デュエマプレイヤーは「カードが全ての学園島」で成り上がるそうです。   作:タク@DMP

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第一弾:王道×邪道、決闘学園(デュエルウォーズ)!!!
第1話:カードで全てが決まる世界


 死闘を繰り返す5つの文明。

 そのカードを使い、敵のシールドを破壊しトドメを刺す。

 それが──史上最高に激しくアツかりしカードゲーム「デュエル・マスターズ」──略して「デュエマ」。

 此処にも、そのカードゲームを愛する少年が1人。

 

「もーう、照陽(しょうよう)兄ちゃん!! なんで買い物の時までデュエマのデッキとカード持ってきてんのっ!」

「帰りがけにいつものカードショップに寄ろうと思っててね。丁度組もうとしてたデッキがあるんだ」

「これだから筋金入りのカードゲーマーは……」

「これだけの荷物を持ってるんだ、ちょっとくらいご褒美があっても文句はないだろう?」

 

 ブティックで買った大量のオシャレな服を抱えながら少年はぼやいた。

 

「それにしても……こんな沢山服を買う金は何処から湧いてくるのやら」

「株、投資信託、後は──色々!」

「ああ、全く……君は本当に金運がやたら強いからな──円架(まどか)

 

 町を歩く少年少女二人組。彼らは兄妹であり、休日のショッピングを楽しんでいた。

 というよりも出不精の兄の方が妹に荷物持ちとして無理矢理連れ出されていたのであるが。

 兄の名は天戸(あまど)照陽(しょうよう)。17歳の男子高校生。

 妹の名は天戸(あまど)円架(まどか)。15歳の女子中学生。

 大抵、活発な円架(まどか)照陽(しょうよう)が引っ張られ、何かと振り回されることが多く、今日のショッピングもその一例だ。興味のない女物の服の売り場に連れ回され、既に照陽はウンザリ気味であった。

 

照陽(しょうよう)って名前なのに、陽の当たらない生活してるのが悪いんだよ、お兄ちゃん。大会の時以外、ずっとデッキの研究ばっかりしてるじゃない」

「デッキだけじゃない、プレイングの研究もしているさ」

「その時間を勉強に回せば模試の成績も上がるんじゃないの? もっと上の大学に行けるだろうって言われてるんでしょ?」

円架(まどか)こそ、年頃なんだから彼氏の一人くらいいないのかい。いっつも僕を連れ回してるけどさ」

「ムッ……別に! お兄ちゃんには関係ないでしょ!」

「そのお転婆な性格じゃあ、夢のまた夢か。まさにいつになる事やら──ってね」

「ムッカー!! ひ、人の気も知らないで……そんな事言ったら、お兄ちゃんだって彼女いないでしょ!」

「僕にはコイツが居るから良いのさ」

 

 そう言って照陽は首からぶら下げたカードを円に見せつける。

 青い武者鎧を身に纏ったドラゴンがイラストとして描かれている。

 名前は──《ボルメテウス・武者・ドラゴン》。

 

「そのカード……まだ肌身離さず持ってたの?」

「お守りさ、お守り。それにこいつは今となっちゃプレミアがついているシークレット版、お値打ちもので縁起も良い。縁起が良いものを持つと、デュエマにも勝ちやすくなる」

「ハイハイ……肝心の《ボルメテウス・武者・ドラゴン》は古いし弱いけど」

「リメイクされたカードが強いから良いんだよ」

「ねえそういえば《武者》って……お兄ちゃんが生まれた頃に発売されたカードだよね。どうやって手に入れたの?」

「……確かに」

「あたしのお金にも頼らずカード買ってるお兄ちゃんが、そんな高額カード買えるわけないし」

「良いかい、僕の年で親のお小遣いで買い物をするのは百歩譲ってまだ許されるだろう。だけど、妹から貰った金でカードを買うやつは恥ずかしいヤツだ」

「お兄ちゃん大会優勝の常連だから、収支はプラスになるの分かってるけどね」

「だとしても兄としてのプライドが許さないかな」

 

