デュエマプレイヤーは「カードが全ての学園島」で成り上がるそうです。 作:タク@DMP
「……澪音を、助けに」
「ドギラゴン逆の復活には、俺も誰も気づけなかった。あいつはずっと、誰かに寄生していたんだろうな。そして復活した以上、あいつの狙いも分かり切ってた」
「……ドギラゴン逆は、何で澪音を狙っているんですか。そもそも、何であいつの狙いが澪音だって分かったんですか」
「17年前。まだ澪音が赤ん坊だったころ、俺達は……ドギラゴン逆に襲われた」
耀は──《モウジャキンガ》と呼んだクリーチャーのカードを握り締める。
「……あいつの攻撃で時空が崩壊して──俺達は2009年のこの世界に流れ着いた。そして──必死に、あいつと戦って、何とか倒した──はずだったんだ」
「ッ……でも、ドギラゴン逆は生きていた」
「ああ。多分倒しきれなかったんだろうな。相当しぶとい奴だったぜ。あの戦いで紫月は戦う力を失い、俺の相棒もこんな姿になっちまった」
呻き声がカードから響く。
悔しそうに耀は口を引き絞った。
「……元々はこうじゃなかったんだ。もう今じゃあ、口も利けやしねえ。俺の命令無しじゃあ際限なく暴れ続ける」
「じゃあ、そのカードは元々は……」
「モモキング。俺の2代目の相棒。最初の相棒が居なくなった後……ずっと世話になってた」
耀の言葉に、勿論照陽は聞き覚えがあった。
桃太郎をモチーフとしたドラゴンのクリーチャー・モモキング。
背景ストーリーでは鬼を倒す為に生まれ、そして歴史を守る為に戦った英雄。
それこそが、耀の切札だった。しかし──耀が握るそれは最早「モモキング」ではない。
宿敵たる鬼と歪に繋ぎ合わされた合成獣「ディスペクター」だ。
今の姿が不本意であることは耀の苦い表情からも伺えた。
「……ドギラゴン逆。あいつと戦ったあの日から……16年間、ずっとこうなんだ。何で鬼の力がいきなり発現したのかも分からず仕舞いだ」
「そんな……ッ! 元に戻らないんですか」
「俺が戦うのも正直、リスクが無いとは言えねえ。モウジャキンガが俺の相棒で居てくれているのは……奇跡みたいなもんだろーな」
耀は手に握る切札を「モモキング」とは頑なに呼ばない。
最早、かつての相棒ではない。そう思わなければ彼はやっていられなかった。
うなりを上げ、本能のままに暴れるだけの怪物。
これが鬼と何と変わらないというのか。
「さて。ドギラゴンが何で澪音を狙ってるのか──それは、この島を見たら明らかだろ」
「いや、島がおかしいのはドギラゴンの所為じゃないんですか」
「もっと根本的な問題だぜ……今の五色島は明らかに異常だ。外の世界からヤバいクリーチャーが次々に集まってきてる。その理由は……多分、澪音にあると俺は思ってる」
耀の衝撃的な発言に照陽は何か反論を考えようとしたが──思いつかなかった。
荒唐無稽な推論ではなく、確かな確証があるのだ、と耀の顔を見れば明らかだったからだ。
「澪音が……クリーチャーを呼び寄せているって言うんですか!?」
「あいつの力は年々強くなってる。あいつ本人に自覚は無いが、あいつが世界のどこにいてもクリーチャーは寄って来ちまう」
「でも、澪音はもう精霊を……」
「ちげーよ。精霊が居なくても同じだ。そして、あいつが精霊に選ばれたのは、偶然でも何でもねえ。あいつなら当然の事だからだ」
「と、当然……?」
「精霊程度なら従えちまうだけの力を澪音も持ってんだよ。だから、クリーチャーにも狙われるんだ」
「じゃあ、何で……澪音を五色島に送り出したんですか」
「さっきも言った通り澪音が何処に居ようが、あいつが狙われるのは変わらねえからだ」
耀はモウジャキンガのカードを見せながら言った。
「……俺もずっと澪音の御守が出来る訳じゃねえ。モウジャキンガが暴走しだすか分からねえからな。かと言ってコイツ無しじゃあクリーチャーとも戦えないから、手放すわけにもいかねえ」
まさにあちらを立てれば此方が立たず。
耀は──今の自分の相棒に少なからずリスクを感じていた。
自分がモウジャキンガの力を使う事は、却って澪音に危険を及ぼしかねない事を知っていた。
「……俺が五色島に澪音を送り出したのは……クリーチャーを認知している人間がロクに居ない本土の学校に居るよりは、精霊がある程度認知されている五色島の方がまだマシだと判断したからだ」
ガシガシと頭を掻きむしりながら耀は言った。
「どんな形でもいい。俺は親として、あいつを雁字搦めにするんじゃなくて……人並みの幸せを……澪音が普通に学校に通える生活を送らせてやりたかったんだ」
「耀さん……」
「とまあ、俺の自己紹介はこんな所で良いだろ」
耀はモウジャキンガを実体化させる。
