魂を満たす物語   作:よヨ余

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入学と受難

雄英合格が決まってからの中学校生活は大変の一言に尽きた。

私が通っていた学校は人だけは多い一般的な学校で、今まで雄英合格者が出たことはなかったらしい。そのせいか教師も生徒も大騒ぎで毎日違う人が構ってきた。

 

流石に教師陣は必要以上に構うことはなく最低限に抑えてくれたけど、生徒の人数は多く後輩含めすべての人が話しかけてくれた……と思う。

 

あまりにも多くの人が私のもとに来るので、学校側もまずいと思ったのか正式に表彰をして祝いの場を設けてくれた。

 

……まあ、あまり効果がなかったため、「抽選で決まった複数のみが話せる」ということに落ち着いたのだが。

 

あまり複数人と話す機会がなかったため、疲れてしまった。それを担任が聞いていたらしい。担任が主導となって管理してくれた。

 

私がお礼を言うと、

 

「いいのよ。急に人と関わりすぎると疲れるものね。それに、夜月さんも普通の女の子だったんだと思えてうれしかったわ」

 

と、何でもないかのように言ってくれた。

 

 

 

それから卒業まで、握手会のような真似をする羽目になったが。

 

 

 

――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――

 

 

 

そして、私は中学校を卒業し、晴れて雄英生となった。

 

「やっぱり大きいな」

 

この大きい校舎に慣れるのは難しいだろう。

 

そんなことを思いながら、私はバリアフリーに配慮したとても大きなドアを開けて教室に入った。

 

流石に初対面だからか、会話は特になかった。みんな、人との距離を測っているようだった。

 

私の席を確認し、席に着く。私の席に隣はなく、もちろん隣の人もいなかった。

そのことに少し落ち込んだけど、前の席の人はいたので、その人に話しかけることにした。

 

「お友達ごっこしたいなら他所へ行け」

 

その言葉に私はビクリと肩を震わせた。今私がやろうとしてたことがお友達ごっこだからだ。

 

「ここはヒーロー科だぞ」

 

聞き覚えのある声の方向を見ると、やっぱり相澤先生がいた。相澤先生は教壇に移動して言う。

 

「はい、静かになるまで8秒かかりました。時間は有限。君たちは合理性に欠くね」

 

あ、やっぱ担任なんだ…。

 

「早速だが体操服(コレ)着てグラウンドに出ろ」

 

相澤先生は私たちに向かってそういい、教室を出た。

 

私たちも自分の分の体操服を手に取り、まず更衣室へと向かった。

 

 

 

「先生グラウンドに来いって言ってたけど何するんだろうね?」

 

更衣室に入って着替えていると、ピンク色の肌をした子が私たちに問いかけてきた。

 

「さあ……?普通に考えたら入学式かガイダンスだと思うけど、それなら着替える必要はないし……」

 

「もしかしたらオリエンテーションとか!?雄英ってエンタメに凝ってるしさ!」

 

ピンクちゃんが話のタネをまいてくれたおかげで更衣室の中で1つの花が咲いた。感謝。

 

しかし、先ほどの相澤先生の発言から、遅くなると怖そうだったので話そこそこにグラウンドへ急ぐことにした。

 

 

    

 

 

 

「個性把握テストォ!?」

 

相澤先生の発言に私たちは驚いて、素っ頓狂な声をあげてしまった。

 

私はさっきの話を聞いてオリエンテーション説を押していたので、少しショックだった。

 

「そう。握力、立ち幅跳び、反復横跳び、上体起こし、長座体前屈、ソフトボール投げ、持久走、全部中学生でやったろ?個性なしの記録計測……合理的じゃない。まあ、文部科学省の怠慢だよ」

 

そんなに言う?とは思ったけど実際確かに合理的ではない……かな?

 

「夜月。中学のとき何メートルだった」

 

相澤先生はそう言って私にボールを渡してきた。ソフトボール投げの記録かな?

