デュエマプレイヤーは「カードが全ての学園島」で成り上がるそうです。   作:タク@DMP

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第22話:導火

「そっくり……そっか。本当に、そっくりなんだ」

「……ああ。ただ一つ違うのは──カードにはあまり興味が無かったこと、かな。何処にでもカードを持ち込む僕に、文句を言ってたよ」

「え、信じらんない。いつでもデュエルを受けられるようにデッキを持っておくのはデュエリストのたしなみでしょ?」

 

(……それは僕の世界の常識だと変な奴扱いだなあ)

 

 それでも出来た妹だった、と照陽は思い返す。

 デュエマにのめり込む自分を──何だかんだで応援してくれたからだ。

 

(そして──この世界の常識に染まってるこの子は、やっぱり僕の妹じゃない)

 

「……謝って、おきたかった」

「……え?」

「貴方には迷惑を掛けたから。私は──ゴルギーオージャーの力にアテられて、おかしくなってた。ずっと、ずっと──おかしくなってた」

 

 円架は──柵にもたれ掛かった。

 

「……良い学校に進学したのも、お金を稼いでたのも、全部家族のためのはずだったのに。いつの間にか──私は私利私欲を満たすためにお金を稼いでた」

「ッ……」

「私、昔っからお金が集まってくるの。だから、ゴルギーオージャーと惹かれ合ったのかもしれない。周りからは羨ましがられるしトラブルにも遭うし、ロクな力じゃないって思ってたけど、家族を助けられるならそれでもいいと思った」

 

(……そうか。僕は円架がトラブルに遭わないように守ってやったり、色々注意してたしな……)

 

 この世界で照陽は「居ない」ことになっている。

 円架を一番近くで守ってくれる人も──「居なかった」ことになっている。

 

「ごめんなさいッ!! 意識はボンヤリしてたけど、貴方を真のデュエルで傷つけたのも、ちゃんと覚えてる……!! 痛かったと思う……あのままトドメを刺してたらと思うと、ゾッとする……!」

「良いよ、過ぎ去ったことだ」

「でもね、ゴルギーオージャーは──私を守ってくれてたんだ。悪いのは私。あの子の意識を制御し切れなかった」

「……え?」

 

 飛び出した意外な言葉に照陽は目を丸くした。

 

「初めてゴルギーオージャーと出会った時、あの子が言ってた」

 

 ──天戸 円架。天性の黄金律の持ち主。何もせずとも金に愛されし運命の持ち主。だがそれ故にオマエは──邪悪に狙われている。

 

「……その言葉通り、数日後に変な靄のかかった怪物に出会ったんだ。私は、ゴルギーオージャーの言葉を受け入れて……ひとつになった」

「だから、クリーチャーと意識が合体していたのか」

「あの怪物が何だったのか、今となっては分からないけど……」

「その怪物、何か言ってなかった?」

「言ってた」

 

 彼女は口を開く。

 鮮明に──記憶に残っているからだ。

 

 

 

「”やっと見つけた……良質なデュエリストの魂……”って」

「──ッ!?」

 

 

 

 その言葉には聞き覚えがあった。

 照陽達が異世界に迷い込むことになった切っ掛け。

 空間が崩落した時に聞こえてきた謎の声の言葉と同じだ。

 

(あの声の主の狙いは……()()()()()()()()()()のか……ッ!? まさか、こっちの世界の円架を狙って、ダメだったから……僕の世界の円架を狙った……!?)

 

 となれば気になるのは声の主の正体であるが──此処までの流れで薄々照陽は察しがつきつつあった。

 

「君を狙っているのはもしかして──」

 

 ──次の瞬間だった。

 

 

 

 銃声が響く。

 

 

 

「──ッ!?」

 

 

 

 足元に──穴が穿たれていた。

 照陽も円架も驚愕し、血の気が引いた。

 

「あ、あの時と同じだ──ッ!!」

「畜生何処から……ッ!!」

 

 思わず照陽は上を見上げる。

 屋上のライトに照らされ、貯水タンクの上に立つ影。

 それは黒い外套に身を包んでおり、そして歯車仕掛けの大きな銃を手に持っていた。

 

「あ、あいつだッ!! アイツが私を襲ったんだッ!!」

「ッ……!!」

 

 凄まじく気分の悪い気配が黒い外套の人物からは伝わってくる。

 相容れない、と一目で確信させる程に。

 そのまま外套の人物は貯水タンクから降りる。

 その表情はローブで隠され、全く伺い知る事が出来ない。

 

