魂を満たす物語   作:よヨ余

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クラス対抗戦

 福岡での騒動は鳴りを潜めた。

 

 いや、この表現は適切ではないか。これ以上被害が広がることが無くなった、と言う方が正しい。

 

 私と脳無との戦闘では大して建物に被害を及ぼすことはなかったのだが、エンデヴァーと脳無との戦闘で大きく建物をぶっ壊していた。主に脳無がだが。

 

 ちなみにエンデヴァーは左目を大きく負傷していたが、リカバリーガールが治癒を施したことで目が残ったらしい。よかった。傷跡はひどいが、支障をきたすほどではない。

 

 私はエンデヴァーのお見舞いをしに行った。ゲンセイさんたちの時を省みてフルーツの盛り合わせを持って行った。

 また次来た時にでも渡そうかと思って好きな食べ物を聞いたら葛餅って返答が来た。流石に怪我人に食べさせることはできない。私は断念した。

 

 ホークスの羽根は私が治してついでに強度を上げておいた。潜入任務の時に少しでも動きやすくなるようにだ。特別な要素を加えたわけじゃないので私のような万能なことはできないが、彼にとっては十分だろう。

 

 また、公安とかお師匠とかについても少しだけ語った。ホークスは公安職員を覗いて唯一気兼ねなく私のことを話すことができる人間なので気持ちがいい。

 きっとあちらも同じような気持ちだろう。他のヒーロー、それこそナンバー1のエンデヴァーでもホークスの内情を聞くことはできない。まあ、私もたいして聞くことはできないのだが。

 

 そんなこんなで短かったインターンもといチームアップも終了した。私は襲撃があった翌日には雄英に戻り、必要な書類のあれこれを行って就寝。そしてその翌日には通常通りの授業を行っている。

 

 今日の授業は特別なようで、B組との合同戦闘訓練のようだ。

 

「皆結構冬服に変わってるね」

 

「夜月さんは変わりないのですね」

 

「私はホラ、体温調節できるから」

 

 授業が始まるまでの短い間で雑談をする。季節も移ろい、もう冬だ。鋭い寒さが体を刺し始めるようになったので衣替えをする人が増えてきた。ヤオモモはマントを羽織っている。さっき響香と一緒に中に入らせてもらったがとてもぬくかった。

 

 ちなみに一番つらそうなのは透。ほぼ着ておらず、彼女曰く気合で乗り切るとのこと。授業が始まるまで私のマントを貸してやった。とても嬉しそうにマントを体に巻き付けている。

 私の匂いとかいうのはやめてほしい。いや、マジで。コスチュームは無臭にしているとはいえ恥ずかしい。

 

 飯田は快適そうだ。彼は逆に夏が鬼門だろう。

 

「おいおい、まぁ随分と弛んだ空気じゃないか、僕らをなめているのかな…?」

 

「お、来たな。わくわくしてんだよ!」

 

「そうかい。でも残念!波は今確実に僕らに来ているんだよ……さあA組!今日こそ白黒つけようかぁ!」

 

 そう言いながら現れたのは物間だ。後ろにはB組の面々も控えている。皆ヒーローコスチュームに着替えている。何気にB組のコスを見たのは初だっけ。林間合宿の時は体育着だったし。

 

 ていうか…あれ……?

 

「もしかして私のコスチュームって物間と同レベルだったりする……?」

 

「あ……」

 

 私は物間と私のコスチュームを見比べて言った。近くにいた響香が気まずそうにこちらを見てくる。

 

 あ、頭をなでなでしてくれてる。ありがと。好き。

 

「君たちは失礼って言葉知ってるのかなぁ!?」

 

 物間がこっちに文句を言ってきた。文句を言いたいのはこっちだよ。コス変えろ。

 

「そんなことよりこれ見てよ!A組のライブとB組の超ハイクオリティ演劇!どっちがよかったか見えるぅ!?2票差で、僕たちの勝利だったんだよねぇ!!入学時から続く君たちの悪目立ち状況が変わりつつあるのさ!」

 

 こいつ本当にB組のこと好きなんだな。あとアンケート用紙に(ぼくしらべ)って書いてあるのこいつの性格が垣間見える。素直だなこいつ。卑屈でひねくれもののくせに。

 

 あ、御守りの拳藤が拳を握って物間に近づいている。

 

「そして今日!初めてのAB組合同戦闘訓練!僕らが!……キュウ!!」

 

「黙れ」

 

 さっすが私たちの相澤先生!物間の首を捕縛布で絞める容赦のなさだ。御守りの拳藤の仕事も奪ってる!

