デュエマプレイヤーは「カードが全ての学園島」で成り上がるそうです。   作:タク@DMP

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第10話:運命の人……ってコト!?

 ※※※

 

 

 

 ──それから数日程しただろうか。

 寮に部屋を貰い、生活基盤を理事長の援助の元整えたところで、ついに入学初日となった。

 緊張。不安。気持ちは様々だが、全ては妹を助けるため。照陽は──新たなる学び舎に足を運ぶ。

 

(円架。君も最初はこんな気持ちだったのかな?)

 

 妹に思いを馳せ──照陽は教室に一歩、また一歩と歩を進める。

 周囲からは噂話の声。「あれ、澪音を倒した転校生じゃね!?」「噂のアイツ!?」

 と言ったひそひそとした声。

 しかし、彼らが照陽に近付くことは無かった。

 

 

 

「ごきげんよウ!! 天戸 照陽ッッッ!!」

「……おはよう、白銀さん」

 

 

 

 ──教室の入り口をふさぐかのように設置されたデュエル用テーブル。

 その向かい側に立つのは、数日前に入学試験で下した相手・白銀澪音であった。

 彼女は若干目の下に隈が出来ていたが──それでもデッキをテーブルの上に置き、高らかに言った。

 

「フ、フフッ……正気を保つので精一杯だったワ……この数日間ッ!! だけど、考えたノ。あの試合は、マグレだったってネ!!」

「うわぁ、よっぽどショックだったんだな……そりゃあアレはトリガー運も引きも神がかってたけどさ」

 

 周囲は明らかに目の焦点が合っていない澪音を恐れ、誰も窘める者はいない。

 

「だから天戸照陽ッ!! 今此処で私ともう一度デュエルしなさイッ!!」

「ええー……、もうすぐ朝礼の時間じゃないか……」

「そんなもの私のプライドに比べれば些末な問題ヨ!!」

「横暴すぎる……」

 

 黙って見守るクラスメイトらしき生徒達。

 彼らの視線を浴びながら照陽はデッキを取り出した。

 

「分かった、僕が勝ったら片付けてもらおうかな。先生に怒られるのは嫌だろう?」

「乗っタッ!!」

 

 しかし──この勝負、澪音には最初から勝機があった。

 今回の澪音の構築は数日前とは違う。

 マナゾーンにカードを置き、自然文明の呪文《「この私のために華を咲かすのだ!」》を唱えるのだった。

 山札の上から1枚が裏向きで置かれる。

 マナブーストに長けた──自然文明入りのゼニスデッキだ。

 

(──バーカ!! この間と同じと思ったら大違い、《「戦鬼」の頂天 ベートーベン》はパワー19000の攻撃誘導持ちクリーチャー!! タップされていれば相手はプレイヤーにアタックできない──つまりベートーベンを倒さなきゃ私に一生攻撃は届かないノ!!)

 

 その切り札となるのが──《ベートーベン》。

 生半可なビートダウンデッキでは、これを超える手段はない。勿論、照陽のデッキも例外ではないのである。

 

(そしてサムライデッキにベンを超える方法はないワ!! 勝った!! 今度こそ!!)

 

 勝ち誇ったような笑みを浮かべる澪音。

 手札には《シャングリラ・クリスタル》、《ベートーベン》が全部揃っている。

 しかも照陽の場にはNEO進化すらしていない《一音の妖精》が突っ立っているだけだ。

 マッハファイターの餌まで用意されている。

 澪音の勝利は確定的だと思われた──しかし。

 

「ゴメン、実は手札に全部揃ってて……」

 

 照陽は申し訳なさそうに言った。

 

「3マナで《一音の妖精》を進化──《暴覇斬空 SHIDEN-410》」

「いやっちょ待──その構えッテ」

「攻撃時に()()を宣言──ッ!!」

 

 《暴覇斬空 SHIDEN-410》の上へ高らかにカードを重ねる。

 

「──()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()!! 

