魂を満たす物語   作:よヨ余

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捌けマスコミ、凌げ人混み

「雄英でのオールマイトはどのような感じですか!?」

 

雄英に入学してから3日目。雄英の校門前に多くの記者が陣取っており、私は一人の記者に捕まってしまった。

 

「オールマイト先生はユーモアにあふれ、私たちに楽しいと思わせてくれるような先生です。面白さだけじゃなくて、ヒーローとしての心構えや実践を考慮した訓練など、私たちをよいヒーローに育て上げようとしてくれています。……あと意外にもお弁当派だそうです。」

 

記者さんは私の答えに満足したのか、「ありがとう」といってどっかに行ってしまった。

 

私はこれ以上記者に捕まらないように気配を殺してから校内に入った。

 

「夜月さん。おはようございます」

「おはよ。夜月」

 

教室に向かって歩いていると後ろから八百万と耳郎が挨拶してくれた。

 

「おはよう。二人は一緒に来たの?」

 

「実はさっき下駄箱で会ってさ。記者たちのこと話してたんだよ」

 

もう仲良くなっている人がいるのかと少し不安になり、つい質問してしまったが、そういうわけじゃなかったらしい。置いてかれたわけじゃなくてよかった。

 

「私もさっき質問された。やっぱりオールマイトはすごいね。教職に就いただけでこの騒ぎになるとは思わなかった」

 

「正直うんざりするほど記者多いけどね……」

 

「先ほど相澤先生が対処をしていました。下校の頃には記者さんたちもお帰りになられていると思われますよ」

 

「それはよかった。先生に感謝だね」

 

……そこそこ会話できてる!

 

私は会話できてることを実感しながら教室に入った。

 

 

 

 

「昨日の戦闘訓練、お疲れ。Vと成績見させてもらった。爆豪。お前もうガキみたいな真似すんな。能力あるんだから」

「……わかってる」

 

素直だな。昨日の様子を見てる限りだとそう簡単に認めるとは思わないんだけど。そういえば緑谷が爆豪に言いたいことがありそうだったな。話し合って解決したのかな。

 

「んで、緑谷は腕ぶっ壊して一件落着か」

 

名指しされた緑谷は肩を跳ねさせ、姿勢を正した。

 

「個性の制御…いつまでも『できないから仕方ない』じゃあ通させねぇぞ。俺は同じこと何度も言うのが嫌いだ。それさえ出来りゃやれること多い。焦れよ」

「っはい!」

 

緑谷は先生の助言に元気よく返事した。まだ見捨てられていないことを感じたようだ。

 

「さて、HRの本題だ…、急で悪いが今日は……」

 

緊張が走る。先生には個性把握テストという前科があるため、どのような受難を用意するのかわからない。私たちは気が気でない時間を過ごす。

 

「――学級委員長を決めてもらう」

 

「学校っぽいやつキター―!!」

 

みんなから雄たけびが上がる。急に大きな音を出すのでびっくりした。

 

「委員長!ソレ俺やりたいです!!」

「俺も!」

「ボクのためにあるやつ☆」

「ウチもやりたいス」

「オイラのマニフェストは膝上30㎝!!!」

 

雄叫びの後、みんなが各々好き勝手に主張を始めた。私は正直やりたくない。人々をまとめるという経験はトップヒーローになる上で必須だといえるが、私は別にトップを目指しているわけではない。中学のころはリーダーでなくサポート役といった立ち位置だったし。やりたい人が勝手にじゃんけんとかで決めるだろう。

 

「静粛にしたまえ!多を牽引する責任重大な仕事だぞ!!『やりたい者』がやれるものではないだろう!周囲からの信頼があってこその仕事…、民主主義に則り真のリーダーをみんなで決めるのならば、これは投票で決めるべき提案!」

 

よく言った飯田。じゃんけんよりも投票のほうが公平だ。ただ……

 

「手ぇそびえ立ってんじゃねぇか!なんで提案した!?」

 

その右手がなければね……。

 

「日も浅いのに信頼もクソもないわ、飯田ちゃん」

 

「そんなんみんな自分に入れらぁ!!」

 

「だからこそ!ここで複数票を獲得したものが真にふさわしい人間ということになるだろう!?どうでしょうか先生!」

 

「時間内に決めれりゃ何でもいいよ」

 

こうして投票が始まり、各々が委員長にふさわしいと思う人を紙に書き、集計した。

 

