デュエマプレイヤーは「カードが全ての学園島」で成り上がるそうです。 作:タク@DMP
太陽神、爆現。
羽根が広げられ、幾つもの龍の首が伸び、光輪を背負った巨大な不死鳥。
そして同時に光が降り注ぎ、サクガミのシールドを次々に焼き焦がしていく。
「メテオバーン起動、《アポロヌス・ドラゲリオン》の進化元3枚を墓地に送り、相手のシールドを全てブレイクする」
シールドが全て、ブレイクされた。
熱波、衝撃。
意識が飛びそうになる中──
「──こ、この攻撃を俺は一度──ッ」
──君に明日の太陽は昇らない。《アポロヌス・ドラゲリオン》でダイレクトアタック。
「──俺は、この攻撃を、覚えている──ッ!? アポロなんざ真のデュエルじゃなきゃ何度も喰らってるってのに……ッ!!」
──サクガミは突如、存在しないはずの記憶に襲われていた。
目の前に立つ照陽。
そのアポロヌスの攻撃により、自分は一度──焼かれている、と。
(いずれにしても、冷笑している場合じゃねえな──クククッ!!)
──そして──がら空きになったサクガミ目掛け、《アポロヌス・ドラゲリオン》が巨大な火の玉を浮かびあげ、一気に叩きつけた。
迫りくる火球は太陽そのもの。
もし《アポロヌス・ドラゲリオン》の攻撃が止まらなければ、このままサクガミは消し飛ばされる。
だが、《アポロヌス・ドラゲリオン》は神の火をその身に纏っている。
もしも触れれば、相手のマナゾーンのカードも消し飛ばす。
そうなれば未来が無い。
(面白ェ!! 本気で殺す気かコイツ──ッ!!)
サクガミは照陽の顔を見遣る。
大人しそうな少年だと思っていたが、その瞳は情けも一切の躊躇いも無い。
(だが──ッ!!)
砕かれたシールドの中からカードを手に取り、血しぶきを撒き散らしながらサクガミはカードを掲げた。
S・トリガーだ。
「S・トリガー……──《イカリノアブラニ火ヲツケロ》!! 《襲来、鬼札王国!》ッ!! 先ずは《イカリノアブラニ火ヲツケロ》の効果で手札からコスト6以下のクリーチャーを呼び出すッ!!」
「──2枚踏んだか……ッ!!」
サクガミは六禍仙だ。
この程度のピンチは今まで何度も切り抜けてきた。
先ずは状況を整理する。
そして手札、マナのカードから彼の取るべき最善の択は──
「残虐に狂える煉獄の皇──《
《
G-NEOクリーチャー:ドラゴン・ゾンビ/ダークロード/スチーム・ナイト パワー7500
「
──現れるはガスマスクをつけた骸龍の皇帝。
その両腕には蒸気仕掛けのガンブレードが握られており、《武者・ドラゴン》目掛けて魔弾を撃ち放つ。
「スチームナイトまで入ってるのか……!!」
「これでも一応水文明使いだからなァ!! 《イカリノアブラニ火ヲツケロ》の効果で──《~邪眼帝~》と《ボルメテウス》とバトルさせる!!」
《~邪眼帝~》パワー7500VS《ボルメテウス・武者・ドラゴン「武偉」》パワー6000
魔弾は不可解な軌道を描き、《武者・ドラゴン》の身体を打ち砕き爆散させた。
『ぐああ!?』
「ッ……ボルメテウス!?」
「まあガッカリするなよ、《イカリノアブラニ火ヲツケロ》の効果でバトル後に呼び出した《邪眼帝》も死ぬからなァッ!!」
《イカリノアブラニ火ヲツケロ》
・コスト6以下のクリーチャーを手札から出して相手クリーチャーとバトルさせる。
・ただし、出したクリーチャーのコストがマナの枚数よりも大きいと破壊される。
そして。
残るはもう1つの呪文──《襲来! 鬼札王国》だ。
この呪文は二つの効果を持つ。
一つは──相手のコスト8以下のクリーチャーを破壊するというもの。
もう一つは、墓地からコスト8以下のクリーチャーを蘇生するというもの。
そして、互いのシールドの合計が6以下ならば、両方の効果を使う事が出来るのだ。
「──先ずは《アポロヌス・ドラゲリオン》を1つ目の効果で破壊するッ!!」
「ッ……まさか」
照陽は戦慄した。
《アポロヌス・ドラゲリオン》は選ばれた時、相手のマナを破壊する効果を持つ。
そして、サクガミのマナゾーンのカードは2枚しかない。
だが問題は、マナゾーンに置かれているカードだ。
「《アポロヌス・ドラゲリオン》の効果は強制──君のマナゾーンのカードを破壊する──」
「そうだ。分かっているみたいだなァ? ……マナゾーンに落ちていたカードは墓地に置かれる。つまり──」
爆散する太陽の神。
その熱波でサクガミのマナも消し飛ぶ。
だが──墓地へと落ちたカードは即座に獄門より帰還する。
(バカな! 《アポロヌス・ドラゲリオン》の効果を逆利用された!?)
