デュエマプレイヤーは「カードが全ての学園島」で成り上がるそうです。   作:タク@DMP

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──第二章、開幕。
表向きのタイトルは変えませんが「学園デュエル・マスターズAMD(アマド)」、これからもよろしくお願いします!!


第二弾:切札竜VS逆札竜(リバース・オブ・ボルメテウス)
第27話:ボルメテウス、女の子になる


「んにゃーッッッ!! また負けたーッッッ!!」

 

 

 

 ──天戸照陽の妹・円架が無銘学園に入学して数日が経った。

 この島ではデュエルの腕が全て。それならば、腕づくで彼女を鍛えなければならない──とは理事長の弁。

 デュエルの授業や実習訓練などで得られるクレジットポイントは、この島では貴重な収入となる。

 従って、デュエマが弱ければ金銭的自由すら得られることができないのだ。

 

「だとしてもォ!! 兄ちゃん強すぎ!!」

「円架、筋は大分良くなったよ。デッキが強いから、サムライ相手でも勝率が伸びてきた。30%ってところかな」

「そうは言うけどォ!! 何なの、お兄ちゃんの使ってるあのカード!! クリーチャーを1ターンに1度しか出せないとか、マナより大きいクリーチャーしか出せないとか、出来ない事が多すぎ!!」

 

 照陽は(頭の愉快な)仲間たちから借りた色んなデッキを円架相手に使っていた。

 それで徐々にデュエマに慣らしていたところである。

 流石に照陽のデュエルを小さい頃から見ていただけあって、円架が感覚を取り戻すのに時間は掛からなかった。

 しかし──結局、照陽の本命デッキであるサムライだけは勝率が伸びなかったのである。

 

「使ってるデッキは間違いなく強いんだけどね。ゴルギーオージャーだし」

「なにそれ、あたしがデッキにおんぶにだっこって言いたいの!?」

「そんなことあろうはずがございません」

 

(そう。円架のデッキは強い。何故なら、あの日──ゼロポイントに残っていたゴルギーオージャーのデッキだから)

 

 中途半端にカードが重なったままの《ゴルギーオージャー》を見ながら、照陽は少しだけ切なくなった。

 今、円架が使っているのは──「この世界の円架」が使っていたゴルギーオージャーだからだ。

 

「確かに強いよ!? 強いけど、メタクリーチャー退かせなかったら1ターン時間稼ぎされて、そのまま押し込まれちゃう!!」

「円架はゴルギーオージャーを完成させることに注力し過ぎなんだよ。もっと、相手の動きを妨害して時間を稼ぐことを意識しなきゃ」

「うにゅう……! フィニッシュの時も頭が痛くなるし……こっちの世界のあたしは、どうやってこのデッキ覚えたんだろう……」

「他のループデッキに比べれば簡単だよ」

 

 とはいえ、円架が完全にデッキを使いこなせるようになるには時間がかかりそうである。

 

「プレイングって言うのはね、状況に応じて手を変える事じゃなくって……同じ状況なら同じ手を選ぶって言う一貫性なんだよ。正しいプレイングを覚えれば、ゴルギーオージャーはそこまで難しいデッキじゃない」

「お兄ちゃんのデッキが強い問題はどうするの」

「そりゃあ僕のデッキは、今強いデッキに対して相当強くカスタマイズしてるからね。1ターンにクリーチャーを1体しか出さないようなデッキは無い、だからそこを《一音の妖精》等で咎める」

 

 本来ならば「この世界の円架」相手に使うはずだった、対ゴルギーオージャー向けのチューニング。

 そして、それは──現環境の1ターンに何度も展開するデッキの殆どに突き刺さる訳で。

 

「覚えておいて。相手の嫌がる事を率先してやる! それがカードゲームの真髄さ!」

「だからモテないんだよ、お兄ちゃんは」

 

 照陽は心の中で静かに泣いた。

 

「それと、やっぱりボルメテウスが強いよ……!!」

『それはそうだろう、強くなければお前達を守れないからな』

 

 盤面に広げられたカードの1枚から声が聞こえてきた。

 照陽の相棒──ボルメテウス・武者・ドラゴン「武偉」だ。

 

「それに僕は切札のボルメテウスをしっかり理解しているからね。カードのテキストを読んだだけじゃあ、カードの真の力は引き出せないよ」

「むぅぅー……あたしもゴルギーオージャーの事をもっと理解しなきゃいけないってことか……あ」

 

 円架はロビーにかけられた時計を見て立ち上がる。

 

「もうこんな時間! それじゃあ、そろそろあたし部屋に戻るね! 門限だし!」

「ああ、気を付けてね」

「お兄ちゃん、ボルメテウス、付き合ってくれてありがと! また明日ね、お兄ちゃんっ!」

 

