魂を満たす物語   作:よヨ余

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束の間と、インターンと言う名の修行期間

「オラァ!どしたぁ!?」

 

「ちょっわ!?」

 

「ビビってんのかゴラァ!」

 

「ちょっまっ、待ってって!マジで!マジで出ないんだって!!」

 

 クラス対抗戦とエキシビションが終わったその日の夜。爆豪と緑谷は私の部屋で特訓をしていた。特訓と言っても、クラス対抗戦で出てきた緑谷の黒い鞭のような個性についての調査の意を含んでいる。

 

「やめ――!そう言うんじゃないから!落ち着きなさい!」

 

 見かねたオールマイトが爆豪を止める。流石に割って入るようなことはしなかったが。

 

「やばくなりゃ出るもんだろがこういうのは!」

 

「いや、これ出さないための練習だから」

 

「アハハ」

 

 私はこのやり取りが何だか面白く感じて笑ってしまう。

 最近は文化祭やインターン、クラス対抗戦などの非日常が続いていたので、こういった日常がとても懐かしく感じてしまう。

 

「何笑ってんだ夜月ィ!」

 

「ごめんごめん、ちょっと面白くて。緑谷、個性どう?」

 

「やっぱり出ない……気配が消えた……」

 

「危機感が足んねぇんだよ…もっとボコしゃ、ひょっこり発現すんだよ!…んで、その状態のテメェを完膚なきまでにブチのめして、そんで夜月に――」

 

「モチベーション押さえて」

 

 当の本人以上に勢いがある爆豪をオールマイトが諫める。

 

「ワンフォーオールが僕の気持ちに呼応するのなら…あの時の僕は……そう、今扱える力じゃないと判断した。それで個性にロックがかけられたような状態になっているのかも。だとすると開錠と施錠のイメージを構築して、黒鞭と言っていたあの個性を出せるようにして……」

 

「つまんねぇなクソが!!扱えねぇなら意味がねぇ!出る!!テメェのブツクサ聞くと俺ぁサブいぼ立つんだ」

 

 もはや緑谷のお家芸となっている言葉の羅列に爆豪は気分を害して外に出て行く。

 

「私も出ようかな。訓練なら付き合うから、いつでも言ってね」

 

「う、うん!ありがとう!」

 

 

 

 

 B組との合同訓練が終わった翌日。

 

「ゆうえいの…ふのめん……!」

 

「ごめんね壊理。どうしても実験しなきゃいけないことがあって……」

 

「アッハハ!何言ってんのかなぁこの子!!」

 

「文化祭の時、君のこと雄英の負の面と教えたんだ」

 

「僕こそ正道ど真ん中を行く男ですけどぉ!?」

 

 壊理の言葉に戸惑い、奇怪な笑い声をあげる物間。私はその物間を無視し、通形先輩は物間に「雄英の負の面」となった経緯を言った。とはいっても、通形先輩が勝手に言っているだけだが。

 

「夜月、通形。悪いな、急に呼びつけて。ちょっと物間に頼みたいことがあったんだが、いかんせん壊理ちゃんの精神と物間の食い合わせが悪すぎてな」

 

「僕をなんだと思ってるんですか!アッハハハ……!」

 

 物間は最近は奇怪な笑い声を特に上げている気がする。ちょっと怖い。壊理は怖がっていないだろうか。

 

 ああ怖がってる。怖がってるせいで私の膝元を手でつかんで安定を図っている。可愛い。

 最近はインターンとエキシビションとであまり近くにいることが出来なかったからな。今日は特に所用があるわけでもないし、久しぶりに休暇を満喫しよ。なんか作ろうかな。

 

 私がそんな思考に陥っている間に、壊理は私のもとを離れて物間に手を伸ばした。物間も呼応するように壊理に手を伸ばす。

 

 目的なく行った行為ではなく、ちゃんとしっかりした目的があって行った行為だ。

 

 物間の個性は『コピー』。触れた対象の個性を5分間扱うことが出来るというもの。5分という制約はあれど、かなり強力な個性だ。サポート向きの個性をコピーして扱うのもいいし、轟のような強個性をコピーするのもいい。