「──天戸 照陽……まさか二度、相まみえる事になるとはな」

「ッ……二度、まさか」

 

 ローブの人物は自ら外套を捲り上げる。

 そこには本来、人間の腹があるはずだったが──ガチャガチャと音を立てて歯車が回っている。

 あるはずの臓腑がそこにはなく、代わりに歯車が回っている。

 そして、歯車の奥には不気味な紫色の光が放たれていた。

 照陽は思わず叫ぶ。

 

「──オマエは──COMPLEXッ!!」

「……COMPLEX!? COMPLEXって……あの、クリーチャーの……ッ!?」

 

 その問いに──外套の人物は肯首した。

 

「ッ……でも、COMPLEXってこんなのだったっけ!? あいつって壺みたいな姿じゃ──」

「ああ当然だ。今の私は完全な器を手に入れたからな」

 

 外套の人物が顔を隠すローブを取り払う。

 

 

 

「……()()()()()()()という……完全な器を……ッ!!」

 

 

 

 焦げ茶色の髪。

 トパーズ色の瞳。そして幼さを残した童顔。

 その全てが、今隣にいる円架と酷似していた。

 

「……円、架……!!」

「何アレ、何で……私が二人いるの……ッ!?」

 

 COMPLEXは──邪悪に笑う。

 その器となったのは、天戸円架。

 今度こそ間違いなく照陽の妹である彼女であった。

 

「……天戸照陽。オマエに浅くない傷を負わされた私は……力を取り戻すための器を探した。適当だったのは天戸円架。黄金律の持ち主だった」

「ッ……ま、待って。私は此処に居るんだけど──ま、まさか、あんた……あの時のバケモノ!!」

「……繋がったな。こっちの世界の円架はゴルギーオージャーが守っていて、深手を負ったCOMPLEXじゃあ寄生出来なかった」

「そうだ。だから、探したぞ……!! 色んな世界を観測し、同じ黄金律を持つ少女を……!! 聊か余計なものまで連れてきてしまったが……関係はない。一度勝った相手なのだからな」

「……随分とナメられたもんだな」

 

 照陽は目を見開く。

 自分の命より大事な妹に好き勝手されて、黙っていられるはずがない。

 彼の背後には──ボルメテウス・武者・ドラゴンが浮かび上がっていた。

 

「御託はどうでもいい──円架を返せッ!!」

「……頭が高い」

 

 飛び出すボルメテウス・武者・ドラゴン。

 しかし、COMPLEXの魔銃はその脳天を正確に狙い──魔弾を撃ち放つ。

 

「──ッ!?」

 

 斬りかかる寸前、身を翻すボルメテウス。

 武者としてのカンはその魔弾が致命の一撃であることを悟ったのだ。

 巨体に見合わぬ瞬足。

 すれすれで魔弾は避けられ──彗星の如く夜空に閃光を描いた。

 

「えっ……!?」

 

 照陽は振り向いた。

 後ろに見えていた遥か遠くに聳える山が──島の遥か向こうにある山が紫色の禍々しい光と共に消し飛んだのである。

 

「ッ……な、なんだあれ、どんだけ射程あるんだよ……!!」

「チッ……アレを避けるのか……!! やはり私の邪魔をするつもりか、サムライッ!!」

「グルルルオオオオオオオオオオオッ!!」

 

 そのまま刀を振り下ろす武者・ドラゴン。

 しかし、COMPLEXもまた巨大な魔銃でそれを受け止める。 

 受け止めるが──

 

「ッ……!?」

 

 ──ボルメテウスの刀は、魔銃を切り裂きバラバラにしてしまうのだった。

 

「円架を返せ……!! 今すぐにだッ!!」

「只の精霊の力じゃあないな……ッ!! 天戸照陽の感情に呼応したか、ボルメテウス!! だが──この器に手出しはさせない」

 

 空中に歯車が幾つも浮かび上がる。

 高速で回転したそれは、ボルメテウスを四方八方から取り囲み、挟み込んで回転する。

 

「グルァアアアアアアアアアアア!?」

 

 苦悶に満ちたボルメテウスの絶叫が響き渡った。

 

「──クリーチャーの癖に人間に絆されたか、ボルメテウス!! どちらにせよ、この世界でのオマエは……マナ不足でまともに戦えんだろうッ!! ──その点私は最強の器を手に入れた……!! オマエでは私には勝てんッ!!」

 

 体を切り刻まれ、爆散するボルメテウス。

 その身体は粒子となり──元のカードへと戻ってしまうのだった。

 

