デュエマプレイヤーは「カードが全ての学園島」で成り上がるそうです。   作:タク@DMP

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第3話:心クロスして召喚

「太陽が何だァ!? だからァ……何なんだそのポエムはァ!!」

「……単純明快。そう、単純明快な話なんだ。パワーが足りないなら、更に足せば良い。ただそれだけの話なんだ」

 

 残るアタッカーは《無頼(フウライ)BEN(ベン)-K(ケー)1000(サウザンド)》のみ。

 しかし──《無頼(フウライ)BEN(ベン)-K(ケー)1000(サウザンド)》が飛び掛かると共に、《PERFE(パーフェ)910(ナインワンゼロ)-御代紅海(ギャラクシー)》の効果が再び起動する。

 

「この瞬間の為にずっと温存していたんだ。NEOクリーチャーが攻撃する時、《御代紅海(ギャラクシー)》の効果でマナにカードを1枚置き、そしてマナのカードを1枚《BEN(ベン)-K(ケー)》の下に置く」

「下に──ッ!?」

「……下に重ねるのは《場和了(バロン)GO(ゴー)-YAMA(ヤマ)-58(ファイブエイト)》。このカードは超魂(クロス)を持つ」

 

 《場和了(バロン)GO(ゴー)-YAMA(ヤマ)-58(ファイブエイト)》のカードが《BEN(ベン)-K(ケー)》の背中に差し込まれ、消えていく。

 同時に、《BEN(ベン)-K(ケー)》の身体の筋肉がいきなり大きく隆起していく──

 

「うおおお何だァ!? 《BEN(ベン)-K(ケー)》がいっきに筋肉ムキムキマッチョマンの鳥になっちまったァ!?」

「なんかちょっとキショいぞ!?」

「うわぁ、こんな感じになるのか……と、とにかくッ!! 《GO(ゴー)-YAMA(ヤマ)》の上に重なっている進化クリーチャーはパワーが+6000されるんだッ!!」

「パワー+6000──だが、それでも《キーナリー》には勝てないはずだ!!」

「忘れちゃいけないよ。デュエル・マスターズに於けるパワー計算の順序を」

「……あ」

 

 その場の全員は顛末を察する。

 此処はデュエリストが集う学生の町。

 授業で誰もが履修済みだ。

 

「──効果で変化したクリーチャーの最終的なパワーは……()()()()()()()()()()()()()()()

 

無頼(フウライ)BEN(ベン)-K(ケー)1000(サウザンド)

パワー3000+6000=パワー9000(《場和了(バロン)GO(ゴー)-YAMA(ヤマ)-58(ファイブエイト)》の効果で加算)

 

「──そして最後に──乗算、即ち掛け算される効果が計算されるッ!!」

 

無頼(フウライ)BEN(ベン)-K(ケー)1000(サウザンド)

パワー9000×2=パワー18000(《オウ華武器・オウ禍武斗》の効果でパワー倍増)

 

《終末縫合王ザ=キラー・キーナリー》

パワー15000

 

「お、おおお!! 超えた!! 超えたぞ!!」

「すげえぞアイツ!! これで攻撃が通るッ……!!」

 

 その事実を突きつけられたハジキは膝から崩れ落ちる。

 たった3コストの小粒のクリーチャーが、複数のカードのシナジーにより自らの切札のパワーを上回ったからである。

 そして、パワーを上回ったということは──《キーナリー》ではもう《BEN(ベン)-K(ケー)》の攻撃を防げない。

 《オウ華武器・オウ禍武斗》の効果で、照陽のNEOクリーチャーは自身よりパワーの低いクリーチャーにブロックされないからである。

 

「──《無頼(フウライ)BEN(ベン)-K(ケー)1000(サウザンド)》でダイレクトアタック」

 

 立ち塞がる《キーナリー》を膨張した腕で殴り飛ばし、そのままプレイヤーを張り手で叩き潰す《BEN(ベン)-K(ケー)》。

 この瞬間、誰もが息を呑んだ。

 シールドが無い状態で直接攻撃されたプレイヤーは、敗北する。

 それがデュエル・マスターズの絶対的なルールだ。

 

 

 

「──対戦、ありがとうございました」

 

【Winner:天戸 照陽】

 

 

 

 ※※※

 

 

 

「そ、そんな、バカな、こんなふざけた結末有り得ない──ッ!! 俺は強い──強いからこそ、このデッキを握る資格が──お前に負けたら、示しが──ッ!!」

 

 

 

 崩れ落ちるハジキ。

 デッキを片付けた照陽は、彼の前に立ち──淡々と言い放った。

 

「確かに、デッキを握る資格なんて無い」

「──何だと!?」

 