究極進化、《超神羅星 アポロヌス・ドラゲリオン》!!」

「あっ……」

「あっ……」

「あっ……」

 

《超神羅星 アポロヌス・ドラゲリオン》 火文明 コスト6

進化クリーチャー:フェニックス パワー15000

究極進化:自分の進化クリーチャー1体の上に置く。

侵略:火の進化ドラゴン(自分の火の進化ドラゴンが攻撃する時、自分の手札にあるこのクリーチャーをその上に重ねてもよい)

 

 見ていた全員が全てを察したような顔をした。

 《超神羅星 アポロヌス・ドラゲリオン》──それはあまりにも強すぎる為、デッキに1枚しか入れられない殿堂入りカード。

 火の進化ドラゴンの攻撃に反応してタダで手札から飛び出し、そして──

 

「《一音の妖精》をポン置きしてたのは、《SHIDEN》の進化元にするため!?」

「僕は《SHIDEN-410》の効果で山札の上から2枚を《アポロヌス・ドラゲリオン》の下に重ねるよ。そして、《アポロヌス・ドラゲリオン》のメテオバーン発動ッ!!」

 

 ──メテオバーン。

 それは、進化元のカードを規定の枚数墓地に置くことで発動する効果。

 《アポロヌス・ドラゲリオン》のメテオバーンは、進化元を3枚も消費する文字通りの必殺技だ。

 そして──澪音のシールドが全部消し飛んだ。

 

「メテオバーンで君のシールドを全てブレイク。そして、《アポロヌス・ドラゲリオン》はまだ攻撃中だから、君にダイレクトアタックが通る」

「が、G・ストライク……」

「攻撃中だから意味がないね」

 

 そのまま《アポロヌス》の攻撃が澪音に突き刺さった。

 アンタップしている他のクリーチャーの攻撃を止めるG・ストライクでは既に攻撃中の《アポロヌス》は止まらない。

 崩れ落ちる澪音。

 気まずそうに頬を掻く照陽。

 勝者、天戸 照陽──

 

「えーと……その……何ていうのかな、こういう時もあるよ、きっと」

「ンッッッッッにゃあああああああああああああああーッッッ!! もう一回ッッッ!! もう一回ッッッ!!」

 

 絶叫する澪音。

 だが、再戦は許されず、周囲のクラスメイトはとうとうテーブルを無理矢理片付け始めるのだった。

 

「もう抑えろ白銀!! 気持ちは分かるが、これ以上は惨めなだけだ!!」

「そう! 運! 運が悪かったのよ、白銀さん、落ち着いて!」

「知らなイ!! このままじゃ終われなイ!! 終われるワケないデショ──あっちょっとあんた達、机片付けるのやめなさイ、やめなさイってばーッッッ!!」

「すまねえ転校生、コイツこうなると止まらねえんだよ、あらゆる分野で負けず嫌いだから!!」

 

(大変そうだなあ……)

 

 

 

 ※※※

 

 

 

「ブールァァァァァァーッッッ!!」

 

 

 

 怒号の如き号令が上がる。

 巌のような顔をした壮年の男性教師だ。

 

「諸ー君ッ!! 今日は我が無銘学園に新たな生徒が入学した晴ァーれ晴れしい日であるゥ。転校生ェ!! 自己紹介よーろしくゥ」

「えーと……あ、天戸 照陽です。よろしくお願いします」

 

(ブルァーって何? 今の鳴き声は何だったの? セ〇?)

 

「フッ、入学試験であの白銀を倒すとは──期待のるぅきぃと言ったところだなァ。不安も多いだろうが、まあ頑張ってくれやァ」

 

(担任教師が一番の不安要素だよ)

 

 独特のイントネーション、そして野太い声に照陽の耳は割れそうになってしまう。

 髪型もまるで音楽教室に飾られたベートーベンのようである。

 

「俺は岩本ォ。この2年B組の担任、担当は音楽だ、ンン、よろしくお願いしまァァァすゥゥゥーッッッ!!」

「アッハイ……」

 

 顔面の圧も強いなんてものではない。

 本当に岩壁に掘られた彫刻のようだった。

 

