デュエマプレイヤーは「カードが全ての学園島」で成り上がるそうです。 作:タク@DMP
※※※
──同時刻。
五色島・某所。
「これで──何人目だァ?」
サクガミの周囲には、何人もの生徒が倒れ伏せていた。
いずれも精霊使いの強豪ばかり。
しかし、六禍仙を倒して解体した彼の前ではお話にならないのだった。
「ボルメテウス……テメェの力の維持には、あまりにも手間がかかり過ぎる。これじゃあ餌代の嵩むペットだぜ」
破壊した精霊は、いずれもボルメテウス・リバース・ドラゴンのマナへと変換される。
サクガミは──鬱陶しそうにデッキの一番上に敷いた己の切札を見遣った。
「まあ、仕方ねェんだがな……俺はテメェに心臓を握られてるも同然だ。テメェに従うさ。それに──」
『ぐ、う……ッ』
「こいつも屈服させねえといけねえからなァ」
ぺろり、と唇を舐めるサクガミの手には──照陽から奪った《ボルメテウス・武者・ドラゴン「武偉」》。
「……なあおい、お前本当は女なんだろ? 女の子の姿で出て来いよ」
『断る……ッ』
「生意気言うんじゃねえよ。此処でテメェのカードを握り潰したら……あのガキもどうなるか分からねえオマエじゃあるまい」
『……ひ、卑怯な──ッ』
「いい加減意地張らねえで、出て来いって。なあ? 俺も手荒な真似はしたくねえんだよ。そうだな、先ずは──その綺麗な口でしゃぶって──」
「──ふむ。見破られていたか。では、大人しく出てくるとしよう」
びくり、と肩を震わせるサクガミ。
すぐさまボルメテウス・リバース・ドラゴンが臨戦態勢となって現れる。
白いローブで全身を覆った少年が──そこには立っていた。
「──君は……天津サクガミかね?」
「ッ……いや、誰だお前は……」
「おや、”出て来い”と言ったのでてっきり隠れていたのを見破られていたものかと。クククッ」
「分かってて言ってやがるな、お前……おもしれーヤツじゃねえか」
底知れない、とサクガミは一瞬で目の前の相手を看破する。
しかし、不思議と口角は上がっていた。
此処まで戦った相手は、六禍仙に比べれば取るに足らない雑魚ばかり。
幾ら冷笑主義者と言えどサクガミのデュエリストの仔だ。
強敵相手には普段冷めているハートが燃え上がる。しかし──目の前のローブ姿の少年は手を前に突き出して制した。
「おっと。止そう。私
「みてぇだな。見た所お前の背後に居るのは精霊じゃねえ」
「ええ、その通り──神を、見たことはあるか?」
がこん。がこん。
歯車が無機質に回る音が聞こえてくる。
そして、その歯車に潜む──悍ましい存在が「精霊」などという矮小なものではないことをサクガミは瞬時に察した。
精霊ならばともかく、相手が同格のクリーチャーならばサクガミとて命を賭して挑むメリットは無い。
降りかかる火の粉を払うならばともかく──である。
「……で? 俺に何の用だ? 生憎これでも忙しい身でな」
「ボルメテウス・リバース・ドラゴン。時空の歪みから生まれし、逆札の竜。本来ならば存在しえない
「……よく知ってるな。少なくともコイツのカードを持ってるのは俺だけなんだがな」
「そのチカラで一体、何を成す」
「さあな。こいつの考えていることは俺もよく分からん。だが、俺は生きる為にこいつにエネルギーを供給し続けなきゃいけねえ」
サクガミは己の心臓を握り締める。
「俺とコイツは一心同体なんだよ。俺が留学先で死にかけていた時に、たまたま出てきたコイツに命を半分貰った。
にやり、と笑みを浮かべながら──サクガミは手に握った《ボルメテウス・武者・ドラゴン「武偉」》をぶんぶん、と振った。
「……なあおい、武者・ドラゴンよ。その
それは、命を失いかけたのがクリーチャーか、人間かの差だ。
「最悪、オマエが死にそうになっても……直前に契約を解除すれば、
『……』
「うおっ、だんまりか。だからオマエは俺の言う事をずっと聞かなかった。大した忠誠心だぜ、冷笑したくなるよ。畜生の癖に」
「しかし精霊には数に限りがある。この島の精霊も貴方に狩り尽くされてしまえば──いずれ貴方も干上がってしまうだろう」
「ああ、笑えねえだろ? かと言って他に方法も思いつかねえんだがな」
《「武偉」》のカードを乱雑にポケットへ仕舞い、彼は肩を竦めた。
「そこで私から提案がある」