 

 物間のテンションにつられて変なテンションになっちゃった。

 

 そして先生たちから話が。曰く、今回は特別参加者がいるそうだ。

 

 その参加者とは、心操だった。やはりヒーロー科転入に向けて訓練をしていたようで、今回はその判断をするためのテストも兼ねているらしい。

 

 彼の意気込みで、体育祭のように下駄を履いた活躍はしないこと。ここにいるみんなをライバルとし、超えるべき壁として精進することを述べた。そして、心操の個性をみんなの役に立つように使いたいことを述べた。やはり彼の魂は清らかだ。

 

 そして、訓練の内容も説明される。

 

 設定は、『敵を包囲して確保に動くヒーローたち』である。同クラスの四人で一チームとし、お互いがお互いを敵と定めて動くのだ。まあ、認識としてはヒーローとして動くでいいだろう。

 運動場γには牢獄が設置されており、そこに投獄した時点でその者を脱落と判定する。先に四人を投獄させたほうが勝ちとなるらしい。

 また、制限時間は20分で、もし終了時間までに両チームに生き残りがいたら、投獄された人数が少ない方を勝ちとするようだ。同数の場合は引き分け。

 

 あと、訓練会場は私の部屋を使うらしい。文化祭の時に酷使するって言ってたなそういえば。モデルがあるとはいえ結構神経使うからあまり前向きではないんだけど……。

 

 まあいい。それよりも問題は四人で一チームになるのでどうしても余りが出てしまうことだ。そこはどうするのだろうか。

 

「心操は各クラスで作られる5チームのうちから一つずつ入ってもらう。もしかしたら連続でやってもらうことになるかもな。被ったらもちろん引き直しだ」

 

「それではA組にある半端を解決できないような……」

 

「それについては問題ない。五試合すべてが終わったのち、夜月対残りの41人で戦闘訓練を行う。夜月、不満は?」

 

 先生の言葉に皆、特にB組が驚く中、私は先生の言葉に思案した。

 

「私の時はルール変えましょ。訓練じゃなくて実際の戦闘としてみるために、気絶したら即アウト。その設定は部屋の設定としてできるので問題ないです。気絶してアウトになったら自動的に部屋の外、つまりここに転移させられるので。あと、私の勝利条件を41人すべてをアウトにすることにしましょう」

 

「時間はどうする。こっちとしちゃこのエキシビションの時間はある程度取るつもりだが」

 

「時間は…30分で。後もう一つ。試験会場は先生が創ってください。私に試験会場の大まかな設定を伝えてくれたら自動でそれに沿うように創ってくれるので。五試合が終わるまでに大まかに」

 

「分かった、そうしよう」

 

 私が相澤先生と詳細を詰めている間、B組は驚愕で染まっていた。私の所業と扱いが理解できなかったのだろう。

 

「1対41……!?」

 

「ちょちょ、それは俺たちを舐めすぎじゃ…!」

 

 対照的に、A組は落ち着いていた。

 

「まあ、シズだし……」

 

「勝利条件を考えると手加減してくれてるよな」

 

「不快」

 

 オイコラ爆豪。不快とはなんだ不快とは。

 

 まあ、私にも弁明がある。

 

「だって人数差的に本来のルールだと私は一人だけを捕まえればいいじゃん。でもま、気絶でアウト判定だからね。限りなく実戦に近づけてるよ」

 

「…チッ」

 