「とーころで白銀ェ!! 朝から死んでるがどうしたァ!! まだまだ一日は始まったばかりだぞォ!!」

「私は認めない私は認めない私は認めない」

「たかが一回の敗北で心が折れるようでは、ンンン青いなァ白銀ェ!! 勝負は生き物、何が起きるか分からないモノだぞオーイェ」

 

(今朝さらに一回負けてるんだよなあ……)

 

 事情を知るクラスメイトは白銀の名誉と尊厳の為に黙っているのだった。えらい。

 

「さーてェ、正式に学園に入学した天戸君にィ、プレゼントの時間でェす!! こいつを受け取ってちょーだい」

「……これは」

「DMデバイス──所謂、学園島内で使われるスマホみたいなものでなァ。授業の出席確認、そしてDMクレジットのチャージ、支払いに使う、失くしても指紋認証・声紋認証・虹彩認証で防犯性もバッチシってワーケェ」

「DMクレジット?」

「あーるェ理事長から何にも聞いてないのキーミィ? なら俺から説明するとしよう、グォッフォンベルグッッッ」

 

 咳払い一つとっても豪快過ぎる男である。

 

「この学園島内ではDMクレジットを使って買い物が出来るんだよゥ。授業の出席、実技授業の成績、そして生徒間の合意で行われる公式デュエルによって増減しまァァァす」

 

(うわぁ、実質賭け試合が奨励されているのか)

 

 だがその背景にも納得ができるものであった。

 この世界の日本では特殊カジノ法案が数年前に施工されており、国内でも賭博施設が承認されている。

 そして、この学園島でも──DMクレジットを賭けた試合による生徒同士の切磋琢磨が認められているのだ。

 

(絶対トラブルの原因になるよなあ、このシステム)

 

「というわけでェ……天戸君をよろしく頼むゥ──おォい白銀ェ!! 起ーきーろォウ!! もうすぐに授業始まるんだぞォーう!! ウェェェイクアァァァップ」

「私は認めない私は認めない私は認めない」

 

(まだ落ち込んでる……)

 

 

 

 ※※※

 

 

 

(疲れた……)

 

 

 

 その日は授業の合間はクラスメイトに質問攻めにされ、昼休みも全く休むどころではなかった。

 放課後になり、すっかり疲れ切った様子で這う這うになって屋上へ逃げ出す照陽。

 

(参った……芸能人って多分こんな気分なんだろうな……)

 

 逃げ出すように寮への道を行こうとした矢先である。

 

 

 

「──やっぱり来たわネ!! 天戸 照陽ッ!!」

「来るもクソもこっちが僕の寮のある方角なんだが……」

 

 

 

 ──またこの流れである。

 道を塞ぐようにして置かれたデュエルテーブル。

 綺麗に置かれたシールドと山札。

 そして、その向かい側に立つのは白銀 澪音だ。

 

「まさか逃げるだなんて言わないデショウネ!! さっさとカードを用意なさイ!! 道行く人の迷惑だワ!!」

「君がこんな場所にテーブルを置くからじゃないか!!」

 

 仕方なくデュエルに応じる照陽。

 半ばヤケクソ気味で彼はカードを広げる。

 

(あー、手札は普通か。普通にやったら普通に勝てそうなんだけど、相手は仮にも六禍仙だからな……)

 

(ハッ、どっちしたって今朝のようにはいかないワ! アポロセットが手札に揃うなんて早々無いモノ──あ)

 

 尚、白銀澪音初手の手札。

 

 《蠅の王 クリス=タブラ=ラーサ》15コスト

 《黙示録の水晶》10コスト

 《「奇妙」の頂天 クリス=バアル》10コスト

 《「無」の頂天 タブラ=ラーサ》10コスト

 《「胡乱」の頂天 クリス=ビュート》12コスト

 

(こんな初手でどうやって戦えってノヨ!!)

