魂を満たす物語   作:よヨ余

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壊理

 私はずっと一人だった。

 まだ6つの子供が何を言っているんだという人もいるかもしれないけど、私からすればずっとと表現するのがふさわしいのだ。

 

 私は何一つ不自由のない幸せな家庭に生まれたはずだ。お母さんとお父さん、お兄ちゃんから愛されていた。

 私とお兄ちゃんの間にお姉ちゃんがいるとは聞いていた。お母さんはその話をするときにいたたまれないような苦しい顔をしているので、私はすぐにその話を終わらせた記憶がある。

 

 その話を聞いていたので、シズお姉ちゃんの言葉を信じることができたのだ。それに、見た時に安心したというのもそうだ。

 流石にサングラスにマスク、フードという欲張り三点セットが第一印象だったので少し信じたくなかったが。しかも全部黒色だったし。

 

 でもマジックみたいにパッとそれを脱いだのはすごかった。どこに消えてしまったのか本当にわからない。昔テレビで見たマジシャンがやったことが目の前でやられたので興奮するのも無理はないだろう。あまり顔には出ていないと思うけれど。

 

 シズお姉ちゃんが私の話し相手になってくれたのはとても嬉しかった。個性が発現してからのおよそ2年間はずっと一人だったのだ。私は2歳くらいからの記憶しかないため、実質半分が一人だった。お姉ちゃんはそれを埋めるように私と話してくれる。

 私が死んだ直後は決まって声をかけた。明るく振舞ったつもりだったが、多分お姉ちゃんにはバレていた。こんな私と話したくなどないと思ってもおかしくないくらいのものだったけれど、お姉ちゃんはそんなことを示さないように話してくれる。その気遣いがとても嬉しかった。本当に嬉しかったの。

 

 お姉ちゃんが私を助けてくれると知って、私は希望を見出した。ずっと救われず、絶望で真っ暗だった私の人生に一つの光が宿った。そのせいか、助けてくれるまでの日々はとても短く感じた。

 

 とってもかっこいいお姉ちゃんだ。

 とっても優しくて、強くて。私の自慢のお姉ちゃんだ。

 救出に来てくれた時のお姉ちゃんの姿を見てそう思う。

 

 でも、だからこそ。

 

「壊理可愛い~」

 

 ――可愛い笑顔で私の頭を撫で続けるこの人は、本当に同一人物なのかと疑ってしまう。

 

 嬉しいんだけどね。

 

 

 

 

 

 私は通形先輩と合流し、壊理の病室の前に立っている。

 

「なんか緊張する……!」

 

「あはは、大丈夫だよね!壊理ちゃんは夜月さんを待っているんだから!」

 

 柄にもなく緊張する私に通形先輩はそうフォローしてくれる。

 

 私は彼の言葉で落ち着き、しかしながら覚悟は必要だったようで、一度息を吸ってから意を決して扉を開いた。

 

「壊理!来たよ~」

 

 明るい声を出そうと思って意識していたのだが、壊理の可愛い顔をみたらそんな意識をせずとも明るい声を出すことができた。もしかしたら壊理は何かしらの説明できない特別な力を持っていて、それを無意識に使用しているのかもしれない。

 ほら、通形先輩も明るい声を出している。いやこれは自前か。

 

 ああ、なんか混乱してる。かっこいいお姉ちゃんでいたいのに上手くいかない。

 

 私が人知れず混乱している間に、通形先輩は壊理にフルーツの盛り合わせのバスケットを渡していた。その時に会話もしていて、好きなフルーツを当てるクイズを勝手にやっていた。壊理も乗っていた。

 桃を予想した通形先輩だったが、無慈悲にもリンゴだと答えられる。「だと思ったよね!」と言っていたが流石に苦しいだろう。

 

 ていうより、そうか。お見舞いをするのならば差し入れを持っていくべきだったのだ。切島たちの時もゲンセイさんの時も手ぶらで来てしまっていた。次からは持っていくとしよう。フルーツ盛り合わせは最適解かもしれないな。参考にしよ。

 

 私はリンゴを剥く。ペティナイフがあったのでナイフを創造せずに済んだ。いつもと同じようにうさぎさんだ。壊理は少しそれに夢中になっていた。可愛いと思ってくれたのかな?

