デュエマプレイヤーは「カードが全ての学園島」で成り上がるそうです。   作:タク@DMP

40 / 46
第38話:再起

 ※※※

 

 

 

 ──同時刻。

 五色島・某所。

 

「これで──何人目だァ?」

 

 サクガミの周囲には、何人もの生徒が倒れ伏せていた。

 いずれも精霊使いの強豪ばかり。

 しかし、六禍仙を倒して解体した彼の前ではお話にならないのだった。

 

「ボルメテウス……テメェの力の維持には、あまりにも手間がかかり過ぎる。これじゃあ餌代の嵩むペットだぜ」

 

 破壊した精霊は、いずれもボルメテウス・リバース・ドラゴンのマナへと変換される。

 サクガミは──鬱陶しそうにデッキの一番上に敷いた己の切札を見遣った。

 

「まあ、仕方ねェんだがな……俺はテメェに心臓を握られてるも同然だ。テメェに従うさ。それに──」

『ぐ、う……ッ』

「こいつも屈服させねえといけねえからなァ」

 

 ぺろり、と唇を舐めるサクガミの手には──照陽から奪った《ボルメテウス・武者・ドラゴン「武偉」》。

 

「……なあおい、お前本当は女なんだろ? 女の子の姿で出て来いよ」

『断る……ッ』

「生意気言うんじゃねえよ。此処でテメェのカードを握り潰したら……あのガキもどうなるか分からねえオマエじゃあるまい」

『……ひ、卑怯な──ッ』

「いい加減意地張らねえで、出て来いって。なあ? 俺も手荒な真似はしたくねえんだよ。そうだな、先ずは──その綺麗な口でしゃぶって──」

 

 

 

「──ふむ。見破られていたか。では、大人しく出てくるとしよう」

 

 

 

 びくり、と肩を震わせるサクガミ。

 すぐさまボルメテウス・リバース・ドラゴンが臨戦態勢となって現れる。

 白いローブで全身を覆った少年が──そこには立っていた。

 

「──君は……天津サクガミかね?」

「ッ……いや、誰だお前は……」

「おや、”出て来い”と言ったのでてっきり隠れていたのを見破られていたものかと。クククッ」

「分かってて言ってやがるな、お前……おもしれーヤツじゃねえか」

 

 底知れない、とサクガミは一瞬で目の前の相手を看破する。

 しかし、不思議と口角は上がっていた。

 此処まで戦った相手は、六禍仙に比べれば取るに足らない雑魚ばかり。

 幾ら冷笑主義者と言えどサクガミのデュエリストの仔だ。

 強敵相手には普段冷めているハートが燃え上がる。しかし──目の前のローブ姿の少年は手を前に突き出して制した。

 

「おっと。止そう。私()きっと……只では済まない」

「みてぇだな。見た所お前の背後に居るのは精霊じゃねえ」

「ええ、その通り──神を、見たことはあるか?」

 

 がこん。がこん。

 

 歯車が無機質に回る音が聞こえてくる。

 

 そして、その歯車に潜む──悍ましい存在が「精霊」などという矮小なものではないことをサクガミは瞬時に察した。

 精霊ならばともかく、相手が同格のクリーチャーならばサクガミとて命を賭して挑むメリットは無い。

 降りかかる火の粉を払うならばともかく──である。

 

「……で? 俺に何の用だ? 生憎これでも忙しい身でな」

「ボルメテウス・リバース・ドラゴン。時空の歪みから生まれし、逆札の竜。本来ならば存在しえない究極の夢(エクスドリーマー)

「……よく知ってるな。少なくともコイツのカードを持ってるのは俺だけなんだがな」

「そのチカラで一体、何を成す」

「さあな。こいつの考えていることは俺もよく分からん。だが、俺は生きる為にこいつにエネルギーを供給し続けなきゃいけねえ」

 

 サクガミは己の心臓を握り締める。

 

「俺とコイツは一心同体なんだよ。俺が留学先で死にかけていた時に、たまたま出てきたコイツに命を半分貰った。()()()()()()()んだがなァ──もし契約を解除すれば、俺は死ぬ」

 

 にやり、と笑みを浮かべながら──サクガミは手に握った《ボルメテウス・武者・ドラゴン「武偉」》をぶんぶん、と振った。

 

「……なあおい、武者・ドラゴンよ。その()ってのがお前達なんだろう。お前が死にかけていた所を、天戸照陽に生命力を分けて貰った。確かに契約中にどっちかが死ねば、もう片方死ぬってのは同じだ。だが──違うところが一点だけある」

 

 それは、命を失いかけたのがクリーチャーか、人間かの差だ。

 

「最悪、オマエが死にそうになっても……直前に契約を解除すれば、()()()()()()()()()になる」

『……』

「うおっ、だんまりか。だからオマエは俺の言う事をずっと聞かなかった。大した忠誠心だぜ、冷笑したくなるよ。畜生の癖に」

「しかし精霊には数に限りがある。この島の精霊も貴方に狩り尽くされてしまえば──いずれ貴方も干上がってしまうだろう」

「ああ、笑えねえだろ? かと言って他に方法も思いつかねえんだがな」

 