 舌打ちて。

 

「体育祭とか神野でわかってたことだけど、そんなになのか…」

 

「それ以上だと思っとけ。それでも足りないけどな」

 

「……!なるほど」

 

 心操も気合を入れたようだな。私との試合は最後だからまだ気合入れる必要はないと思うけど。

 

 戸惑いもそこそこに、試合が始まる。

 

 

 第一試合。A組からは口田、切島、上鳴、梅雨ちゃん、そして心操。B組からは宍田、塩崎、円場、鱗が出場する。

 初戦からかなり面白かった。A組にとって警戒対象は塩崎。個性『ツル』は上鳴の電撃すら通さないだろうと予測を立てていたからだ。また、その範囲も広大かつ、工業地帯という複雑な地形ならなおさら。捕縛にも長けているので警戒対象に入れるのは当然だ。

 だがその隙を突いて特攻を仕掛けたのが宍田だ。その背中には円場も乗っていた。宍田は個性『ビースト』による身体強化でA組を翻弄した。あの個性には自身の嗅覚を著しく上昇させる効果があるらしい。位置は常に割り出されていると言っていいだろう。とても厄介だ。塩崎を警戒していたことによる奇襲。二人のどちらを軸にしても成立するだろう。

 切島が宍田に投げられる。その先は塩崎で、切島は為す術もなく投獄されてしまった。口田も宍田によって投獄されている。

 だが、梅雨ちゃんが円場を投獄させた。1対2交換でA組不利の状態で始まる。

 

 切島を失ったことで対面戦闘に秀でた者がいなくなった。宍田の独壇場になるかと思われたが、A組には今回心操がいる。しかも、心操の個性『洗脳』を十全に活かすために変声機を用いているようだ。それは最初の宍田の特攻の時に判明している。つまり、心操がいるというだけで敵のコミュニケーション能力が損なわれるのだ。

 

 この存在を伝えたのは上手だな。情報も、知らなければ都合がいいこともある。強制的に警戒を促すものはその筆頭だ。

 

 その後は、上鳴のポインターで位置を把握しているA組が、梅雨ちゃんの粘液で匂いを上書きした状態で接近した。宍田の嗅覚対策だろう。やはり梅雨ちゃんはそういう機転がよくきくな。

 

 上鳴が囮として塩崎に捉えられるも、心操が鱗の声を真似て声をかけることで塩崎を洗脳。あとはなし崩しだ。梅雨ちゃんが鱗と戦い、心操が宍田を足止め。最後は梅雨ちゃんが鱗を宍田に勢いよくぶつけることで二人を撃破。塩崎は洗脳されたままなので、このまま全員投獄してA組の勝利となった。

 

 第一試合 4-2 A組勝利

 

 

 第二試合。これまた注目の一戦。A組からはヤオモモ、透、青山、常闇。B組からは拳藤、黒色、小森、吹出。

 

 最初はA組が常闇のダークシャドウを飛ばすことで様子見。しかし、これはとても読みやすい手で、B組によっては好都合だった。

 黒色の個性によってダークシャドウが乗っ取られる。彼の個性は『黒』。黒色の物に紛れ込むことができ、その中を移動。それが可動性の場合は動かすこともできるようだ。常闇にとって天敵もいいところだろう。

 

 ダークシャドウが操られることでA組の連携が乱される。そして黒色も影を移動することで青山を捕まえる。そして攫って投獄に向かって動き出した。複雑な工業地帯であるこの場所では黒色の個性を活用させやすい。逆にダークシャドウは動かしにくい。正しく危機だと言えるだろう。

 

 だが、A組はこれくらいの危機は何度も乗り越えてきた。そして、今B組が相手取っているのはA組でも上位の成績を誇る常闇だ。

 常闇が空を飛翔する。ダークシャドウに自身を抱えさせることで空を飛んだ。これによって彼の機動力が大きく向上。黒色の速度を上回り、青山を奪取。そして自由を取り戻した青山がネビルレーザーで光を出す。影の形を変えることで黒色の退路を塞いだ。

