デュエマプレイヤーは「カードが全ての学園島」で成り上がるそうです。 作:タク@DMP
「──《Dの天災 海底研究所》を展開します」
「──《ROIYAL減亜-5》を召喚──ッ!!」
互いの場に並ぶクリーチャー。
紫月が展開するは、不気味な海底の研究所。互いの場に一枚しか存在せず、影響を及ぼし続けるフィールドのカードだ。
一方、照陽はいつも通りリソースを増やしていく。
(……何のデッキだ? 一体──)
思い当たるデッキは幾つかある。
だが、マナのカードはまばらで断定が出来ないのだ。
照陽は──この世界に来てから発売されたカードへの知識が無い。
故に、もしも初見のデッキをぶつけられた場合、対処が出来ないのである。
「《ネ申マニフェスト》を召喚。カードを3枚引き、2枚捨てます」
(ますますわからない……! 確か重ねて進化すると、ブロックされない+選ばれないだったか……!!)
そして《Dの天災 海底研究所》の効果は、自分の進化クリーチャーがブロックされず、相手の進化クリーチャーが出たターンに攻撃出来なくなるというもの。
進化クリーチャーは勿論、NEO進化クリーチャーも含まれる。
(うわ、面倒くさッ……!! 大分足止めされるぞ──せめて《マニフェスト》だけでも取らないと)
「僕は4マナで……《ボルメテウス・武者・ドラゴン「武偉」》を召喚!!」
「……それが貴方の切札ですね」
カードを場に出した後──照陽はボルメテウスの声が聞こえない事実に改めて直面する。
それがとても苦しく、切ない。
だがそれでも、今は進むしかなかった。
相手はあの白銀紫月。出し惜しみをしている場合ではない。
「僕は自分のシールドを1枚ブレイク。そしてS・トリガーは無いけど……《マニフェスト》を破壊ッ!!」
「……それで終わりではないでしょう?」
「勿論ッ!! 《竜牙リュウジン・ドスファング》を出しますッ!!」
《竜牙リュウジン・ドスファング》
・サムライメクレイド5起動
「山札の上から3枚を捲って──出すのは《PERFE910ー御代紅海》! そして、そのまま《武者・ドラゴン》から進化しますッ!!」
照陽の鉄板ムーブだ。
攻撃した時点で《PERFE910ー御代紅海》の除去耐性付与は確実なものになる。
更に《竜牙リュウジン・ドスファング》がクロスされ、攻撃時の展開も可能になる。
最も、このターン中は《Dの天災 海底研究所》の効果で攻撃出来ないのであるが。
「ターン……終了です」
「……では、私のターン」
紫月は2枚のカードを照陽に見せる。
「《チアサンライト コハク》を召喚。そして、《一音の妖精》にNEO進化します」
(ッ……来たか。これでこっちの行動は大幅に制限された)
デッキを推測しながら照陽はカードを引く。
《一音の妖精》が居る限り、照陽は1ターンに1度しか呪文を唱えられない。
そして《一音の妖精》がNEOクリーチャーの場合、照陽はクリーチャーも1ターンに1度しか出せない。
あのカードがどれだけ鬱陶しいかは散々使って来た照陽だからこそ分かるのだ。
「──《PERFE910ー御代紅海》でプレイヤーに攻撃……する時、山札の上から1枚をマナに置いて《デスモナーク》を重ねますッ!! そして、《竜牙リュウジン・ドスファング》のメクレイドを起動……ッ!!」
《PERFE910ー御代紅海》
・《デスモナーク》の超魂Xにより、最初の攻撃の終わりにアンタップする。
照陽が場に出すのは──《無頼BEN-K1000》。
先程《武者・ドラゴン「武偉」》でブレイクしたシールドの分が回復する。
【照陽シールド:4→5】
更にマナゾーンには《場和了GO-YAMA-58》がある。
《デスモナーク》で二回攻撃できる《御代紅海》は、《場和了GO-YAMA-58》を次の攻撃で仕込むことにより、このターンでシールドを全て割り切ってしまうことが可能なのだ。
「
「──ただでは転びません」
紫月の手札から飛び出すのは──1枚のカード。
シールドへの攻撃が届く前にそれは飛び出す。
「ウラ・ニンジャ・ストライク3、《裏斬隠テンサイ・ハート》です。手札からコスト5の《邪眼の魔法陣》を捨てます」
