デュエマプレイヤーは「カードが全ての学園島」で成り上がるそうです。 作:タク@DMP
「──ボルメテウスが……なんで……理事長ッ!? カードの精霊って何なんですか!?」
(もしかしなくても、カードゲームアニメでよくある実体化するカードってヤツ!? だけど、このボルメテウスは僕がずっと持ってたカードだ……どうして!?)
自身が相棒とする龍。
その炎が、呼気が間近に感じられる。
思わず叫ぶ照陽。
それを見た理事長はしたり顔で答える。
「フゥン……カードの精霊……それは、只のそこら辺にある普通のカードが、ある日突然、前触れなくクリーチャーの姿で実体化する現象だ」
「普通のカードが実体化する……!?」
「そ、そうです、照陽さんっ! それが今この日本で起きてる不思議な事件……! 一部ではオカルトとかデマって言われてますが、カードの精霊は実在する──これだけは事実です!」
照陽は漸く理解した。
此処はカードゲームアニメのような世界。
ならば、起きる事件もまた──カードゲームアニメ「あるある」のものとなる。
ただのカードが実体化し、人に憑りつく。これもまたカードゲームアニメでは「あるある」だ。
「信じるよ、だって僕も見えているからさ……ボルメテウスが!!」
「カードの精霊と共存出来ている者はさておき──問題は、天戸円架のように自我を乗っ取られている場合だ。実に興味深いッ!!」
「どうすれば元に戻せるんですか、円架を!!」
「真のデュエルだッ!! さっきも言った筈だ、真のデュエルで天戸円架を倒し、奴に憑りついた精霊を追い出す──それしか道はあるまい」
「ッ……やるしか、ないのか」
デッキを握り締める照陽。
それに対抗するようにしてデッキを取り出す円架。
周囲は──突如、真っ白の空間に塗り替えられていく。
「──真のデュエルか。良いよ──我々の恐ろしさ、思い知らせてやる」
「カードゲームアニメ特有の……謎空間って奴か……!!」
既に手にしていたデッキは照陽の手を離れ空中に浮かび上がる。
そして、デッキの上から5枚がシールドとなり、照陽の前に展開される。
今度はホログラムではない。
確かに実像として照陽の前に存在しているのだ。
そのデュエルを見守るようにして、瀬野とこころも盤外に立っている。
「おやおや、我々も巻き込まれてしまったようだ」
「こ、これが真のデュエル──!? 私、実際に見るのは初めてかもしれません……!!」
「カードの精霊の持ち主同士による、命懸けのデュエル──さあ、始まるぞ。面白いものが──ッ!!」
こころは、ギュッと祈るように両の手を握り締める。
今は──照陽の無事を祈るしかなかった。
「照陽さんッ!! 頑張ってくださいッ!! 妹さんを──助けてあげて!!」
真のデュエル。
これが只のデュエルではないことなど、照陽は痛いほど理解している。
だが、それでも逃げるわけにはいかなかった。
「……言われなくても、だ!!」
「あたしにお兄ちゃんなんて居ない──……金が絶対的であることを思い知らせてやるッ!! ゴージャスッッッ!!」
【天戸 照陽】VS【六禍仙”光”──黄金の令嬢・円架】
今此処に──照陽と円架による、命懸けの戦いが幕を開けたのである。
「僕のターン、マナをチャージ──ッ!!」
目の前には透明のプレートのようなものが展開されており、そこにマナとしておきたいカードを置くと文明のシンボルと共に吸い込まれて消えた。
(さらっと順応してみせたけど、これ便利だな……! TCGアニメあるあるの、全自動麻雀卓のようなご都合空間だ!)
「……とりあえず、これでターンエンド……!!」(マナ2)
「あたしのターン! ゴージャスに──《
きゃはは、と高笑いを上げる円架。
山札の上から6枚が表向きになっていき、その中から《ソウルスカーレットアカネ》と《観覧!ホールインランド・ヘラクレス》が手札に加えられる。
(NEOクリーチャーと、進化元のクリーチャーのフュージョナーを手札に加えるカード……!! あのデッキ、僕の予想が合っていれば、かなり不味い部類のデッキだ……!!)
しかし、分かっていたところで止められるわけではない。
照陽は相手の事故を期待しながら、3枚のマナをタップする。
「──《無頼BEN-K1000》を召喚!! 下に加えるカードは──《アルジェン・ゴルギーニ》! 手札とマナを増やして、ターンエンドだ!」
(これでシールドには《王道の大地》を仕込んだ! 手札には《ボルメテウス・武者・ドラゴン「武偉」》がある! 次のターンが無事に来れば……!)
