デュエマプレイヤーは「カードが全ての学園島」で成り上がるそうです。   作:タク@DMP

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第30話:六禍仙・壊滅

 これこそがサクガミの影にずっと潜んでいたクリーチャーの正体。

 全身を青い鎧に包んだ、澪音も見たことが無いボルメテウス。

 それが現れた瞬間、澪音の場にいた2体のゼニスは──動きを止めてしまう。

 

「青い……水文明のボルメテウス!?」

「《ボルメテウス・リバース・ドラゴン》が現れたが最期、相手クリーチャーは攻撃もブロックも出来なくなる」

 

《切札竜 ボルメテウス・リバース・ドラゴン》 水文明 コスト5

ドリーム・クリーチャー:エクスドリーマー/アーマード・ドラゴン/超化獣 パワー7000

 

 このボルメテウスは、澪音の知るカードの中には存在しない、全く未知のカードだ。

 だが、此処までのサクガミの相手を妨害してコントロールする動き、そしてその最後に現れる《ボルメテウス》。

 それが何を意味するのか、六禍仙である澪音は察していた。

 

「ボルメテウスをフィニッシャーにしたコントロールデッキ……やっぱりそのデッキ、”ボルコン”だったのネ!!」

「正解♪ ……再現性を捨てて極限まで対応力に振ったデッキだ。俺のボルコンに死角は無ェよ」

 

 ──4Cハイランダーボルメテウスコントロール。

 通称”ボルコン”。

 

 天津サクガミのデッキは、()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()

 

 通常デュエル・マスターズでは動きの再現性を上げる為に、同じカード4枚をデッキに極力投入しようとする。勿論、コストが重すぎて序盤にだぶつくと腐ってしまうカードなどは減らされてしまう傾向にあるが、強力なカードは4枚できるだけ積みたいと考えるのがプレイヤーの常識だ。

 

 だが、このデッキはそのセオリーに真っ向から抗い、デッキにカードを1枚しか入れていない。

 

 勿論──無秩序にバラバラのカードを入れている訳ではない。

 

 2コストのメタクリーチャー、3コストのハンデス、4コストのリソース回復手段、5コストの強力な妨害呪文、6コストの蘇生呪文──と言ったように、コスト帯である程度同じ役割のカードを揃えており、コントロールデッキとしての再現性は損なわないようになっているのだ。

 

 その上で、上位コストのフィニッシャーや呪文を散らす事で、事実上ありとあらゆる対面に対抗できる──というのがボルメテウスコントロールだ。

 

 かつて、そのコントロールの行き着く先は唯一つとされていた。

 

 シールド焼却の元祖《ボルメテウス・ホワイト・ドラゴン》、およびその派生カードによる安全なゲームの終局である。

 

「見せたかったなァ、白銀紫月ゥ!! 手塩にかけて育てた娘がキズモノになるところをなァ!!」

 

 高笑いするサクガミ。

 彼の中では高揚感が止まらない。

 兄の仇討のつもりなど毛頭ないし、これがただの八つ当たりであることなど彼が一番分かってはいる。

 しかし──白銀紫月の娘を否定することで、白銀紫月を否定する。

 それこそが、サクガミを突き進める原動力になっていた。

 

「6マナで《灰燼と天門の儀式(ヘブニアッシュ・サイン)》!! 地獄の底から蘇れ──《CRYMAXジャオウガ》ァッ!!」

 

 地獄の門が開かれ、そこから降臨するは──鬼の王。

 立ち上がるだけで全てを吹き飛ばす絶対強者。

 そして、六禍仙である牙十丸の象徴的なカードでもあった。

 

「ジャオウガ!? それは──鬼塚先輩の切札──ッ!?」

 

(って事は……さっきの《~世紀末の善悪~》の効果で墓地に落としたんだワ!!)

 

「あんな腰抜けより、俺の方が強くジャオウガを使えんだよ。《灰燼と天門の儀式(ヘブニアッシュ・サイン)》の効果で、蘇生させた《ジャオウガ》と《シャングリラ・ファンタジア》を強制バトルさせるッ!!」

 

 《CRYMAXジャオウガ》パワー13000VS《シャングリラ・ファンタジア》パワー12321

 

 槍と化した脚でシャングリラを粉砕する《ジャオウガ》。

 僅差ではあるが──バトルの勝者は《ジャオウガ》となった。

 更に、今度は着地した《ジャオウガ》の効果が起動する。

 

「《CRYMAXジャオウガ》は互いにシールドを3枚選び、それ以外を全て焼却するッ!!」

 

 燃え落ちる澪音のシールド。

 しかも、墓地に落ちたシールドのS・トリガーは使えない。

 そしてシールドが離れたことで《ボルメテウス》が咆哮。

 その武装にかけられた制限が全て解除されていく。

 

「まだ終わらねえぜ? この時、《ボルメテウス》のハイパーモードが解放ッ!!」

 

 ハイパーモード。

 それは──種族に”超化獣”を持つクリーチャーの持つ奥義。

 強力な効果が解放され、更にパワーが大きく上昇するのだ。

 澪音の知るハイパモードは他のクリーチャーをタップして発動するというもの。

 しかし、サクガミは場のクリーチャーをタップなどしていない。

 