 

 リンゴを剥き終わった後、壊理は一切れ食べてから俯いて呟く。

 

「ご、ごめんなさい……。私の…私のせいでみんなに苦しい思いをさせて、それに、ルミリオンさんは力を失くして……」

 

 瞳に涙を浮かべながら独白する壊理にルミリオンは慈愛の微笑みを向けた。そして、その大きな手を壊理の小さな頭にのっけて撫でる。

 そして、人を安心させるような優しい声色で壊理に声をかけた。

 

「苦しい思いをしたと思っている人なんていない。皆こう思ってる。『壊理ちゃんが無事でよかった』って。存在しない人に謝っても仕方ない。気楽にいこ。皆、君の笑顔が見たくて頑張ったんだよ」

 

 先輩はあえて自身の個性については言及しなかった。気にしていないという言葉はウソであって本当だろう。気にしているとはいえ、それは今後どうしようかという前向きなものだ。壊理が気に病む必要はない。

 

 私は先ほどまで壊理の前、通形先輩の隣に座っていたのだが、壊理の隣に位置を変えることにした。

 きょとんとする壊理に私は微笑み、私の太ももをポンポンと叩いて壊理を誘導する。

 

「おいで」

 

 壊理は私の言葉を正しく理解したようで、機敏に私の太ももの上に乗っかった。軽い壊理の体重が私の乗っかり、壊理を間近で感じることができる。

 最近はスキンシップが激しい気がするな。結構依存体質なのだろうか。今まで壊理にやってきたことは全部私がお師匠にやってもらいたいことだし。

 

 私は壊理の頭を撫でながらそう思考した。

 

 壊理の方を見るために少しだけ下を向くと、壊理は私の真似をするように顔に指をあてて口角を持ち上げようとする。

 しかし指の力と口角の硬さの乖離が激しすぎるのかなかなか持ち上がらない。頬をつまんで持ち上げるという新しい方法も採っていたが、それでも上がらなかった。

 

「お姉ちゃん…やって?」

 

 なんだこの可愛すぎる生き物は。

 

 不覚にもキュンとしてしまった。母性本能というものだろうか。

 しかし上目遣いは反則だろう。もともと天使のように可愛らしい顔をしているのにそれに上目遣いと言う最強の武器が付与されるのだ。取り乱すなというほうが難しい。

 

 しかし、私はお姉ちゃんだ。この程度で気の抜けた姿を見せるわけにはいかない。お姉ちゃんの威厳にかけてだ。

 

「壊理可愛い~」

 

 しかし悲しきかな。私の顔はいうことを聞かなかった。だらしなく緩む私の顔を認識しながらも止めることができない。通形先輩だけでなく相澤先生や病院の看護師さんに先生も見ているのにも関わらず、私は壊理と二人だけの世界に入り込んでいた。

 

 あまりの可愛さに思わず頭を撫でる手をとめることができなかったが、ようやくその手を止めて壊理の口角を持ち上げてみる。

 

 少しは上がったが、壊理の顔がこわばっていることで下がってしまう。そのせいで壊理は口角を上げて笑うことができていないのだ。

 

「……難しいね」

 

「ごめんなさい…笑顔ってどうやればいいのか……」

 

 まだ治崎の呪いが完全に無くなっていないことを認識する。今まで楽しいことなどを軒並み経験しなかったことが主な原因だろう。

 腕や足を見ると、治崎によって切り刻まれたことによる古傷が残っている。これを消せばある程度は消える…いや、そんなわけないな。その程度のことで消えるほど薄いものではない。

 

 一応消しておくか。この傷はトラウマの象徴になりうる。これを克服できれば強くなれるが、6歳に求めるのは酷だろう。

 