 椅子から立ち上がる円架。

 時計は既に8時を回っていた。

 照陽と円架は男女それぞれ別の寮に泊まっている。

 しかし、本音としては──行ってほしくない、と照陽は考えてしまう。

 一度離れ離れになり、やっと会えた妹だ。自分の目の届いていないところで何が起きるか分かったものではない。

 COMPLEXという最大の障害は取り除かれた。しかし──どうしても憂いを抱いてしまう照陽だった。

 

『照陽。寂しいのか?』

 

 夜、自室のベッドに潜ると──声が聞こえてきた。

 首からぶら下げたボルメテウスのカードだ。

 自分と一心同体になった相棒。故に、今の照陽が抱えている感情もダイレクトに伝わってしまうのだろう。

 

「ごめんね、不安にさせちゃったかな」

『不安なのは照陽だろう』

「……そうだね。やっぱり、たった一人の妹だからさ。それに──今でも気にしてるんだ。こっちの世界の円架を助けられなかったのが」

 

 どっちか一人しか助けられなかったのは自分の弱さだ、と照陽は痛感していた。

 だからこそ、もう取りこぼしたくはない。円架には──ずっと笑顔で自分の傍にいてほしい、と願ってしまう。

 ブラコンだ何だと言われようが、もうこの世界に血の通った家族は円架しか居ないのだから。

 

『大丈夫だ照陽。私が──命を賭してでも守ろう』

「……うん」

『しかし困った事に──私が死ぬと、お前が死んでしまう……ッ』

「うん……」

 

 一心同体の弊害である。

 もしも真のデュエルで敗北し、ボルメテウスが消滅した場合──その瞬間、照陽の死も確定してしまうのだ。

 今のボルメテウスは、照陽の生命力で辛うじて力を保てている状態なのだから。

 

「まあ、細かい事は良いじゃない、ボルメテウス。それに──命を賭す覚悟が出来ているのは、君だけじゃない。それは分かるだろう?」

『……くれぐれも無茶はしてくれるなよ、お前は人間。命の使い処は考えるべきだ』

「君にだけは言われたくないなあ」

『ぐぬぅ……』

 

 

 

 ※※※

 

 

 

 ──翌朝。

 目覚まし時計の音で照陽は目を覚ました。

 そして起き上がり──違和感に気付く。

 

「……ん、にゅ……」

 

 もぞり。

 

 ふと、ベッドのシーツがもぞもぞと蠢いた。

 びくり、と照陽は震える。

 

「え? 何? 何事?」

 

 それまでのデッキ構築の全てが頭から吹き飛んでしまった照陽。

 シーツの下に、何かが居る。自分以外の誰かが。

 ネコでも入り込んだのだろうか、とおっかなびっくりシーツを捲り上げるが──

 

 

 

「なんだ……やかましいぞ──照陽」

 

 

 

 ──心臓が止まったかと思った。

 真っ白な髪、きめ細やかな真っ白な肌。

 そして、芸術作品と見紛う程に華奢な身体をくの字に曲げた──見知らぬ少女。

 それが一糸まとわぬ姿で、照陽の隣に寝ている。

 目を擦った白髪の美少女は、そのままむくりと起き上がるのだった。

 

「は? ウソ? 何で──」

 

 先も言った通り、此処は照陽の一人部屋。

 連れ込まない限り、あるいは外から侵入しない限り誰かが居るはずもないのである。

 顔を真っ青にした照陽は壁際にずり下がり、そして全裸の少女に向かって叫ぶ。

 

「誰だよ君は!! いや、本当に!!」

「誰って……酷いな照陽。一心同体、相棒たる私に向かってなんてことを言うんだ」

 

 くぁ、と欠伸をした少女は照陽の方を向くと──しれっと言った。起き上がり、目を開けた彼女の目は──薄っすらと赤い。

 

「私は──ボルメテウス、炎の仔だが……」

「はいいいいいいいいいいいい!?」

 

 照陽は卒倒しそうになる。

 ボルメテウス?

 ボルメテウスは彼の切札たるエースカードだ。

 ただし、こんな美少女ではなく──青い鎧に身を包んだ、赤き竜のはずなのである。

 そのボルメテウスが──目の前の美少女?

