デュエマプレイヤーは「カードが全ての学園島」で成り上がるそうです。 作:タク@DMP
ドギラゴン
ドラゴンを超えたドラゴンたるドギラゴンの全く異なる姿。
王者と呼べる威風の中に、照陽は──どす黒い邪悪さを少なからず感じ取っていた。
見ているだけで何故か不安になるような違和感が胸の中に渦巻くのだ。
「ド、ドギラゴン……だと!? 僕の知ってるドギラゴンじゃない……!!」
そして、この感覚を照陽は知っている。
以前、天津が使い相対した世界を破壊するドラゴン──ボルメテウス・リバース・ドラゴンと全く同じなのだ。
ある世界では英雄とされながらも、その性質が反転し、逆転した近似的同位体にして反英雄。
存在するだけで世界を歪めてしまう脅威だ。
「ドギラゴンはとっても良い奴でね。俺の友達なんだ。カレーパンが大好きなヤツなんだよ」
噴水に座り込んだ金剛は手を仰々しく広げると──語り始める。
「あいつと出会ったのは俺がどん底を歩いている時だった。俺は何にも悪い事をしていないのに六禍仙を追放されたんだ」
「確かに貴方は強かったと聞いてるヨ。でも、あまりにも強権的だったと聞いタ! 学園ではまるで自分が王様のように振る舞ってたと聞いたワ! デッキを献上させたり、女子に片っ端から手を出したり──」
「最悪だな……追放されてしかるべきだろこんなヤツ」
「確かにちょっと調子に乗り過ぎたかもしれない。当時の俺は愚かだった! 飢えた狼も同然だった!」
したり顔で金剛は語る。
「反省してる。六禍仙の権限を使って色んな悪い事をした。でも、ドギラゴンに出会って、俺は生まれ変わったんだぜ」
曇り無き眼だった。
照陽は、悍ましい物をその瞳に見た。
瞳の奥から、何も意思のようなものを感じられないのだ。
今、金剛が発している言葉が本当に彼自身のものかどうかも疑わしく思えてしまった。
生まれ変わったのは間違いない。文字通り彼が「改心」してしまったのならば、そうなのだろう。
ただしそれは──あの背後にいる「ドギラゴンの都合の良いように」という枕詞が付くのであるが。
「先ずはカレーパンだ。誰もが飢えずに満たされる世界。そう、俺は好きな物を独占するだけじゃなくて皆に分け与えないといけなかったんだ」
「すっごくイイことを言ってる風だけど、その結果がコレ!? 皆おかしくなってるじゃなイ!! 他でもない貴方も、ヨ!!」
「何が悪いって言うんだい? 皆カレーパンをお腹いっぱいに食べられる素晴らしい世界じゃあないか。ああ、俺は何て善い事をしているんだろう!」
金剛は悪びれる様子も無かった。
照陽は考える。既に──金剛の意識はドギラゴンに乗っ取られてしまっているのではないか、と。
天津ですら自我を保っていたことを考慮すれば、既に事態は深刻極まっている。
何より周囲に及ぼす影響がボルメテウス・リバース・ドラゴンの比ではないのだ。
「金剛君、目を覚ますんだ。ソイツは君を今も蝕んでいる。君はクリーチャーに利用されているだけだよ」
「好き勝手言ってくれるなあ。ドギラゴンは現実を改変して逆転させる。俺の望んだままに世界を作り変える。とっても善いヤツなんだぜ」
「ッ……自分が何を言っているのか分かってないのか!? 現実を望んだままに作り変える!? そんなムシの良い話があって良い訳がないだろ!?」
「ムシの良い話じゃあないぜ? 俺はドギラゴンに魂を明け渡している。きちんと代償は払っている。ドギラゴンが死ねば俺も死ぬ。一蓮托生の関係だ」
「魂を──!?」
照陽はゾッとする。
彼自身も体の半分と魂の半分をブイと共有している。
故に、その重さは理解していた。
クリーチャーと一心同体になる事は、クリーチャーに生殺を握らせる行為でもある。
即ち、目の前の金剛は照陽や天津と同じ、クリーチャーとの契約者だ。
「もう誰も飢えない、満たされて平和な理想郷を作り上げる。今日がその第一歩だ。しかし──
金剛は──澪音を指差した。
その振る舞いからは、まるで品定めでもするかのような傲慢さが滲んていた。
「そこで君だ、白銀澪音。君のチカラが必要だ。ドギラゴンは、俺は、君を必要としている。だから──
「い、イヤッ!! 私のダーリンは、この人だけだモンッ!!」
「白銀さんは既に精霊を喪っている。君達が求めるようなものは何も無いと思うんだけどね」
「……外野が口を挟むな、だぜ。彼女の価値を理解していないくせに、さあ」
「何だと?」
「天戸照陽。貴様が一体、白銀澪音の何を知っている?」