 消しはしたが、どうにかして笑顔を取り戻すことはできないだろうか。壊理はお母様たちといた時は可愛い笑顔をよく見せていたようなので笑顔を知らないわけではない。ただ笑顔のやり方を忘れてしまっただけなのだ。

 

「お姉ちゃんはなんでできるの?前まではできてなかったよね?」

 

「私は壊理と会えたからだよ。壊理が助かってくれて、私をお姉ちゃんだと慕ってくれているから笑えるの。……うーん、言葉にすると、嬉しいとか、わくわくするとかかな」

 

 私は壊理に素直な意見を伝える。壊理は長考に入ってしまった。きっと、自分がそれに当てはまるものを探しているんだろう。

 

 考えてくれている壊理には悪いが、多分その答えは私が持っている。

 

「先生。壊理って外出できるんですよね。一日くらいは」

 

「ああ…できるはずだ。引受先なんかも見つける必要があるしな」

 

「引受先は私でお願いします。さもなくば敵堕ちしますよ」

 

「冗談でもそんなこと言うな」

 

 私の冗談は先生にはウケなかったようだ。でも引受先なんていう不吉な単語を言った先生にも非はあると思うのだ。言いがかり?そんなものは知らない。

 

 冗談はともかく、だ。

 

「文化祭に来れませんかね?私が面倒見ますし、個性の暴発の危険性もないんでしょう?」

 

「……なるほど」

 

 先生は私の顔を見ながら驚く。その驚きは先ほどまで冗談を言っていた人間と同一人物なのかと疑うニュアンスが含まれていた。心外……自業自得か。

 

「文化祭?」

 

「これは名案だよ壊理ちゃん!文化祭っていうのは、俺たちが通っている学校でやるお祭りさ!学校中の人が学校中の人に喜んでもらえるように出し物をしたり、食べ物を出したり……あっ、リンゴ!リンゴ飴とか出るかも!」

 

「リンゴ飴?」

 

「甘いリンゴを、あろうことかさらに甘くしたものさ!」

 

「さらに…!」

 

 え、待って。よだれを垂らしながら想像してる壊理めっちゃ可愛いんですけど。この子私の妹なんです、下界に舞い降りた天使なんです。顔面国宝。カメラがないことが悔やまれる。なんで持ってこなかったんだ私の馬鹿。

 とりあえずありがとう通形先輩。

 

 通形先輩のおかげで壊理がリンゴ飴を楽しみにしだした。あればいいな。いや、違うな。むしろないであれ。私がつくるから。お姉ちゃんありがとうって言われたいから。

 そうと決まれば早速作り方を調べよう。砂藤だったら知ってるかな。もし知ってたら教えてもらお。

 

「分かった。校長に掛け合ってみる」

 

「やったね」

 

 私が並列思考で舞い上がっていると、先生が私の先ほどの発言に前向きな反応な反応を示した。うれしくなり、私は小さくガッツポーズを作る。

 

「あ、壊理は行きたい?一応学校内の人だけとはいえ人数は多いし、無理したくなかったら他のところにでも遊びに行けるよ?」

 

 私は一人で勝手に盛り上がっていたが、壊理の口から直接行きたいという言葉を聞いていなかった。話の反応から前向きに考えているとは思うが、思っていたよりも違ったという事態は避けなければならない。

 

「考えてたの……助けてくれた時に、助けてくれた人のこと――シズお姉ちゃんたちのことを、もっと知りたいなって考えてたの…!だから…行きたい!」

 

「嫌って程教えるよ!」

 

 「ね?」と私の顔を見る通形先輩に私は頷いた。

 

 校長先生にいい返事がもらえるだろうか。もらえなかったら猛禽類を思わせる視線を浴びせてやる。でも流石に校長先生だったらこの程度の望みは叶えてくれるか。一応ごく一部の関係者は来れるみたいだし。壊理はまだ子供。施設に一時的に預けるとしても壊理の過去からそれは望ましくない。少しずつ対人関係に慣れる必要があるだろうからだ。そして、それに最も適したのは私。その次に通形先輩。

 

 

「俺今休学中だから、壊理ちゃんと付きっきりデートできるよね!」

 

 

 ――は?