 

 このまま形勢が逆転するかと思ったが、B組の拳藤はなかなかに策士らしい。この後にも続く策を考え付いていたのだ。

 

 今まで行動していなかった二人が行動を開始する。吹出と小森だ。吹出の個性『コミック』によってオノマトペを具現化。それによってヤオモモと他を分断した。ブレーンを分断して叩く算段だ。そして、その役目は拳藤が持っている。

 そして残りは小森の個性『キノコ』によって翻弄される。ヤオモモが拳藤に押されながらも一度援護し、形勢逆転を狙うが、小森の奥の手によって失敗に終わる。その奥の手とは、スエヒロタケによって肺攻めをすること。常闇に襲い掛かったそれは彼を瞬時に戦闘不能にまで追い詰める恐ろしさを孕んでいた。葉隠もヤオモモを倒した拳藤によって捕縛。青山も投獄されたことでA組の敗北が決まる。

 

 ただ、拳藤曰く、ヤオモモの動き方がこっちの戦略に合った動きをされて勝った気がしないとのこと。敗北はしてしまったが、内容としては十分に実りのあるものだっただろう。私は彼女を誇らしく思う。

 

 第二試合 0-4 B組勝利

 

 

 第三試合。またもや見どころのある試合だ。と言うか、全部の試合がそれぞれに見どころがある。こちらの主力が丁度良く分かれていることがその要因だろう。

 A組からは轟、飯田、尾白、障子。B組からは鉄哲、回原、角取、骨抜。ちなみに骨抜は雄英の推薦入学者らしい。

 

 開幕は轟の氷結だ。鉄哲がなぜかあたり一帯を更地にしようと暴れ始めたことで障子があまり動かなくても位置を補足。轟の氷結とともに全員が突撃しだした。今回のA組は近接戦闘に優れた者が多いので正しい選択だろう。

 だが、これに柔軟な対応したのが骨抜だ。個性『柔化』にて氷結を柔化。足場を奪うことで一時的にA組の勢いを奪った。

 角取は障子と戦うことにしたようだ。彼女の複数の角砲と彼の複製腕。手数がどちらも多く、互いに相性がよく悪いと言えるだろう。

 B組も近接戦闘に秀でた者がいる。鉄哲と回原だ。鉄哲は轟と、回原は尾白と戦闘を開始。この戦闘で目を奪ったのは鉄哲が轟を押していたことだろうか。彼の個性は『スティール』。自身の肉体を鉄にするものだ。鉄は熱に強く、金属であるため氷結のような脆いものは簡単に壊すことができる。正しく轟特効を持っていると言えた。

 

 ここで轟はエンデヴァーの技を使って優位に立とうとするが、骨抜がまたいい動きをした。

 飯田と戦っていたはずだが、飯田の新技『レシプロターボ』を見た途端に戦闘を回避。飯田と不毛な戦いを繰り広げるよりは他のサポートに回ったほうがいいとの判断だろう。

 そしてそれは正しかった。体に熱がたまった轟の頭に電柱が当たってしまい気絶。鉄哲も轟の高温の炎によって体はとうに限界を超えていたのだ。鉄哲も倒れる。

 

 骨抜は轟を投獄しようとするが、ここで飯田が鋭い蹴りを彼の頭部に放った。その衝撃で戦闘続行困難にまで持っていかれてしまう。たった一撃でここまで持っていく飯田の蹴りの威力は感服に値するな。

 

 飯田がいったん轟を助けるために彼を抱えて撤退しようとするが、骨抜によって地面が柔化されることで支えを失ったタンクを鉄哲が押した。それは飯田の足を奪う。轟、鉄哲、骨抜が気絶し、飯田はタンクと地面に挟まれて動けない。骨抜が気絶したので個性の効果も切れてしまったためしばらく動くことはできないだろう。

 

 その一方では、尾白と戦っていた回原が飯田によって投獄されていた。飯田は回原を投獄してから轟の方に駆け付けたのだ。ちなみに尾白は角取のフルパワーの角砲によって投獄されている。1-1となっている状況だ。

