デュエマプレイヤーは「カードが全ての学園島」で成り上がるそうです。 作:タク@DMP
──《勝利龍装クラッシュ”覇道”》。
登場して7年、以来ずっと何らかの専用構築デッキで活躍をしており──型落ちしたことは只の一度も無いドラゴンデッキ最強クラスのフィニッシャー。
その手助けをするのが《流星のガイアッシュ・カイザー》。
登場して5年、以来ずっと10コスト以上の大型クリーチャーを搭載したデッキで活躍をしており──型落ちしたことは只の一度も無い最強の支援カード。
この2つが組み合わさったのが”ガイアッシュ覇道”、ドラゴンデッキの王道であり覇道。全国大会でも結果を残し、新しいドラゴンが出る度に強化される現代のグッドスタッフデッキ。
環境入りしている長さは、現代のデュエル・マスターズのデッキでも最長クラス。
その最大のシナジーは《ガイアッシュ》のコスト軽減を受ける事で《クラッシュ”覇道”》が
自己軽減のB・A・Dで2コスト、ガイアッシュ軽減で4コスト。その軽減率、脅威の6コスト──残る岩本のマナは4枚。
「更にィッ!! 残りの4マナで、先程手札に戻した《シックスフォール》を召喚ッ!! その効果でコイツ自身を《クラッシュ”覇道”》の下に重ねる──するとどうなるかァ!!」
《シックスフォール》もまた超魂Xを持つ。
クリーチャーの下に重ねられた時、その効果が起動するのだ。
超魂Xは、NEOクリーチャーや進化クリーチャー以外の下に重ねられている時でも効果を発揮する。
《シックスフォール》は自身の効果で、自分の好きなクリーチャーの下に重ねる事が出来るのが強みの一つだ。
「《シックスフォール》が重なったクリーチャーは、
「……流石にお見通しか」
「そして──《クラッシュ”覇道”》で攻撃ィーッ!! シールドをW・ブレイクッ!!」
照陽
残りシールド:4→2
砕け散る照陽のシールド。
その破片を浴び、倒れ伏せる。
衝撃。激痛。苦痛。
その全てが襲い掛かる中、アドレナリンが流れる脳で照陽は考え続ける。
砕け散ったシールドが収束した。
「……まだだ、終わってない……!! S・トリガー……《アルジェン・ゴルギーニ》!!」
飛び出したのは白銀のスーパーカー。
そこから放たれる光が《ガイアッシュ・カイザー》と《クラッシュ”覇道”》を狙う。
「──効果で相手のエレメントを2つ選んで、マナゾーンとシールドに送る──!!」
※エレメント:クリーチャー、クロスギア、フィールドなど場にあるカードの総称
「ドアホうがッ!! 《シックスフォール》の超魂Xで《クラッシュ”覇道”》は選ばれねえぞォ!!」
「分かってますよ!! 《ガイアッシュ・カイザー》だけでもマナゾーンに!!」
これにより照陽の目論見はまた一つ砕かれた。
《アルジェン・ゴルギーニ》は《クラッシュ”覇道”》を安全に処理できる数少ない手段だったからである。
(《アルジェン・ゴルギーニ》だったら
「ターン終了時に《クラッシュ”覇道”》の効果を起動ッ!! B・A・Dの効果で破壊されるが──」
《勝利龍装クラッシュ”覇道”》
【
「──破壊された時、タップされていりゃあ……《クラッシュ”覇道”》の効果でもう一回俺のターンを行うッ!!」
これがまさに勝利の名を冠する龍の所以。
コストを軽減する《ガイアッシュ・カイザー》は消えた。
だが──既に岩本には大量の手札が溜め込まれている。
「──先ずは4マナで2枚目の《シックスフォール》を召喚ッ!! 《アルジェン・ゴルギーニ》の下に、《御代紅海》を重ねるッ!!」
「……またこのパターンか!!」
「そうだぜェ!! お得意の無敵コンボはコレで消えたッ!! そして残りの4マナで、コストを軽減してコイツを出すッ!!」
──マナゾーンのドラゴンが光り輝く。
「轟く音階、世界を破壊ッ!! コーダ、即ちこの演奏の終局とするッ!!