 重要なのは、本来は一人である個性が、二つになるという事。

 尤も、緑谷の個性をコピーすることはできていなかった。いや、この言葉は不適切だろうか。確かに緑谷の個性の象徴的なものである緑色のビリビリは放出していたのだが、その出力が緑谷のそれとは天地程の差があったのだ。実際、訓練の時もお茶子に簡単に取り押さえられていた。

 

 コピーできても、時限以外の何かしらの制約はあるのだろう。

 

 物間が壊理に触れると、物間の額に壊理のそれと同じような角が生える。

 

 壊理とおそろいだ。いいなぁ……。

 

「どうだ、物間」

 

「…スカですね。残念ながらご期待には添えられません。イレイザー」

 

「そうか。残念だ」

 

 額の調子を確認し、イレイザーに報告する物間。理想とは程遠いその結果に、相澤先生は手を後頭部に置いた。

 

「スカってなんだ?緑谷みたいにコピーできないってこと?」

 

 私は壊理を抱っこしてから物間に問う。

 

「そう。多分彼の個性もため込む系なんだろう?僕は個性の性質そのものをコピーする。何かしらの蓄積をエネルギーに変える個性の場合、その蓄積まではコピーできない。たまにスカいるんだよねぇ」

 

「なるほど、例えばファットガムをコピーしても、あまり有効には使えないわけだ」

 

「そういう事」

 

 緑谷をコピーしても意味をなさなかったのは、歴代の保持者の蓄積がなかったからだろう。恐らくは、オリジナルの初代と同じような状態になっていたのだ。

 もしかしたら、初代や2代目、3代目までは弱個性もいいところだったのかもな。確か緑谷は9代目だったっけか。

 

「壊理の教師役ですか?」

 

「そうだ。壊理ちゃんが再び個性を発動させられるようになったとしても、使い方がわからない以上、夜月の時みたいになるかもしれない。あの時は夜月のおかげで何とかなったが、いつもお前がいるとは限らないし、制御できるに越したことはないからな。ただ…そう上手くはいかないか」

 

 通形先輩は私たちのこの会話で合点がいったようだ。ポン、と掌をたたいている。

 

「……ごめんなさい。私のせいで、困らせちゃって。私の力、皆を困らせちゃう…こんな力、なければよかったな……」

 

「壊理……」

 

 壊理は己の力の象徴である角に触れながらそう言う。かなり自責の念に駆られているようだ。

 

 私はため息をつき、壊理を抱え直す。壊理を地面に近づけ、私もしゃがんだ。

 

「そうやって自分の事ばっかり責めちゃうのは遺伝なのかねぇ。お母様もお兄様も御爺様も、みーんなそうだったし」

 

 私は壊理の体を地面に下ろし、頭を撫でた。

 

「むしろ壊理は、私を困らせてほしいんだけどなぁ。それが、お姉ちゃんしてるってことだろうし、壊理も窮屈じゃないと思うし」

 

「シズお姉ちゃん……」

 

「それと壊理。忘れてるかもしれないけど、あの時、壊理は私を助けてくれたんだよ?他ならない、壊理の力でね!」

 

 私は笑顔でそう言った。

 壊理も、私の言葉を聞いて少しだけ口角を上げる。私の真正面からの言葉で少しだけ照れくさくなっているようだ。愛い。可愛い。宝物。

 

「私、やっぱり頑張る!」

 

「うん!お姉ちゃんも、壊理と一緒にがんばっちゃおうかな!」

 

 壊理が笑顔になると、壊理が嬉しい、私も嬉しい。

 やっぱり、壊理はすごいな。生きているだけで私の魂を豊かにしてくれるし、傍にいるとそれが特に助長される。自分を卑下する節があるが、それも直に治ることだろう。時間がそうしてくれるはずだ。

 

 

 

 

 

 

 そして月日が経ち、今日は―――

 

 

「「「メリークリスマース!!」」」

 

 

 クリスマスです!