 

「58メートルです」

 

「よし、じゃあ個性使って投げてみろ。円を出なけりゃ何してもいい。思いっきりな。はよ」

 

私は相澤先生の指さした円の中に入り、どうやって投げるか考える。

 

「……何してもいいなら」

 

うん。固まった。問題も特になさそうだしいいかな。

 

「イーグレット」

 

私は狙撃銃を生成し、ソフトボールを詰めた。銃口はソフトボール仕様にしたのでぴったりはまった。

 

そして、発砲。イーグレットは射程特化なので、今回だったら……5キロはいくかな?

 

 

 

……お師匠だったら、もっと飛ばすし、もっときれいに飛ばす。

私は、まだまだだ。

お師匠とは比べるまでもない。

 

 

 

先生が持つ液晶には5238メートルと表示された。

生徒たちから歓声が上がり、場は沸いた。私の記録もそうだが、何よりも個性を思いっきり使うことができるという状況に『面白そう!』という声も聞こえた。

 

しかし、先生はその言葉に過剰に反応した。いい反応ではなかった。

 

「面白そう…か。ヒーローになる3年間、そんな腹積もりで過ごすのかい?……よし、トータル最下位の者は見込みなしと判断して除籍処分としよう」

 

先生の発言に私たちは焦る。当然だ。やっとの思いで入った雄英を入学早々除籍。これほど残酷な仕打ちはあろうか。

 

だが、先生はそんな私たちを歯牙にもかけず言葉を続ける。

 

「生徒の如何は教師の自由。お前たちはこれを理不尽だと思うだろうが、世の中に自然災害、身勝手なヴィラン、大事故、そんな理不尽に塗れている。そして……理不尽を、ピンチを、覆すのがヒーロー。プルスウルトラさ。全力で乗り越えて来い」

 

そして、私たちに2度目の受難が襲い掛かる。

 

 

 

50メートル走

 

私の出席番号は21番。最後だ。

私の前に走った人で早かったのは、

入試で質問してた飯田。

ダークシャドウという生命体?を利用した常闇

氷を出す紅白ツートンの轟。

手が爆発して髪も爆発ヘアーの爆豪。

バイクを創造してかっこよく乗りこなしていた八百万。

この5人が比較的早かった。

 

そして、私の番。私にとって50メートル走は得意分野だ。誰にも負けない。私はスタートラインに脱力して立った。周りからは怪訝な目で見られた。その中から、「あれ?あの子……プレゼント・マイクの呼びかけに……」と聞こえた気がした。

……うん。気のせい。気のせい。

 

現実逃避をしていると、「よーい」と合図が聞こえた。

「ドン!」と聞こえたその瞬間に私はゴールラインに足をかけた。

 

「0.2秒」

 

クラス1番の記録をたたき出した。

もちろん、クラスメイトには驚かれた。特に飯田だ。

 

「走りには自信があったんだが……俺もまだまだ未熟だな。ところで、どんな個性なのか聞いてもいいかい?先ほどは狙撃銃を出していたようだが……」

 

飯田には妬み恨みの類は一切なく、ただ純粋な疑問を投げかけているようだった。

 

「えっと……、私の個性は説明しづらくて……今教えるのは難しいな。そろそろ次の種目が始まっちゃう」

 

「む、そうだな!では、また後で教えてくれ!」

 

「うん。わかったよ」

 

飯田はそう言って次の種目の測定をしに行った。

 

 

 

握力

 

握力において目を見張った人は二人。

個性『複製腕』で複製されて大きくなった腕で540㎏というとてつもない記録をたたき出した障子。

その障子の記録がかすむ程の記録をたたき出した八百万。万力使って1.2t出してた。というか、八百万に関しては前屈以外の種目ですごい記録をたたき出してた。

 

私はまず個性なしで記録を測ってみた。2回測ることができるようなので流石に2回目は個性を使って測るけど。

 