「ハイパーモード!? そいつ、超化獣なノ!? でも、ハイパーモードは場のクリーチャーをタップしないと──」

「遅れてんなあ? 《ボルメテウス》のハイパーモードは──シールドが離れた瞬間に起動する!! 今の《ジャオウガ》の効果で《ボルメテウス》はハイパーモードになったッ!!」

 

《切札竜ボルメテウス・リバース・ドラゴン》

・Zラッシュ:シールドが離れた時、ハイパーモードが解放される。

 

「《ボルメテウス》はパワー12000のT・ブレイカー!! そして──ブレイクした相手のシールドを山札の下に送るッ!!」

 

 《ボルメテウス・リバース・ドラゴン》のレーザー砲から激流が放たれ、澪音の残るシールドを全て押し流す。

 S・トリガーは──発動しない。山札の下に送られてしまったからだ。

 

「終わらせろ、《ジャオウガ》──そこの出来損ないを徹底的に痛めつけなァッ!!」

 

 《ジャオウガ》の蹴りが《クリス=タブラ=ラーサ》を貫く。

 シールドも、クリーチャーも全て──破壊しつくされた。

 澪音にはもう、抗う手だては残ってはいなかった。

 直後、《シャングリラ・ファンタジア》が顕現し、澪音を守る為に現れるが──

 

 

 

「ダ、ダメッ──シャングリラ……ッ!!」

「──《CRYMAXジャオウガ》でダイレクトアタック」

 

 

 

 

 ──あっさりと、《ジャオウガ》の槍によって貫かれ──爆散する。

 

 

 勝者、天津サクガミ。

 

 

 

 ※※※

 

 

 

 雨が降りしきっていた。

 辺りにはスリーブに入れられたカードがばらばらに散らばっていた。

 その中の一つ、《シャングリラ・ファンタジア》のカードは黒い炭となって燃え落ちようとしている。

 

「いよう、苦労して組んだデッキだ。楽しかったかァ? ママに教わったデュエルはァ!!」

「ぁ、ぐ……」

 

 そのバラバラのカードに囲まれるようにして、澪音は地に伏せていた。

 真のデュエルによるダメージはあまりにも大きく、彼女は立ち上がる事すらままならなかった。

 そんな澪音の前髪を思いっきり鷲掴みにすると──サクガミは嘲笑する。

 

「おい。立てよ。立てってんだよ。……兄貴は何度でも立ち上がったぞ。何度負けても、だ」

「しゃん、ぐり、ら……っ」

 

 嗚咽を漏らしながら、指で空を掴もうとする澪音。

 そんな彼女に憐れみを向け、サクガミは投げかける。

 

「ハッ。立ち上がる気力も残ってねーか。……聞いたぜ? 転入試験で派手に負けたってよ──全校生徒の前で!!」

 

 胸の中にグツグツと燃え滾る後ろ暗い情念。

 幾らそれを冷笑で覆い隠そうと、それは消える事は無かった。

 

「……その後も何度も同じヤツに挑んで負けてるらしいじゃねえか。オマエ、どんな面下げて六禍仙名乗ってたんだ? お?」

「あっ、う、う」

()()()()()()()()()()()()()()()

 

 反論することなど出来なかった。

 全部、その通りであると本当は澪音も分かっていた。

 初めて照陽に負けたあの日から、何かが狂ってしまったのだ、と。

 だが本当は目を背けていた。ありとあらゆる言い訳をつけて、目を逸らした。

 そんな自分に「六禍仙」など名乗る資格はない、と。

 

「お前みたいなヤツを何て言うか知ってるか? 失敗作っつーんだよ。ママがお腹を痛めて産んだ結果、オマエみたいな出来損ないが産まれたんだ、分かるか? ()()()()()()とはまさにこの事を言うんだぜ?」

 

 前髪を掴み、ぐっと澪音の顔を見遣る。

 涙と泥、雨でぐしょぐしょになった顔を前に、サクガミは口角を上げた。

 

「ああ、最高にキレェな顔だ──ママそっくりだぜ。胸も無駄にデカいのもそっくりだ。でも、髪の色は全然似てねえな。やっぱり橋の下で拾われたんだったりしてなァ」

「うう、あぁ……」

「あ、泣いても何の解決にもならないんで止めてもらっていいですか?」

 

 澪音の前髪を離すと──サクガミは勝ち誇ったように告げた。

 

 

 

「……じゃあな出来損ない!! 続きは大好きなママにでも慰めてもらえよ!!」

 

 

 

 だが、結局──雨に濡れたその顔が笑っていても、目元だけはずぅっと笑ってはいないのであった。

 その背後で渦巻く炎。

 ボルメテウスが唸り声を上げている。

 

「分かってる。俺のやりたいことはやった」

 

 どくん、と疼く心臓。

 それを握り締め──サクガミはボルメテウスに告げる。

 

 

 

「……後はお前に従ってやるよ、ボルメテウス」

 

 

 

 ※※※

 

 

 