 

 サンタの格好をした私たちが、切島の音頭に合わせて乾杯をする。

 

「って爆豪!流してたけどお前も着てんのか!!」

 

 切島が爆豪の姿を見てそう言った。

 爆豪はこういった行事ごとにはあまり積極的にかかわらない。文化祭は比較的中心となって行っていたが、あれは他の科(のヒーロー科に向ける嫌悪の感情)を殺すというモチベーションがあってのことだし。

 

「ホントだ、なんで?」

 

「私と真剣勝負して負けた」

 

「ああ……」

 

「クソが死ね!!」

 

 ヤオモモが淹れてくれた紅茶を飲みながら私が答えると、皆は納得した。私はこういった行事は楽しむタイプだし爆豪は案外義理堅いタイプだしで、色々かみ合っているからだろう。

 

 ともかく、クリスマスパーティーはまだ始まったばかりだ。しばらくは料理を楽しもう。

 

「これ旨っ!砂藤が作ったやつ!?」

 

「いいや、そりゃ夜月だな。半分くらいは夜月に作ってもらったんだ」

 

「久しぶりに本格的な料理できて楽しかったわー」

 

 響香の言葉に砂藤が反応した。私も会話に混ざる。ホクホクだ。

 

「あー、林間合宿の時のカレーも美味しかったもんね!」

 

「へー、食べたかったな」

 

「また来年も作れるでしょ。行事としてなかったとしても、大人になってからでも作ればいい」

 

「……」

 

 私は至極当然のことを言ったつもりだったが、私の言葉の後に響香やヤオモモたちは少し固まって私の方を見た。

 

「え…どうしたのさ皆」

 

 私が耐え切れずに問いかけると、皆が口々に思いを言う。

 

「だって…シズの寮生活初日のお話を思いだすと、そう言うようになるって想像できなくて……」

 

「ちょっと感動します……!」

 

「…あの時の私そんなんだった?」

 

 私の言葉に、話を聞いていた全員が頷く。

 

「…ま、変わったのは事実だけどさ」

 

 きっと壊理の影響が大きいんだろう。後は、ヤオモモの涙を見たときくらいか。

 

 ――そう言えば、私は未だ泣いたことがないな。施設時代の最初も、記憶を消されたせいであの施設にいるのが普通だと思っていたから涙の概念がなかったし。

 私の周りの人間たちは毎日のように泣いていたけれど、私は全くと言っていいほどだったな。壊理を救った時も、泣いて喜ぶというよりは純粋に喜ぶだったし。

 

「ご飯食べようよ。ご飯以外にもお楽しみはあるんだしさ」

 

 私はこのあとに行うであろうプレゼント交換会を楽しみにしているのだ。このような話をして少し湿っぽくなるのはよろしくない。

 

 その後、ご飯を食べ、話は少しだけ真面目なものとなる。インターンの話だ。

 

「インターン行けってよぉ。雄英史上最も忙しねぇ一年だろコレ」

 

「二人はまたリューキュウだよね」

 

「そやねぇ。響香は?」

 

「ウチは学校からの候補者から選ぶ感じかなぁ。索敵関係に強いところに行きたい」

 

 響香とお茶子がインターンについて話している。私を挟んで。

 

 もちろん、私にも話が振られた。

 

「シズは?」

 

「私は多分いかないかな。行かないっていうか行けないっていうか」

 

「行けない?どういう事なの、シズちゃん」

 

 私の言葉に梅雨ちゃんが問いかけてきた。インターンは必修だと伝えられたというのに私のみが例外である理由がわからないのだろう。

 

「前にホークスのとこ行ったから?」

 

「いや?そういうわけじゃないけど…まあ、それも関係あるかな」

 

 私はオレンジジュースをストローでジュッと吸ってから答える。

 

「私の脳無が増殖されているだろうってことで、プロヒーローたちに対私の訓練をするんだよ。だから全国を回ることになるのかな?」

 

「ひゃ~、大変だねぇ」

 

 三奈が私の膝元に体を寝かせてそう言う。

 

「ていうか、福岡での戦闘で怒りたいことがあるんですけど」

 

「…?なんかしたっけ」

 

