デュエマプレイヤーは「カードが全ての学園島」で成り上がるそうです。   作:タク@DMP

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第4話:あまりにも早く見つかった妹

 ──無銘学園高校。

 デュエリスト養成プログラムを取り入れた、”五色島”に座する普通科高校である。

 しかし、そのトップに立つ理事長は屈指の「変わり者」であることで知られている。

 何故ならば、普段は滅多に表に出ることなどなく、地下の一室に引きこもっているからだ。

 学生からの評判は「怪しい」「気味が悪い」「関わらない方が世の為人の為」と散々であった。

 

「──そりゃあ、こんな地下室に籠ってればそう言われるのも当然と言えば当然なのですけども」

「何で地下室に理事長が引きこもってんだ……てかさ、僕部外者なんだけど連れてきて大丈夫なの?」

「友達が言ってたんです。”この島で不思議な人を見つけたら理事長の所に連れていけ”って」

「コンプラとか安全意識とか大丈夫なのかな……」

「ははは……私も理事長にはあまり会った事が無いんです。理事長に詳しいのは友達の方で」

 

 コンコン、とドアをノックするこころ。

 ドアノブを捻ると、どうやら鍵は開いているようだった。

 そのまま彼女は足を踏み入れる。

 

「えーと──失礼します……2年の空木です」

「ぴぃぃーっ!!」

 

 部屋を開ける。

 そして照陽の顔に何かが飛び込んできた。

 

「へぶっ!? な、なんだ!?」

「ぴぃーっ!!」

「と、鳥……!?」

 

 照陽がひっぺがすと、それはオウム大のサイズの鳥だった。

 黒と赤の羽根をした極彩色の鳥だ。

 

「この子、理事長の飼い鳥です。名前は確かピーちゃん」

「危ないな、放し飼いにしてるのか」

 

 鳥は、すぐさま部屋の中へ戻っていく。そして、雪崩れた本の山の上をぐるぐると飛んだ。

 

 

 

 本の山から──人の手が生えている。

 

 

 

「本で生き埋めになってるッッッ」

「飼い主が生き埋めになってるのを知らせてくれたのかッ」

 

 すぐさま本の山をどけてやると──中から、白衣を纏った妙齢の女性が死にそうな顔で発掘されるのだった。

 

「理事長しっかりしてくださいッ! 息は出来ますか!?」

「うん……? お口のマナーが良いということは、今日は”こころ”の方か?」

「……友達はメッタな事が無ければ出てこないので」

「あの、大丈夫ですか!?」

「ハハハ、よくある事さ……」

 

 起き上がった理事長は本を乱暴に投げ付ける。

 不敵に笑う彼女の目の下にはごっそりと隈が出来ていた。見た所、何日も寝ていないようである。

 

(見るからにダウナーなお姉さんだけど、これが本当に理事長なのか?)

 

「ところで少年、ちょっと肩を貸してくれるかい、ああ、ありがとう、助かる」

 

(しかも年下の男子を少年と呼ぶタイプのお姉さんだ、ダウナーなお姉さんの理事長だ)

 

 仰々しい芝居がった仕草で立ち上がった理事長は──回転椅子の上に座り込む。

 

「……さて話を聞こう。私は瀬野(せの) 愛河(あいが)。この子はピーちゃん」

「ピーッ!!」

「それで──ズバリ君は時空の裂け目を通ってこの世界に来たんだろう……マレビト君」

「ッ!?」

 

 まるで言い当てるように理事長・瀬野は、己の指を照陽に突きつけた。

 あまりのドンピシャっぷりに照陽は後ずさりし、引いてしまうのだった。

 

「な、なんでそれが分かったんですか……?」

「たまーにあるんだよ、この世界……そう言う事がさ。異世界から人が来るくらいは……”稀によくある事”くらいで済む」

「稀によくある事って言葉自体が矛盾してませんか!? ね、ねえ、空木さん……こんな話信じられないだろう!?」

「いえ、私……友達からもっとすごい話聞いてるんで平気です。この島に限らず、今の日本では割と信じられない事件が色々起こるんです」

「空木さん!?」

「とにかく。私の前では隠し事は無用だ。私は生憎分かってしまうんだよ」

 