「……遅いな、白銀さん」

「あたしはもう二度と帰って来なくて良いけどね!! 大体お兄ちゃん、昔女の子でひっどい目に遭ったじゃんっ!! まだ懲りてないの!?」

「懲りたから彼女達との距離に困ってるんだよ。心配しなくても誰とも付き合ったりする予定は無いから」

「ほんとぉーにぃー……? トラブルの火種みたいな女にばっかり集られてんじゃん」

 

 その点については全く以て反論が出来ない照陽であった。

 何故ならば、脳内婚活女に二重人格女子、そしてボルメテウス。

 照陽の身近な女子は普通と呼べる者が存在しない。

 

「その点あたしは、真っ当で一般的な感性を持ってるのですっ! えへんっ!」

「友達と行くファミレス」

「ロ〇ホ一択でしょ! 勿論全部あたしの奢りで!」

「よし、真っ当で一般的な感性からかけ離れていることは分かったよ、主に金銭面」

「なんでよぉ!! 今だって僅かな元手からコツコツ投資始めてるんだよ!?」

「内訳は聞かないけど、君なら多分失敗しないんだろうな……」

 

 流石は金が勝手に寄ってくる女であった。

 

「しかしゼニス女が帰って来ないのは困るな」

 

 ボルメテウスがほうと溜息を吐く。

 薄っすらと炎のようなものが見えたので、何処かに燃え移らないか肝を冷やす照陽だった。

 

「彼女が居なければデュエルが出来ない」

「相手はあたしでも出来るでしょ、ボルメテウス!!」

「円架では照陽の相手にならないだろう……?」

「ちょっと!! 無意識に人をナメてるところがあるよ、このドラゴン!! すっごく上位存在っぽい!!」

「ボルメテウス、そんな言い方は失礼だ。円架だって日に日に強くなっているよ」

「む、それはすまない」

「やっぱり腹立つ!! 良いモン、いつかは絶対打ち負かしてやるから!!」

「ああ、受けて立つ。子供の頃から見守っていたのは──円架も同じだからな」

「むぅー……」

 

 ボルメテウスの表情は何処か慈しみすら感じさせる。

 人間の姿に心が引き寄せられているのもあるかもしれないが──それ以上に円架は何処かモヤモヤするような気持ちを抱えていた。

 ずっと昔から見守っていた。その言葉に偽りはない。

 カードの姿だった頃から、ボルメテウスはいつも兄妹の近くに居たのだから。

 

「なんだか、急にお姉ちゃんが増えたみたい……」

「ふむ。私が姉か」

「何だか変な感じだな……」

「ちょっと! あたしが失言したみたいな空気にするのやめてよ!」

「ところでいい加減白銀さん帰って来てくれないかな、荷物預かったままなんだけど」

「スルーしないで!?」

 

 既に時計は8時を回ろうとしている。

 いつまでも円架を自室に入り浸らせておくわけにもいかない照陽は、寮の出口まで案内する。

 外は雨がざぁざぁと降っており、円架は嫌そうに顔を顰めるのだった。

 

「あーあ、これじゃあ濡れちゃうよ」

「はい、折り畳み傘。ちゃんと用意してあるよ」

「流石お兄ちゃん! 気が利くー♪」

「急にご機嫌になって……調子が良い子だよ全く」

「そんじゃー、また明日ー♪」

 

 るんるん顔で傘を差して去っていく妹に手を振る照陽。

 そして──そんな彼女の背中を見送り、DMデバイスを見遣る照陽。

 何度も電話をかけているが、澪音からの返答は無かった。

 

「……どうしたんだよアイツ」

「流石に心配になってきたようだな、照陽」

「もしも何かあっても、澪音は強い。大抵の相手は何とか出来るはずだ」

「……()()()()()じゃなかったら?」

「一大事だ」

 

 雨が降りしきる中、照陽は寮を飛び出した。

 澪音は照陽からの連絡を無視したことなどこれまで一度も無い。

 そして、部屋に荷物を運びこんだ辺り、照陽の部屋に帰ってくるつもりで出たはずなのだ。

 外の何処を探そうか、それよりも警察か何かに連絡した方が良いんじゃないか、と逡巡したのも束の間。

 

 

 

「おーい──ッ!! 開けろ、開けろよーッ!!」

 

 

 

 声が聞こえてくる。

 それも校門の方からだ。

 思わず照陽は駆け寄った。

 DMデバイスのライトを当てる。

 校門越しに──見知らぬ女の子が息も絶え絶えに立っていた。

 

「君は……ッ」

「花園コナユキ……雪嶺学園の1年……ッ!!」

 

 そして、コナユキの背には──ぐったりとした澪音が背負われていたのである。

 

「照陽! ゼニス女だ!」

「……澪音ッ!? ど、どうして──」

「六禍仙は……全滅だ……! たった1人の男に、皆やられた……ッ! ボクも、鬼塚先輩も、そして──白銀澪音も……ッ!!」

 

 衝撃のあまり、DMデバイスを取り落としそうになる照陽。

 そして、ボルメテウスはあることに気付いたようだった。

 

「照陽……ゼニス女から精霊の気配を感じない……!」

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