 そして次の瞬間には、手を差し伸べていた。

 

「だってデュエマは──()()()()()()()()()()()()()()()()だ。デッキを握る資格なんてものを勝手に決めるのがバカバカしいと思わないか」

「甘っちょろい考えだッ!! それじゃあこの島では生きていけない──ッ!! 此処は、強者が生き残る場所で──」

「誰だって、最初は弱かったじゃないか」

「……ッ」

「勝利を目指すのは良い。だけど、()()()()()()()()()()()()()()。負けてそれで終わりだなんて、つまらないじゃないか。それでデュエマを遊ぶ人が減るのは良くないと思うね」

「生温い、何処まで生温い考えなんだ……ッ!!」

「だって、僕はまた君とデュエマしたいから」

「はぁ!?」

 

 何故今此処で、と言わんばかりにハジキは顔を上げる。

 理解が出来なかった。対戦相手は「敵」であり捻じ伏せる対象でしかなかった彼にとって、照陽の言葉は何処までも眩しかった。

 

「今回だって何かが掛け違ってたら、きっと僕は負けてた。だから、何度でも、何回でもデュエマしようよ」

「ッ……俺は、間違ってたのか」

「確かに君のやったことは許せないし、君の言ってる事には同意できない。だけど、それでも、君とのデュエマは──楽しかった!!」

 

 ハジキが顔を伏せ──カバンの中に入れたデッキに手を伸ばした、その時だった。

 

 

 

「いやー、良いデュエルやったな! 感動的やわ! 涙ちょちょ切れるかと思ったでホンマ」

 

 

 

 何処からともなく、乾いた拍手が鳴る。

 そして、その場にいたギャラリーも、黒制服の生徒達も──そして何よりハジキも、目を丸くした。

 現れたのは──ハジキと同じ、黒制服を身に纏った少年。

 狐のような糸目に眼鏡をかけており、何処か爽やかさと共にきな臭さを漂わせながら彼は照陽の前にやってくる。

 その姿に周りの生徒達は口々に声を上げた。

 

「あ、あれは矢車 蒸一郎!?」

「戦極学園の生徒会会長が何で此処に!?」

 

(生徒会長……?)

 

 矢車と呼ばれた少年の右胸には歯車の形を模した校章が付けられている。

 だが、それを抜きにしても彼からはただならぬ気配を照陽は感じ取っていた。

 本能で心胆を寒からしめる何かを、彼からは感じさせる。

 

「名前なんて言うんや、そこのオマエ」

「え? 僕ですか──?」

「せやせや! オマエ以外誰が居んねん!」

「ッ……天戸……照陽」

 

 その圧に押し負け、照陽はつい口から自らの名前を出してしまった。

 名乗らなければならない、と脊髄が反射してしまったのである。

 上っ面のフレンドリーさでは、この矢車という少年の底に眠るナニカは押し隠せていない。

 

「……ショーヨー君って言うんか! 覚えといたるわ! うん! それで──鉛くゥん?」

「ッ……は、はい」

「デッキ、返しといてやれよ? 君らが賭けデュエル色んな奴に吹っ掛けとったの知ってんねんで。大方、ランク戦に勝てへん鬱憤晴らしやったんやろうけどなァ」

「……はい」

 

 ぱぁっ、と白制服の少女の顔が輝く。

 元々彼女は友人のデッキを取り返す為にハジキに挑んだのだから。

 しかし──

 

 

 

「──それと鉛君。キミィ、今日限りで退学や。荷物纏めて本土に帰れ」

「……え……?」

 

 

 

 ──次の瞬間、矢車から告げられたのはあまりにも冷淡な言葉だった。

 その場の全員が、硬直する。

 何を言われたのか分からない、と言わんばかりにハジキは首を横に振る。

 

「な、そんな──」

「賭けデュエル吹っ掛けて学園島の治安乱したのは、勿論。だけどそれ以上に──野良試合で戦極の制服着たまま、こんな大勢の前で負け面晒して──おもんないねんオマエ、戦極学園の()()や」

 

 その言葉は、逆に言えば「負けていなければ」賭けデュエルを容認していた、ということも意味していた。

 しかし負けてしまった以上、鉛ハジキは只の薄汚い敗者に成り下がった、と矢車は突きつける。

 

「親御さんから高いデッキ買うてもらった結果がこれや、恥部は恥部らしく綺麗さっぱり後腐れなく消えんかいボケ」

「あ、ぐ……」

「待って下さいッ!! 確かに彼は良くない事をしたかもしれない──でも、この試合は僕との合意の上で」

「部外者は黙ってろや」

 

