デュエマプレイヤーは「カードが全ての学園島」で成り上がるそうです。 作:タク@DMP
※※※
「──正直、デュエマの事はキライだったんだよね、私」
──円架は病院に運ばれ、しばらく入院する事になった。
照陽も、真のデュエルで負った傷は徐々に癒えていき、しばらくすると面会できるようになるほどに回復していた。
久しく会った妹に、照陽と瀬野理事長は事情をひと通り説明した。
信じられない事に眉を顰める円架であったものの、照陽がボルメテウスを少しだけ見せてやると、流石に納得したようだった。
その後、気を利かせた瀬野は退出。
久しぶりに兄妹二人の時間が訪れる──
「お兄ちゃんに構ってほしいのに、お兄ちゃんはデュエマの事ばっかりだもの」
「でも、結局君は僕に無理矢理デュエマを辞めさせることはしなかったね」
「それはまあ、色々あったし……お兄ちゃん、変にデュエマ我慢させるとおかしくなるし」
「あったね、そんなことも……」
「それに結局──デュエマしてるお兄ちゃんが一番輝いて見えるもの」
照陽は──豆鉄砲を喰らったように硬直した。
そして、何処か安心したように息を吐く。
「全く同じ事を言ってるね……」
「うん? どういうこと?」
「……いや、何でもないよ」
この世界に生きていたもう一人の妹の事を照陽は思い出す。
「彼女」の痕跡は消え失せ、生きていた証も残っていない。
誰も「彼女」の事は覚えておらず、聖羽衣学園の名簿にも彼女の名前は無かった。
「彼女」の事を皆に問うても、理事長ですら不思議そうに首を傾げるばかりだった。
──何か忘れているような気がするが──ともあれ! 妹君が見つかって良かったじゃないか、少年!
──六禍仙の光? しばらく前から空席……いつからだったか……覚えてないワ。……ってことはそれも、COMPLEXの仕業だったのかもネ。
──……とても怖いですね……。消えた人は誰も覚えていないなんて……。
──そっカ……じゃあやっぱり、COMPLEXは生かしておいちゃダメだったのネ……。
「存在」を失うことがどういうことなのか、身を以て照陽は思い知らされる。
しかし──1つだけ気掛かりな事があった。
(なぜか僕だけが”彼女”の事を覚えてる。いずれは忘れてしまうのかもしれないけど──今だけでも……僕だけでも覚えていなきゃ)
照陽だけが消えていった彼女の事を記憶していた点だ。
どうしてなのかは分からない。COMPLEXの改竄は完ぺきではないという事なのだろう、と自分を納得させたがどうにも腑に落ちなかった。
「それで、そのデュエマに今回私は助けられちゃったワケじゃん? ……私もデュエマ久々に覚えないとかなあ」
「うん。その方が良い。この島はカードが全てだからね」
「ってことはだよ? デュエマを使った新しいビジネスとかできそうじゃん? 黄金の流れが見えてきたよ!」
「あんまりあくどい事はやらないでね……買占めとか転売とか」
「失礼だなあ、道義に外れた事はしないよう! 後ろめたい方法で手に入れた汚い金ってのは、いつか離れていくものなんだよっ。それに、私達頼れるアテが他にない訳じゃん」
「そうだね」
結局、この世界の照陽と円架の存在が消え失せた今──この世界の両親は子供達の事を忘れてしまっている。
頼る事は出来ない。
従って、天戸兄妹は自分達の力でこの世界を生き抜いていかなければならない。
(理事長は援助してくれるけど、あの人もはっきり言って怪しい。何処まで頼って良いやら、だ)
「じゃ、やっぱり私が稼ぎ頭にならなきゃ! お兄ちゃん、お金が欲しかったらいつでも言ってね!」
「丁重にお断りするよ。生活費ならともかく自分の小遣いくらい自分で稼げる。この島にはDMクレジットってシステムもあるし、デュエマに勝てばお金は稼げる」
「えー、なんでさー。お金を貰ったら皆喜ぶのにー」
