デュエマプレイヤーは「カードが全ての学園島」で成り上がるそうです。   作:タク@DMP

25 / 46
第25話:存在証明

「……《ドキンダンテ》の効果、僕が知らないとでも思ったのか? 勿論、その弱点もだ」

 

 照陽のシールドが全て吹き飛ばされる。

 その身体がシールドの破片に引き裂かれ、ズタズタになっていく。

 傷口を上塗りし、更に抉っていく。

 だが、その中で彼は一切の感情も感じさせない目で、敵を見据えた。

 

(コイツは確かに強大だ。恐ろしい切札だ。この島に来た最初のデュエル──鉛君との試合で、こいつを出されてたら僕は負けていた)

 

 しかし──と照陽は割られたシールドのカードを前に突き出す。

 今はもう、負けない。負けるわけにはいかないのだ。

 

「G・ストライク、《超魂設計図》に《場和了GO-YAMA-58》。このデッキは元からG・ストライクが山ほど入っているからね。《c0br4》と《フミシュナ》の攻撃を止める」

「──ッな!? 止められた!?」

「弱点その1。《ドキンダンテ》はG・ストライクを止められない」

「だからどうしたッ!! オマエが何かをすれば、その瞬間に《ドキンダンテ》の奇跡が発動する!! 《ルシファー》でターンを強制終了させてやるぞッ!!」

 

 そうなれば、シールドが無い照陽の敗北は確定する。

 盤面のカードだけで勝とうにも、場には効果が消えたクリーチャー2体のみ。シールドは3枚、トドメを刺すどころか割り切れない。

 加えて「効果を消す」という《ドキンダンテ》の力が掛かっている限り、進化させても進化先のクリーチャーにもその効力が掛かってしまう。

 ──尤も、そんな事は照陽も理解している。

 

「こっちのオマエの切札は《アポロヌス》だったな。さあ、オマエも《アポロヌス》を出してみるか? 我が《ドキンダンテ》の力で、進化先の効果も消え失せているだろうがなァ!!」

「──だから言っただろ。()()、って」

 

 照陽は──《SHIDEN》のカードに手を掛けた。

 

「弱点その2──《ドキンダンテ》は召喚以外の方法で場に出たクリーチャーを咎められない。《SHIDEN》で攻撃する時、革命チェンジを宣言」

「ッ!? 侵略ではない、だと!?」

 

 槍が突き刺さっても尚走り抜ける《SHIDEN》と、手札から降臨した天使龍がバトンタッチする。

 盤面に現れるは、琉麗なる精霊龍。

 その旋律は、禁断の奇跡など簡単に打ち消してみせる。

 

 

 

「革命チェンジ、《音卿の精霊龍ラフルル・ラブ》ッ!!」

 

《音卿の精霊龍ラフルル・ラブ》 光/水文明 コスト7

クリーチャー:エンジェル・コマンド・ドラゴン/革命軍/ドレミ団 パワー7000

革命チェンジ:光または水のドラゴン

 

 

 

 静かなる旋律が流れ、全ての呪文は効果を失った。

 《ラフルル・ラブ》の効果は──登場時に相手が呪文を唱えることを禁じるのだ。

 

「バ、バカな──我が禁断の奇跡が、何故──ッ!?」

「弱点その3──そもそも()()()()()()()()()()()《ドキンダンテ》の効果は意味を成さない」

 

 《ラフルル・ラブ》がCOMPLEXに飛び掛かる。

 その時、場に残った《リュウジン・ドスファング》が光り輝く。

 

「さあ、此処からだ。《リュウジン・ドスファング》のメクレイドを解決──山札の上から《無頼BEN-K》を呼び出す」

 

 メクレイドで出たクリーチャーは()()()()だ。

 しかし、もう呪文を唱えられないCOMPLEXではどうやっても照陽に干渉する事が出来ない。

 