 閑話休題。

 

「じゃあどうやって手に入れたのさ? そんなレアカード」

「……そうだね。僕も覚えていないんだよ」

 

 青いボルメテウスのカードは──物心がついた頃には、既に手にしていたカードだ。

 どのようにして入手したか、など覚えてはいない。

 しかし、世間ではプレミアがついて1万円を超える値段で取引されるカードだ。

 確かに《ボルメテウス・武者・ドラゴン》はカードゲームのカードとしての性能は高くないが──漫画やアニメといった媒体での活躍で今でも根強いファンが多い伝説のクリーチャーなのである。

 

「──まあまあ細かい事は良いじゃない。《武者・ドラゴン》が僕のフェイバリットカードには違いないし」

 

 ふとした疑問について考えるべく、照陽が足を止める。

 

 

 

 

「──ッ!?」

 

 

 

 ショッピングモールの空気が一変する。

 張り詰めたような緊張感が肌に伝わってくる。

 

「なんだ、この嫌な空気……!? なんか、ヘンだ」

「どうしたのお兄ちゃん?」

 

 

 

『見つけた……ッ!! 良質なデュエリストの魂……ッ!!』

 

 

 

 

 何処からともなく、声が響き渡る。

 ぞくりと照陽の肌が粟立つ。

 

「おい、変な事を言うなよ円架」

「違うよお兄ちゃん!! あたしこんなヘンな声じゃない!!」

「じゃあ幻聴じゃない……気を付けて円架!!」

 

 

 

『お前達も──招待しよう。デュエリストの世界に──ッ!!』

 

 

 

 前触れもなく、空間が硝子のように砕け散った。

 

 

 

 物理法則を完全に無視した超常現象。

 

 

 

 

 

「えっ……何これ、お兄ちゃん──!?」

「足元が──!?」

 

 

 

 照陽は大きく態勢を崩す。

 辺りの空間はガラガラと音を立てて崩れていく。

 崩れた先は完全なる奈落であり、先が見えない。

 照陽と円架の体は重力に従い、突如現れた奈落へと吸い込まれていく。

 

「お兄ちゃん──ッ!!」

「──円架──ッ!!」

 

 辛うじて妹の手を取ろうとする照陽。

 しかし──その指を取る事は出来ず──二人はバラバラに奈落の底へと落ちていくのだった。

 

 

 

 ※※※

 

 

 

「……此処は……ッ?」

 

 

 

 照陽は目が覚め、辺りを見回す。

 薄暗い何処かの路地裏のようだった。

 ゴミ箱が乱雑に置かれ、そして──散らばっている何かを手に取り、照陽は目を丸くした。

 見覚えしかないデュエル・マスターズのカードだ。

 

「カードが捨ててある……しかもこんなに沢山……!! なんてマナーが悪いんだ……」

 

 こんな路地裏に捨てなくても、と憤慨する照陽。

 だが──すぐに自分が何をするべきだったかを思い出す。

 一緒にいたはずの妹の姿を探した。しかし──近くには居ないようである。

 

「そうだ、円架! おーい円架! いるなら返事をしてくれ!」

 

 妹の名を呼びながら、光の差す方を目指して路地裏を出る──そして、彼は絶句した。

 

 

 

「──《ボルシャック・ドリーム・ドラゴン》を召喚ッ!!」

 

 

 

 高らかに聞こえてくるのはクリーチャーの召喚宣言。

 目に入ったのは、町中に当たり前のように置かれている四角のテーブル。

 そこにカードを置いて、デュエル・マスターズに興じている制服姿の男子生徒達。

 だが、これだけではない。

 辺りを見渡すと、他にもこのようなテーブルがあちこちに置かれており、皆デュエマに興じている。

 

「な、なんだ、皆デュエマやってるぞ……!? 此処、外なのに……当たり前のように紙をしばいてる!?」

 