 愉快そうに口角を吊り上げる瀬野。

 照陽はゴクリと生唾を飲み込んだ。彼女の前では超常現象すらも「よくある事」だという。

 ──この世界では、今までの照陽の常識が通用しないという事を意味していた。

 瀬野がタダモノではない事は否が応でも察せられる。しかし、それを加味しても今は時間が惜しかった。

 照陽はこれまでの経緯を瀬野に話す──

 

「成程。妹と一緒にこの世界に──ってわけか。天戸 照陽、改め少年」

「名乗ったのに是が非でも僕の事を少年って呼ばなきゃ気が済まないのかこの人」

「フゥン……妹さん……天戸 円架なら──多分()()だろう」

「は? 僕まだ妹の名前出してないんですけど──」

 

 照陽が言い終わる前に、瀬野はノートPCの画面を照陽に見せつける。

 そこには──【学内CS優勝!? 新たなるスーパールーキー!! ゴージャスデュエリスト・天戸 円架!!】と書かれた記事。

 そして、見覚えしかない妹・円架が見覚えのないサングラスを掛けて豪奢な椅子に踏ん反りがえっている写真だった。

 てっきりすぐには見つからないだろうと思っていた円架が、秒で──それも思ったよりエンジョイした様子で見つかったので、照陽も顎が外れる程に驚愕するしかない。

 

「何やってんのアイツーッッッ!? ゴージャスって何ーッッッ!?」

「この手の話で秒で妹さんが見つかる事ってあるんだ……照陽君に見せられた写真の雰囲気と全然違うから分かりませんでした」

「天戸 円架がこの街に突如やってきたのは、半年ほど前の事だった」

「半年ィ!? 待って下さい、僕が此処に来たのはついさっきなんですよ!?」

「恐らく()()()()()()()()()()だろう」

「時間座標!?」

「君達は離れ離れになったって言っただろう。その際、別々の時系列に飛ばされたんだ。妹君は半年前、君は現在……というわけだ」

 

 照陽は気が遠くなりそうだった。

 理屈は理解出来ないが、あの時円架の手を掴めなかった所為で二人は別々の時間軸に飛んでしまったのである。

 この半年間に何があったのか、照陽には計り知れない。

 

「な、なんてこった!! じゃあ円架だけ半年前に飛ばされて、半年間ひとりで頑張ってきたって言うのか!?」

「こんな記事もあるぞ」

 

【豪快!! 聖羽衣学園の新たなる頂点、超大金持ちデュエリスト・天戸 円架】

 

【半年前に突如現れたスーパールーキー・天戸 円架。彼女は今日も豪華なドレスに身を包み、さながら芸能人の如き風貌で登校している。デッキは全て、レアリティが高いバージョンで統一しており、カード決済もD・M(デュエル・マスターズ)カード払いという徹底っぷり。今回は、そんなゴージャスな彼女の学生生活に密着した。】

 

「私も一度だけ目にしたことがあるが……君の妹は凄いな。恐らく異世界転移して身一つで聖羽衣学園という学校で成り上がった」

「成り上がっちゃったの!?」

「でも異世界に来たのにどうやって、こんな大金持ちに……ッ!?」

「いや、そっちについては驚かないかな」

「何で!? 普通は大金持ちになった方を驚くんじゃないですか!?」

 

 こころが目を丸くする。

 しかし、一緒に住んでいただけあって円架の事をよく知る照陽にとって、彼女が豪奢な格好で居るのは驚くことではなかった。

 

「円架は……昔から金運が凄まじく良いんだ。それだけじゃなくて、趣味はお金稼ぎ……株、投資信託、FX、お金の事なら何でも詳しいし得意だ」

「まさか危ない闇バイトやパパ活とか──」

「そんなのに手を出すような教育はしてないッ!! もし手を出してたら僕は兄として責任を取って舌を噛み切って死ぬね!」

「大事にされてるんですね……」

「元々は……ケガで働けなくなった父さんの為にお金稼ぎを始めたんだ。それが運良く軌道に乗ってしまって……高校生なのにちょっとした事業家みたいな事もやってた。でも、全部それは家族の為なんだ」