 

 

「でえと?」

 

 純粋な壊理が通形先輩、いや、通形にオウム返しをする。

 

「蜜月な男女の行楽さ!」

 

「みつげつなだんじょのこうらく……」

 

 この男は何を言っているんだ。純粋な壊理に何を教えているんだ。対人関係のリハビリ役として二番手だと思っていたが、最下位だったか?

 壊理も壊理で何を言っているんだ。

 

「と~お~が~た~せ~ん~ぱ~い~?」

 

 私は少しだけ虚無を放出して威圧する。もちろん、壊理には悟られない程度にだ。

 それにしても危ない。通形先輩のことを通形と呼び捨てにするところだった。

 

 私の剣幕を見て相澤先生は即座に抹消を施した。そのせいで虚無が霧散するが、心外だなぁ。私と壊理の恩人ともいえる通形先輩を傷つけるはずがないのに。

 

「壊理にはまだ早いですよ?なにを教えているんですか?」

 

 通形先輩は慌てたように手を振りながら私に返答した。

 

「ごっごめんごめん!相手は俺じゃなくてシズさんだったよね!」

 

 その言葉を聞いて私は威圧をやめる。不毛だと気づいたからだ。

 

「分かってるじゃないですかっ」

 

 決して、そう決して先輩の言葉に絆されたわけではないのだ。

 

「シズお姉ちゃんどうしたの?」

 

「んー?なんもないよ。それより、文化祭楽しみだね!私も頑張るから、楽しみにしてて!」

 

「うん!」

 

 壊理の純粋な顔を見て癒される。あ~、ほんっとに可愛い。

 

 

 

 

 

 壊理のお見舞いに行った日の深夜。私たちはまたもや会議を行っていた。

 出し物は決まったようだ。「ライブ」らしい。皆でバンドとかダンスとかやるんだと。楽器は響香が、ダンスは三奈が先導して教えるようだ。まだ全員の役割配分は決まっていないが、この二人は確定としていいだろう。

 

 正直、ライブだと聞いたときは驚きと不安があった。それは今もなくなったわけではない。

 

 ことの張本人が言うことではないと思うが、私たちは他の科たちを振り回しているのだ。全寮制になったのも、私と爆豪が攫われ神野の引き金になったことが原因。他者からすれば、「何様だ」と思うのも仕方ないだろう。実際、爆豪と戦闘について議論していた時にそんな声を聞いたし。

 

 でもなぁ、文句は言わないって言っちゃったからなぁ……。

 

「文化祭はちょうど一か月後。時間も少ないし、今日でできる限り色々決めてしまいたいな」

 

 私がそう思考している間にも、飯田がそう宣言して会議を始める。緑谷たちのようなインターン組は今日も補習なので欠席だ。

 

 まずは楽曲選び、と言いたいところだったが、響香の言葉から先に楽器を選ぶことに。

 曰く、バンドのベースはドラムになるんだと。ただ、響香もドラムは練習中のようで、私たちに教えながら自分も練習することになる。一か月という期限からそれは難しいと思えた。

 しかしそこで救世主が。爆豪だ。彼は幼少期に音楽教室に通わされていたんだと。

 瀬呂が叩いてみるように言うも、

 

「誰がやるかよ、かったりぃ」

 

 と一蹴。

 

 しかし瀬呂は伊達に半年ほど爆豪とつるんだわけではない。爆豪の扱い方など心得ているのだ。

 

「かなりムズイらしいぞぉ~?」

 

 その後、爆豪は即座にバチを奪い取り、ドラムをたたく。

 

「――アァ?」

 

「か、完璧……!」

 

 確かに、凄かった。才能マンを見せつけられたと言っていいだろう。

 でも、でも何というか……

 

「――チョッッッロ」

 

「アァ!?」

 

 私のつぶやきを爆豪は耳ざとく捉えた。地獄耳め。

 