 信じられない光景を前に立ち竦む照陽。

 小学生でもなければカードゲームは屋内でやるものだ、という常識が少なからず彼の中にはあるからだ。

 ましてや制服姿で堂々とカードゲームなどやるものではない。

 しかし、町中を歩いてみるとあちこちでデッキケースらしきものを腰にぶら下げた制服姿の少年少女の姿を見かける。

 というより──この通りを歩いている彼らはほぼ全員、デッキらしきものを体の何処かに身に着けている。

 まるでいつでもカードゲームに応じる事が出来るように、だ。

 

(僕は夢でも見てるのか……? 頭でも打ったのか……? こんなのまるでカードゲームアニメみたいじゃないか)

 

「グランセクトの新作出たんだけどさー」

「キャハハハ、ウケるー。やっぱり《オニオン・リング》でわざわざループしなくても、《ジスタジオ》出して殴って勝てばよくなーい?」

「時代はやっぱり殴って勝つ、だよねー!!」

「《ギャイア》や《ロマネアース》とか高過ぎてマジ買えねーわ」

「わかるー」

 

(JKがかなりディープなデュエマトークをしてる……!? スタバの新作が出たみたいなノリでグランセクトデッキの話してる!?)

 

 ※照陽は内容を即座に理解しましたが、この会話の中身は理解しなくて大丈夫です。

 

「いらっしゃーい!! 新弾再入荷したよー!!」

「ヒロインBESTおひとり様、1BOXまでーッ!!」

「買取10%アップキャンペーンやってまーす!!」

 

(数軒おきにカードショップがある……!! しかもどこも凄い人だかりだ……!!)

 

 新品や中古カードを取り扱うカードゲーマー御用達のカードショップ。

 それが何処にでもある、というくらいの頻度で見かけるのである。

 

(な、何かがおかしいぞ……まさかこれって──所謂、異世界転移ってヤツなのか……!?)

 

 此処にやってきた経緯を考えれば考える程に、この街の常識が何処か自分の知るものとは異なる事を照陽は突きつけられる。

 まるでカードゲームを題材にしたアニメのような、カードゲームが中心で回っているかのような世界。

 自分が知らなかっただけで、この街がイカれているだけかもしれない──と照陽は考えていた。

 しかし、そんな希望的観測は次の瞬間ブチ壊される事になる。

 

 

 

「や、やめてくださいッ!! デッキを返してッ……!!」

 

 

 

 ざわめく声。

 そして、出来ている人だかり。

 もしかして、と妹の顔を浮かべながら照陽は駆け付ける。

 

「黒単アビスか──雑魚にこんなデッキは勿体なさすぎるんじゃねーか?」

「う、うぅ……」

 

 白いブレザーを着た少女を取り囲むのは、黒いブレザーを着た生徒達。

 リーダー格と思しき背の高い少年の手には──乱雑にデッキが握られている。

 

(円架じゃない……けど、穏やかじゃないな)

 

「オマエのデッキは俺達が貰っていくぜ」

「お、お願いです、そのデッキは……大事なもので──ッ!!」

「勝負に負けておいてそれはねぇんじゃねえか……? 俺が勝ったら友達のデッキを返す。オマエが負けたらオマエのデッキを貰う。そう言う話だったじゃねーか。それに──」

 

 デッキを乱暴にカバンの中に投げ捨て、少年は言った。

 

「弱いヤツは雑誌の付録のデッキでも握ってりゃ良いんだよ。さっさと消えろ、紙屑女」

「うう……ッ」

「泣いてるぜ、こいつ」

「ヤだなぁ──泣かれると俺達が悪いみたいじゃないか」

「弱いのにこの学園島に来てる子が悪いんじゃない」

 

 嘲笑が辺りに響く。

 胸糞の悪い光景を前に、照陽は──我慢が出来なかった。

 

(……成程、デッキをかけた賭博(アンティ)ってワケか。そ友達のデッキを取り返す為に賭けに挑んだみたいだけど──負けてしまったわけだ)