 

 確かに金にはがめつい面がある円架。しかし、それは全てあくまでも家族の為。私利私欲のためではない。

 だが写真や記事に写っている円架は──まるでタガが外れてしまったかのように贅沢三昧を楽しんでいる。

 照陽の知る妹の姿とは、何処かかけ離れているように見えた。

 

「この半年間で円架に何があったんだ……? 一人で辛かったから、こんなことを……?」

「ふむ。見知らぬ異世界で一人、ストレスはとてつもなく溜まるだろう。たまたま身請けしてくれる相手が聖羽衣学園に居たんだろうが……それでも少女一人には辛い環境には違いない」

「……早く会いに行かなきゃ」

「ならば私が話を通そう。今の彼女は一般人がおいそれと会える立場じゃない」

「どういうことですか?」

「これを見てくれ」

 

 PCの画面に移っているのは──【最新版! 五色島”六禍仙”】と書かれた記事だった。

 

「ろ、ろっかせん……?」

「会ったが最期、必敗を覚悟させる程に強い、五色島の6人のトップデュエリストさ。それぞれ各文明ごとに選定される」

 

 ──デュエル・マスターズには5つの文明が存在する。

 

 平和を重んじ、完全なる鉄壁の防御を誇る光文明。

 

 知識と謀略を得意とし、頭脳戦ならば誰にも負けない水文明。

 

 死を弄び、深淵より無数の軍勢を率いる闇文明。

 

 燃え盛る炎を司り、仲間との速攻を得意とする火文明。

 

 生命を尊び、生命の根源であるマナを操る自然文明。

 

 そして──どの文明にも属さない透明なる無色カード。

 

「天戸 円架はこの半年で──学園島でも最強クラスの光文明使いとして認められた。その証が──”六禍仙”の称号だ」

「妹にとんでもねえ肩書がついてる……」

「フゥン、分かっただろう少年? まさに妹君が辿った道筋は──」

 

 

 

 ──デュエマプレイヤーは「カードが全ての学園島」で成り上がるそうです。

 

 

 

「──と言ったところだろうか?」

「ねえ、成り上がるってそういうこと!?展開が速すぎるよ、あまりにも!!」

「妹さんの才能が怖いですね……」

「とにかく、円架に会わなきゃ……ッ」

「私が車を出そう☆」

「流石理事長!」

「えーと、理事長……ひょっとして私も行かないといけない感じですか?」

「万が一の時の為だ。空木君も来たまえ」

「ええ……早く帰りたかったんですけど……」

「なんか、巻き込んじゃってごめんね空木さん……」

 

 ──照陽としては、変わり果てた妹に早く会わなければ気が済まなかった。

 理事長がすぐに車を出してくれたこともあって、直ぐに聖羽衣学園の学区へと向かう事が出来たのである。

 ビルが立ち並ぶ街並みを抜けると──大聖堂のような建物が目に入った。

 此処が同じ島かと疑う程に荘厳な景色だ。

 理事長の運転するNボックスが場違いに見えてしまうような、異国情緒溢れる町である。

 

「まるでヨーロッパの教会のような……」

「聖羽衣の学区はそういった建物が多い。聖羽衣の生徒は、強制ではないものの聖教徒が殆どを占めている」

「こんな場所に、あのゴージャスな格好をした妹さんが居たらそれこそ場違いも良いところですね……」

「全く我が妹ながら恥ずかしいよ、何を考えてるのかなアイツは……服装のセンスはある方だと思ってたんだけど」

 

 わざわざ専用の応接間に通された照陽たち。

 壁全面が黄金色であり、おおよそ清貧とは程遠い。

 何故いち生徒にこのようなものまで用意されているのか甚だ疑問である。

 

「あの? 聖教何処行った? 金ぴかすぎて下品まであるよね、この壁」

「恐らく彼女……天戸 円架の趣味だろう。全く目がチカチカするよ、金閣寺かな?」

「うちの妹、こんなに趣味悪かったんだショックだな……」

「仕方がありません照陽さん、人間は環境が変われば内面も変わってしまうと言います。妹さんもそうだったのでしょう、受け入れるしかありません」

「今年一受け入れがたい真実来たな……僕寝込んでしまいそうだ──」

 

 

 

 ドッガラガッシャーンッッッッッ!!

