デュエマプレイヤーは「カードが全ての学園島」で成り上がるそうです。 作:タク@DMP
第45話:リバース・ワイルドカード
──とある世界。2026年。8月。
赤ん坊がすやすやと眠る。
それを抱くのは──暗野紫月だった。
かつて苦楽を共にした友人たちが傍に寄り、安らかに眠る赤ん坊を見てうっとりとしている。
「シヅクシヅク! 本当に可愛い赤ちゃんデース!!」
真っ先に声を上げたのは、ブロンドの髪をたなびかせた女性だった。
彼女のやかましい声に紫月は眉をひそめながら返す。
「ブラン先輩、声が大きいんですよ。この子が起きたらどうするんですか」
「そ、Sorry! 私ったら、ついうっかり!」
「全く。この子に変な影響が出たらどうするんですか。先輩のやかましさが伝染るかも」
「ヒドくないデスか!?」
涙目で訴えるブラン。その横に立つのは、長い黒髪を結んだ高身長の青年だった。
彼は呆れたようにブランを見ると、その肩に大きな手を置く。
「フン、仕方があるまい。ブラン、貴様の騒がしさは度を超しているからな」
「レンさんまでぇ……! カノジョに向かって、その言い草は無いデショ!?」
「師匠。そう言えばブラン先輩と籍を入れるのはいつなんですか」
「目途が立たなくてな。近いうちにとは考えているが、このバカが事件を追いかけてあっちこっちに行く所為で……」
「うーわブラン先輩、本当に相変わらずですね……」
「ア、アハハハ……そ、そんなゴミを見るような目で見ないでくだサイよ……」
「ところで──その子の名前は何だったか。何だかんだで聞きそびれてしまってだな」
「名前ですか? 名前は──」
「澪標の澪に、音で……澪音」
赤ん坊の名を言ったのは紫月ではなかった。
部屋に入ってきた一人の青年だった。
ツンツンとした髪型の何処にでも居そうな彼は、買ったばかりのベビー用品と食品を机の上に置く。
彼の顔を見て、紫月はパッと顔を明るくした。
「耀君っ!」
「わり、紫月。ちょいと遅くなった。黒鳥さんも、ブランも。今日はわざわざ来てくれてありがとう」
耀──と呼ばれた青年は、なじみのある来客に目を向ける。
ブランはサムズアップで返し、黒鳥も腕を組みつつも耀を前にして微笑んだ。
彼の名は耀。白銀耀。彼が現れると伴侶である紫月は勿論、古なじみである黒鳥もブランも何処か安心感を覚える。
「問題ない。貴様の呼び出しだ」
「レインちゃんって言うんデスか! 名前も可愛いデスねー! ん? デモ、レンさんと名前が一字違いデスね……」
「似ちまったのは偶然だよ。徹夜で名前を考えたのは俺だし。何かこう、雫っぽい感じの名前で雅な感じで考えてたら……澪音って名前になってた」
「これじゃあ私が師匠の名前からとったみたいに思われるでしょう」
「かと言って他に良い名前も思いつかなかったからな」
「……そうですね。色々意味も込めてますし、これで良かったのかもしれません」
「良いじゃないか、成長したら是非とも僕の弟子に」
「絶対ダメです。これ以上美学バカは増やせません」
「手厳しいな……」
食い気味に否定する紫月に、レンは少しだけ肩を落としたのだった。
「ですが、こうして久々に集まると昔の事を思い出しますね」
「そうだな。貴様らと共に戦った日々が懐かしいぞ」
「もう今となっては、平和になってしまいマシタけどネー」
「二人共、今日はゆっくりしていってくれよ。久々に色々話そう」
「Yes!! 今日くらいはブレイコーなのデース!!」
ブランが大きな声を上げた時だった。
紫月の腕の中で眠っていた赤ん坊が──声を上げて泣き出す。
「ブーラーンーせーんーぱーいーっ!!」
「……ブラン、オメーってヤツは本当に……」
「ちょっ、違ッ、な、泣き止むデース!!」
「僕は知らんぞ……」
……そうして、穏やかな時がしばらく流れただろうか。
「それじゃあシヅク! またいつか、デース!」
「何か困った事があったらいつでも僕らに言ってくれ」
黒鳥もブランも帰ってしまい、静かになった家の中で──紫月はふと呟いた。
「耀君」
「どうした?」
「私、今すっごく幸せです」
赤ん坊を抱く紫月の目は、慈愛に満ちていた。
夕陽が差し込むカーテンの中で、彼女は耀に笑みかける。
「欠けていたもの、無くしたもの、全部埋まって……溢れてしまうくらい、いっぱいいっぱいなんです」
「……俺も同じだ」
指を赤ん坊の小さな掌に差し出すと、きゅっと反射的に握り締めてくれる。
小さな生命の温もりが指から伝わってくる。
自分が守りたかったものが何だったのかを胸が痛むくらい思い知る。
「俺は……この光景が見たかったのかもな」
そう、耀が言った時だった。
「み つ け た」
──家の天井が突如、大きく切り裂かれた。
何が起きたのか、耀も、紫月も理解が出来なかった。
開かれた空間から覗くは──黄金にぎらつく瞳。
それが、虎視眈々と耀を、紫月を──そして、その腕に抱かれている赤ん坊を睨めた。
「……ッ!?」
そして、漸く──長らく戦いから離れていた耀は、裂け目の先に在るソレが何なのかを理解し、デッキを手に取る。
「……逃げろ」
「でもッ!」
「澪音を連れて逃げろッ!! 早くッ!!」
家の中の空間が更に切り裂かれる。
耀も紫月も足場を失い──落下する。
何処とも知れない異空間の中へと。
「きゃああああ!?」
「──野郎ォ……クリーチャーか!! 何処から出てきやがったッ!?」
耀達を追うようにして、ソレは完全に姿を現す。
翠の鎧で全身を覆い、黄金の鬣をたなびかせたドラゴン。
否──ドラゴンを超えたドラゴン。
自分が知るそれと酷似しているものの、明らかに性質が逆転しているそれを見て、耀はその名を叫ぶ。
「──ドギラゴン……ッ!?」
「耀君……このままじゃ、私達……ッ!!」
「心配すんな!! 絶対守ってやるよ──俺が、この命に代えてもなッ!!」
耀は自らの心臓を握り締めるように左胸に手を翳す。どくん、と鼓動が強く胸打った。
「チカラを貸せ……俺の
──第三弾「VVV!! 逆転勝敵、キングビクトリー!!」