろツッコミたいことはあるが、分かった。つまり、壊理って子はある程度は救われているって認識でいいんだな?」

 

「まあ構いません。壊理を助けるのは私の役割なので皆さんは治崎に集中してくれて構いません。私ももちろん治崎に集中するつもりですが、それは壊理が治崎の手にあったとき。もし離れた場所にいるのなら壊理を優先します」

 

「なるほど。ところで、君は壊理ちゃんに魂をつなげているんだったね?それはつまり、壊理ちゃんの詳しい居場所がわかるという認識でいいのかな?」

 

ブレイブというヒーローが問う。

 

「はい、治崎の本拠地にいます。ですが、本拠地での行動がかなり不審なのです」

 

私はそう言い、またもやプロジェクターを操作した。壊理の動き方をGPSの画面のように可視化したものが映る。

その動き方は、ぐねぐねと曲がっており、不規則だった。死穢八斎會の本拠地の敷地内でこのような行動をするのだ。家の中でそのような動きをするのならば中はかなり複雑なのだろうと推測できた。

 

私が分かるのは壊理の位置。つまり目的地だけだ。その目的地に達するための道のりはわからない。私一人だけならその目的に目掛けて瞬間移動できるのだが、皆はそうはいかない。迷路のようになっていたら通形先輩と私だけが治崎と相対することになる。敵連合と接触したという情報から敵連合の一部が八斎會に手を貸している可能性がある。そのチームアップがあったとして、二人で相対するのは少し問題だ。殲滅なら私一人で事足りるとはいえ、壊理を救い、治崎の計画をつぶすとなると途端に怪しくなってしまう。

 

だが、それはもう解決していた。

 

「そのことをナイトアイに伝えると、彼は八斎會の構成員に接触し、彼の個性によって構成員の未来を予知しました。それによって最短距離がわかっているようです。突撃の際には詳細を確認願います」

 

私が壊理と会話しているときに、壊理にはお世話係が一人就いていることが分かった。そのお世話係は壊理の願いをある程度叶えてくれるようだ。

 

私はそれを聞き、壊理に女児向け玩具を求めるように言った。ヤクザの構成員は余程の趣味人間でなければそのような玩具に詳しくないはず。そしてそれを購入する際に戸惑う言動を見せるはずだ。それをナイトアイが見ればそいつが構成員だとあたりを付けられる。そしてそれを予知すればいい。仮にそいつが構成員じゃなくても、次の日に回せばいい。壊理に要求させるものはいくつか考えもあったからいずれ当たる。

 

そう思っての行動だったが、ナイトアイは一発で当たりを引いてくれた。そしてこの度集まった情報の数々。それにより、私たちは突撃の目途を立てられたというわけだ。

 

「治崎の計画の最終到達点は恐らく、完成した完全な個性消失弾を売り捌くこと。そして資金を得て、ヤクザの復権を狙っていると推測します。最後の方は何の根拠もない勘ですが、当たらずとも遠からずだと思っています。そして、私たちの目的は治崎の計画の阻止。そして、我が妹である壊理を保護すること」

 

私は一度言葉を切り、頭を下げた。

 

「どうか、どうか私を、壊理を。助けてください。……お願いします」

 

それは懇願だった。私が恐らく初めて赤の他人たちにする懇願。緑谷たちは私のこの姿を見て驚く。

そして、私に応えてくれた。

 

「もちろんだぜシズ!」

 

「せやな。もう突撃はできるんやろ?さっさと行こうや!」

 

切島が、ファットが。それぞれ意気込む。しかしそれに待ったをかけたのはナイトアイだった。

 

「意気込みは結構ですが、急に多くの情報を与えてしまいました。雄英生徒を筆頭としてそれぞれ準備が必要になるでしょう。逮捕状や警察の連携もあと少しで終わる段階です。明日の早朝、作戦を決行します。それまでに準備を進めておいてください」

 

二人は出鼻をくじかれ少し不服そうだったが、これで会議が終了した。

 

 

 

 

 

「あいざ……イレイザーヘッド。私は行きますよ。行かなきゃならない」

 

「分かってる。お前は俺が禁止しても行くだろ。許可するから、必ず助けるぞ」

 

イレイザーヘッドから許可をもらえるか不安だったが、今回における私の信頼が著しく無いので許可された。本当に渋々という感じで居心地が悪かったが。

 

「……お前が外出許可を求めたのもこのためか」

 

「はい。私がお姉ちゃんをしたかったので、無理を通させてもらいました」

 

ため息をつき、イレイザーヘッドは後頭部をガシガシと掻く。なんだろう、問題児にする対応だ。不服。

 

「俺は緑谷たちに方針を言ってくる。多分あいつら全員が参加を決めるだろう。お前も、あいつらも、全員を生きて帰す。その上で助けるんだ」

 

「ええ、もちろん。先生も死んではいけませんよ」

 

「……肝に銘じておくよ。あと、学外ではイレイザーヘッドで通せ」

 

「はぁーい」

 

私はイレイザーヘッドと別れ、死穢八斎會との戦いを夢想し、意気込む。

 

必ず助け出す。

 

だって。

 

(だって私はお姉ちゃんだから)

 

助けたら何をしてやろうか。お姉ちゃんらしいことをできるのだろうか。何ができるだろうか。

 

そうだな、ご飯を作ってあげよう。私の家で作ってもいいし、雄英の寮で作ってもいい。そうだ。一緒に作ってもいいかもしれない。きっと楽しいな。

 

私は来る日に向けて準備を進める。

 

やるべきことをやった後はやりたいことが出てくる。難儀なものだ。暇な時間がない。

 

でも不思議と。そう、不思議なことに。

 

(悪い気はしないな)

 

 





次回かその次!「どけ!私はお姉ちゃんだぞ!!」

ぜってぇ見てくれよな!
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