デュエマプレイヤーは「カードが全ての学園島」で成り上がるそうです。 作:タク@DMP
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──天戸照陽と天津サクガミの両者が真のデュエルを始めようとしていた、ほぼ同時刻。
五色島郊外──第八学区付近。
生徒達が完全に寝静まった夜、それを切り裂くのは──無数の触手を放つ邪神。
飄々と逃げる全身をローブでくるんだ少年。
それを追うは──こころ改め、悪魔の仔・シエル。
「待ちやがれ──!!」
「やれやれ。しつこいね──邪神・ヴリドガルド、か」
顕現した巨大な蛇神を前にローブの少年は両の手を挙げた。
しかし、降参するつもりは毛頭も無いらしい。その手には──デッキが握られている。
あくまでも抗戦の姿勢を見せる少年に対し、シエルは淡々と問うた。
「……オマエ、何処の学校の人間だ? 名前は?」
「我が神をこの世に降ろす──それこそが我が悲願」
そう言った少年はローブを捲り上げる。
その顔は──歯車だけで構成されており、中央には目玉がギョロりと座している。
漸くシエルは理解した。
目の前にいるのは人間ではない。
「……COMPLEX──生きてやがったのか」
憎悪を滾らせながら彼女は叫ぶ。
その影に潜むは、歯車で構築された巨大なる魔導具。
かつて、天戸照陽の手で引導を渡された──異界より現れしクリーチャー。
「……マガイモノの精霊とは違い、クリーチャーとはそう簡単に滅ばないのだよ」
「目的は何だ? オマエの言う神ってのは──」
「邪神だ」
無機質な声でCOMPLEXは告げる。
「邪眼の始祖たる、我がアルジ──我はさるお方を煉獄より召喚するための呼び水!! 直に空間に穴が開き、今度こそあのお方は降臨する──ッ!!」
「……ハッ、何が邪眼の始祖だ、んなもん知ったこっちゃねー」
シエルはデッキを握る。
誓ったのだ。
もう二度と、この怪物に──自分の大切なものも、時間も奪わせはしない、と。
「矮小だな!! そんなモンが名乗って良い程、邪神ってのは……ちっぽけなモンじゃねーぜ!!」
「……貴様、我が主を……我が神を愚弄するか」
「テメェをこの手でブッ殺したくて仕方なかったぜ──ッ!! 願ったり叶ったりだ、蘇るなら何度でもブッ潰すッ!!」
「出来るものならば──ッ!!」
即座に空間が展開され、シールドが現れる。
《轟速奪取トップギジャ》を召喚してマナを増やすシエル。
《~創造、破壊、そして絶望~》を召喚し、手札を入れ替えるCOMPLEX。
デュエルは早くも、最大風速を記録しようとしていた。
「足掻いても無駄だッ!! 悪魔の仔、そして空っぽの邪神よ!! オマエでは、私に傷をつけることは能わないッ!! またあの時のように、指をくわえて見ているが──」
「オマエの時間は……照陽に負けたあの時のまま止まってんだな」
吐き捨てるシエルを前に、COMPLEXは黙りこくった。
「どういう……意味だ?」
「……止まっちまったオマエと、止まらずに進化し続けた俺様……どっちが先に、果てへとたどり着くか、試してみるか?」
マナが4枚、タップされる。
轟速の彼方より、それは赤い軌跡を描いて飛んでくる。
シエルがカードを掲げれば、フィールドはネオンライトが彩る炎のサーキットへと塗り替えられた。
「付いて来られるか? ──《轟速 ジャ・レッド》召喚」
「──ッ!?」
エンジンの駆動音と共に、それは戦場へと到達した。
バイクに乗ったロボットのようなクリーチャーだ。
シエルは得意げにそのカードに手を添えると、エンジンを噴かせるかのようにタップさせる。
「──オマエに切札を召喚させるヨユーは与えねえ。《ジャ・レッド》で攻撃する時、マナのカードを4枚アンタップし──D・D・Dを宣言ッ!!」