 

 ちらり、と照陽は周囲の野次馬の姿を見る。

 いずれも彼らは、他の色の制服で──黒い制服の少年たちを見て怯えているようだった。

 

(円架を探してる途中だけど……見過ごせないかな、流石に)

 

 照陽は──自然と足が前に出ていた。

 

 

 

「面白い事やってるみたいだね。僕も混ぜてよ」

 

 

 

 周囲のざわつきが更に大きくなる。

 黒い制服の生徒達の冷たい視線が──照陽に注がれた。

 

「……何だ? 見ない顔だ。制服姿じゃねえが──何処の生徒だ?」

「まあまあ、細かい事は良いじゃない。勝負するの? しないの?」

「……オマエ、なかなか度胸があるな。戦極学園の(なまり)ハジキとは俺の事だ」

「君が誰かなんて関係ないかな。僕が勝ったら、その子のデッキを返してもらう。良いよね?」

「やめておけ」

 

 肩をすくめて黒制服の少年は言った。

 

「そこの女みたいな弱い奴が強いデッキを握るのは──ハッキリ言って無駄だ」

「無駄? 何が無駄なのかな」

「強いデッキは才能を持つ者が握るべきだ。貴重なレアカードが勿体ないだろう。弱い奴が強いカードを使ったところで──紙屑にしちまうだけだ。俺はそれが堪えられない。我慢出来ない」

「……へえ。なかなか面白い思想だね」

「そして俺は無駄な事が嫌いでな。何処のどいつかも分からねえようなオマエと対戦してる暇はねぇんだよ」

 

 手を振りながら踵を返そうとする黒制服の少年。しかし──そこに照陽は畳みかけるように言った。

 

「確かにその通りだ。君は頭が良い。もしも無名の僕なんかに負けたら、戦極学園とやらの名前に傷が付いちゃうし、折角巻き上げたデッキも手放さないといけなくなっちゃう」

「……何?」

「──もう一回聞くよ。勝負するの? しないの?」

「……後悔させてやる。こっちに来い」

 

 踵を返す黒制服の少年。

 それを見て、照陽は──蹲る少女に手を差し伸べる。

 

「……大丈夫。君のデッキも、友達のデッキも、取り返すよ」

「そ、そんな無茶です──ッ!! 相手は戦極学園──学園ランキングの上位常連で、そこに所属してる生徒は強豪プレイヤー揃いなんです!!」

「まあまあ、細かい事は良いじゃない。相手が誰でもゲームの上では公平で平等だ」

 

 

 

 ※※※

 

 

 

「イベント用の特設デュエルステージだ。カードをテーブルに置くと、ホログラムが浮かび上がる」

「ギャラリーも沢山呼んだからァ、大勢の前で恥かかせてやるよ!!」

 

(……なんかもう本当にホビーアニメだとかカードゲームアニメみたいな設備だな、もうツッコまないぞ僕は)

 

 だだっ広い敷地に置かれる二つのテーブル。

 ハイテクな設備に驚きつつも、照陽はテーブルの上に自らのデッキを広げる。

 

(そう、此処が何処の世界でも関係ない。どんな場所でも関係ない。これは、僕がよく知ってるカードゲームだ)

 

 目を瞑る。

 辺りには様々な色の制服の生徒達が。

 そして、デッキを奪われたあの少女も心配そうに此方を見ている。

 

「おいおい、戦極学園の奴ら、またデッキ狩りやってんのか? 飽きねえな……」

「ところで対戦相手のヤツ、誰か知ってるか?」

「いや、知らねえ……」

 

(集中──集中──)

 

 照陽は──己の胸から全ての雑念を排し、デッキから5枚のカードをシールドとして置いた。

 

「──さあ、ゲームを始めようか」

「……二度と減らず口が利けないようにしてやる」

 

 こうして。

 照陽とハジキのデュエルが幕を開けた。 

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