そして──デッキを照陽に突きつけた。
意図が分からず困惑する照陽。そして──何処か冷淡に耀は言い放つ。
「オマエ。もう戦う力が無いんだろ? ……今のうちに安全なところで隠れてろ」
「……えっ」
思わず言葉に照陽は戸惑った。
てっきり、協力してドギラゴン逆を倒しに行く流れだと思っていたからだ。
「それは出来ません!! 澪音を助けに行きます!!」
「……戦力は多いに越したことはない。貴方もそれは分かっているのではないか?」
「あいつは強すぎる。学生の君が命を賭すことはない。それに──ガキに心配される程、俺は弱くねーよ。全部……俺の責任で決着をつける」
「仲間が攫われたらッ!! 助けに行きたいって思うのは当然の事ですッ!! 耀さんは違うんですかッ!?」
力の入らない足を無理矢理地面に踏みつけ、照陽は喰らいつくように耀の腕を掴んだ。
「──耀さん、まだ何か隠していることがありますよね!? ……澪音の事。そして、モウジャキンガの事」
「ッ……」
「だから、僕を置いていこうとしてる。僕の事は紫月さんから聞いてるはずです。僕は、澪音の仲間です。あいつと何度も僕は戦って……高め合って来たんです。あいつに何かあって、ジッとなんてしてられるわけがない!!」
耀は照陽の目を見て、歯を食いしばる。
彼の目に──何か眩しいものを見たのか、それを覆い隠すように腕を振り払った。
「分かってる……そんな君だからこそ、置いていかなきゃいけねえんだ!! これは、白銀家の問題だッ!!」
「貴方が置いていこうが、俺は追いかけます! 俺は──ッ」
「ッ……モウジャキンガ!!」
思わず照陽は目を瞑った。
しかし──実体化した合成獣は刀を引き抜き、背後から飛んで来た何かを切り裂く。
それは何重にも重ねられた稲光だった。剣閃の風圧だけで稲光は捻じ曲げられ、飛散していく。
「──それは良い事を聞いたでパーセント。……ならばここで……俺様がオマエ達を始末する確率は100パーセントォ!!」
キャキャキャ、と甲高い声が聞こえてくる。
だぼだぼの白衣を身に纏った男だ。大きな瓶底眼鏡、そして分厚い本。ぼさぼさの髪。
そして、その影から──全身が機械と水晶で構成されたドラゴンが実体化した。
「何者だオメーは……! すっげー語尾……!!」
「《オーパーツ》! さっき僕らを攻撃したクリーチャー……!」
『だが、知らない人間がくっついているな』
「……酷い語尾もくっついてんな……ッ!! 天津とどっこいどっこいじゃないか」
「キャキャキャ! 金剛様の命令だパーセント! 白銀耀ッ! オマエは此処で始末するでパーセ……ン?」
ギロリ、と男の目が照陽を睨む。
そして──その顔面が蒼白になる。
本来ならもう存在していないはずの人間を前にして腰を抜かすのだった。
「オ、オマエーッ!! 天戸照陽!? 天戸照陽が何故生きてるでパーセント!!」
「え? あー……もしかして僕、死んだってことになってるのか」
「金剛様がオーパーツを借りパクして、ブッ殺したと聞いたでパーセント!! オマエが生きてると知ったら大変ご立腹だパーセント!! やっぱりオマエから始末するでパーセント!!」
しかし──それを庇うように耀が手を広げた。
「いーや……俺が相手だ」
「耀さん……!」
「順番はどうでもいいでパーセント。この俺様、エニグマ・パーセンテージの超確率決闘の前には誰も敵わないの100パーセント!!」
「もう意味が不明だ……」
すぐさま領域が展開され、シールドが互いを守るようにして浮かび上がる。
耀とエニグマ、両者の戦いが始まろうとしていた。
……そして照陽は頭を抱えそうになる。ひょっとしなくても、金剛の部下はロクな人材が居ないのではないか、と。
「白銀耀! そしてモモキング! お前達は金剛様にとって邪魔な存在でパーセントォ!」
「……超超超・可及的速やかに勝つ」
【”
※※※
「キャキャキャ!! 《ワダカニノミコト》を召喚だパーセントォ!!」
エニグマが召喚したのは蟹のような姿のクリーチャー。
その瞬間に障壁が展開されていく。
「これで、オマエのスピードアタッカーが場に出たターンに攻撃出来る可能性は0パーセントォ!!」
「そりゃそうだ、クリーチャーを出たターン中に攻撃出来なくさせる効果を持つクリーチャーだし……!!」
「……問題ねえよ」
耀は3枚のマナをタップする。
そのマナゾーンにはJの文字が刻まれたカードが置かれていた。
切札の意思を宿したクリーチャーたち、その名はジョーカーズ。
「魂を燃やせ──
「キャ!?」
「4!? 3マナでってことは……7コストのクリーチャー!?」
耀の手元にレバーが炎と共に現れ、彼は思いっきりそれを引き下ろす。
ガコン、ガコン、ガコン!!
