デュエマプレイヤーは「カードが全ての学園島」で成り上がるそうです。 作:タク@DMP
「──《ボルメテウス・リバース・ドラゴン》の効果起動ッ!! 相手のクリーチャーは全て、攻撃もブロックも出来なくなるのさァッ!」
リバース・ドラゴンが現れた時、世界は逆転する。
燃え盛る合戦場は巨大な塔の聳え立つ荒廃した大地へと塗り替えられる。
重力は反転し、全ての者の闘う意思は削ぎ取られ、かの竜の前に平伏す──はずだった。
「──《バザガベルグ・閃光・ドラゴン》で攻撃」
疾風すらもぶち抜く閃光が天津目掛けて襲い掛かる。
「な、え、なんで──《リバース・ドラゴン》の効果が──まさか」
天津は瞬時に理解した。
《レッドゾーン》の敷いたサーキットが既に、聳え立つ塔に届いていることに。
荒廃した大地も、支配の塔も、轟速の侵略者の前では道。邪道であっても道は道。
「──止まらないよ。《レッドゾーン》の効果で自分のクリーチャーの”攻撃できない”効果は全て無効化される。《リバース・ドラゴン》は、只の置物のブロッカーだッ!!」
「しま、った……ッ!?」
(そんな簡単な効果を見落としていたのか俺は!? い、いや、見落としていようがいまいが関係ねえ!! こんなの、どうやったら止まるってんだ!! 全タップの呪文トリガー……!!)
天津は手札を見た。
そこにはさっきのターンに手札に加えられた《S・S・S》のカード。
このデッキでは数少ない、相手のクリーチャーを全てタップする数少ない受け札だ。
(ダ、ダメだ、有効牌はさっき《ラフルル・ラブ》に割られたシールドに入ってやがる──マナに置いたカード、手札のカードも考えりゃあ、この盤面を止められる呪文のトリガーはもう僅か……ッ!?)
《リュウジン・ドスファング》を身に着けた《バザガベルグ》が疾走する。
刀で切り裂いた空間から、それは再び姿を現した。
「──さあ、切り開こう。これが、勝利への道だッ!! メクレイドで《ボルメテウス・武者・ドラゴン「武偉」》を再びバトルゾーンへ!!」
「雌伏の時は過ぎ去った──此処からが逆転劇だッ!!」
咆哮する《武者・ドラゴン「武偉」》。
照陽のシールドを切り裂き、その勢いを乗せて──《c0br4》も真っ二つに断つ。
「その効果でシールドをブレイクし、相手のパワー6000以下のクリーチャーを破壊するよッ!!」
「その攻撃は──通してやるよ……!! だが──それでも《リバース・ドラゴン》はブロッカーだッ! それに、こ、このデッキには大量のトリガーが……!!」
天津のシールドが2枚、砕かれる──
天津残りシールド:3→1
「ッ……な、クソ、G・ストライク、だと……トリガーは……!?」
──が、手札に来たシールドにS・トリガーは無い。
当てつけと言わんばかりにG・ストライクを持つ《「曲通風」》と《ロスト・Re:ソウル》が手札に加わるが、G・ストライクは意味を成さない。
何故ならば、この場は既に《レッドゾーン》が支配しているからだ。
「ケア、された……5枚中4枚が受け札だったんだぞ!? それを全部、踏み越えた……ッ!? 有り得ねえ、こんな事は──ッ!!」
「《レッドゾーン》でシールドをブレイクッ!! その時──相手のパワーが一番低いクリーチャーを全て破壊する!!」
車輪を回転させ迫る《レッドゾーン》。
迎え撃つべく無数の光線を放つ《ボルメテウス・リバース・ドラゴン》。
照陽のシールドがブレイクされたことでZラッシュが発動しており、パワーでは互角だ。
しかし──圧倒的に速さが足りない。
「──《レッドゾーン》で《ボルメテウス・リバース・ドラゴン》を破壊だッ!!」
拳が──《リバース・ドラゴン》の顔面を貫き、轢き潰す。
爆散する己の切札を前に、天津の脳裏に存在しないはずの記憶が過る。
──《轟く侵略レッドゾーン》で《ハイドロ・ビスマルク帝》を破壊だッ!!
