デュエマプレイヤーは「カードが全ての学園島」で成り上がるそうです。 作:タク@DMP
──戦う事を嫌った少女。
されど、彼女は望んだ。
自分を守るためのチカラを。
自分の代わりに戦ってくれる存在を。
故に彼女は生まれた。
「──今日からオレが代わりに戦ってやる」
喧嘩には絶対に負けなかった。
デュエルでも絶対に負けなかった。
だが、誰もが彼女を恐れ、結果的に一人になった。
「一人じゃねえよ。オレが居るんだからな」
彼女は──少女の唯一無二の「友達」となった。
虚ろでからっぽで、戦うことでしか存在意義を満たせない──空のような少女。
「だってオマエは、逃げる事しか出来ねえ臆病者だ。だから、代わりにオレが戦ってやる」
「ッ……」
空木こころは、その人格を「友達」と呼びながらも疎んだ。
それは、彼女の臆病の裏返し。
「代わりに誰かにやってほしい」と願った事で生まれた存在。
「だって、オレが此処にいるのは、オマエが臆病だって証明だからなァ……!!」
「違う……私は臆病者じゃない……!!」
「オマエの戦うための才能は全部、オレが持って行っちまったからなァ……オマエは出涸らしなんだよ、こころ。ククカカカッ!! 弱虫のオマエは、オレに頼らなきゃいけねえんだ……ッ!!」
名前は──
善良で、臆病な空木こころを反転させた──彼女の中の悪魔。
「そうだ、オレに代われこころ。オレが代わりにやれば全部、全部上手くいく……ッ!!」
戦う事でしか己を満たせない空虚な人格。
彼女は、こころの代わりに戦う一方で、いつもいつも、いつも──こころを「臆病者」「出涸らし」「弱虫」と詰り続けた。
当然だった。
何故ならば──こころが臆病でなければシエルの存在意義は無いも同然、だからである。
──しかし。
ある日、そのバランスがとうとう崩れた。
「そ、そんな! デッキを返してくださいッ……!」
「負けたんだから当然だ。オマエ達のような弱者にこんなデッキは勿体ない」
戦極学園の鉛ハジキが、無銘学園の1年生たちに絡み──デッキを賭けたアンティルールを強要していたからである。
その現場を、こころは目撃してしまったのだ。
しかし──強いストレスが無ければ、空腹でなければシエルに入れ替わる事は出来ない。
『カカカカッ!! 無様だなあ、こころ!! オレに入れ替わらない所為で、オマエが弱い所為で下級生共を助けられないッ!! やっぱりオマエはオレ無しじゃあ何も出来ねえんだよ』
「……ッ」
『なんだ? 鉛ハジキにデュエルを挑むのか? やめておけ! オマエじゃあ無理だ! 引っ込んでおけよ、弱虫! 今はオレは助けられねえんだからな……仕方ねえんだよ!! 弱者はああやって搾取される、仕方ねえことなんだ』
シエルにとって、その罵倒は──いつものように己の存在意義を確認するためのものだった。
こころが弱くなければ、シエルに存在意義はない。
しかし──
「黙って下さい」
──目の前で下級生が絡まれているのを見て、そして──あまつさえそれを「見過ごせ」というシエルにとうとうこころは堪忍袋の緒が切れた。
こころは──絡まれている下級生の元に歩いていた。
『ああ!? テメェ、オレに逆らうのか!! こころッ!!』
「貴女がやれないなら、私が代わりにやりますッ……!! 見て見ぬフリなんて出来ない、あの子達は泣いてるッ!!」
『無理だッ!! 無駄だッ!! やめろッ!! オマエの黒単アビスなんぞで勝てる訳がねえだろ!! 止まれッ!!』
「それなら──貴女のデッキを代わりに使いますッ!! 後輩たちを、見過ごせませんッ!!」
『止まれッ!! 臆病で弱虫で出涸らしのオマエにッ!! 出来る訳がねえッ!!』
「貴女は私で、私は貴女ッ!! 使いこなせるはず……ッ!!」
──しかし。
結果はご存知の通り。
鉛ハジキに、いきなり初めて使うデッキで勝てるはずが無く。
喰らいつくように挑んだ2戦目で使った黒単アビスでも結果は敗北。
結果的に──こころは思い知ることになった。
何処までいっても──自分とシエルの差は大きいのだ、と。
「それでも、照陽さんと一緒なら……私は……」
だが、そんな自分相手でも照陽は手を差し伸べてくれた。
少しでも自分で戦えるように、強くなれたなら──
「無駄なんだよ全部。無駄だからやめろ」
──だが、それさえもシエルは否定する。