「
現れるのは幾つもの首を持つ人型の機龍。
それが照陽の前に立ち塞がる。
起源の炎・ボルメテウスの名を冠する──新たなる竜の一角だ。
『またしても同族か!!』
「ボルメテウス、数が多すぎるんだよ……ッ!!」
《ネオ・ボルメテウス・ホワイト・ドラゴン》 水/闇/火文明 コスト8
GーNEOクリーチャー:アーマード・ドラゴン パワー6000
「さらに、此処で《~邪眼帝~》の登場時効果を解決ッ!! 山札の上からカードを2枚墓地に置き──コスト5以下のクリーチャーを蘇生するッ!!」
死後より放たれる煉獄の門が魔弾によって開かれる。
そこから出でるのは──
「清濁奔流、押し流す──《切札竜ボルメテウス・リバース・ドラゴン》ッ!!」
──青い装甲に身を包んだ、烈海の装甲竜。
何かを掛け違えたかのような、何かが間違ったかのような──そんな歪さすら感じさせる青き竜。
それを前にして、照陽はただただ声が出なかった。
彼自身も知らない、未知のカードだからである。
そして、これこそがサクガミの所持するクリーチャーのカードだ。
「ッ……こ、こいつが……!! 澪音を……ッ!!」
「ターンチェンジだ。《ネオ・ボルメテウス・ホワイト・ドラゴン》で攻撃する時、手札からコスト7以下の呪文を唱える事が出来る」
ピッ、とサクガミは1枚のカードを照陽に見せつける。
それは事実上の勝利宣言。
「──呪文、《魔天降臨》」
「ま、魔天降臨……ッ!?」
全ては逆転する。
天も地も、須らく。
その効果は凶悪過ぎる程に単純明快でシンプル。
──照陽のマナゾーンと手札のカードが入れ替わる。
彼の手札の最後の一枚は──《情熱の逆転撃》。
「危ねぇ危ねぇ! やっぱり持ってやがったか、ご都合逆転カード! だがなァ、それは弱者の理屈だ──」
《ボルメテウス》でシールドを焼けばS・トリガーは発動しない。マナを焼いてしまえばニンジャ・ストライクも逆転撃も使えない。
都合の良い逆転カード等というものは無い、というのがサクガミの持論だ。
相手が立ち上がれなくなるまで徹底的に叩き潰せば良い。
それが──ボルメテウスコントロールの戦い方。
「オマエに残された逆転の手段は無ェんだよ天戸照陽」
《ネオ・ボルメテウス・ホワイト・ドラゴン》の攻撃によって焼失するシールド。
直接墓地に落とされたシールドのS・トリガーは発動しない。
更に、それに合わせて《ボルメテウス・リバース・ドラゴン》の全武装が解禁された。
「Zラッシュ起動──ハイパーモード!! 《ボルメテウス・リバース・ドラゴン》はT・ブレイカーとなり、シールドを消失させるッ!!」
照陽の残るシールドも消え失せた。
同時に、激流が彼を襲い、地面に叩き伏せる。
がほ、がほ、と咳き込む照陽。
最早立ち上がることすらままならなかった。
《ボルメテウス・リバース・ドラゴン》の効果で互いにブレイクされたシールドの枚数だけドローされる。
だが、カードを何枚引こうがもう意味が無い。
照陽のマナゾーンに、カードは1枚しかないのだから。
ターンが帰ってきても、盤面が空の状態から走れるカードは照陽のデッキには入っていないのである。
『しょ、照陽……ッ!! 大丈夫か!?』
ボルメテウスの声が聞こえてくる。
だが──照陽には分かっていた。
もう、どうやっても此処からの巻き返しは不可能だ、と。
「……悔しいが……
「あん?」
照陽はターンを終えながら──サクガミに問う。
「どうして? 君程の実力があれば、普通に六禍仙に居ても認められていたはず……ッ!!」
「今日の俺は──機嫌がいい。教えておいてやるよ」
《ボルメテウス・リバース・ドラゴン》の砲門が開く。
「──精霊の破壊は俺じゃなくて──
『照陽ッ!!』
実体化し、照陽を庇おうとするボルメテウス。
だが、照陽に余力が残っていなかったからか、竜の姿すら維持できずにカードになってしまう。
(しまった、ガス欠──これでは照陽を守れない……!!)