「──なん、だ、この記憶……!? 俺は……」
天津は顔を上げた。
照陽の顔は──キッと彼の目を見つめている。
「俺は、以前、オマエに負けているっていうのか……この俺が、二度も同じヤツに!? ナ、ナメやがってッッッ!! 認めねえ、俺は認めねえぞ──こんな事、罷り通って良い訳がねえ!!」
「結局……君のやっていることは八つ当たりでしかない」
《レッドゾーン》が最後のシールドをブレイクする。
その中身は《ゴルギーネクスト》。
S・トリガーではない事は双方分かり切っている。
「そんなことをしてもお兄さんは戻って来ないんだ。結局君が冷笑していたのは──お兄さんを止められなかった君自身だったんだよッ!!」
「ッ……!!」
「だから、こんな悲しいデュエマは──これっきりにするべきなんだ」
「分かったような口を利きやがって──恵まれたオマエに、俺の何が分かるってんだッ!!」
「分からないよ」
目を閉じた照陽はカードに手を掛ける。
「……どんな理由があっても、デュエマで人を傷つけようとするヤツの気持ちなんてね」
刀を振るう《「武偉」》。
それが──天津を切り払い、空間が崩れ落ちた。
──勝者、天戸照陽。
※※※
「ダーリンが……勝っタ……!」
息を呑む澪音。
そして、ボロボロになって倒れ伏せる天津。
その前に──息を切らせながら照陽は立っていた。
『峰打ちだ。後はクリーチャーの方を倒せば問題は無い──しかし、私にも力が残っていない……!』
カードの姿のままボルメテウスが言った。
無理もない、と照陽は彼女の苦しみを労わる。
数日間、エネルギーの補給なしに照陽から引き離されていたのだから。
ボルメテウスの苦しみは──他でもない照陽が一番分かっている。
「見テ!! 空の穴が──消えていくワ!!」
澪音が指差した。
空に入った亀裂は徐々に消えていく。
そこから漏れていたマナの奔流も──霧散していく。
五色島を覆う災禍が終わろうとしていた──
「天津。そのカードを渡すんだ」
「渡さ、ねぇ……ッ」
「……もう、やめよう。こんなことは──」
「精霊は……デュエマの才能がある奴の所に、来る、らしいぜ……俺も、例外じゃ、なかった」
「……ッ」
「兄貴は、選ばれなかった。才能が無かった。だが、俺は……違う。俺だけが──あの時、兄貴の希望を否定出来たんだ」
よろめきながら、天津は起き上がる。
口から血を流しながら──腹を抑えた。
「それが出来なかった時点で俺は……詰んでたのさ、兄貴が悲しむ顔を……見たく、なかったからなァ」
「天津……君は……」
にぃ、と自嘲的に彼は笑みを浮かべた。
「……オマエの言う通りだったぜ天戸照陽。俺が冷笑していたのは──他でもない俺自身だ。だから、だからこそ──もう止まらねえんだよ!! 後に戻れねえんだよ!!」
そして、手に持った《リバース・ドラゴン》のカードが光り輝く。
その中から、あろうことか巨竜が再び現れたのである。
「そんな!? まだ、そんなエネルギーが……!!」
『いや、まさかこの男……!』
「契約更新だ──ボルメテウス・リバース・ドラゴン!! 俺の命を燃やしてでも、この世界に大穴を開けてやれーッッッ!!」
再び実体化した巨龍が──天津の身体を大口でバクリ、と飲み込んだ。
思わず澪音は後ずさった。
「ウソッ……食われ、タァッ!?」
ごくり、と天津を丸呑みにしたリバース・ドラゴンは──咆哮。
天に目掛けて、再びあのレーザー砲を撃ち放とうとする。
主の魔力を丸ごと全て使い切ることで放つ必殺の光線。
それにより当初の目的である「世界の破壊」を実行するつもりであることは誰の目にも明らかであった。
「させないッ!! させるわけにはいかないッ!! どうすれば……ボルメテウス!!」
「ひとつだけ方法がある」
ふわり、と少女の姿で実体化するボルメテウス。
だが、それすらもギリギリの所なのか──その身体には炎が灯っており、今にも消えてしまいそうだ。
「君の身体から直接マナを供給する──それしか思いつかないッ! マナさえあれば、今度こそリバース・ドラゴンにトドメを刺せるはずだッ!!」
「供給って、どうやって……ッ!!」
「
「無茶だ!! その身体でどうやって!?」
「まさか、ドラゴンの姿なら君は躊躇なく自分の身体を捧げたのか!? 冗談は止せッ!!」
「冗談じゃないッ! 君の為なら僕は何だってやるッ!! だって君と僕は、一心同体だろ!?」
二人は──向き合う。
そして改めて照陽の真っ直ぐな目を見たボルメテウスは──微笑んだ。
「そうだな。頼まれてくれるか?」
「勿論だよボルメテウス!」
ボルメテウスの赤い目が照陽に向いた。
そして──ふわりとした紅の乗った自らの唇を、彼女は指で撫でる。
「むぐっ……!?」
次の瞬間──時間が停まったかのように照陽は錯覚した。
ボルメテウスの唇が──照陽に重なっていた。
しばし、永遠とも思える時間の後、息を継ぐかのように、そして名残惜しさを残すようにしてボルメテウスが口を離す。
尚、その様を間近で見せられた澪音は──硬直。そして膝から崩れ落ちるのだった。
「あ、わ、ボ、ボルメテウス──ッ!?」
「んにゃーッ!? ダーリンの唇がーッッッ!?」
「この燃え上がるような鼓動。感じるぞ、君の情動ッ!! これが私を滾らせる炎になるッ!!」
ボルメテウスは──大きく翼を広げ、燃え盛る竜の姿と成った。
爆炎を前に腕で顔を覆いながら、照陽は──燃え上がる頬を抑えた。
「そして──この悪夢に引導を渡すとしようッ!!」
レーザーを撃ち放とうとするリバース・ドラゴン目掛けて刀を抜くボルメテウス。
空に舞う竜が炎と共に綺麗に軌跡を描く。
間もなく、金属がカチ合うような音が響き渡った。
「ッ……キレイ」
思わず照陽は、その華麗な刀捌きに見とれてしまっていた。
リバース・ドラゴンの主砲も、そして首も──音を立てずに切断され、落ちていく。
同時に──炎と共に剣閃を見舞ったボルメテウスもまた、再び少女の姿となり──宙から落ちていく。
「ッ……ボルメテウス!!」
いち早く駆けだしていた照陽は──地面目掛けて落ちる彼女の身体を抱き留めた。
軽い。とても軽い。
そして、火傷するほどに熱い。
まるで──炎を抱いたかのようだった。
「……どうだ? 照陽。私も──良い所を見せられただろうか?」
「違うよ、ボルメテウス。僕はいつも……君に助けられてばっかりだ……!!」
音を立てて落下する巨竜。
そして、空に開いた大穴が塞がっていく。
五色島を覆っていた災禍は──今度こそ、消え失せたのだった。