それはシエルにとって──彼女自身の存在意義を否定するに等しい行いだったからである。
「戦うのは……オレの役目だ、こころ……ッ!!」
シエルにとってデュエルとは
己の存在意義を賭けた──戦いだ。
※※※
「2マナで《FORBIDDEN SUNRISE ~禁断の夜明け~》を展開ッ!!」
《FORBIDDEN SUNRISE ~禁断の夜明け~》 闇/火文明 コスト2
禁断フィールド
──それは、禁断の領域。
ドラゴンにとっての究極の初動が《メンデルスゾーン》ならば──コマンド種族にとっての究極の初動は《FORBIDDEN SUNRISE》だと誰もが答えるだろう。
真っ白だった空間は一瞬で、禁忌の太陽が昇る焦土へと塗り替えられる。
そして、その領域を制御するための4つの封印が置かれるのだった。
《FORBIDDEN SUNRISE ~禁断の夜明け~》
封印:残り4
「コイツが存在する限り、オレのコマンドはコストが2軽減される」
(ただし、それは封印が残っている間だけだ)
《FORBIDDEN SUNRISE ~禁断の夜明け~》に置かれた封印──裏向きの4枚のカードは、同じ文明のコマンドが出る度に墓地に置かれていく。
そしてこのフィールドは封印が全て墓地に置かれれば山札にシャッフルされる。
(つまり、《FORBIDDEN SUNRISE》が軽減できるコマンドは最大でも4体までということになる。盤外カードが絡まないオリジナルルールなら猶更だ)
「僕は2マナで《場和了GO-YAMA58》を召喚だ」
「それだけか? じゃあ、早速アクセルを掛けていくぜッ!!」
シエルのマナが3枚、タップされていく。
彼女の背後から影が沸き上がった。
無数の触手が生え、立ち込め、そして這い上がる。
それは魂を求める虚にして究極の肉体。
(──授業でやってたところか……ッ!!)
その姿に当然、照陽も覚えがあった。
魂と肉体に別たれたアビスベル=ジャシン帝。
その肉体が独りでに動き出し、暴走した怪物。
「……あいつは飯を食って飢えを満たす。だけどな、オレは飯を食っても腹は膨れねえ。空っぽなオレを満たすのは──血沸き肉踊る戦いだけだ」
シエルの導きに従い、それは顕現する。
無数の触手を生やした巨大な蛇神。
またの名を──もう1つのジャシン。
魂を持たぬ虚ろなる存在。
(アビス使いのこころさんが二重人格で……その片割れが使うのが──よりによってコイツか!!)
「飢えを満たせ、《
(別たれたジャシンの片割れ、肉体のみの存在──ヴリドガルド!!)
──大きく口を裂いたヴリドガルドが獲物を捕捉し、牙を剥く。
その圧倒的な悍ましさを前に、流石の照陽も身震いするのだった。
《
G-NEOクリーチャー:デーモン・コマンド/アビスロイヤル パワー7000
「惹かれ合ったんだろうなァ。器だけの存在のコイツと、戦いだけしか己を満たせないオレ。そっくりだからなァ!!」
その空っぽの器を満たすべく、ヴリドガルドは「食事」を始める。
触手がシエルの山札に伸びた。
そこから表向きになるのは3枚のカード。
「──超魂レイド発動ッ!! コイツの進化元となるクリーチャーを、コイツの下に置くッ!! 選ぶのは《デスライガー》!!」
そして、魂となる存在を得たことで《ヴリドガルド》は動き出す。
狙いは場に居る《場和了GO-YAMA58》だ。
「《ヴリドガルド》はマッハファイター!! そのまま破壊するッ!!」
爆散する《GO-YAMA》。
それを見て歯噛みする照陽。
並大抵のクリーチャーの前では《ヴリドガルド》に破壊されてしまう。
(というのも、この《ヴリドガルド》はとても面倒な効果を持つ。先ず、マッハファイターでスレイヤーという点だ。特にスレイヤー!! バトルした相手を破壊する効果の所為で、こっちのクリーチャーは確実に死ぬ)
更にバトルに負けてもG-NEOによる耐性がある《ヴリドガルド》だけは生き残ってしまう。
どんな相手でも確実にバトルで破壊する──それが《ヴリドガルド》の恐ろしい点なのだ。
(恐らく白銀さんはゼニスを一度は展開出来たんだと思う。だけど、《ヴリドガルド》のスレイヤーで水晶マナを大きく減らされて──負けてしまったんだろうね。だが、このデッキなら問題はない。スレイヤーなら《御代紅海》の効果でスルーできるからね……!!)