「……そのカードは……ッ」
「捨てたカードと同じコストの《PERFE910ー御代紅海》は攻撃もブロックも出来なくなります」
単純明快な対処法だ。
除去が出来ないならば、動きそのものを止めてしまえば良い。
ブレイクされたシールドを手札に加える紫月は全く表情を微動だにせず続けた。
「……どうやら貴方は……焦っているようですね」
「僕が焦っている……?」
「貴方はクリーチャーと半身を共有している。ですが、肝心のクリーチャーが居ない。貴方は恐らく娘に負けた相手に挑んだ」
「……ッ」
「そして、敗北した」
「次は……勝ちますッ!!」
「次は……ですか。しかし、命懸けのデュエルの危険性は私とて理解しているつもりです」
ブレイクされたシールドを手に取り、紫月は不敵に嗤う。
「……次なんて無い。貴方は生きてるだけ奇跡なのです。《一音の妖精》で攻撃する時──」
紫月の瞳が真っ赤に染まる。
「
「D・D・Dって、《レッドゾーン》と同じ──」
こころが叫んだのも束の間。
静寂が訪れる。
「……私は月。半分の月。決して満ちぬ、片割れの月」
《一音の妖精》の上に重なるは──八衢の大蛇の如き巨神。
かつて、神帝と呼ばれたゴッドが居た。
四柱の神が絡み合い、縫合することで完成する黒月の皇帝。
それが1枚のカードに収められ、不足した部分を歯車や機械で補完された存在。
神帝という物語だけが再現された空虚な存在。
「さあ──深き底へと還りましょう。《
《
NEOクリーチャー:ゴッド/スチームナイト パワー6000
ぞわり、と照陽は全身の肌が寒気立つ。
紫月の瞳は先程とは真逆の血のような赤に染まっていた。
見間違いか、と目を擦ったが──
(本当に目の色が……いや、そんなことを言ってる場合じゃない!?)
「《神帝》でシールドをW・ブレイク、右から2点頂きます」
「ッ……」
2枚のカードを手に取る照陽。
【照陽シールド:5→3】
「《場和了GO-YAMA-58》のG・ストライク……《神帝》を止めます」
「弾きます。《神帝》はジャストダイバー、次の私のターンまで選ばれません」
「そいつジャストダイバーかよ……!?」
《~神帝、完成せり~》
・ジャストダイバー:このクリーチャーが場に出た時、次の自分のターンの始めまでこのクリーチャーは攻撃されず、選ばれない。
「そして……仮にS・トリガーでブロッカーを出したところで、《天災研究所》で《神帝》はブロックされません」
「アタックされない、ブロックされない、選ばれない……!! スリーアウトってところか……!!」
「そして、当然これでは終わりません。《神帝》の攻撃の終わりに効果発動」
紫月はカードを引く。
そして手札からカードを1枚置いた。
「効果でカードを1枚引き、手札からコスト5以下のクリーチャーではないカードを使用します」
照陽は──目を見張る。
光、水、闇。
その三色が混じり合った、究極の呪文。
絶対に唱えさせてはいけなかった、と後悔させられるカードが発動する。
「呪文、《
虚実綯い交ぜ。ウソは本当に、本当はウソになり、逆転する。
「──効果は3つ。2ドロー1捨て、相手のクリーチャーをシールド化、そして墓地からのS・トリガーの使用」
その中から選ぶのは2つ。
紫月の選択は──
「──2ドロー1捨て、そして墓地からのS・トリガーの使用」
(手札を増やしながら呪文の使用……ッ!! まさか)
照陽は紫月の墓地を見る。
さっき《ネ申マニフェスト》の効果で手札から墓地に送られた光の呪文。
それが今、起動しようとしていた。
「唱えるのは《聖沌忍法 メカくしの術》。《神帝》をアンタップします」
「ってことは、もう一度攻撃出来るってことですかぁ!?」
「当然。このターンに押し切ります。《神帝》でW・ブレイク」
【照陽:シールド3→1】
S・トリガーは無い。
照陽は──漸く紫月のデッキの正体を思い知る。
(……ジャストダイバーの《神帝》を《海底研究所》でブロックされなくさせて、アンタップする呪文を使って連続攻撃する寸法か。当然、都合よく何枚もアンタップ呪文を引き続けられるわけがない)