「やれやれ……この感じも久々だな……」
「……そーだね、お兄ちゃん」
兄妹は──笑い合う。
失ったものは確かにあった。
だが、今照陽にとってはこの時間が誰よりも恋しく、そして──尊かった。
これ以上多くを求めてはバチさえ当たるような気がした。
(良かった……円架、本当に)
「それで? お兄ちゃん、先ずはどうするの?」
「そうだね、君と再会するという目的は達成したし……この島にはまだまだ出会ってない強者も居る。それに、クリーチャーに精霊と問題も山積みだ」
故に──照陽は宣言する。
そのお人好しそうな顔とは考えもつかない程に──
「
──天戸照陽という少年は、傲慢だ。
「おっきく出たねえ、お兄ちゃん」
「夢は大きい方が良い」
それに──と照陽は消えていったこの世界の自分の事を思い出す。
(
新たな目標に心を燃やす照陽。
そんな彼を誇らしく思うかのように──ボルメテウスのカードは、今日も一層の輝きを放つのだった。
『……照陽。オマエの進む道に、私は必ずいる。これからも私を頼れ』
「うん、頼むよボルメテウス。僕の目指す頂上には──君が必要だ」
※※※
「あっ、ダーリンっ!! 円架ーっ!!」
──それから程なくして。
同じ制服を着た天戸兄妹が並んで登校してくる。
それに声をかけるのは、澪音だ。その傍には、こころが立っていた。
「ああ、おはよう澪音」
「ダーリンって……お兄ちゃん、
「彼女が勝手に呼んでるだけだ、事前に説明しなかったか?」
「その子が妹ちゃん? すっごくカワイイ!」
「無銘学園の中等部3年生として編入したんだ」
「無事に退院できてよかったです。兄妹で同じ学園にも通えるなんて」
嬉しそうにこころは手を合わせる。
理事長の計らいもあり、円架も同じ学園に通うことになったのである。
(そういえば、この世界の円架は僕より1歳年下の高校1年だったけど……こっちの円架は僕より2歳下の中学3年生。並行世界上の同一人物ってのは……やっぱり、似てるようで色々違うのかもしれない)
「これからよろしくお願いしますっ、白銀先輩! 空木先輩! ……お兄ちゃんは渡さないけどね」
「エ? 今なんか言った──」
「さてと、授業が始まるよ二人共。急がないと遅刻だ」
「あっ、そうじゃん! 私、違う校舎だ! お兄ちゃん、またあとでーっ!」
「ああ、しっかりやってきておくれよ」
走り去る円架に照陽は手を振る。
そうこうしているうちに朝礼の時間が迫りつつあった。
「じゃあ、僕達も行こうか」
「OK! ダーリン、腕組んで行こうネ♪」
「おいおいやめておくれよ、僕また他の男子に睨まれる……」
「そうですよ、白銀さん。照陽さん、迷惑がってます。あ、そうだ──照陽さん」
「何だい?」
こころは──ぽしょり、と照陽の耳元で囁いた。
「──
一瞬だけ、こころの声が低くなったような気がした。
驚いた照陽は彼女の顔を向く。
「って、シエルが言ってました」
「何だ声真似か……」
「チョット! 何二人で内緒の会話してんのヨ!」
「別に、白銀さんには関係ありませんっ」
「あー、そういう事言うんダ!! なんなら此処でデュエマよ、デュエマ!! こないだの雪辱晴らしてやるワ!!」
「シエルが出て来てないから、勝負になりませんよーっ!!」
「大丈夫だよ、空木さん。練習すればきっと澪音に勝てるようになるよ」
「チョット、ダーリン!?」
「澪音もうかうかしていると追い抜かれちゃうかもね」
「んにゃーッ!! もう怒っタ!! 今此処で二人共やっつけてやるんだかラ!!」
「遅刻しちゃいますよーっ!!」
騒がしい日々がもう少しだけ続きそうだ、と照陽は新たな日常を受け入れつつあった。
「この学園島──退屈はしなさそうだね」
──”デュエマプレイヤーは「カードが全ての学園島」で成り上がるそうです。(完)