「あ、アナタこそ何を言ってるノ! 私に世界を変えるような力なんて無いヨ!」
澪音が反駁するが──それを嘲笑するように金剛は肩を竦めた。
「……むしろ喜ぶべきじゃあないか、白銀澪音。君は、そこの転校生に敗北して絶対強者の座を失い──天津に敗北して精霊も喪った」
「……ッ!!」
「耳を貸すな、澪音!」
「おっと。元はと言えば、君が彼女を負かしたのが全ての始まりなんだぜ。天戸照陽の所為で六禍仙の”零”と呼ばれたのが今では見る影もないじゃあないか」
「……わ、私は……ッ」
震えながらスカートの裾を掴む澪音。
彼女は、照陽に敗けた事は気にしていない。
だが──天津に敗北し、精霊を喪い、そしてその尻拭いを照陽にさせてしまったことは今でも悔やんでいた。
「だが、そんな君でも役に立てるんだ! 世界を変える力を君は持っているんだぜ! これはとても善い事だと思わないか!?」
突如、澪音の周囲に光の牢屋のようなものが現れる。
「ッ澪音!?」
「──ダーリン!!」
「彼女は連れて行く。君達の意思など関係無いんだぜ」
「ちょっと──出しなさいヨ!! 何なのヨ、コレ!!」
そして、彼女の身体はドギラゴンへと引き寄せられていく。
光の牢獄に閉じ込められた澪音はドギラゴンの掌の上に置かれてしまうのだった。
「彼女を離せッ!!」
「……勇ましいな、天戸照陽。貴様に構っている時間はないんだ」
すぐさま澪音を追いかけようとする照陽だったが──虚空から更に、二匹の竜が現れる。
時計盤を背負った天馬の如きドラゴン、そして全身が機械に覆われたドラゴンだ。
「かつてッ!! 禁断と戦ったとされるドギラゴン!! 彼には、素晴らしき盟友が居たッ!!」
「ッ……こ、こいつらは」
「紹介しようッ!! 時を超え、未来より来たりし奇跡の竜!! 《時の団長 ミラダンテ
甲高く咆哮した天馬の如き龍が照陽を阻む。
しかし、それを真っ向から突き飛ばすのは、ドラゴンの姿へと変じたブイだ。
「邪魔をするな雑兵ッ!! ゼニス女は返して貰うッ!!」
次々に襲い掛かってくる時計の針状の槍。
しかし、それをブイは刀で切り裂き、次々に斬り飛ばす。
だが、敵はミラダンテだけではない。
「そして──紹介しよう!! 完全にして完璧な計算──その砲撃は正確無比、《
照陽は怯む。
目の前に新たに現れたドラゴンたちは、精霊ではない。
膨大なマナを蓄えた本物のクリーチャーだ。
ただでさえ厄介なクリーチャーが3体も揃い踏みしている以上、最早デュエルどころではなかった。
戦況は圧倒的に此方が不利。
しかし、それでも──
「──ブイ!! 薙ぎ払うんだッ!! そいつらの相手をしている場合じゃない!!」
──照陽は諦めない。
「おっと、やはりオツムが悪いと生きづらそうだ。……今楽にしてあげよう」
「ダーリン逃げテッ!! 今までの敵と格が違い過ぎるヨッ!!」
「終わらせてやれ。ミラダンテ、オーパーツ──
ブイと照陽の全身が鎖によって拘束される。
「なっ、これは──!?」
「本物のクリーチャーということが、どういうことか!! ファイナル革命もまた、必殺級の威力ということ!!」
そして──動けない彼ら目掛けて、オーパーツが極太のビームを解き放つ。
照陽は、思わず澪音の方を見た。
「ッ……クソッ!! 打つ手なし、か……!?」
「ッ──ダーリンッッッ!!」
「さらばだ、天戸照陽──君達は消えてくれ」
極光が雷霹を伴って校庭を大きく穿った。
やがて、砂煙が晴れると、アスファルトには大きなクレーターが開いており、そこには何も残ってはいなかった。
「そ、そんな、ダーリン……ッ!!」
「アッハハハハハハ! 綺麗に消し飛んだね」
「ッ……ダーリン……!? ボルメテウス、嘘デショ……!?」
「……おいおい、白銀澪音。そんな顔をしちゃあ駄目じゃないか。君は俺のフィアンセになるんだからさ、アハハハハハハッ!!」
高笑いを浮かべながら──三匹の竜は空へと昇っていく。
絶望した顔でへたり込みながら──澪音はぽつり、と呟いた。
「そんな……ダーリンが死んじゃっタ……私の、私の所為ダ……!!」
「そういうわけだから澪音。一緒に行こうか。俺達の約束の地へ」
金剛は天を指差す。
澪音は──絶句した。
さっきまで、そこには無かったはずのものが空に浮かび上がっている。
「ナニアレ……島が、浮いてる……!?」
「綺麗だろう? 俺が作り出した世界の中心──浮遊島・ハムスターランドだ!!」