故に──紫月はデッキに投入していたのだ。
墓地からアンタップ呪文を再利用できる《真気楼と誠偽感の決断》や《邪眼の魔法陣》を。
(……ここまで紫月さんは何枚もカードを引いている。そして《神帝》の効果でのドローも考えれば、アンタップ呪文は2枚も引ければ十分だ。となると……既にこのターンでの
とはいえ、選ばれない、そしてブロックされない《神帝》を止めるのは並大抵の事ではない。
仮に止めたところで、アタックされない《神帝》を退かすことが出来ない。
よしんば退かせたところで、《天災研究所》という凶悪なメタカードの所為で、照陽はNEO進化クリーチャーを出したターンに攻撃させることが出来ない。
「さあ。お終いにしましょうか──最後のシールドをブレイク」
破壊されるのは、最初に《無頼BEN-K1000》で仕込んだシールド。
だが、紫月とてサムライデッキに何のトリガーが入っているかなど分かっている。
分かっているが故に、最後まで油断はしない。
(もしも彼が”本物のデュエリスト”ならば)
彼女の視界にフラッシュバックするのは──最愛の姿。
何度も逆境を跳ね返し、立ち上がってきた英雄の姿。
(ひっくり返してみせるのでしょう。天戸照陽)
「S・トリガー、《王闘の大地》──ッ!!」
(後はもう、コイツに賭けるしかない……ッ!!)
山札をシャッフルする照陽。
そして、デッキを紫月に渡す。
改めて対戦相手にもシャッフルをしてもらうためだ。
ずっしりと重い、スリーブに入ったデッキを見て──紫月は言った。
「随分と使いこんでいるようですね」
「あ、すいません、スリーブ……近いうちに変えるんで」
「気にしなくて良いですよ。大会でもない、ただの野試合です。それより──サムライというデッキ……いえ、貴方自身がそのデッキを理解していなければ100%のポテンシャルは出せない」
「……」
「この私を前にして、貴方は……まだ試合を諦めていない」
「……負けて、相棒を奪われて……悩んだんです。僕が澪音に会いに行っても、なんの説得力も無いんじゃないかって。どんなデュエルにも絶対勝てるプレイヤーなら……きっと澪音を安心させられただろうけど」
照陽は──デッキの上に手を置いた。
思い返されるのは、澪音と初めて戦った転入試験。
勝者は照陽だったものの「二度と同じ目には遭いたくない」と思わされるほどの綱渡りの試合だった。
あの試合も「負けられない戦い」だったが故に猶更だ。
「絶対に勝たないといけないデュエルがある。でも、どんなプレイヤーでも100%勝利出来る訳じゃない。そして勝たなきゃ、大事なものを失う。だから本気になるんだと思うんです」
「死んだらお終いです。それが──真のデュエル」
「そうですね。僕が生きてるのはきっと……あいつの気まぐれで、ラッキーです。でも……僕は戦いますよ」
照陽はカードを5枚表向きにした。
その中の1枚を見て、紫月は目を丸くした。
「それは──ッ」
「……来た」
「あっ……!」
こころが顔を明るくした。
※※※
──数時間前、ホテルの部屋で。
こころは照陽に1枚のカードを渡していた。
「照陽さん。これ、シエルからです。今、照陽さんのデッキ、カードが1枚足りないじゃないですか」
「ッ……良いのかい!? だってこれは──」
「シエルも確かに渡すのは渋ってました。でも──本当は照陽さんのカードだから、って。なら、今持っているべきなのは自分じゃないって」
「……ありがとう」
「シエルが言ってます。”これを使って負けたらショーチしねーぞ”って」
「……」
照陽は頷く。
「──ああ。勿論だ、必ず勝つよ!」
※※※
「《無頼BEN-K1000》からGーNEO進化」
紫月の埒外から飛んできたそのカード。
D・D・Dという本来の用途を意識し過ぎるがあまり、想定の外にあったカード。
それを見て、彼女は──笑みを浮かべる。
「やっぱり……本物でしたか」
《無頼BEN-K1000》の上に重なるは──轟速の赤。
悪路すらもサーキットに変える悪夢の疾走者。
「僕達は止まらない──ブチ抜け、
《轟く邪道レッドゾーン》ッ!!」