 私は三奈が怒っている理由が本気でわからなかったのでそう問いかける。

 すると、三奈だけでなく響香たちも私を冷めた目で見た。

 

「え…?ホントに何?」

 

 知らない間に皆に何か不都合なことをしてしまったのだろうかと本気で思考する。しかし、私の思考能力でいくら考えても答えはついぞ出なかった。

 

「問題。シズは戦闘中にとある状況に陥りました。それはいったい何でしょう?」

 

「……?………ああ、髪を伸ばしたこと?でも三奈って私が髪切ったことをもったいないって言ってなかったっけ?」

 

 確かに私は戦闘中に髪を神野以前の長いものにまで伸ばしていた。それが私のルーティンのようなものになっており、ゲン担ぎだったからだ。

 三奈は今の私の髪型も好いてくれているが、やはり昔の髪型というものは懐かしさを覚えさせるのだろう。

 だとしても、怒る理由は見当たらないな。

 

「ふせーかい!正解は、体が真っ二つになったことでーす!」

 

「…ああ、そんなこともあったね。大したことないから忘れてた」

 

 私がそう言うとみんなの動きが固まり、私に一層冷ややかな視線を浴びせる。なんだか居心地が悪くなってしまい、視線を右往左往させて紛らわせる。

 私の発言が皆を一層怒らせているような気がする。何故だ、全く意味が分からない。

 

「大したことない……?」

 

「え、うん。だって再生するし、死ななイタタタタタ」

 

 言葉の途中で三奈と響香たちに乱打されてしまう。もちろん威力は控えめで、じゃれ合いの範疇になるものだ。

 

「見てて悲しいの!」

 

「…ああ、そういう」

 

「何その大したことないみたいなの!」

 

「だって私だもん。あの程度じゃそもそも死なないし、本体だったら見切ってるよ」

 

「それはわかってても悲しいものは悲しいの!」

 

 私は涙を滲ませながらこちらを見る三奈に私は折れ、形だけでも謝ることにした。

 

「…ごめん」

 

「……」

 

  多分本当は納得していないってことは見透かされているだろうが、謝罪の言葉があったからか追及されることはなかった。

 

 いや、多分追及されかけてたんだろうな。響香が口を開いていたし。

 

 だが、その言葉は私に届かない。

 

「遅くなった、もう始まってるか?」

 

「壊理~~!!」

 

 相澤先生の言葉とともに、扉が開く。相澤先生は一人でこんな催しに参加するような人ではない上、壊理の保護者的立場も兼任していくれているため壊理がいるだろうと検討を付けて扉に駆け寄った。

 

「トリックオア…トリート?」

 

 サンタの格好をした壊理が扉から体を出してイベントの決まり文句を言う。

 

「残念、2か月前だ!」

 

「鬼は外、鬼は内…!」

 

「残念、2か月後だ!そしてそれでは節分の意味がない!」

 

 天然でかわいいな!

 

「通形先輩はいないんスか?」

 

「あいつはクラスの方に行ってるよ。壊理ちゃんも、夜月がいる分こっちの方がいいだろ」

 

「ナイス判断です!」

 

 私は相澤先生の英断にサムズアップする。

 

「壊理ちゃーん、ジュースいる?」

 

「うん!」

 

 壊理が年相応にはしゃいでる……!嬉しい……!可愛い……!

 

 そして、壊理の角は大きくなっている。私の言葉で奮起し、前向きに個性制御に取り組んでいる。私も一緒になって虚無の制御などを行っているのだが、壊理はそれを心強いと思ってくれているのだろう。少し疲れたような顔をしつつも、訓練の後は晴れやかな顔をしている。

 終わった後に、毎回私がご褒美をあげるからというのもあるかもしれないが。

 

 嬉しいものだな。

 

 楽しいクリスマスパーティーに壊理が途中参加した後も、私たちは料理をしばらくの間楽しんでいた。

 響香の歌も一緒だ。壊理が彼女の『Hero too』を希望し、それを響香が叶えてくれた。

 私も歌うことになったが。

 壊理はケーキをお気に召したようだ。私が作ったものなのでとても嬉しい。曰く、「優しい味がする」そうだ。

 