《頂上連結 ロッド・ゾージア5th》を召喚ッ!!」
轟速の赤。そして、青き薔薇の正義。
その二つが融合した龍が降臨する。
再び照陽の足元に時計盤が現れた。
そして、疾走するは巨槍を構えて現れた赤き機体。
《頂上連結 ロッド・ゾージア5th》 光/火文明 コスト7
クリーチャー:ディスペクター/エンジェル・コマンド・ドラゴン/ソニック・コマンド パワー11000
かつて頂きの座をかけて、日本一を決める大会で戦った《轟く侵略レッドゾーン》と《真・龍覇ヘブンズロージア》。
その2体の栄光を称え、それは生ける伝説として再び顕現する。
「EXライフ起動!! 先ずはシールドを1枚増やすッ!!」
岩本
残りシールド:2→3
「──《ロッド・ゾージア》の効果で、先ずは《アルジェン・ゴルギーニ》を破壊ッ!!」
「ッ……!!」
耐性も何も持たない《アルジェン》は下に敷かれたカード諸共爆散する。
そしてさらに、照陽の足元に青い槍が投げ付けられ、突き刺さる。
「更に効果を起動ッ!! 次のターン、相手はクリーチャーを1体しか召喚出来ないッ!!」
轟速の名を欲しいがままにする自己軽減、そして茨のように相手を絡めとるロック能力。
この効果は《一音の妖精》とは違い、《ゾージア》が退かされても解除されない。
完全に1ターンの間、相手にクリーチャーを1体しか出せないようにする効果だ。
尤も、EXライフによって1度ならばシールドを犠牲にして生き残る《ロッド・ゾージア》を除去するのは至難の業だが──
「仕留めきれないなら、ロックを掛けるってコト!? あれでどうやって残りのシールドを削り切るのヨ!!」
「そしてェーッ!! そのままテメェの残りのシールドもブレイクだーッ!!」
S・トリガーが無ければ、このまま照陽の敗けが確定する。
岩本の残るシールドは3枚。
次のターン、照陽が出せるクリーチャーは1体のみ。
NEO進化させることすら出来はしない。
──しかし。
「じゃあ、その攻撃に対し僕は──
「──ッ!?」
「呪文、《情熱の逆転撃》!! マナゾーンからコスト5以下の自然のクリーチャーを1体、タップ状態で場に出すッ!!」
──S・トリガーのみが逆転のカードではない。
照陽が手札から繰り出したのは《勝熱の逆転撃》。
相手の攻撃中に使い、マナゾーンからクリーチャーを出すという効果を持つ。
「──効果で僕は、マナゾーンから《無頼BEN-K1000》をバトルゾーンに出す。その効果でカードを3枚見て、1枚をシールド化、1枚をマナゾーンに、そして1枚を《無頼BEN-K1000》の下に重ねるッ!!」
「な、何だァ、そんなカードまでェ……!!」
残る2枚のシールドから、S・トリガーは無い。
だが──クリーチャーが1体、場に出ただけで照陽には十二分過ぎる逆転の好機となる。
《無頼BEN-K1000》の下には、2枚目の《デスモナーク》が重ねられたからだ。
「だがッ!! 《ロッド・ゾージア》のW・ブレイクは受けて貰うぞォッ!! ブルァッ!!」
「……そうだね」
照陽
残りシールド:3→1
──しかし。
幾ら破片と血を浴びようと、最早照陽は止まる事はない。
「……倒れない。まだ、負けてない。まだ──ッ!!」
ガリッと舌を噛み、無理矢理意識を保ち──彼は立ち上がる。
「《逆転撃》の効果で、僕は4マナをターン開始時に支払う」
《情熱の逆転撃》 自然文明 コスト5
呪文
逆転撃[自然マナ4]:クリーチャーが自分を攻撃する時、その攻撃中にまだ「逆転撃」を使っていなければ、この呪文を自分の手札からコストを支払わずに唱えてもよい。そうしたら、次の自分のターンのはじめに「自然を含むマナを4つ」支払う。支払えなければ、自分はゲームに負ける。
そして、照陽のマナは──このターン、1枚も使えない。
場には《BEN-K》が残るのみ。
「出せるクリーチャーは1体。でも十分だ。《無頼BEN-K1000》でアタックする時──侵略発動ッ!!」
「侵略ッ!? でも《アポロヌス・ドラゲリオン》は──火のドラゴンじゃないと侵略できないはずだワ!!」
「いや、今回は《アポロヌス・ドラゲリオン》じゃない。《BEN-K》からでも侵略できる、僕のもう1つのとっておきだ。侵略条件は自然のコスト3以上の進化クリーチャー、進化条件は──進化クリーチャー……ッ!!」
《BEN-K》の上にそれは重なり、一気に膨れ上がる。
「──究極進化、《甲獣軍隊 ベアフ・ガンガンオー》ッ!!」
《甲獣軍隊 ベアフ・ガンガンオー》 自然文明 コスト8
進化クリーチャー:ゲリラ・コマンド/ビークル・ビー/侵略者 パワー18000
究極進化:進化クリーチャー1体の上に置く。
侵略:自然のコスト3以上の進化クリーチャー
巨大な熊の姿をしたロボットが降臨する。
そして現れるなり、盤面の全てを消し飛ばしていく。
(ソッカ! テクノサムライのNEOクリーチャーは皆自然文明!! 《ベアフ・ガンガンオー》の侵略元になれル!!)