「ん、74か。少し鈍った……?」

「は?」

「何て?」

 

私の独り言に何人かが物申したそうだったが、目が合うと次の種目に逃げるように行ってしまった。ちょっとショック……。

 

さて、そんなことより次は個性ありで測ってみよう。正のエネルギーを手に集中させ、握る。それだけ。

ただ、残念ながら障子の結果には及ばず、495㎏という結果に落ち着いた。残念。

 

 

 

立ち幅跳び

 

私の独壇場。グラスホッパーを踏み続けるだけでいい。5回ぐらい踏んだところで先生に「いつまで続けられる?」と聞かれたので、「時間はかかりますが、地球自体は何周でもできます」と答えたところ、先生に計測を中止するように言われた。記録は測定不能となった。

 

 

 

反復横跳び

 

これも独壇場かな?自分の左右にグラスホッパーを設置し続けてバネのようにする。反発力を利用して好成績をたたき出す。記録は417回だった。

八百万はここでもいい記録を残してた。彼女の個性は『創造』。汎用性においては彼女の個性はトップクラスだろう。

 

 

 

ソフトボール投げ

 

みんなが計測していると、緑色の髪をしている子――入試説明中に飯田に怒られた子――に目が留まった。あの子は今までに一度もヒーローらしい記録というか、個性を使った記録を出していない。これまでの種目はそのことどこか仕方ないという風に思っていそうな顔だったけど、今回は違った。

 

けれど結果は46メートルという普通に投げた時と遜色ないような平凡な記録だった。

 

「な…今確かに使おうと……」

 

彼は驚愕と絶望が入り混じった声で呟く。そんな彼を先生は髪をかき上げて()ていた。

 

「今、お前の個性を消した。……つくづくあの入試は合理性に欠くよ。緑谷、お前のような奴でも入学できてしまう」

 

消した……?

 

「そのゴーグル…そうか!相手を視るだけで人の個性を抹消する個性!抹消ヒーロー、イレイザーヘッド!」

 

イレイザー?聞いたことがない。いや……しかし無理もないのか?個性を消す……つまり使えなくする以上、ヴィランから狙われることは必至。メディア露出は最低限にとどめていると考えるのが普通か。

 

「個性は戻した。ボール投げは2回。とっととやれ」

 

先生は緑谷を開放し、緑谷は円の中に入って投げる準備をする。こちらからは後ろ姿しか見えないから確証はないけど、あきらめた風には見えなかった。

 

そして、次の瞬間には彼の投げたボールは空高く飛びあがる。記録は700メートルを超える記録だった。

 

しかし、その代償として彼の指は赤く変色し、体が個性にあっていないことが容易に分かる。

 

威力はすさまじいものの、自壊していては後の活動に響いてしまう。正直、異端だ。自分の身に余る個性を持ち、使いこなすことができていない。そして、あいつの魂はほかに比べておかしい。あいつが個性を使ったことで気づいたが、個性の魂があいつの魂からはみ出ている。

 

魂は人の心臓の中だけでなく個性の中にも含まれている。そして、その大小は心臓のほうが大きく、個性のほうが小さい。そうでないと個性を十全に扱うことができないからだ。そもそも、あいつのように肉体と個性の魂の大きさの乖離が激しいと体がもたない。時間をかけて体が壊れ、ヒーローを目指すことができない体になる。いや、最悪の場合植物人間となっているはずだ。

 

しかし、それは十年程かかる話だ。逆に言えば個性が発言して十年でそうなる。つまり、今元気に過ごせている事実と矛盾する。

 

個性が後天的に変容した……?いや、違う。

あいつの体と個性はなじんでいない。それも極端に。個性が変容したとしてもこれほどなじんでいないのはおかしい。異物として扱っているという表現が正しいか……?