「ッ……ボルメテウス!!」

「……無様だな、天戸照陽。クリーチャーを失ったオマエでは、私に挑むことも叶うまい」

 

 そして。

 そのカードは煙を上げて──灰色に染まっていくのだった。

 照陽はカードを拾い上げる。

 だが、ボロボロと炭のようにカードは崩れ落ちていく。

 

「そ、そんな……ボルメテウス……!?」

「……天戸照陽。今度は、見ていくが良い。私が完全なる願望器となり、世界を捻じ曲げるサマを」

 

 踵を返し──立ち去っていくCOMPLEX。

 今の照陽では、もう立ち向かう事は出来ない。

 何故ならば、ボルメテウスのカードは──炭のように燃え尽きてしまったからだ。

 

「……ごめんよ、ボルメテウス。僕の為に戦ってくれたのに……僕は、君に何も出来なかった……!!」

「そんな……ボルメテウスまで……!!」

 

 拾い上げたカードは、最早原型を留めていなかった。

 燃え尽きたそのカードは火の粉を噴き──そして。

 

 

 

 ──火の粉は竜の形を成し、再び照陽の前に現れる。

 

 

 

「天戸……照陽……」

 

 

 

 ボルメテウスは──初めて、照陽の名を呼んだ。

 

「ボルメテウス……? 本当に君の声、なのかい……?」

「──私はいつも、オマエの事を見ていた……照陽……オマエに拾われた、あの日から」

「拾われ、た……?」

「ああ、そうだ……ッ!! オマエはもう覚えていないかもしれないが……私はあの日、死に体で……超次元からオマエの居た世界に流れ着いた」

 

 暖かい風が照陽を包み込む。

 それで照陽はやっと気づいた。

 自分が今まで持っていたボルメテウスもまた、精霊ではなく──クリーチャーの世界からやってきた、本当のドラゴンだったのだ、と。

 

「……だが私はオマエの居た世界では力を保てず、カードの姿となってしまった……それを拾い、今の今まで大事にしてくれたのがオマエだった。力を失った私をずっと庇護してくれたことを、今でも感謝している」

「……褒められることなんて、何もしてないよボルメテウス。僕は一度、君を売りかけた」

 

 家の危機に、照陽は自分の持っていたカードを全て売り払いかけた。

 その中には──ずっと大事に持っていたボルメテウスのカードも含まれていた。

 

「私は、オマエとオマエの妹の家族を想う熱い気持ちを誰よりも知っている。それに胸を打たれた。その為ならばこの身を犠牲にしても良い、と」

「そんなわけない……僕は……」

「くたばり損ないの私が……少しだけ生きながらえる事が出来た。だが、このままでは……あのCOMPLEXを野放しにしてしまう」

「……ッ」

 

 照陽は拳を握り締める。

 

「……ボルメテウス。僕はどうすれば良い……? 僕は、円架を取り戻したい……!!」

「私は今まで、オマエに負担をかける事を憂い──オマエから力を貰うことを避けてきた」

「……ってことは……!!」

「そうだ。私と一つになる。そうすれば……もう一度私は生まれ変わる事が出来る。だがそれは──オマエの持つ生命の力を、半分私に明け渡すということでもある。オマエが滅べば私も滅ぶ。逆もまた然り」

 

 つまり、真の意味での一蓮托生。

 照陽とボルメテウスはひとつの命となる。

 照陽が死ねばボルメテウスも死に、ボルメテウスも死ねば照陽も死ぬ。

 そうなることを意味していた。しかし──

 

「やるよ。それで妹を助けられるなら」

「……覚悟は出来ているのか」

「君と一緒に戦えるのなら、悔いはないよ」

 

 ──天戸照陽の答えは決まっている。

 

「……すまない。こんな方法でしか……」

「謝らないで。僕は嬉しいんだ。只のカードゲーマーだった僕が……大好きな君の為に──力を貸せるんだ」

 

 炎が照陽を包み込む。

 灰と化したカードは──再び再生する。

 そして、彼の指に握られていた。

 その様を見て、円架は呟く。

 

「ボルメテウスが……生まれ変わった」

 

 その龍は滅んでも尚、炎となって再び生まれ変わる。

 勝利を齎す始祖のサムライ。その名は──

 

 

 

「──行くよ、《ボルメテウス・武者・ドラゴン「武偉(ブイ)」》。今度は……お守りじゃない。()()()()()()!」

『我が刃は主の為に。任せろ照陽ッ!!』

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