 

 障子が角取を追いかけている。角取にとっては障子に勝つ方法がない。死角からの攻撃も複製腕によって死角になりえない。このままでは勝てない。

 

 だが、勝てないまでも負けないことはできる。

 

 角取は逃げる途中で轟、鉄哲、骨抜を角で掬い上げる。そして自分とともに大空へと飛翔、そして待機した。

 障子は空に干渉する術を持っていない。強いて言うなら投石くらいだが、それをすると気絶している轟たちに攻撃が当たってしまう可能性がある上、そもそも距離の問題で簡単に避けられるだろうと予測できた。よって、出来ることは何もない。

 

 このままタイムアップまで粘られ、訓練が終わった。

 

 第三試合 1-1 引き分け

 

 

 第四試合。A組からは爆豪、響香、砂藤、瀬呂。B組からは取蔭、泡瀬、凡戸、鎌切だ。

 この試合で言うべきことはあまりないな。どちらもいい動きをしていた。

 

 結果を先に言うと、4-0でA組の勝利。しかも5分足らずで勝敗がつくというパーフェクトゲームだった。

 大きな活躍をしたのは、やはり爆豪だろう。ただ、私は瀬呂を推したい。彼の推測に基づく動きによって、爆豪はとても動きやすくなった。爆豪の手榴弾を活かしたことと言い、彼はやはりいい動きをする。梅雨ちゃんのようにサポートで光る人間だろう。

 

 仮免試験の後、私は爆豪に期待していると言った。爆豪は、見事にその期待に応えたのだ。爆豪がした動きは、『お前らが危ない時は俺が助けるから、俺が危ない時はお前らが助けろ』と言うもの。とても彼らしい。彼は仲間の能力を正しく把握して動くことのできる優秀な人材なのだ。

 

 今までの爆豪。外から見た爆豪というフィルターがかかっているB組にとっては、別人のように映っただろう。実際、観戦していた物間も自分の目を疑う始末だ。

 

 B組に非があるわけではない。正直、仕方のないことだ。爆豪の独断専行を前提に作戦を立てていたのでその前提が無くなるとどうしても崩れてしまう。爆豪が崩れなかったらチームが完璧になるのだから。負けイベのようだな。理不尽。

 

 第四試合 4-0 A組の勝利

 

 

 第五試合。A組からは緑谷、お茶子、三奈、峰田。B組からは物間、小大、柳、庄田、心操だ。

 

 A組は緑谷を主軸に戦う。搦め手やサポート向きの個性が両方に固まっているのだ。A組の肝は緑谷をどれほど活かすかという一点にあると言っても過言ではない。

 

 だが、向こうには無限の可能性を持つ物間がいる。そして先ほど大きく活躍した心操もいるのだ。どう転んでもおかしくはない一戦だった。

 

 物間は緑谷の個性をコピーするために挑発を交えながら交戦する。恐らく心操の個性をコピーしているだろうと予測していた緑谷は一言もしゃべることはなかった。

 ちなみに舌戦は物間の方が有利だった。緑谷はこういうのに向いていないので無理もないか。心理戦も重要なんだけどな。

 

 交戦中、事件が起きた。緑谷の個性が暴走してしまったのだ。相澤先生が私の方を見るが、私も知らないものだ。すぐに首を横に振った。

 

 緑谷の個性が暴走しても対応できるように先生たちが部屋の中に入る。判断を下す前に、心操が緑谷を洗脳することで緑谷を救う。お茶子も緑谷の方に行き助けに回っていたので、十分対応できた。先生たちも、抹消できる程度の位置にはいるようだが、訓練は続行するようだ。

 

 回復直後の緑谷の隙を突き、緑谷の個性をコピーする。しかし、コピーは不発だった。それに対応する間もなく、お茶子によって捕獲され、投獄される。

 それに続くように他のB組の面々も無力化される。A組は誰一人欠けることなく勝利を手にした。

 