「──来ました、照陽さんの黄金ムーブ!! これなら……!!」
「空木。残念だが、そう簡単にはいかない」
瀬野は厳しそうに盤面を見遣る。
「……我が校に居るから分かるだろう? 六禍仙とのデュエルを、無傷で済ませられるプレイヤーなんて存在しない」
「ッ……そ、そうですけど、照陽さんは六禍仙にも劣らない実力だと思いますよ?」
「そりゃあ空木からすれば、自分より強いプレイヤーは皆そう見えるだろうな。だが──真の強者というのは、得てして理不尽なものだよ」
瀬野の言葉通り──六禍仙のデュエルは「理不尽」によって始まり「理不尽」で終結する。
そこには一切の情けも容赦もない。
「イッツ・ゴージャス──自由になんて動かさせない。金の前に平伏せ!」
先ずは光の2枚のマナが生み出される。
「──《ソウルサンライト コハク》召喚ッ!!」
《ソウルサンライト コハク》 光文明 コスト2
クリーチャー:スノーフェアリー/フュージョナー パワー2000
飛び出したのはポンポンを手に持ったチアガールのような妖精。
その周囲には、陽の光のように眩い障壁が展開される。
「《コハク》……この構えは……!!」
「《ソウルサンライト コハク》は、次の自分のターンの間まで自分が無敵になるバリアを展開!!」
《ソウルサンライト コハク》→自身の効果で、次の自分のターンの始めまで場を離れない効果が付与。
「そして、《コハク》の効果でNEOクリーチャーのコストを1軽減──1マナで《コハク》から進化!」
「ッ……マズい、全部揃っているのか!! 止められないッ!!」
照陽も元居た世界で散々味わった「理不尽」。
それは《ソウルサンライト コハク》と組み合わされることで発動する強烈なロックコンボ。
軽減され、残る1マナから──それは到来する。
「──ゴージャスに進化ッ!! 《
《
NEOクリーチャー:スノーフェアリー パワー2500
《コハク》から進化したのは、あまりにも小さく非力な俳人のような姿の妖精。
しかし、彼女が短冊につらつらと書いた文言が照陽を縛り付ける枷と化す。
短冊は巨大化し、照陽の前に現れた。
「な、何ですかあのカード……? 1マナで進化したけど……」
「空木……オマエ、仮にもデュエリスト課なのに知らないのか。本当にデュエルの才能を
「すみません……」
「見ろ、少年のあの顔を──」
照陽の顔は──これまでにないほどに強張っていた。
《
「あはっ、知ってるみたいだね……《
照陽の周囲を取り囲む2枚の巨大な短冊。そこには──
「──汝、クリーチャーを1体しか出すべからず」
「──汝、呪文を1度しか唱えるべからず」
──といった文言が記されていた。
「NEO進化した《
「そ、そんなぁ!? これじゃあ照陽さんの必殺コンボが!!」
「更にそれだけじゃあない」
《
「進化クリーチャーは……進化前のクリーチャーに付与された効果を引き継ぐ。《ソウルサンライト コハク》に掛かっていた無敵のバフは、《
「それじゃあ、《
(──その通りだよ、畜生!! どうしようもない、本当に──ッ!!)
流石の照陽も唇を噛み締めた。
次の円架のターン開始時までであるものの、《
その為、確実に次のターン、照陽はクリーチャーも呪文も1回しか使えないのである。
これでは《ボルメテウス・武者・ドラゴン「武偉」》から起動する連鎖コンボは封じられたも同然であった。
だがそれ以上に──デュエルに於いては圧倒的に自分より劣ると思っていた妹が、このような実戦的かつ凶悪なコンボを使っていることに照陽は驚きを隠せなかった。
(あの円架が……白黒メカデッキで大会に出て、ループデッキにコテンパンにされて泣いてた円架が……!?)
しかし今の照陽は全くワクワク出来なかった。
事実、照陽が戦っている相手は円架ではなく──彼女の中に潜むカードの精霊なのだから。
「僕は……マナをチャージしてターンエンド」
《武者・ドラゴン「武偉」》は《一音の妖精》を除去するために温存しなければ話にならない。
彼は此処でターンを追える。
「そんな、何もせずに──!?」
「当然だ。除去も出来ないし、展開も出来ない。ならば《ソウルサンライト コハク》の効果が切れる次のターンに期待するしかない。だが──」
「お終いだよ」
円架が──1枚のカードを掲げた。
「《ソウルサンライト コハク》は超魂
《ソウルサンライト コハク》の超魂X能力:NEOクリーチャーのコストを1軽減する。
「来る……此処までは確定だ、さっき手札に加えていたもんな……ッ!!」
「──3マナで 《
《
その威迫は──凄まじく、甲虫の呼気が照陽を震わせる。
「効果で2枚ドローし、そして──《ホールインランド・ヘラクレス》に含まれるカードの数だけマナをアンタップする!!」
含まれるカード。
それは、この場で言えば進化クリーチャーと進化前のクリーチャーの合計枚数だ。
《ホールインランド・ヘラクレス》には現在、《ソウルサンライト コハク》と《一音の妖精》を含めた合計3枚のカードで構成されている。
従って、円架のタップしたマナ3枚が再び復活する。
「使ったマナが元通りに──ッ!!」
「そして──進化元にするカード枚数は3枚──ッ!! 合計6コスト軽減ッ!!」
「まだ何か起きるんですか!?」
「……ようく見ておけ、空木。これが──六禍仙の”光”だ」
(ダメだ。幾らボルメテウスが居ても関係ない……僕はこの世界の主人公でも何でもない、だから主人公補正なんてものはない──ッ!!)
つぅ、と照陽の額に汗が伝う。
最早何かの間違いを願うしか彼には無かった。
だが、あまりにも理不尽に──六禍仙は己が切札を振るう。
「──轟けッ!! 黄金に輝く栄光のビクトリーロード!!」
黄金のコインが大量に降り落ちる。
そして──それは円架の影から這いずり出でるように姿を現す。
全身をスーパーカーで構成した巨大なロボットのクリーチャー。
その姿はまさに、円架の心を蝕むカードの精霊に他ならなかった。
「さあ、豪奢で豪快でゴージャスな終焉を!!
──《轟䡛合体 ゴルギーオージャー》ッ!!」」