「喧嘩なら誰にも負けねえ……ッ!!」
「なら、これならどうだろう。《コハク》を召喚して、そのまま《一音》に進化ッ!!」
手札を使い切る勢いでの展開ではあるが──完全態の《一音の妖精》が照陽の場に立つ。
御札がシエルの周囲に現れ、クリーチャーと呪文を完全にロックした。
「これで君は1体しかクリーチャーを──」
「ヴァーカが!! 要するに、そいつの後続を断てば良いだけの話だッ!! 4マナで──《ヴリドガルド》をGーNEO進化ッ!!」
──尚。
1体だけで十分だと言わんばかりにシエルは《ヴリドガルド》を進化させる。
「──《魔誕の導師 ブラックルシファー》!!」
《FORBIDDEN SUNRISE》残り封印2
現れたのは獣の顔を持つ悪辣なる導師。
その杖が振るわれれば、墓地のカードが《ブラックルシファー》の下へと重ねられていく。
「しまった、そいつは……ッ!!」
そして照陽もそのクリーチャーの効果はよく知っている。
進化元が3枚揃った時、それが《ブラックルシファー》の本領発揮だ。
「《ブラックルシファー》のメガメテオバーン3発動ッ!! 相手のクリーチャーは、
《魔誕の導師 ブラックルシファー》 闇/火/自然文明 コスト6
G-NEOクリーチャー:デーモン・コマンド パワー11000
・登場時とターン開始時にマナゾーンと墓地からカードを最大1枚ずつこのクリーチャーの下に置く(今回は墓地のカード)。
・メガメテオバーン3:攻撃時に3枚進化元を墓地に送る事で、次の自分のターンのはじめまで、相手のクリーチャーが出た時、そのクリーチャーを破壊する。
照陽の身体に黒い呪縛印が刻まれる。
そして、杖から放たれた衝撃波でシールドが2枚砕かれた。
相手にロックを掛けたつもりが、今度は照陽の方がロックを掛けられてしまったのである。
着地したクリーチャーは《ブラックルシファー》の効果で即座に破壊される。
つまり──
(場に出ても、直ぐに死んじゃうってことじゃなイ!!)
このロックが掛かった状態で相手の展開を大幅に制限。
そして、砕け散ったシールドは照陽の身体を切り裂いていく。
「トリガー無し……ッ!!」
(参ったぞ……! 《ブラックルシファー》の効果で横展開が出来なくなった! これじゃあ《一音の妖精》からNEO進化させないといけない……!)
歯噛みする照陽。
最早《一音の妖精》を維持しながら《御代紅海》を出すプランは瓦解した。
何故ならば、進化元なしで《御代紅海》を召喚した瞬間、《ブラックルシファー》の効果で蒸発してしまうからだ。
天戸照陽:《ブラックルシファー》の効果でこのターンまで出したクリーチャーが即座に破壊される。
(一手一手は致命的じゃないが、それが複雑に絡み合って僕を確実に追い詰めてくる!! これが──火闇自然ヴリドガルド!!)
しかし、手が無いわけではない。
横展開が出来ないにせよ──今場には進化元のある《一音の妖精》が居るのだから。
「僕は4マナで《一音の妖精》を《PERFE910-御代紅海》に進化ッ!! 《ブラックルシファー》の破壊効果は《御代紅海》で無効化されているよッ!!」
《ブラックルシファー》の衝撃波を受け止め、降臨したのは《御代紅海》。
構成カードは3枚になっており、既に完全耐性を得た後だ。
しかし、肝心の《ブラックルシファー》のパワーは11000。
バトルで勝つことは出来ない──
(ならば無視して顔面に攻撃するしかない!!)