「──《ボルメテウス・リバース・ドラゴン》でダイレクトアタック」
──勝者、天津サクガミ。
※※※
「……さて、と。良かったな。オマエは生かしておいてやることにしたらしい」
ごふ、ごふ、と呼吸困難になりながら全身ずぶぬれで倒れ伏せる照陽を見下ろし──サクガミは1枚のカードを手に取る。
「……その代わり、コイツは貰っていく」
指に挟まれたのは──《ボルメテウス・武者・ドラゴン「武偉」》。
「か、え、せ……ッ」
「おん?」
目を微かに開き、手を伸ばそうとする照陽。
だが、それを踏み躙り──サクガミは冷笑する。
「うおっ、まだ元気だったのかぁ? だけど、敗者に選択肢があると思うなよ。命があるだけ……いや、この場合は生かしておいた方が地獄ってヤツかもなぁ」
「ッ……ぅあ、ボルメ、テウス」
『照、陽……ッ』
最早ボルメテウスも抵抗する力は残っていなかった。
そのままあっさりとサクガミのデッキケースに入れられてしまう。
「可哀想に──ひとえにオマエが弱い所為だがねえ……おん?」
ぼこ。ぼこぼこぼこ。
沸騰した湯のように、照陽の周囲の地面が沸き立っていることにサクガミは気付き、後ずさる。
「ンだ──これは──ッ!?」
警戒し、後ろに飛び退いた瞬間、何本もの触手が地面から這いずり出る。
そして、その中に潜むは──眼鏡をかけた少女。
「精霊か──ッ!!」
彼女はサクガミを刺すように睨んだ後、倒れ伏せた照陽を抱きかかえる。
そのまま触手は二人を包み込み──後には何も残らなかった。
(……何処のどいつだか知らねえが……もう1人仲間が居たか)
いずれにせよ──精霊ならば狩るまで、とサクガミは笑みを浮かべる。
だが意気込んだのも束の間、ごふ、と彼は血しぶきを噴き出して地面に膝を突いた。
「ごふっ、げほっ、がはっ、ごほっ……!!」
(ッ……天戸、照陽──!! 名前は覚えた、確かに……ッ!! あの野郎、俺に……手痛いのを入れていきやがった……!! マジギレしてて、面……白ッ)
先のアポロヌスの攻撃による衝撃は、サクガミに少なくない打撃を与えていた。
照陽とボルメテウスに致命傷を与えなかったのは確かだが──それ以上に「与えられなかった」のが正しい。
(S・トリガーが無きゃ、負けていたのは俺の方だ……ッ!! くっ、くくく、冷笑されるべきは、俺の方だった……ッ!!)
サクガミは口角を上げた。
愉快で愉快で仕方が無かったのだ。
久しい血湧き肉踊る感覚。
(この俺が……いつかぶりにマジになってやがる……!! やはり、本物のクリーチャーに選ばれるヤツは、伊達じゃねえってわけか……!!)