 

 大事故である。ゼニスデッキではたまにあることである。

 当然こんな手札で動けるはずもなく、デュエルは普通に澪音が負けた。

 

「な、何で……どうしてこうなるノ……」

「ほら、こういう事もあるし……ね?」

「──やはり認めるしかないみたいネ……」

「え? 何を──」

 

 澪音は目をぐるぐると回しながら──叫ぶ。

 

「──貴方が私の運命の人って事ヨ!!」

「運命ェ!? 何言ってるんだ君は!?」

「私はね、偶然は2つまで信じる事にしてるノ。そっから先は必然ヨ!!」

「君の言っていることの意味が分からないんだが……」

「昔──ママが言ってたノ」

 

 ──よく聞きなさい、澪音。どんなに取り繕っても運命の人には──敵わないものなのですよ。

 

 ──でもママがパパにデュエマで負けたところ見た事ないわヨ?(圧倒的デュエル脳)

 

 ──いえ、昼のデュエルならともかく夜のデュエルでは勝てた事が──ゲホッゲホッ!!

 

 ──ママ!? どうしたのママ!? いきなりわざとらしい咳なんかして!!

 

 ──な、何でもありません忘れてください。口を滑らせただけですから。

 

 ──分かった、ママ!! 要するにデュエルで勝てない相手こそ運命の相手って事ネ!!(圧倒的デュエル脳)

 

 ──……そう言う事にしておきましょう。(説明義務を放棄)

 

「でもよく考えてみると……何でデュエルに昼も夜もあるのカシラ? ママはパパよりデュエルが強いはずなんダケド」

 

(うんうん、それはうっかり口を滑らせた君のママが悪いね……夜のデュエルって要するに《轟䡛合体》って事だからね)

 

 全ては澪音の母に責任はあると言っても過言ではない。

 後《轟䡛合体》を隠語に使うんじゃない。

 

「つまり、私よりも強い人こそが私の運命の人に相応しいと言う事!! 元より私はこのつもりで、この学園島にやってきたッ!!」

「なんて子だ……無銘学園は婚活会場じゃないんだぞ」

「どうせあんな大勢の前で恥をかいて、もうお嫁になんていけないワ!! 責任取りなさイ、うわーんッッッ!!」

「いいかい、たったの3回の試合で僕が君よりも強いと断じるのは不可能だ。例えば僕が君に対する勝率が30%だったとする、100回やって30回勝つって確率だ。僕は今君に3勝しているが30回のうちの3回がたまたま今偏っただけかもしれない」

「だとしてモッ!! この数日間で私の周囲からの評判はダダ下がりヨ!!」

 

 地面に手を突き嘆く澪音。

 確かに六禍仙ともあろう者が、入学すらしていない転校生に負けたとなれば、その権威の失墜は免れない。

 

「昨日なんて上級生3人組から”あんたもう六禍仙の称号返上した方が良いんじゃない?”って詰められて……」

「うわぁ、それは酷かったね……」

「3人とも同時に相手して、叩きのめしてやったワ」

 

 尚、別に澪音の実力そのものが揺らいだわけではないので、有象無象が彼女に勝てるわけがないのであった。

 

「流石六禍仙、そこは強かだった」

「私は運命の人と完全無欠なブライダルを挙げるのが夢ナノ! もうこうなったら貴方が運命の人という事にして満足するしかないじゃなイ!!」

「運命の人も満足も妥協するなよ、もっと他に良い人がいるかもしれないだろ」

「いーや、もう決めタッ!! 今日から貴方が──」

 

 その時である。

 

 

 

「キャーッッッ!!」

 

 

 

 ──何処からともなく、甲高い声が響き渡った。

 そして、照陽の胸にぶら下がったボルメテウスのカードが熱を帯び始めたのである。

 

「ッ……なんだ? ボルメテウス……なにか感じてるのか……?」

「シャングリラが言ってル!! カードの精霊が暴走してるッテ!!」

「……!」

「そういや、貴方も精霊使いなんだっケ?」

「ああ。行ってみよう」

 

 照陽の脳裏には、身内の事すら忘れてしまった自らの妹の顔が浮かんだ。

 

(円架みたいな人を……僕みたいな思いをする人を増やすわけにはいかない)

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