「《ドキンダンテ》による破滅は回避された。呪文を封じてしまえば、そいつの効果は何も怖くはない。《ラフルル・ラブ》でW・ブレイクだッ!!」

「ぐ、あぅ……何故だ……たった1枚のカードで……我が牙城が崩された……ッ!?」

「COMPLEX。もっと良いビルダーにデッキを組んで貰うべきだったな。僕なら《無双と竜機の伝説(エターナル・ボルバルエッジ)》や《禁断竜王Vol-Val-8》でEXターンを取って、そもそも相手にターンを渡すことを許さなかっただろうね──」

「お、のれ、天戸照陽ォォォーッッッ!!」

 

 

 S・トリガーは発動しない。

 いずれも呪文だ。

 冷酷に見下ろす照陽。

 その感情に呼応するようにして《無頼BEN-K1000》の目から赤い光が迸る。

 

「《無頼BEN-K1000》で最後のシールドをブレイク」

「──な、無い!! 何も無いッ!! 馬鹿な、この私が敗れる!? 一度勝った相手に!? この願望器である我が!?」

「ッ……お兄ちゃん」

 

 ぽつり、とこの世界の円架が呟いた。

 今此処で戦っている照陽が、彼女の記憶の中にある戦う兄と結びついた。

 だが、彼の使役するクリーチャーたちは、彼女の記憶の中のそれとは大きく異なる。

 何処まで行っても、この天戸照陽は並行世界上の同一人物でしかないのである──

 

「……ボルメテウス、くたばってばっかいるなよ。立ち上がれッ!」

「ああ、照陽──!! 此処まで繋げたもの、無駄にはしないッ!!」

 

 槍が突き刺さって尚、血反吐を吐きながら尚、ボルメテウスは立ち上がる。

 そして駆け出し、COMPLEX目掛けて斬りかかる──

 

 

 

「オマエにもう──明日の太陽は昇らない」

 

 

 

 ──真っ二つに斬り裂かれる歯車の機神。

 その真核は確かに刀で貫かれた。

 COMPLEXが崩れ落ちると共に、空間も崩落していくのだった。

 

 

 

 ※※※

 

 

 

「さあ、返してもらうよ。円架を」

 

 

 

 真のデュエルでの敗北。

 ボルメテウスは確かにCOMPLEXの核を貫いた。

 もう、COMPLEXはその存在を維持することは出来はしない。

 倒れ伏せていたCOMPLEXは起き上がる。

 

「……ク、クク」

「……何がおかしい?」

「確かに我は滅び去る……だが……この少女も、みちづれだ……ッ!!」

「──な、何だと!?」

 

 嗤うCOMPLEX。

 だが、確かに円架の身体の殆どは歯車に置換されてしまっており、COMPLEXが瀕死となった今、その歯車も消え失せていく。

 

「オマエと同じだ、天戸照陽!! 我と天戸円架は一つになったのだ……我が滅べば、この少女も滅ぶサダメ……!!」

「ひ、ひどい……ッ!! こんなのってあんまりだよ!! 折角、会えたっていうのに!!」

 

 叫ぶのはこの世界の円架だ。

 しかし、もう体の崩壊は止まらなかった。

 妹の身体が崩れ落ちていく様を見ながら──照陽は唇を震わせる。

 だがそれでも、一抹の可能性を信じ、叫んだ。

 

「妹を助ける方法はないのかッ!?」

「ある、一つだけ……!!」

「教えろ、願望器ッ!! 早く言えッ!!」

「オマエの()()を、この少女に差し出すのだ……ッ!!」

「──存在、を……!?」

「そうだ……この少女は魂のみの状態。魂を入れる器、即ち体だけが欠けている。オマエの肉体を差し出せば、この少女の魂の器は担保される」

「……」

 

 照陽に迷いはなかった。

 ボルメテウスが叫ぶ。

 

「照陽ッ!! ……そいつの言っていることが本当だとは限らないッ!! 罠かもしれない……ッ!!」

「……ごめん、ボルメテウス」

「ッ……!!」

「僕は、円架を助ける為に此処まで来たんだ。君と一つになって……君を犠牲にしてしまうのは、とても悲しいし辛い。だけど──僕には、円架を見捨てることなんて出来ない……」

「……そうだな、照陽。それが正しい。私は、その為にオマエと一つになったんだ。悔いはない」

 