「でたよ才能マン!でも、爆豪ドラムで決定だな!」

 

「あ?やんねぇよそんなくだんねぇこと!」

 

 否定し、拒否し、部屋にこちらを離れようとする爆豪を響香は呼び止めた。

 

「爆豪お願い!つーか、あんたがやってくれたらいいものになる!」

 

「なるわけねぇだろ!……あれだろ?他の科のストレス発散とかいうお題目なんだろ?ストレスの原因がそんなことやって、自己満以外の何だってんだ。ムカつく奴から素直に受け取るはずねぇだろうが!」

 

 爆豪は私が考えてたことを言ってのけた。私は文句は言わないことを決めてたけど爆豪はそんなことないからな~、と他人事のように考える。あとは皆がこの発言を受けてどう思うかってくらいかな。

 

 飯田なんかは顧みている。自分たちの行動が他人にどのように受け取られるかを改めて客観視した結果だ。ヤオモモも同意していた。轟はそれに同意しつつも爆豪のいうタイミングや言い方につっこんでいたけど。

 響香は自身の好きなことを多かれ少なかれ否定されたような気分になって少し沈んでいた。大丈夫だろうか。

 

「ムカつくんだよ…俺たちだって好きで敵に転がされてんじゃねぇ……なんでこっちが顔色伺わなきゃなんねぇ、テメーらご機嫌取りのつもりならやめちまえ!殴るんだよ!なれ合いじゃなく殴り合い!やるならガチで!――雄英全員、音で殺るぞぉ!」

 

 爆豪はそう言い切って下に立てた親指で自身の首を掻っ切る動作をした。

 

 皆が爆豪を称える。言い方も考え方もやばいけどやってくれることを察したからだろう。

 響香もやる気を取り戻し、イヤホンジャックでガッツポーズを作っていた。大丈夫そうだな、安心だ。

 

 そのまま話の流れで、響香はベース、ピアノをたしなんでいたというヤオモモがキーボードを担当することになった。

 そしてバンドにはボーカルが必要だ。ギターも埋まっていないが、まずはボーカルを決める。

 ボーカル候補には、モテたい峰田に、目立ちたい青山。そして補講から帰ってきた切島が立候補したが、どれも撃沈。

 

 曰く、がなってるだけ。

 曰く、裏声。

 曰く、ジャンルが違う。

 

 悲惨だ。

 

 しかしここで役に立つのが我らが響香。透明感のある声を十全に活用して私たちの心をつかむ。みんなから響香が推薦され、決定。皆手放しでほめるので、恥ずかしがった響香が無理やりギター決めに着手。また立候補者を募った。

 

 これに立候補したのが上鳴と峰田。ちょうど二人だが、上鳴はともかく、峰田はキャラデザのせいで手が届かない。私の知らない誰かを恨むようにして床に座り込んだ。ギターが一人足りなくなってしまう。

 

 しかしこれに救いの手を差し伸べる人が。常闇だ。

 彼はとてもとても切なくもかっこいい音を奏で、ある意味私たちの心を魅了する。Fコードで挫折した身であるがゆえに立候補していなかったが、弾けない峰田の意志を継ぐようだ。責任感のある彼なら確実にやりきることだろう。

 

 これでバンドメンバーは決まり、残りの人たちは思い思いにダンスと演出のチームに分かれる。

 瀬呂や轟、切島、口田、青山、私が演出隊になった。私の場合は踊ることもできるのでダンスの方にもいくかも。サッカーで言うところのリベロ的立ち位置だ。

 ちなみに青山もダンスを兼任するらしい。ミラーボール役とダンス役だって。

 

 色々詳細を煮詰めていると、あっという間に時刻は深夜1時になる。しかし、これはバンド以外のことも決めていたからだ。主に私のせい。

 

 というのも、

 

「私のかっこいいところを見せたい人がいるんだけど、なんか案ある?」

 

 とみんなに聞いたのが始まりだ。

 