 思わず彼は昨晩弄っていたデッキの枚数を数える。

 だが確かに1枚足りない。《ボルメテウス・武者・ドラゴン「武偉」》が3枚しか入っていないのである。

 

「なあ、ボルメテウス……君は本当にボルメテウスなのか!? 君、人間の女の子になってしまっているぞ!!」

「……人間? 一体、何をいって……」

 

 もにゅ。もにゅもにゅ。

 

 ボルメテウスは自らの手で自らの胸を揉む。

 本来、あるはずの無い柔らかい身体に戸惑い、彼女は自らの掌を驚愕の表情で見つめる。

 

「何だ……この身体は……? わたしはどうなっているんだ、照陽……?」

「こっちが聞きたいよ!! 君が知らないなら、僕も知らない!!」

 

 

 

「ねー、おにーちゃーん!? 学校遅れちゃうよーッ!? 連絡入れても来ないしさーッ!!」

 

 

 

 その時だった。

 妹の円架の声が部屋の外から聞こえてくる。

 兄妹の事になると心配症になってしまうのは、どうやら円架も同じだったようである。

 そして、ガチャガチャとドアノブの音が鳴り、戸が開いた。

 

「あっ、開いてる! お兄ちゃん、また鍵閉め忘れたで……しょ……」

 

 恨むべきは戸締りを忘れた照陽自身。

 部屋の中に入ってきた妹・天戸円架はベッドの上でぺたんと座る全裸の見知らぬ少女を目にして、顔を真っ赤にしていく。

 

「ま、円架、これは違──」

「にゃぎゃーッッッ!! お兄ちゃんが女の子連れ込んでエッチしてるーッッッ!?」

「誤解だーッッッ!!」

 

 

 

 ※※※

 

 

 

「間違いない。そいつはボルメテウス……人間ではなくクリーチャーだ」

「やっぱり……そうですよね」

 

 

 

 ──あの後、ボルメテウスがカードの姿に戻った事で、辛うじて円架には信じて貰えた。

 だが、こんな状況で授業に出られるはずもなく、照陽と円架は理事長室に出向いていた。

 こんな時、理事長ならば何か知っているだろう、とのことである。

 案の定、現れた白い美少女を見て──得心したように理事長は頷く。尚、円架の計らいで予備の制服を既にボルメテウスには手配済みである。

 

「ボルメテウス・武者・ドラゴンは襲名性のクリーチャーと聞く。複数の個体が居て、その中にメスが居ても何らおかしくはない」

 

 理事長の言葉に、照陽は頭を抱えそうになった。 

 むしろ生物ならオスメスがあるのが普通だからである。

 しかし、それすらひっくり返すかのようにボルメテウスは一言。

 

「オスメス……そのような概念があるのは知識として知っている。だが、我々ボルメテウスはボルシャック渓谷の炎より生まれし竜だ、親など居ない」

「じゃあオスメスも無いんじゃないの……ッ!?」

「だが炎であるが故に、我らの形は自由自在なのかもしれない」

 

 これは、ボルケーノ+プロメテウス(火の神)がボルメテウスの語源のためである。

 

「今のところは経過観察と言わざるを得ない。少年、君の身体に何か変化は無いか?」

「そうだよ。確か、お兄ちゃんのボルメテウスって、お兄ちゃんと一心同体になってるんでしょ?」

「……それが僕には何とも」

「ハァー、お兄ちゃんって大変だね。異世界にやってきてデュエマさせられて、オマケにクリーチャーと一心同体、挙句の果てには切札が女の子になっちゃうなんて」

「すまない、照陽……こんな姿では、お前を守る事が出来ない。どうやら、エネルギー不足のようだ」

「エネルギー不足?」

「クリーチャーであるわたしは、この世界ではマナが無ければ力を行使できない。今までは溜め込んでいたマナで何とか戦えていたが、それも底を尽きてしまったようだ」

 

 他でもないボルメテウスから答えを明かされ、照陽は納得した。

 所詮人間である照陽では、ボルメテウスが完全に竜の姿になるためのマナなど供給しようがないからである。

 風船の空気が勝手に抜けていくように、ボルメテウスは今の今までマナを消費し続けていたのだ。

 

「私はエネルギーの補給方法を考えなければならないが……」

「とにかく。今日の授業は2限から出たまえ。教師に話は通しておくよ」

 

 理事長が話の分かる人で良かった、と心の底から考える兄妹であった。

 

「……とりあえずお兄ちゃん。あたしは校舎が違うから助けてあげられないけど、上手く隠し通しなよ……その子。きっと大騒ぎになるよ」

「円架。君が居たところでどうやってフォローするつもりなんだ……」

「そりゃあもう現生手渡しで黙っててもらうに決まってるじゃんね」

「そんな子に育てた覚えはないよ!!」

 

 とにもかくにも、学校が終わるまで何事も無いのを祈るしかない、と願う照陽であった。

 

 

 

 ※※※

 

 

 

 ──しかし、早速異変は起きたのである!!