 照陽は一歩踏み出した。

 そしてCOMPLEXに──否、その中に囚われた妹に手を伸ばす。

 

「……ごめんよ、ボルメテウス。本当に……ッ」

「照陽、何を謝る必要がある。死に損ないの竜が……少しだけ長く生きられた。私はもう満足だ」

「……円架。僕の身体をあげるよ。どうなるのか分からないけど……それで君が生きられるなら、僕は──僕は自分の命は惜しくない」

 

 

 

「待ってッ!!」

 

 

 

 横から何かが照陽を突き飛ばした。

 真のデュエルで体がボロボロになっていた彼は踏ん張ることすら出来ず、地面に倒れ伏せる。

 起き上がった照陽が目にしたのは──()()()()()()()()()()、COMPLEXに手を伸ばしている姿だった。

 

「ダ、ダメだ──どうしてッ──!?」

「だってダメだよ。折角出会えたのに離れ離れになるなんて、可哀想だよ……!!」

 

 円架はCOMPLEXの手を取る。

 その身体が──青白い光に包まれ、消えていく。

 起き上がり、止めようとした照陽だったが、もうその身体は限界を迎えており──手を伸ばすのが精一杯だった。

 

「それに、この子は別の世界の私なんでしょ……? 一人にしたら、何しでかすか分からないじゃん……そうでしょう? ()()()()()……!」

「ッ……それでも!! こっちの世界の僕は……君に生きていてほしいと、願った筈だッ!!」

「私はもう満足だよ。最後に……お兄ちゃんのこと、思い出せたからさ」

 

 円架の肉体が崩壊し、COMPLEXに取り込まれていく。

 そして──崩壊しかかっていた円架の身体に青い粒子が纏わりついていく。

 

 

 

「向こうの私と……仲良くしてあげてね……」

「ッ……」

 

 

 

 そう言い残し、()()()()()()()()()は──完全に消滅した。

 後に残るのは──COMPLEXの苗床となっていた、()()()()()()()()()天戸円架だけ。

 器は確かに受け渡され、身体は歯車一つ無い人間のそれへと戻っていた。

 COMPLEXも完全に消え失せ、後には──静けさだけが残った。

 

「……何でだよ……どっちも円架で……生きていてほしかったに、決まってるだろ……!!」

「……照陽」

「どうして……どうして、こうなっちまったんだよ……ッ!! COMPLEXの馬鹿野郎……ッ!!」

 

 照陽は地面に拳を叩きつける。

 何度も、何度も何度も、血が──滲むまで。

 だがそれでも──

 

 

 

「……お兄、ちゃん……?」

 

 

 

 ──天戸照陽の元に、確かに彼女は戻ってきた。

 ふらふらの、立つこともままならない身体で照陽は手を伸ばし、伸ばし──そして、妹を抱き寄せる。

 

「お兄ちゃん……此処は……何処……? 私、裂け目から落ちて……どうなったの……?」

 

 声色も、顔も。

 自分が知る妹のそれと全く相違はない。

 

「うっ、ううう、うゥ……!!」

「泣いてるの……? お兄ちゃん……?」

「馬鹿野郎……すっごく、すっごく心配したんだぞ……僕は……僕は、頑張って……オマエを……うぅ……!!」

 

 嗚咽を漏らしながら、取りこぼしたものを嘆きながらも──照陽は、たった1人の妹を抱きしめる。

 それを見て、何事も無かったと思うほど──円架は鈍感ではなかった。

 まだ力の入らない手で、照陽の頭を撫でる。

 

「……助けてくれたんだ。ありがとう、お兄ちゃん……」

 

 今此処に漸く再会した天戸兄妹。

 その様を眺め──ボルメテウスは月を見遣る。

 

(COMPLEXに消され、失われたものは戻って来ない)

 

 存在は抹消され、生きていた記録も歴史も跡形もなく消えてしまう。

 自らの存在を差し出した、この世界の天戸円架もまた例外ではない。

 だが、それでも救いが一つだけあったとするならば。

 

(照陽。オマエは──大事なものを取り返せたのだ……!!)

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。