 私でも、そのような気持ちにさせることが出来るという事だろうか。

 こんな私でも、人を思って喜ばせることが出来るようだ。

 

「お姉ちゃん、楽しいね!」

 

「わくわくさんだね」

 

 壊理の顔を見て、癒される。その顔を見て、在りし日のクリスマスを思い出していたのだ。

 

 お師匠とのクリスマス。

 

 お師匠は大体仕事帰りだった。その帰り道でついでにケーキを買ってきてくれていたため、私があらかじめ用意しておいた豪華なご飯の後に食べる。とても短い時間だったが、何だか特別で楽しかった。

 

(……)

 

「お姉ちゃん?」

 

 っと、どうやら物思いに耽っていたらしい。今は今のクリスマスを楽しむべきだろうに。

 特に、今回は壊理と一緒に過ごす初めてのクリスマス。楽しまなきゃ損だ。

 

「どうしたの?」

 

「んーん、昔をちょっと思い出してたんだよ」

 

「昔?」

 

 ああ、そうか。壊理にはお師匠のこと話していなかったっけ。A組の皆にも詳細は話していないけど、壊理には話そうかな。

 

「いつか話すよ」

 

 私はそう言って話を切る。今は、しんみりさせるような時ではないからだ。

 

「とりあえず、楽しも!今日みたいにみんなでクリスマスパーティーできる日なんて、そうないからね!」

 

 私の言葉に壊理は同意し、何も考えずに楽しんでくれた。

 

 ……流石にプレゼント交換会で常闇のバカでかい大剣をゲットしたときは驚いたけれど。

 

 兎にも角にも、楽しい楽しいクリスマスパーティーはおしまい。

 

 ……また、出来るといいな。

 

 

 

 

 

 

「家に来ないかって?」

 

 クリスマスパーティーも終わり、月日はまた経つ。今は1月真っ只中だ。

 

 そう、冬季インターンの時間だ。

 

 皆がインターン先で経験を積んでいる間、私は多数のプロヒーローをめぐって全国を飛び回っていた。

 

 その途中で、轟が電話で家に招待してきたのだ。

 

「お前はエンデヴァー事務所の方に行ってるんだろう?エンデヴァーさんが誘ったのか?」

 

『いや、正確には姉さんだ。友達誘ってこいってことで、緑谷と爆豪を。夜月もさっきバーニンさんたちと訓練してたからどうかなって』

 

「なるほどな。ぜひ行かせてもらいたいが、今は少し忙しい。今日中にあと4件くらい行かなきゃならなくてな。並列存在使ってるから実質的に2件なんだが、トップ10の所に行ってるんだ」

 

『そっか。じゃあ、厳しいか』

 

「うん。また誘ってくれ」

 

『ああ、またな。頑張れよ』

 

「ああ、そっちも」

 

 私はそんなやり取りをして電話を切る。お相手に休憩時間を取ってもらっているため、すぐに行動した。

 

「悪いなホークス」

 

「いやいや!クラスメイトとの交流は大事だからね!それより、ショート君とはどうなの?」

 

「どう、とは?」

 

 私はホークスの的を射ない質問に質問を返した。

 

「あ…うん、シズはそういう感じだよね」

 

 ホークスは少しだけガッカリしたようなそぶりを見せてそう言った。意図が分からないが、特に大したことはないだろう。どうせくだらない事だろうな。

 

「それより、ツクヨミの面倒も見てやれよ。あいつも不満に思ってるだろうぜ」

 

「ん-、そうしたいのは山々なんだけど、いかんせん忙しくてね……」

 

「私に享受してもらう時間はあるのにか?」

 

「流石にソレは優先度の問題かな!」

 

 まあ、彼のいう事も一理ある。言っちゃなんだが、後方支援が主となる学生を育成するよりもプロヒーローが成長したほうがいい。特に緊急の事態であり、体の成長までの時間を許さない今の状況だったら余計にだ。

 

「いやー、やっぱり強いね!」

 