 

 

 

「ク、クッッッソ腹が減った……!!」

 

 

 

 昼の授業も終わりかけという時間になり、照陽は普段より一層苦しい空腹感に見舞われていた。

 同級生の某大食い少女ではないが、普段比で二倍の飢餓感が照陽を襲っている。

 当然、ボルメテウスの心配するような声が聞こえてくるのだった。

 

「しょ、照陽!? 歩けるか!?」

「も、もしかしてこれ、僕は君と合わせて二倍の空腹感を味わっているのかな」

「すまない……私の所為で……! 肩を貸す!」

「いや、でも……」

「制服姿ならば怪しまれることはないだろう」

 

 そう言って実体化するボルメテウス。

 そのままカフェテリアに駆け寄り、二人は奇妙な視線に晒されながら今日のランチを二人分注文。

 そして、空いている席に座るのだった。

 

「……照陽。とにかく食べるんだ」

「ボルメテウス。勢いで二人分のランチを頼んでしまったけど……思うに、今の君の姿ならゴハンを食べられるんじゃないか」

「人の姿の所作は分からないぞ」

「だからハンバーガーランチにしたんだよ」

 

 そう言って照陽は巨大な肉厚ハンバーガーにかぶりつく。

 人間のご飯を食べた事が無いボルメテウスも、少しどぎまぎしながらではあったが──ハンバーガーにかぶりつくのだった。

 そうして、しばらくして──飢餓感は消えた。

 ボルメテウスもまた、満足したように腹を摩る。

 

「……美味、だった。照陽、これは」

「ハンバーガーだよ。美味しかったなら何よりだ。お代わりもして良いからね」

「……馳走になった」

「良いって。どうやら僕達はエネルギー不足も共有してしまうようだ」

「だが幸いだった。この姿ならば食事をとることもできる。エネルギーさえ供給できれば、それをマナに変換できる」

「とにかく、これからは空腹に気を付けるんだボルメテウス。君の分のご飯も考えないと」

「済まない、迷惑をかけてしまって……」

「何を言うのさ、僕達の仲じゃないか」

 

 

 

「へーえ、僕達の仲って、どーいう仲なのかしラ?」

 

 

 

 いつの間にか周囲が妙にざわついていることに照陽は気付いた。

 何故ならば、彼が座っている席の背後にはツインテールの銀髪少女が鬼気迫る表情で仁王立ちしていたからである。

 言うまでもなく──この無銘学園最強のデュエリスト・六禍仙の白銀澪音であることは疑いようも無かった。

 

「れ、澪音……いつの間に」

「ダーリン……その女はだァれ? 浮気かしラ?」

「ヒュッ──」

 

 浮気でも何でもない。付き合ってすらいないのだから。

 しかし、この白銀澪音という少女は諸々経緯あって照陽を「運命の人」認定してしまっている頭の愉快な仲間なのである。

 故に、実体化したボルメテウスと言う名の「知らねー女」が照陽と二人でランチしているのを決して見逃しはしなかった。

 

「……オマエはゼニス使いの白銀澪音か。うちの照陽がいつも世話になっているな、ゼニス女」

「うちの照陽ォ!? 何勝手にダーリンの彼女ヅラしてんのヨ!! 私はあんたの事何にも知らないワ!!」

「あの澪音、これにはちょっと事情があって……」

「ダーリンは私の運命の人なノ!! 将来絶対結ばれるんだからネ!!」

「成程。漸く理解した」

「何を理解したんだよ君は」

 

 ボルメテウスは──涼しい顔のまま言い放つ。

 

 

 

「成程。つまり白銀澪音。オマエは照陽と番になりたいということだな?」

 

 

 

 澪音と照陽の脳天に──落雷が落ちる。

 

「つ、ツガイ……?」

「番が何を成すのか、私も理解しているつもりだ。つまり──照陽と《轟䡛合体(※自主規制)》したいということだな?」

 

 衝撃的発言に──顔を真っ赤にする澪音。対照的に顔を真っ青にしていく照陽。

 公衆の面前で言って良い言葉ではない。

 

「ちょ、ちょっと待っテ!! た、確かにダーリンの事は好きだけど幾ら何でも《轟䡛合体(※自主規制)》は、まだ速いと思うのだけド!!」

「何故だ? 子孫を残す為に番と《轟䡛合体(※自主規制)》するのは至極当然の事ではないのか? 番を名乗るなら《轟䡛合体(※自主規制)》すれば良いのではないか? 何故していないんだ?」

「ちょっと待ちなよ!! 僕は澪音と《轟䡛合体(※自主規制)》する予定なんてミジンコも無いよ!!」

「酷いワ、ダーリン!! 私のハダカを見た癖ニ!! 責任取って《轟䡛合体(※自主規制)》してヨ!!」

「だから《轟䡛合体(※自主規制)》はマズいって!!」

 

 言い争う三人を遠巻きで見ながらドン引きする影。

 案の定、心配になってカフェテリアの様子を見に来た円架であった。

 

「……お兄ちゃん達カフェテリアで猥談してんだけど……正気?」




轟䡛合体(ネットリ)……
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