 一切の笑みがそこには無かった。

 そればかりか──矢車の背後には、何か悍ましいものが影になって潜んでいるようだった。

 

「──大勢の前で戦極の名前に泥塗ったケジメは付けなあかんやろが」

「ッ……貴方は、生徒会長なんですよね。何の権限があって──」

「あるよ? ……俺、理事長の息子やねん」

「ウッソだろ……!」

 

 圧倒的権力者。

 それでは最早、照陽の挟む口は無かった。

 しかしそれでも納得できない。納得が出来るわけがない。

 照陽が次の言葉を紡ごうとする。しかし──

 

「もう、良い。もう良いんだ」

 

 ハジキは──首を横に振った。

 

「……これで分かっただろう? これが、この島のルール。弱者に、この島で生きる資格はない」

「……そんな」

 

 他者から奪ってきたデッキを入れたカバンを置き──ハジキは、取り巻きと共に背を向けてその場から去っていく。

 内心のモヤモヤを抱えつつ、それでも精一杯を吐露するように照陽は叫ぶ。

 

 

 

「それでもっ!! また、デュエマしよう!! ハジキ君ッ!! 絶対だッ!!」

「──……」

「……ええ威勢やな」

 

 

 

 そんな彼を見返しながら──横島は呟いた。

 

 

 

「……天戸 照陽。その名前、ワシはしっかり覚えたで」

 

 

 

 ※※※

 

 

 

「あった……!! 友達のデッキ!! 私のデッキもある……良かった……」

「うん、良かった。これで一件落着……かな」

 

 ギャラリーは解散し、その場に残ったのは照陽と白制服の少女のみ。

 「一件落着」──そう言った筈の照陽の顔は、何処か浮かないものだった。

 どうしても、ハジキの背中が忘れられない。

 そして──得体のしれない圧を放っていた、あの生徒会長・矢車の顔が。

 

(……どうやら、弱者に人権が無いってのは本当みたいだ。逆に言えば、負けていなければハジキ君は賭けデュエルを続けられていたって事でもある)

 

 胸に詰まるモヤモヤを抱えながら──照陽は思案する。

 

「あのっ……さっきの人は──」

「気にしないで。僕が──特別デュエマバカなだけだからさ。彼が、君達に酷い事をしたのも事実だから……ね」

 

 気になる事は沢山ある。だが今、自分がやるべき事を照陽は思い出す。

 

(そうだ。切り替えろ、僕。今は円架を探すのが先決じゃないか。あの矢車って人、此処が”島”って言ったな。此処は色んな学園がある、島なのか……? 島なら丁度良い、円架を探すのに時間は早々かからないだろう)

 

「本当にありがとうございました! なんてお礼をして良いか──」

「じゃあお礼ってわけじゃないけど、一つ教えてくれないかな」

「え? 何ですか?」

「──この子、見てないかな。僕の妹なんだけど、はぐれちゃって」

 

 照陽はスマホを取り出す。

 その画面には、円架と昔撮ったツーショットが映っていた。

 だが、少女は首を横に振る。

 

「えーと、見てないです……」

「そっか……ごめんよ。でも、此処は島みたいだし──探せばすぐに見つかるか」

「それも無理かもです」

「え?」

 

 

 

「この”五色島”は……面積にして15キロ平方メートル以上──大阪の咲洲を軽く超える超大規模人工島です……」

 

 

 

 少女の言葉は、照陽の思惑を「無謀」と叩き切るには十二分だった。

 

(歩いて探すなんて無理だ! どんだけ広いんだ、この島ーッ!!)

 

「あの……まさか、そこにある学校の殆どが」

「デュエリスト養成学校だけじゃないですけど……ほぼすべての学校が”デュエリスト養成プログラム”を導入していて」

 

(デュエリスト養成プログラムって何だよ!! 卒業した後何の役に立つんだよ!!)

 

 頭を抱える照陽。

 あまりにもカードゲームのアニメの中のような設定に頭痛が激しくなってくる。

 

「ところで天戸さん。貴方、結局何処の学園の生徒なんですか?」

「実は僕は、どこの学園の生徒でもない本当に部外者で……」

「え、部外者がどうしてここに……?」

「やっぱ不味い……?」

「マズいというか学生以外が珍しいというか……あの、何かお困りなら……うちの学園に来ませんか?」

「え? 良いの?」

「うちの理事長、色々詳しいし相談に乗ってくれるんです。困った事があったら相談できる方です」

 

 デッキを握り締めた少女は──にこり、と照陽に笑いかけた。

 

「私、空木(うつぎ)こころって言います。さっきのお礼、させてくださいっ」

「改めて、天戸 照陽だ。……よろしく頼むよ。本当に困ってるんだ」

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