 第五試合 4-0 A組の勝利

 

 

 ここで五試合が終了し、3勝1敗1分けでA組の勝利が決定した。私は戦ったわけではないが嬉しい。

 

「負けたかー」

 

「物間ほど対抗心があったわけじゃないけど悔しいなー…」

 

 そうぼやくB組だが、地力はそこまで変わらないだろう。やはり決定的に違うのは経験の量か。

 

「で、次は…A組最強なんだよね……」

 

 私に視線が集まる。そうか、次は私だったな。試合が面白すぎて忘れかけてた。

 

「んじゃ、先生。私の設定は敵で」

 

「ああ、もとよりそのつもりだ」

 

 先生と最終確認――主に会場の設定――をしている間。B組から再度不安の声が。曰く、本当にいいのか、と言うものだった。

 

「このエキシビションを行うのは、お前たちに災害級の存在との戦闘を経験してもらいたいからだ」

 

 その言葉で本気なのだと伝わる。そして、大勢はこれほどの人数差でも私の方が有利だと判断できる先生の発言に驚いていた。

 

 だが私からすれば、少しだけ訂正したいところがあるというものだ。

 

「災害級?そんな甘いものではないでしょう。私は正しく、天災ですよ」

 

「…ハッ。そりゃどっちの意味でだ?」

 

 私の訂正に真っ先に反応したのは爆豪だった。彼は私を除いたこの中で一番私の実力を知っている。だからこそ、他の人よりも現状の把握が早い。

 

「ダブルミーニング」

 

 私はあくどい笑みを浮かべながらそういった。爆豪も不敵に笑い返す。

 

 さて、あっちも作戦会議の時間が欲しいだろうし、邪魔者はさっさと配置につくとしようか。ちょうど会場も出来上がったし。

 

「さあ、ヒーローたち。今から私は、『夜月』ではなく、傲慢な(ヴィラン)だよ。――優しく撫でるようにしてあげるから、殺す気で来なよ」

 

 私は首を掻き切る動作をして皆を煽る。

 

 じゃっ、と私は手を挙げて扉をくぐった。

 

 先生の開始の合図を待つとしよう。

 

 

 

 

 AB組の面々は、シズの言葉を聞き、シズが入ったおよそ2分後に扉へと入った。もちろん、作戦会議しながらだ。

 

 シズのことを良く知っているA組の面々が中心となって会議を行っている。

 

「まずは夜月が最初にどう動くのかだ」

 

「分身、カタストロフ、旋空弧月…挙げだしたらキリがありません」

 

 轟の言葉に八百万が補足した。その例はとても分かりやすく、シズのことを良く知らないB組の面々にもよくわかる。特にカタストロフは体育祭でその威を見せているためB組の一部は恐怖に震えた。

 

「あれは?福岡と神野で使ってたやつ」

 

「終末崩縮消滅波は使わないっしょ。被害がでかすぎるから」

 

「いや、使ってもおかしくないと思うよ。今回の夜月さんは敵として動くっぽいし。ヒーローとしてとかは捨ててそう。部屋だから実際に被害が出るわけでもないし」

 

 上鳴の発言に意見をかぶせたのは緑谷だ。そして、彼の危惧は正しいが正しくない。

 

 使えるし、躊躇はないのだが、シズとしては使う理由がないのだ。

 

 今回のエキシビションはブラドキングが言っていたように、オールフォーワンやシズの脳無を筆頭とした対災害級敵の対応をシュミレーションするためにあるものだ。

 

 ただこれは先生側の目的で、シズの目的は違う。

 

 シズの目的はみんなを育成すること。死柄木たち敵連合の件が終わった後にシズがいなくなっても大丈夫なようにすることだ。

 

 ヒーローをやめるとか、そういうつもりはないのだが、オールマイトが平和の象徴として活動していた時にオールマイト一人に背を預けていたことを危惧していたのだ。また同じようなことをするわけにはいかない。だから、戦闘を通して鍛えることができたらなと思っているのだ。