 

 

 

 ──次の瞬間であった。

 爆音と共に応接間を仕切る黄金の壁が突如ゴミのようにへしゃげ、黄金色のスポーツカーが突撃してきたのである。

 照陽たちは唖然としながら──部屋に突っ込んできたスポーツカーの助手席から降りてきた人物を目で追うしかなかった。

 黄金の壁だった瓦礫を足で踏みつけ、少女は「あーあ、またやっちゃったの?」と呆れ顔で一言。

 サングラスを外し──照陽たちを睨み付ける。

 

「……ま、円架……?」

「うん? ああごめん、運転手がハンドルさばき間違えちゃって。でも壁くらいすぐ買い換えられるから問題ないよね」

「いや、あの、だから……」

「ところで……貴方、誰?」

 

 円架の発言に──照陽は胸が凍るようだった。

 確かに風貌こそ変わり果ててしまっているものの。

 物をモノと思わない傲岸不遜な性格に成り果ててしまっているものの。

 目の前にいるのはたった1人の妹に違いなかった。

 しかし──当の妹である円架は、それを拒絶するかのように照陽へ吐き捨てる。

 

「……円架、僕を覚えていないのかい……!?」

()()()()()()()()()()()()()。用事が無いんだったら帰ってくれないかな」

「そ、そんなッ……」

「酷いです!! 幾らお金持ちになったからって、実の兄をッ!! 忘れるなんてッ!!」

 

 憤慨して叫ぶこころ。

 しかし──それに反し、瀬野はまたしても愉快そうに口を歪めるのだった。

 

「成程、面白い、そういうことか」

「ッ……」

「少年。君は何にも感じないのか? 本当に? ……自分の妹の奥に巣食うナニカを」

 

 照陽はその言葉に従い、もう一度円架を見遣る。

 

「──何だ、これ」

 

 彼女の影に潜む──ナニカ。

 先程、戦極学園の生徒会長・矢車を見た時と同じ悍ましい感覚。

 こころは何も感じ取れていないのかきょとん、とした様子だが──照陽と瀬野にはハッキリとそれを感じ取れた。

 

「集中して、呼吸を整えるんだ少年。そうすれば、そこにある真実が見える」

「真実──ッ」

 

 言葉通り呼吸を落ち着ける。

 落ち着く為に、胸にぶら下げた「お守り」に手を当てる。

 

「ッ……!!」

 

 さっきよりも強く、妹の中に巣食うその姿がハッキリと知覚できる。

 それはまるで、巨大な機神。

 龍を象った車を組み合わせたかのような巨大な機神。

 それが円架の影で蠢いている。

 

「……天戸 円架は──()()()()()()()()()()()()()()()

「カードの……精霊……?」

「あれぇ? ……もしかして見えちゃった? ……なら仕方ない。()()()()()──此処で見たものは忘れてもらおう」

 

 円架の影に潜むソレが大きく膨れ上がり、巨大な腕を照陽たち目掛けて振り上げた。

 思わず腕で顔を覆う照陽。

 しかし──次の瞬間だった。

 

 

 

「だが安心して良い、少年。君の胸にぶら下がったそのカードは……君を守ってくれるようだ」

 

 

 

 巨大な腕を振り払う剣閃。

 照陽の影から現れた、武者鎧を身に纏った龍。

 ホログラムではないにも関わらず、それはクリーチャーの姿をとって照陽を守っていた。

 その名前は──他でもない照陽が最も知っている。

 

 

 

「《ボルメテウス・武者・ドラゴン》──ッ!?」

「……カードの精霊を持つ者同士ならば、()()()()()()()()()()()。真のデュエルで奴を捻じ伏せるんだ、少年ッ!!」

 

 

 

 ──尚、此処までの会話を横で聞いていたこころには、これらのクリーチャーの姿は一切見えておらず。

 

「なんか……蚊帳の外になってますね、私……」

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