「《PERFE910-御代紅海》の下に重ねるのは《アルジェン・ゴルギーニ》!! ブレイク時効果で山札の上から2枚見て──シールドを2枚追加だ!!」
《PERFE910-御代紅海》
・超魂Xにより、ブレイク時にシールドを追加するかマナを加速
「──そして、W・ブレイクッ!!」
砕け散るシールド。
その破片が──シエルの肌を切り裂く。
鮮血が飛び散り、その様を見て──照陽は息を呑んだ。
これは真のデュエル。シールドの破片は刃となってプレイヤーを襲う。
「……まさか怖気づいたなんて言わねえよなあ、天戸照陽ッ!!」
傷ついているのは──シエルでもあり、こころでもある。
それを実感する度に戸惑いが生まれる。
しかし。今此処でシエルを止めるには、真のデュエルで彼女を捻じ伏せるしかない──
「オレはなァ、怒ってるんだッ!! 自分のデッキを勝手に使われて、挙句の果てに無様に負けられたッ!! あんな奴に、デッキを触る資格はねぇんだよ!!」
「……それは確かに良くない、デッキはデュエリストの魂だ……ッ!! でも──ッ」
「そうだ。こころは分かっちゃいないんだ。このデッキを使いこなせるのは、他でもないオレだッ!! オレだけなんだッ!!」
嗜虐的な笑みを浮かべ、シエルは言い放つ。
「──戦いこそがオレの存在意義ッ!! 弱虫は引っ込んでれば良いんだよッ!! 《ブラックルシファー》の効果発動ッ!! 墓地からカードを1枚重ねる──」
「ッ……!! 探しているカードは……」
「そうだ。此処まで見えねえとなると、恐らくデッキの中にそろそろ眠ってるんじゃねえか……? 《ブラックルシファー》を《ヴリドガルド》に進化ァ!!」
再び場に現れる蛇神。
同時にフィールドに重ねられた封印もまた1つ墓地に送られる。
残る封印は1つ。軽減で出せるコマンドも、残り1体だ。
(ロックを解除した……《御代紅海》が居るとあまり効果が無いからか! 多分、狙いは──超魂レイド!! という事は恐らく……!!)
──超魂レイド。
それは、デッキから3枚を捲って進化元となるクリーチャーを下に重ねる能力。
もしもその中に超魂Xを持つクリーチャーが居れば、その恩恵を大きく受ける事が出来る。
「──《ヴリドガルド》の下に重ねるのは……やっぱりそこにあったかッ!! そろそろ見えると思ったぜ、4枚しっかり積んでるんだからよッ!! 来い、《
これこそまさに、シエルの狙い。
彼女はずっと、封印や素引き、そして超魂レイドで《
素引きすればマナに置いて《ブラックルシファー》に重ねる。封印で墓地に落ちても《ブラックルシファー》で重ねる。
「これで全ての準備は整ったァッ!! テメェをズタズタにする準備がなァ!!」
だが、そのいずれでも《
故に──最終手段でデッキから掘り起こしたのである。
相手の墓標に敗北の二文字を刻む──キーカードを。
「《ヴリドガルド》でテメェを攻撃する時──先ずは侵略進化を宣言ッ!! 墓地から出すのは《S級不死 デッドゾーン》ッ!!」
──《ヴリドガルド》の身体が裂け、そこから飛び出すのは紫に染まった廃車の機体。
赤いマントを翻し、それは戦場をズタズタに蹂躙する。
《S級不死 デッドゾーン》 闇文明 コスト6
進化クリーチャー:ソニック・コマンド/S級侵略者 パワー12000
S級侵略[
これで4体目のコマンドの登場。
《FORBIDDEN SUNRISE》はデッキへ戻される。
だが同時に墓地のカードが1枚、シエルの手に渡った。
(完璧だ。これで、あいつを黙らせることが出来るッ!!)
猛攻が──始まる。
「《デッドゾーン》の効果起動ッ!! 《御代紅海》をパワーマイナス9000して破壊だッ!! 言っただろがッ!! 何もかもが無駄だってなァ!!」
戦場を爆走する《デッドゾーン》。
そのアームが《御代紅海》を引きずりまわし、そして爆砕する。
パワーマイナスは数少ない《御代紅海》の弱点だ。
(クソッ、最近毎回出す度に何らかの手段で突破されるな、僕の《御代紅海》!!)
「更にッ!! 《
《S級不死 デッドゾーン》
・超魂Xにより、自身よりもコストが小さいクリーチャーを墓地から場に出す。
デッドゾーンのアームが地面に突き刺さる。
そこから引きずり出されるようにして──現れたのは最初に墓地へ落とされた《ヴリドガルド》だった。
「──さあ、地獄を楽しみなァッ!! 再び来い、《