「──《ベアフ・ガンガンオー》の効果を起動!! コイツよりパワーが小さい相手のクリーチャーを全てマナゾーンに飛ばすッ!!」
「なァ!? だが、《ロッド・ゾージア》はEXライフで生き残るッ!!」
「だから良いんだ。EXライフで消費されたシールドは墓地に落ちる。S・トリガーは発動しない」
《ロッド・ゾージア》が自らの命を写し取ったEXライフシールドが墓地に送られる。
その中身は──S・トリガーの《王道の革命 ドギラゴン》だ。
岩本
残りシールド:3→2
「チィッ、小癪なァ!!」
「そして、シールドをW・ブレイクだ!!」
そのまま《ベアフ・ガンガンオー》の砲撃が残る岩本のシールドを消し飛ばした。
更に《ベアフ・ガンガンオー》の下には《デスモナーク》が重ねられている。
最初の攻撃の終わりにアンタップするのだ。
「──狙いはカードの精霊だッ!! 《ベアフ・ガンガンオー》でダイレクトアタック!!」
浮かび上がる《クラッシュ”覇道”》の影が一斉砲火で討ち滅ぼされた。
あまりにも鮮やかな逆転撃。
その全てを計算していたかのようなブレなさ。
澪音は思わず──
「……スゴい……っ」
──照陽に見惚れていた。
「……やっぱり、貴方が……私の運命──っ!!」
※※※
「気を失ってた人は元に戻るし、貴方のケガも──今はヒドいけど、精霊の力で直に治っていくと思ウ」
「……傍から見りゃあ車か何かに撥ねられたように見えるんだろうな、僕は。でも、治ってくれるなら助かるね。すっごく、痛い」
「暴走してた岩本先生も、多分全部忘れてると思うワ。今日あったことは」
「なら、良かったよ」
寮の一角に救急箱が置かれている。
傷塗れの照陽は、澪音に応急手当をしてもらっていた。
あの後きっと、気を失っていた人たちも目を覚まし、岩本先生も困惑しつつも元の日常に戻っていくだろう──と澪音は語った。
それで良いのだ、と照陽は嘆息する。
「それト──ありがト」
「……え?」
「助けてくれたデショ。じゃなきゃヤバかったワ」
「……体が勝手に動いただけだよ。僕はやぶれかぶれだっただけさ」
「やぶれかぶれ、ネ……確かに余裕ぶってこましゃくれたヤツだと思ってたけど、デュエルはとっても泥臭かっタ」
「泥臭いのはキライかな」
「ううん、大好キ」
にしっ、と澪音は笑ってみせる。
夕陽に照らされているからか、その頬は──少し赤く染まって見えた。
彼女の思いがけない反応に、少しだけ照陽も固まってしまう。
「逆に今回私、全然いい所無かったワ。ほーんと、サイアク」
「そんな事無い。白銀さんが先陣切ってたってくれたから、僕もやるべき事が出来たんだ」
「……シャングリラを撃ってきたヤツ、誰だったんだロ」
ぽつり、と澪音は呟く。
「あれもカードの精霊の仕業?」
「だと、思ウ。だけど……遠くから、狙ってタ」
「何かが心当たりが?」
「あったら苦労してないワ! ……ま、六禍仙である私を狙うヤツなんて幾らでも居るデショ」
「狙うって──」
「アレは、シャングリラを撃ったヤツは暴走した精霊じゃなイ。暴走してるなら直接襲ってくるモノ」
「……君に意図的に危害を加えようとしている精霊使いが居るってこと?」
「そうなるワ」
呆れたように彼女は足を組んだ。
その顔には少なからず怯えのようなものが浮かんでいる。
「……夜道には気を付けないとネ」
「怖い事を言うなよ」
「あ、でも──これからは安心だワ。だって──これからも貴方が守ってくれるんデショ?