緑谷が意外にも3票を勝ち取り委員長に、八百万が2票を勝ち取り副委員長に就任するという結果になった。

 

 

 

昼休み。私は作ってきたお弁当を持ち出し、耳郎と八百万と食堂に来ていた。

 

「副委員長就任おめでと」

 

「ありがとうございます!委員長にはなれませんでしたが、皆を率いる人間の一人として精進いたしますわ!」

 

「すっごいやる気だね……。私はそんなやりたくなかったからすごいや」

 

「やる気なかったんだ。向いてそうなのに」

 

「あんなに個性強いみんなのまとめ役とか無理。そういうのは飯田とか八百万とかに任せればいいんだよ」

 

「飯田さんですか?」

 

「飯田はさっきみんなの前で自分の意見を言い切ったし、それがみんなにも最終的に認められてたでしょ?だから向いてると思って入れた」

 

「飯田に入れたの夜月だったんだ」

 

そう。私は飯田に投票した。1票だけしかなかったから飯田は違う人に投票したらしいが。本人は「1票……!誰かが投票してくれたのか……!誰かは知らないがすまない!期待に応えることができなかった……!」と嘆いていた。みんなから「何したかったんだお前……」と突っ込まれてた。

 

談笑に興じていると、急にサイレンのような音が鳴り、放送が流れた。

 

『セキュリティ3が突破されました。生徒の皆さんは速やかに屋外に避難してください』

 

「セキュリティ3?」

「確か校舎内に誰かが許可なく侵入したということだったはずです。すぐに避難いたしましょう」

 

私たちは放送内容に疑問を持ち、少しの時間その場にとどまった。八百万は覚えていたようだ。流石推薦組というべきか。

 

「なるほど。じゃあ早く動こうか。みんなもう動いてるし」

 

「うん、そうだね……っちょ!!?」

 

「耳郎!」

 

耳郎が避難する男子生徒とぶつかってしまい、バランスを崩したところを間一髪で引き寄せることに成功する。

 

「大丈夫?」

 

「別の意味で大丈夫じゃない……」

 

耳郎が何か変なことを言ってたけど、何とか一息つく。

 

「でも……」

 

「身動きがとれませんわね……」

 

大勢が一気に避難を始めたため、私たちの周囲に多くの人の流れができ、動くことができなくなった。人の流れに身を任せることしかできない。

 

「できることはないかな……。このまま身を任せるしか……て、あれマスコミじゃない?」

 

「……そうですわね。なるほど、マスコミが侵入してしまったのですね」

 

「見えない……」

 

私は周囲を見渡し、外のほうにマスコミとその対応をしている相澤先生とマイク先生を見た。八百万にも見えたようだ。耳郎は身長の問題で見えなかったらしい。

 

「……肩車する?」

「絶対にやめて」

 

そんなことをしていると飯田が浮いているのを発見した。

 

「飯田?」

 

飯田は浮いている中個性を器用に扱い、前進する。そのまま、壁に激突してしまったが、構わずに飯田は大声を出す。

 

 

 

「ダイジョーーーーブ!!!ただのマスコミです!!今、先生方が対応に移っています!パニックになる必要はありません!ここは雄英!最高峰の人間にふさわしい行動をとりましょう!!!」

 

 

 

飯田の奇行からの状況説明にみんなが落ち着きを取り戻し、何とか身動きを取れるまでには余裕が出た。

 

流石飯田君。でもその非常口は何だ?

 

飯田の行動はかっこいいものだったが、壁に張り付いた時の非常口ポーズで少し台無しだった。

 

 

 

午後は委員長以外の委員会を決めるはずだったのだが、その前に緑谷から一言があった。

 

「委員長は、やっぱり飯田君がいいと…思います!あんなふうに格好よく人をまとめることができる人…僕は飯田君がやるのが正しいと思うよ」

 

緑谷の突然の発言だったが、八百万の驚きは少ない。先ほど何か話していたのは緑谷のこの提案のことだったのだろう。

 

「いんじゃね!?飯田食堂で大活躍してたしよ!」

「非常口みてぇだったけどな」

 

緑谷の提案に切島、上鳴が賛同する。

 

「……委員長の指名とあらば仕方あるまい。ならばこの飯田天哉!委員長の責務を全力で遂行させていただきます!!」

 

「おお、がんばれ!非常口!」

 

飯田は委員長としてみんなに認められたが、しばらくあだ名が『非常口』になってしまった。

 

そして、三日目も終わる。蠢く悪意に気付くことなく…………。

 

 

 

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