 

ここから導かれる結論は……あいつは、もしかしたら他者―――――

 

思考を巡らせていると急に鈍く響くような音が聞こえて肩を震わせた。

 

音のほうを見ると、八百万が大砲を撃ったのだと分かった。

 

「28㎞」

 

にっ……!?

 

周りを見ると、みんなドン引きしてた。まあ、だよね……。

でも、参考になるな。大砲か。

そういえば、麗日はボールを無重力状態にして大気圏を超えさせ、無限という記録をたたき出してたな。

そうか、宇宙空間か……。

 

「次、夜月。さっきやったから1回だけな」

 

「あ、はい」

 

私はまた円の中に入り、イーグレットを出す。

しかし、先ほどのイーグレットとは違う。銃の持ち手辺りからエネルギーを補給し貯められるように設計したものだ。

 

十分なエネルギーを貯めたら、放つ。撃つ方向は斜め上のさらに上向きに。発射されたボールは先ほどよりも多く使われたエネルギーを消費して、それを推進剤として空高く撃ち上がる。ボールは大気圏を突入し突破した。

実物がどういうものかはわからないが、レールガンみたいだった。

 

夜月 静江 記録 無限

 

 

 

持久走

 

持久走は流石に独壇場とまではいかなかった。50メートル以内の超短距離では私に分があるが、それ以上の距離では飯田に軍配が上がる。グラスホッパーを使って跳びつつ要所要所でテレポーターを使っていたが、飯田の走りに徐々に距離を縮められ抜かされた。抜かし返そうと懸命に進むものの、一歩及ばず。

八百万はバイクを作って猛追していたが、さすがに私たちが抜かされることはなかった。

 

 

 

長座体前屈

 

個性なしでやったら68㎝。流石にこの結果はいただけないので、個性を使うことにした。手のひらからスパイダーを出し、計測台を押し込む。立幅の時のように先生にどれくらい伸ばせるのか聞かれた。

 

「伸ばすだけならずっとですよ」

 

「……わかった。もういいぞ」

 

本日2回目の無限をいただきました。

 

 

 

上体起こし

 

これまた独壇場。万能なグラスホッパーを背中と胸が当たる部分に設置し、背中のグラスホッパーに背中を当てる。それだけで、あとは勝手に跳ねてくれる。八百万と峰田がいい記録を出してたけど、私のほうが高かった。

 

 

 

全種目終了。私たちの受難は終わり、運命の結果発表へと移った。

 

「んじゃ、パパっと結果発表」

 

先生は緊張する私たちを気にせずに、一気に発表していった。

自分の結果を確認する私たちに先生は言葉を投げかける。

 

「ちなみに、除籍はウソな。君たちの全力を引き出すための合理的虚偽」

 

先生の言葉に大半が絶叫する。

 

「あんなのウソに決まっているじゃない……少し考えれば分かりますわ」

 

八百万はみんなに向けて辛辣な言葉を投げた。

 

でも、たぶん除籍は本当な気がする。先生が言ってたのは、『生徒の如何は教師の自由』ということ。『最下位を見込みなしとし、除籍処分する』と言ってたけど、それを遂行するかどうかも先生の自由だ。

 

つまり、最下位は先生の予想を超えたということだろう。

 

最下位は緑谷だったが、その緑谷はソフトボール投げにて先生の予想を超えていた。だから除籍はなかったのだろう。彼は存外すごい人なのかもしれない。

 

「そゆこと。これにてテストは終わりだ。教室にカリキュラムとかの書類があるから、目ぇ通しとけ」

 

そう言って先生はこの場から去り、茫然としていた私たちも我に返り、各々教室に戻った。

 

 

 

個性把握テスト 結果

 

 

1位 夜月 静江

2位 八百万 百

3位 轟 焦凍

 

 

 




ヤオモモには、測定不能と無限の数の暴力で勝ちました。

無限相当が3個あるとさすがに勝てるかなって……。
無限1個の麗日が10位だったので……。


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