火、闇、自然。
その三色のマナが宙を舞う。
そしてサーキットを駆け抜けるは──超次元さえもブチ抜く悪魔。
《ジャ・レッド》の疾走と共にシエルのマナがアンタップした。
そして、そのマナを再び4枚タップさせ──悪魔が降臨する。
「到来しろ──《ジャ・レッド》をG-NEO進化……《魔誕の封殺ディアス
魔誕の封殺ディアスZ 火/闇/自然文明 (6)
G-NEOクリーチャー:デーモン・コマンド
《轟速ジャ・レッド》
・攻撃時にマナを4枚アンタップする。
・D・D・Dにより、攻撃中に手札から《魔誕の封殺ディアスZ》に進化
羽根を広げし巨大な悪魔が到来する。
それは咆哮すると共にサーキットを剣で切り裂き、そのままの勢いでCOMPLEX目掛けて斬撃を見舞う。
2枚の手札が──砕かれた。
だが、それだけではゲームを終わらせるには至らない。
COMPLEXのシールドは、まだ3枚残っているのだから。
「馬鹿め──今の攻撃で、我が手には切札が──」
「──
切り裂かれたサーキット。
そこから、更なる軍勢が現れる。
「俺は、マナゾーンからコスト5以下のクリーチャーを出し、ソイツにスピードアタッカーを付与するッ!!」
「……ッ!?」
「呼び出すのは──《ギガクローズ》ッ!!」
割れた地面から這い出るのは、牛のような角を持った古の合成獣。
「な、なんだ、そのカードは……!?」
「──テメェが知る必要はねえ。どうせ全部忘れちまうんだからな──」
《ギガクローズ》が腐臭を口から撒き散らしながら、獲物であるCOMPLEX目掛けて飛びつく。
「──ターボラッシュ、起動」
したり顔でシエルは宣言した。
地獄の門が開かれた。
《ギガクローズ》は他のクリーチャーがシールドをブレイクしたターン、ターボラッシュ能力を得る。
それは、シールドをブレイクしたクリーチャーの攻撃の終わりに《ギガクローズ》が着地しても発動するのである。
「──ターボラッシュ状態の《ギガクローズ》は──テメェの手札を全部破壊する」
「──あ、え──ッ」
狂喜した合成獣はCOMPLEXのシールドと共に、残る手札を全て喰らい尽くした。
あれほどあった手札は、全て墓地へと叩き落とされる。
無論、次のターンにプレイしようとしていた《COMPLEX》本体も墓地へ──
「こ、こんな事は、有り得ない──この、私が……!?」
「良いこと教えてやるよ、COMPLEX。人間ってのは進み続ける生き物だ。俺はずっと、こころの裏で──牙を研ぎ続けたッ!!」
何も出来ず、ターンを終えざるを得ないCOMPLEXを前に、シエルはトドメと言わんばかりに最後のクリーチャーを召喚する。
《魔誕の封殺ディアスZ》が最後のシールドを粉砕した。
シールドからは閃光が降り注ぎ、シエルの軍勢を全てタップするが──攻撃の終わりに発動する《ディアスZ》の効果を止めることが出来ない。
「あり、えない!! あの時何も出来なかった、カラッポのオマエに……
「──テメェにはもう、何もさせねえ」
シエルの背後に巨大な影が現れる。
蛸の如き触手を無数に従えた巨大なる邪神にして蛇神。
その名は──
「──Calling!! これが悪魔のデュエルだッ!!
《
──ヴリドガルド。
その触手がCOMPLEXの身体を貫き、搦めとり、そして縛り上げる。
「ぐ、がぎぎぎぎぎぎぎ!? き、様ァ──!? こ、れで、終わりだと思うな、私は不滅……我らが魔導具は人の負の念がある限り、何度でも永遠に──」
「──なら、その度に俺が見つけ次第殺してやるよ」
「カラッポの、ジャシン如きに、この私が──!!」
「だから言っただろ、
シエルは笑みを浮かべる。
「俺はシエル。悪魔の仔……空木シエルだッ!!」
ヴリドガルドが咆哮した。
COMPLEXの身体は今度こそ、粉々に砕け散るのだった。