※※※
「照陽。おい、照陽ッ!!」
「……う」
明るい部屋の照明。
ふかふかのベッド。
その上で──照陽は目を覚ます。
鼻腔を良い香りが突き抜けていく。
思わず起き上がった。
甲高いが、どこか乱暴な女の子の声。
それが誰なのか、すぐに照陽は理解した。
「……シエル」
──空木シエル。
同級生・空木こころのもう1つの人格。
「ったく、何やってんだよ照陽オマエ……!!」
「……ごめん。派手に負けた」
まだ全身が痛む。
真のデュエルのダメージは想像以上に照陽に圧し掛かっていた。
「此処は……?」
「こころの部屋だ」
「ってことは、女子寮!?」
「此処しか連れて来れる場所が無かったんだよ」
「僕は明日、どうやって学校に行けば良いんだ……」
「学校に行ける身体じゃねーだろ。オマエ、客観的に自分の事を見れないのか? 真のデュエルに負けたんだよオマエは」
負け、の二文字を咀嚼しながら──照陽は歯を食いしばった。
だが一先ずは命があることを喜ぶしか無かった。
自分が生きているということは、ボルメテウスもまだ生きているということだ。
「シエルは……どうして、あの場に居たのかな」
「あのバカ、学校に弁当を持って来忘れてな。それで久々にオレが入れ替わった。シャバの空気を堪能するには良い機会だったからな」
「後でちゃんと身体を返してあげなよ。こころさん、腹が減ってるだろうし」
「わーってるよ。だけどそれ以上に──妙な事があってな」
「妙?」
「
(……
照陽は目をぱちぱちとさせる。シエルが入れ替わったのは久方ぶりのはずだからだ。
時系列の噛み合わなさに違和感を感じながらも、続きを話すように促す。
「精霊使い……?」
「ああ。どっかの学校の生徒だ。目がイッちまってて話にならなかったんでデュエルで片付けてやった。精霊を殺したら元に戻ったがな」
「……ソレ、大丈夫だったの?」
「意識は戻ったよ。だけど──それが立て続けに三件だ」
「三件も!?」
「精霊に意識を乗っ取られたってカンジでもなかったんだよ。精霊そのものが……おかしくなってる」
照陽は息を呑む。
異変の原因に思い当たる節が無いわけではない。
突如五色島に帰還し、混乱を齎している天津サクガミだ。
しかし──むしろ彼は精霊を破壊して回っている。
「それよりオマエはどうしたんだ」
「……それは」
照陽はこれまでの経緯を話す。
「……はぁん、大体事情は聴いた話と同じだな」
「知ってたのかい」
「大まかな事は理事長から聞いている。だがお前がサクガミに挑みに行った後の事は知らんからな」
当事者から聞いておくのも筋だろ、とシエルは続けた。
「思うに──そのサクガミって奴は、精霊だけをターゲットにしているように見える。最初に六禍仙を狙ったのは、邪魔になるからと思ったから」
「何で精霊を……?」
そう言えば、と照陽は思い返す。
自分がまだ生きているということは、ボルメテウスも生きているということ。
力尽きたボルメテウスを始末したいならば、カードを破くなりしてしまえば達成できる。
そんな事は流石のサクガミも分かっているはずだ。
「……あいつは本物のクリーチャーじゃなくて、
「でも、どうしてそんなことを」
「ンなもんオレに分かるか! ただ……続くぞ。このままだと」
被害者は増える、とシエルは言っている。
照陽は罪悪感を覚えた。
「……僕が負けた所為で、ボルメテウスも奪われた……ッ! このままサクガミを放置は出来ない。早く取り返さなきゃ」
「無理だ。今のオマエの身体じゃあ、真のデュエルに耐えられない。それに、精霊も無しにどうやって戦うつもりだ」
「でも──」
「でももへちまも無い。そもそもお前は、丸二日間寝てたんだからな」
照陽はハンマーで頭を殴られたような衝撃を受ける。
そして、ようやくさっきのシエルの話の意味を理解した。
照陽がサクガミと戦ってから、既に2日が経過しており、同じ日にシエルは様子のおかしな精霊使いと交戦していたのである。
「え……? じゃあ、こころさんは二日間飲まず食わずで」
「アホか。そこまで鬼じゃねえ。オレが直接会って話したいから、今日もう一回昼飯抜いて貰ったんだよ。昨日は3食ちゃんと食ってるよアイツは」
「ど、どっちにしても可哀想に……」
「既にお前がサクガミに負けた旨は関係各所に伝えてある。円架もショックを受けてやがったぞ。だけど──やっぱり一番キてるのは……いや、此処から先は自分で確かめた方が良いだろ」
「……どういうことだい」
「そろそろ、こころが煩いから入れ替わる」
ハンバーガーを一口で丸呑みにすると──がくん、とシエルの首がもたれた。
そして──ぱちぱち、と彼女の目が瞬く。
その小動物のような仕草で、照陽は目の前の彼女が自分のよく知る同級生に戻ったのだと悟った。
しかし──
「た、大変なんですっ、照陽さんっ!!」
「ど、どうしたんだい、こころさん」
「いや、照陽さんも大変なのはわかってるんですけどぉ……それ以上に大変で、ヤババで……」
「落ち着いて。ゆっくり話すんだ」
彼女は目に涙を浮かべながら──叫んだ。
「白銀さんが……いなくなっちゃったんですっ!!」
「──ッ!!」