 

 ここで、今まで黙っていた爆豪が口を出した。

 

「索敵組は始まったらすぐに会場のマップを簡単でいいから割り出せ。今回のマップを大まかにみると、モールとか森もある。あいつは絶対分身使って各地に散らばってるから奇襲警戒できるようにだ。あと、開幕はスイッチボックス警戒しろ。こっちが踏むのは警戒のしようがないが、あいつが急襲してくる可能性が高ぇ」

 

「お、おう…冷静だな、爆豪」

 

 あまりに淡々とした爆豪の物言いに瀬呂が突っ込んだ。

 

 爆豪としては、シズとの模擬戦でこのような形式をとったことがあるからこその発言なのだ。つまり、実体験。

 シズとの模擬戦では、ずっと部屋でやっていたのだ。流石に最初にそれを見た時は絶句したものだが、使えるものは使おうと思い気にしないことにしていたが。

 

 そして、爆豪はシズとの屋内戦や工業地帯や森林での密集したところでの戦闘も経験している。だから、そこで戦うことになった際の注意点を皆に共有した。

 

「密集したところではスパイダーとエスクードを警戒しろ。特にスパイダーだ。あれは壁に刺さってワイヤーみてぇにできる。色も保護色で変えられるからちゃんと目凝らせよ」

 

「それを嫌って開けたところに出ても、夜月さんの剣術がやってくる。朧心命流は脅威です。特に秘奥義は私たちのほとんどが見切ることはおろか視認することもできません」

 

「そんななのかよ……!」

 

 八百万の発言にB組は改めて自身が戦うことになっている敵の大きさを認識した。

 

「俺の洗脳はどうなると思う?」

 

「そもそも喋んねぇってことはしないだろうな。あいつは戦いながら俺たちを誘導してくるから。ただ、多分洗脳は利かないぜ?洗脳が魂まで干渉できるなら話は別だがよ。ああ、分身には効くかもな」

 

「俺の洗脳は心までは操れないから意味ないか……」

 

 心操の個性も、シズにおいては意味をなさない。

 

 弱点はあるのか、そう思うのも無理はなかった。

 

「弱点とかないのか?」

 

「少なくとも俺たちで突けるようなものはないよな」

 

 拳藤の縋るような発言も無慈悲に否定される。だが、爆豪は弱点とは言えぬまでもシズの特徴を知っていた。

 

「あいつは結構正面戦闘大好きだからタイマン仕掛けにいくと乗ってくれるぞ。搦め手使ったら同じように搦め手を使ってくることも多い。まあ、ごり押ししてくることもあるが……」

 

「戦闘狂なのね…でも、タイマン仕掛けに行っても勝てるのかっていう話だよな……」

 

「タイマン中に介入すりゃいい。後、別に倒す必要ないんだよ、外に出しゃ勝ちだ」

 

「でもお前は戦いに行くんだろ?」

 

「たりめーだろ今度こそぶっ殺してやる!」

 

 爆豪は先ほどのシズの発言を思い返していた。

 

「優しく撫でるようにするから殺す気で来いってかぁ…?上等だよあいつの方ぶっ殺して完全勝利だ……!」

 

「ここが部屋でよかったよ。この中なら死んでも生き返れるっぽいし」

 

「え、死んでも…?」

 

 B組が耳郎の言葉に絶句しているのを無視する。この程度でいちいち驚いているようではやっていけないのだ。

 

「そろそろ始まるな……動き方はどうする」

 

「10人くらいの中規模部隊を組んで別行動にしましょう。41人で一塊だとカタストロフで一掃ですわ。魂でこちらの位置は常に把握しているでしょうし開始数秒で終わる可能性があります」

 

 八百万の言葉ですぐに部隊を分けた。そして各部隊の代表一人を除いて四方に展開する。最終的に別れると言っても八百万の創造でトランシーバーを創った後に分かれるのだ。代表の一人が受け取って合流するのだ。

 

 そして、エキシビションが始まる。




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