 《「武偉」》のカードを乱雑にポケットへ仕舞い、彼は肩を竦めた。

 

「そこで私から提案がある」

「あんだと?」

「……ソイツに私のクリーチャーを使って力を供給してやる。その代わり──私の指示に従ってもらいたい」

「うおっ、話次第だな。俺は話が分かる方だが? もしくだらねえことなら……冷笑してやるよ」

「……やってもらう事は簡単だ」

 

 少年は──空を高く指差した。

 

「……空間の裂け目を開いてほしい。ボルメテウス・リバース・ドラゴンならば可能なはずだ」

「……するとどうなる?」

「裂け目から──神が降臨する」

 

 ローブから少年の目が見える。

 嘘偽りを全く述べている風には見えない。

 

「もっと言えば……この世界の秩序は破壊されるだろう。君にとっても悪い話ではない。君は──酷くこの世界に退屈しているようだからな」

「……ああ、そうだよ」

 

 サクガミは目を伏せる。

 兄が死んだあの日から──いずれ、こんな日が来ればいいのにとずっと願っていた。

 心の底から溢れ出す破滅願望。

 世界そのものへの「冷笑」。

 一生懸命今日の現実を生きる他者を──彼は一笑に付す。下らない、と。

 

「……努力が報われねークダラネー世界。そんなものは冷笑してやると決めた。ぐちゃぐちゃになれば、多少は面白くなるだろうよ、クカカカッ!!」

 

 

 

 ※※※

 

 

 

「……照陽さん、あれって……!!」

「ああ。ちょっとおかしなことになっているようだ」

 

 翌朝──五色島行の船着き場に着いた照陽とこころは思わず絶句した。

 島の遥か上空に裂け目のようなものが開いているのである。

 すぐさま理事長に連絡を取る照陽。すると──電話の奥からテンションの高い声が聞こえてきた。

 

『アッハハハハハ!! 私も確認しているよ!! こんなのは初めて見た!!』

「いや、喜んでる場合ですか!!」

『しかしねぇー、六禍仙も全滅して……対抗できる人間が誰一人としていないんだ☆ 私としてはこのままどうなるのか、是非見てみたいところだが』

「ンな事言ってる場合ですか!!」

「この人、クリーチャーの事になると倫理観がバイバイしますね……」

 

 

 

「──どうやラ、いよいよ穏やかじゃなくなってるみたいネ」

 

 

 

 照陽とこころは同時に振り返った。

 そこに立っていたのは──無銘学園の制服を着た澪音だったのである。

 

「澪音……来てくれるのかい」

「今のワタシに出来る事……それは、ダーリンを信じて応援するこト。デュエルを見てほしいって、ダーリンが言ったんだかラ!!」

「学園に、戻ってきてくれるんですね! よかったぁ!」

「よくなイ!! あんた達……同じシャンプーのニオイがしたもン!」

 

 がるるる、と威嚇するように唸りながら澪音は照陽の腕を掴み、抱き寄せる。

 そして、こころの鼻先をつん、と突いた。

 

「……悪いけド、ダーリンの事は好き勝手にはさせないんだかラ……うううーッ」

「ッ……こら、澪音。そんな事を言ってる場合じゃ……」

「あ、あのっ。照陽さんは白銀さんのものだけじゃないですっ! 白銀さんこそ、勘違いしないでくださいっ」

「こころさん!?」

「フゥーン? 言うようになったじゃなイ。……大方、シエルも同じ事言ってるんデショ」

 

 んべ、と小さく舌を出すと──彼女は機嫌良さそうに言った。

 頬を膨らませたこころは、空いた照陽の左腕に抱き着く。

 

「ちょっと、こころさん!?」

「……白銀さんだけ、ジェラシーです。私だって嫉妬するんですから」

「人の目もあるから勘弁してほしんだけどなあ……」

 

 船に乗り込み──澪音は改めて言った。

 己の決意を示すように。

 何処か憑き物が落ちたような顔で、彼女は笑みを浮かべる。

 

「ダーリン。ワタシ、折れかけてタ。シャングリラを失って、六禍仙の立場も失って……もう何も残ってないって思ってタ。デモ──違っタ! ダーリンは、ワタシが何者じゃなくっても……一緒に居てくれるんデショ!」

「……そうだね。そして、あいつを倒したら……また思いっきりデュエマをしよう。何度勝っても何度負けても飽きない、いつものデュエマを」

「私も出来るだけのサポートをしますっ! 朝からゴハン、全然食べてないので! シエルといつでも……交代できます……」

「こころさんも、無理しないようにね……」

 

 さて、と照陽は改めて五色島の方を見た。

 上空に広がる巨大な亀裂。それは徐々に罅割れて広がっていっている。

 

「……ボルメテウス。君は今……どうしているんだい」

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。