「……へ?」
立ち上がる澪音。
彼女は──手を振りながら悪戯っ子のような顔で照陽を見つめると、去っていくのだった。
「……今、なんて言った、あの子」
※※※
──翌朝、HR前。
朝起きる頃には、既に傷は乾いており、澪音の言った通り「真のデュエル」で負った傷創は治りが速いようであった。
しかし問題は──そこではなかった。
「転校生の野郎、何があったんだ……?」
「てか白銀さんも……!!」
「勝手に席替えしてるし……」
「距離が近いってもんじゃなくねえ!?」
何故か照陽の席は澪音の隣になっていたのである。
動かしたのは当然、白銀澪音本人。
そして、当の澪音はと言えば包帯を巻いた照陽の腕に抱き着いている。
あまりにも大きな二つのふくらみが彼の腕を押し付けており、照陽は困惑を隠せない。
「ねえこれはどういう──」
「ダーリン♡ 運命の人♡」
「やっぱりダーリンって言ったね!? ねえ……あんまり大きな声で言いたかないんだけどさ、当たってるんだけど」
「ふふーん、当ててるんダケド?」
「何で!? どういう心境の変化!? 昨日と今日で好感度が北極から南国だ、どうなってんだ!!」
「デュエルしてる時は結構男前だったシ、助けられた時ドキドキしちゃって……私、実はああいうシチュエーション、ずっと憧れてテ!」
照陽はちらり、と周囲を見遣る。
男子生徒達の殺意に満ちた視線が彼を包み込んでいた。
(天戸、絶対に殺す……!!)
(白銀さんのおっぱいを……殺す……ッ!!)
と、彼らの意思は同じであった。
照陽は弁明するように首を横に振るしかなかった。
「君は少女漫画の読みすぎだ! 前から思ってたが、君は聊か恋だとか愛だとか男に夢を見過ぎていないか!?」
「夢を見て何が悪いノ? 貴方もやりたいことがあって此処に来たんデショ?」
「……そ、そうだけど──」
「じゃあ、私は私のやりたいようにやるワッ! これからよろしくネ──ダーリンっ。新婚旅行は月にしまショ♡」
「どんだけ派手なハネムーンやるつもりなんだ!! せめて現実的な範疇にしないか!?」
「現実的なら良いノ? 良いって言った今!! ゆーいーのう!! ゆーいーのう!! ゆーいのう!!」
「やめろ!! 結納コールやめないか!! あ、いや、皆違うんだ。これは白銀さんが一方的に言ってるだけで僕は何にも──」
「──ブールァァァァーッッッ!!」
照陽がいよいよクラスの男子全員から襲われそうになった、その時だった。
HRの時間ということもあり、何事も無かったかのように岩本先生が教室に入ってくる。
「おはよう諸君──今日も良い天気だ、ところで実は先生昨日良い夢を見てよォ」
「えっ」
「えっ」
尚、その手には──ギターが握られている。
「フッ、思い出しちまったぜェ、若い頃──3人でロックバンド”
(3ターン目にS・トリガー貫通しながらGR召喚してきてそうな名前だな)
(出てから1年くらいで殿堂入りしてそうな名前ネ)
「──というわけでェ!! 聞いてください、先生の新曲ゥ!! ”
「えっちょっ、正気ですか!? 朝ですよ、教室なんですよ!? ねえ白銀さん──」
「精霊の気配は感じないワ……どうやらカードの精霊の所為で、思い出さなくて良いモノを思い出しちゃったみたいネ……」
「ロックンロール、ブルァァアアアアアアアアアーッッッ!!」
教室中が爆音で満たされる。
当然ながら周りのクラスと教頭先生から大クレームを頂き、ついでに教室に居た生徒達の鼓膜が死んだのは言うまでもないのだった。
鼓膜を葬る爆音、これぞまさに爆音葬──
「鼓膜が破れるーッ、うわーん、もうロックンロールは懲り懲りだぁぁぁーっ!!」
「結婚式の曲にロックンロールってありだと思ウ? ダーリン♡」
「君はちょっと黙っててくれないかーッ!!」