 訓練、もとい模擬戦を数度行った後の今なので、ホークスは私の強さを良く知った。

 

 ――そして、彼の剛翼の羽根の一つ一つについているカメラによって、敵の方に私の強さがよく伝わっている。

 

 もちろん、私の実力のすべてを見せているわけではない。せいぜいが4割だ。

 

 この先は敵に聞かせたくない会話の内容なので、魂で会話をする。彼の方もそう判断したようだ。

 

『4割でも勝てなかったんだけど、脳無の実力ってどんなもん?』

 

『総合的には同じくらいだよ。技術に関しては7割が良いところだし。虚無の制御に関しては全くだし。カタストロフすら放てないっていうのは知ってるよね?』

 

『知ってるよ。トップ10を脳無にするくらいしないと無理ってのもね』

 

『結局、脅威なのは数だからな。質に関しては、エンデヴァー事務所のサイドキックでも時間稼ぎができる程度だ』

 

『一応言っておくけど、上澄みの方なんだよ…?』

 

 私はホークスの言葉を聞き、不安がる彼を安心させることにした。

 

『だから他のものでも対処ができるように訓練している。4~5人で1体を対処すれば問題ない範囲だ。将来的には2~3人がいいがな』

 

『求めすぎじゃない?』

 

『私がヒーローをやめても大丈夫なようにしたいんだ。私が必要ない社会にしたい』

 

 ホークスは私の言葉に珍しく素の表情で反応した。

 

『……やめるの?』

 

『今はそんなつもりはない。少なくとも今は…な』

 

 私は微笑んで言う。

 

『一人で強大な力を持ち過ぎた。ヒーロー制度で制限するとはいえ、そんなものは力の前には無力。私が本気を出し、全てを破滅させる勢いで行動してしまえば止められる人間は誰も居ない。例え、全人類が敵に回ろうともな』

 

 壊理なら、あるいは止められるかもしれないが。

 そもそも、壊理はいる時点でそんなことは起きないが。

 

 ああ、スターでも止められるかもな。

 

 だからと言って、そんな人間に背中を預けられるかと言ったら、否だろう。

 私はオールマイトじゃないから。

 私は、平和の象徴でないし、ナチュラルボーンヒーローでないから。

 

『……そっか』

 

 私の意図を察したのだろう。彼は微笑みを浮かべてそう言った。

 

『…そうだ。君には秘匿した状態で会話が可能だから、言っとくね』

 

 『公安にはもう暗号を送ったんだけど』と前置きして、彼はとんでもない事実を告げる。

 

『――トゥワイスが、トラウマを克服した』

 

『ッ!』

 

 それは、敵の前提を覆すほどのものだった。

 

『マジかよ。じゃあ、トゥワイスがいるところに私が配置される感じか?』

 

『そうならないようにしたいところだけど、そうなっちゃうだろうね。君ならトゥワイスを完封できるから保険としてそうなりそう。君が脳無の対処をできない場合に備えて、今みたいに鍛えてもらっているわけだし』

 

 トゥワイスは、自分を増やすことをトラウマに感じていたらしい。過去に何があったのかは定かではないが、重要なのは自分を増やすことが出来るようになったという事だ。

 トゥワイスの個性は、増やす対象のことをよく知って初めて増やすことができるというものらしい。恐らくだが、身長に体重、スリーサイズなどの身体的特徴だろう。

 

 では、その対象が自分自身だったら。

 

 考えただけで恐ろしいことが現実になってしまう。今この瞬間、トゥワイスは最も警戒すべき敵へと変貌したのだ。

 

 最悪の場合、終末崩縮消滅波を使うことも視野に入れるべきか?神之怒(メギド)で完封できるのならいいが。バイパーなどを加えても対処できない場合にはカタストロフから順に使うべきだな。敵と戦う時には大勢のヒーローがいるだろうし。

 

『分かった。情報感謝する』

 

「じゃあ、私はそろそろ他の所に行ってくる。またね」

 

「うん!ありがとね~」

 

 私はホークスの言葉を背に訓練所を出て行った。

 

 

 

 ―――そして、作戦の日は来る。

 

 

 




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