「あんだと?」
「……ソイツに私のクリーチャーを使って力を供給してやる。その代わり──私の指示に従ってもらいたい」
「うおっ、話次第だな。俺は話が分かる方だが? もしくだらねえことなら……冷笑してやるよ」
「……やってもらう事は簡単だ」
少年は──空を高く指差した。
「……空間の裂け目を開いてほしい。ボルメテウス・リバース・ドラゴンならば可能なはずだ」
「……するとどうなる?」
「裂け目から──神が降臨する」
ローブから少年の目が見える。
嘘偽りを全く述べている風には見えない。
「もっと言えば……この世界の秩序は破壊されるだろう。君にとっても悪い話ではない。君は──酷くこの世界に退屈しているようだからな」
「……ああ、そうだよ」
サクガミは目を伏せる。
兄が死んだあの日から──いずれ、こんな日が来ればいいのにとずっと願っていた。
心の底から溢れ出す破滅願望。
世界そのものへの「冷笑」。
一生懸命今日の現実を生きる他者を──彼は一笑に付す。下らない、と。
「……努力が報われねークダラネー世界。そんなものは冷笑してやると決めた。ぐちゃぐちゃになれば、多少は面白くなるだろうよ、クカカカッ!!」
※※※
「……照陽さん、あれって……!!」
「ああ。ちょっとおかしなことになっているようだ」
翌朝──五色島行の船着き場に着いた照陽とこころは思わず絶句した。
島の遥か上空に裂け目のようなものが開いているのである。
すぐさま理事長に連絡を取る照陽。すると──電話の奥からテンションの高い声が聞こえてきた。
『アッハハハハハ!! 私も確認しているよ!! こんなのは初めて見た!!』
「いや、喜んでる場合ですか!!」
『しかしねぇー、六禍仙も全滅して……対抗できる人間が誰一人としていないんだ☆ 私としてはこのままどうなるのか、是非見てみたいところだが』
「ンな事言ってる場合ですか!!」
「この人、クリーチャーの事になると倫理観がバイバイしますね……」
「──どうやラ、いよいよ穏やかじゃなくなってるみたいネ」
照陽とこころは同時に振り返った。
そこに立っていたのは──無銘学園の制服を着た澪音だったのである。
「澪音……来てくれるのかい」
「今のワタシに出来る事……それは、ダーリンを信じて応援するこト。デュエルを見てほしいって、ダーリンが言ったんだかラ!!」
「学園に、戻ってきてくれるんですね! よかったぁ!」
「よくなイ!! あんた達……同じシャンプーのニオイがしたもン!」
がるるる、と威嚇するように唸りながら澪音は照陽の腕を掴み、抱き寄せる。
そして、こころの鼻先をつん、と突いた。
「……悪いけド、ダーリンの事は好き勝手にはさせないんだかラ……うううーッ」
「ッ……こら、澪音。そんな事を言ってる場合じゃ……」
「あ、あのっ。照陽さんは白銀さんのものだけじゃないですっ! 白銀さんこそ、勘違いしないでくださいっ」
「こころさん!?」
「フゥーン? 言うようになったじゃなイ。……大方、シエルも同じ事言ってるんデショ」
んべ、と小さく舌を出すと──彼女は機嫌良さそうに言った。
頬を膨らませたこころは、空いた照陽の左腕に抱き着く。
「ちょっと、こころさん!?」
「……白銀さんだけ、ジェラシーです。私だって嫉妬するんですから」
「人の目もあるから勘弁してほしんだけどなあ……」
船に乗り込み──澪音は改めて言った。
己の決意を示すように。
何処か憑き物が落ちたような顔で、彼女は笑みを浮かべる。
「ダーリン。ワタシ、折れかけてタ。シャングリラを失って、六禍仙の立場も失って……もう何も残ってないって思ってタ。デモ──違っタ! ダーリンは、ワタシが何者じゃなくっても……一緒に居てくれるんデショ!」
「……そうだね。そして、あいつを倒したら……また思いっきりデュエマをしよう。何度勝っても何度負けても飽きない、いつものデュエマを」
「私も出来るだけのサポートをしますっ! 朝からゴハン、全然食べてないので! シエルといつでも……交代できます……」
「こころさんも、無理しないようにね……」
さて、と照陽は改めて五色島の方を見た。
上空に広がる巨大な亀裂。それは徐々に罅割れて広がっていっている。
「……ボルメテウス。君は今……どうしているんだい」