 みんな――特に女子陣――が彼氏の存在を疑ったが、即座に否定する私を見て渋々追及を避ける。じゃあ誰なんだという疑問も出たが無視。夜に皆を驚かせる必要などないのだ。壊理は文化祭前に一度、雄英を見て回ることになっている。その時にでも言えばいい。

 

「かっこいいところって、ライブ中に?シズって演出だったよね?まあ、演出だけで終わらせるのはもったいないと思うけどさ」

 

「私の場合出るほうが反感買うでしょ。出ないほうがいいからライブ以外でいい」

 

「反感は一部だけだよ。シズは知らないと思うけど、シズってめっちゃ人気なんだよ?職場体験でCM出て人気出したヤオモモとは認識された経緯は違うけど、めっちゃ可愛い人が来たって話題だったんだから」

 

「え、それいつから?」

 

「体育祭」

 

 私の知らない間にそんなことになっていたらしい。特にネットの掲示板などで私のいいところについて語る場があるほどなのだと。本人非公認のファンクラブなどもあるようで、結構規模も大きいらしい。Mt.レディに迫る勢いなのではと言う意見すら見つかるほどだということで、なんだか実感はわかない。

 

「不思議なこともあるもんだね」

 

「シズって本当にこういうことに鈍いよね」

 

 私の心からの疑問に透がそう苦言を呈した。解せん。

 

「とにかく、なんかない?」

 

 話がズレ始めていたので、軌道上に戻すべく私は再度問いかける。

 

「オイラに考えがあるぜ!」

 

 真っ先に意見を出したのは峰田だった。嫌な予感がする。

 

「発言には気を付けろよ?」

 

「怖ぇよ!」

 

 私の威圧にすぐに音を上げた。まあ、魂を見れば邪な感情を抱いていないとわかるので聞いてみるだけ聞いてみるか。

 

「ミスコンだよミスコン!今年もやるらしいからさ!演目は出演者で自由に決めることができるっぽいから自由にやりたいことできるぜ!」

 

 峰田の意見は意外にも至極まっとうなものだった。意外だ。本当に意外。思わず三回意外っていうくらいには意外。

 

「んで、ここからが本題なんだけど、演目はオイラに考えさせて――」

 

「うん、いつも通りで安心した。演目は私でも考えられるし、三奈とか透の方が向いてるでしょ。男子陣に助けをもらうにしても信用できる人にするよ。演出陣とかかな」

 

 峰田がこんなふうに言うということは私に何をさせるのか分かったものじゃないということだ。

 流石に許容できない。それに、壊理に見せる以上私が考えたものを見せたいのだ。何かしらの出し物を通して私を知ってもらうことができればいいなと考えていたので、私がやることに意味がある。ミスコンという意見だけをありがたくもらうとしよう。

 

「ミスコンいいね!シズの可愛さとかっこよさをみんなに知ってもらうためにはぴったりだよ!」

 

 三奈の真正面からのほめに面食らいながらも、私ははにかんだ。

 

「ありがと。そしたら私はそっちも考えたいから、ダンスの方はあまり手伝えないかも。体の動かし方くらいはわかるし、ちょっと教えるくらいならできるから、遠慮なく頼って!」

 

「もちろん酷使させてもらうよ!分身体も使ってね!演出のほうも手を抜かないでよ?」

 

「誰に向かって言ってるの、私だよ?」

 

「あは、頼りにしてるよ!」

 

 三奈と私のやり取りにバンド担当の響香も混ざる。肩を組むというスキンシップをしてくれてちょっとうれしい。皆と触れ合えるっていうのは楽しいな。

 

 ちなみに1時まで伸びた理由はスキンシップが白熱したのが9割だったりする。

 




 シズがぶっ壊れちゃった…。

 でもシズはこういうこと言います。なんせ御爺様を除けば唯一の生存中の肉親ですからね。
 こういった反応はナガンに影響されていますね。流石師弟。

 そしてシズの素がでるようになって嬉しい。彼女は甘えん坊さんなのです。
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