リミッターがすべて外れていく。
戦場が焦土へと塗り替わり、爆炎のサーキットが敷かれていく。
手札から爆炎と共に現れたのは天を指差す猿人のクリーチャーだった。
「チカラを貸してくれよ──《
《
クリーチャー:ビートジョッキー/ジョーカーズ
J・O・E4(このクリーチャーを、コストを4少なくして召喚してもよい。こうして出したら、このターンの終わりに、それを自分の山札の下に置く。そうしたら、カードを1枚引く)
コスト軽減:7コスト-4=3コスト
J・O・E。
それは、火のジョーカーズ・クリーチャーが持つ能力。
コストを軽減する代わりに、ターン終了時に山札の下に戻るというものだ。
そして──《↑↑ブランド》はこのままでは攻撃出来ずに山札の下に戻るのみ。
しかし、それだけでは終わらない。
「そ、そいつはぁ!! 登場時に手札を捨てる事で相手のクリーチャーを破壊するバケモノだパーセントォ!!」
「ッ……そっか! 耀さんは《↑↑ブランド》で《ワダカニノミコト》を破壊して攻めるつもりなんだ!」
沸き立つエニグマ、そして照陽。
だが──二人の予想に反し、耀は《
「そして、ターン終了時にこいつを手札に戻す」
「えっ!?」
「キャーッ!? 何言ってんだお前はーッ!! 何しに来たんだパーセントォ!!」
当然、場には《ワダカニノミコト》が残っている。
更に攻撃もされていない。
オマケにJ・O・Eはターン終了時に山札の下に送るという効果。
その全てがちぐはぐな行動に照陽は困惑を隠せない。
「おっと、焦らない焦らない♪ 俺はコスト7以上になるようにジョーカーズ・クリーチャーを手札に戻す。そしてコイツをタダで手札から出すぜ──《Dr.富士山ッピング》」
「ッ!!」
ざばんと音を立てて、辺りが温水に覆われる。
その中央から巨大な富士山に怒り顔が刻まれたクリーチャーがゆっくりと這い出て来た。
「《↑↑ブランド》を手札に戻したのは《Dr.富士山ッピング》の特殊召喚条件だ! こいつはコスト7以上のジョーカーズと入れ替わりでターン終了時に出る!」
《Dr.富士山ッピング》 水文明 コスト5
クリーチャー:ジョーカーズ
自分のターンの終わりに、このクリーチャーが自分の手札にあれば、自分のジョーカーズ・クリーチャーをコストの合計が7以上になるように好きな数手札に戻してもよい。そうしたら、このクリーチャーを出す。
更に《Dr.富士山ッピング》は温水の中に潜航。その場から見えなくなってしまうのだった。
「そして《Dr.富士山ッピング》はジャストダイバー。選ばれねえし、攻撃もされねえ。更に登場時効果で山札の上から3枚を表向きにしてジョーカーズを好きな数回収する」
耀は山札から3枚を捲った。
その中にあったのは、《燃えるデット・ソード》、《キング・ザ・スロットン7》、《アイアン・マンハッタン》。
全てがジョーカーズの為、もれなく耀の手札に入って行く。
(狙いはこのドロー……!! 耀さんは手札を減らしたくなかったから除去効果も使わなかったのか……!!)
ごくり、と息を呑む照陽。
しかし攻撃制限効果を持つ《ワダカニノミコト》を残して良かったのか、と疑問も残る。
ともあれ、《Dr.富士山ッピング》は選ばれず攻撃もされない。次のターンまで場に残り続ける。
「ならばァ!! 徹底的にお前を妨害してやるでパーセントォ!! 《ワダカニノミコト》を手札に戻して《水蜃 フカフチノカミ》を3マナで召喚パーセントォ!!」
温水から巨大なシュモクザメのような怪物が姿を現す。
エニグマが召喚したそれは、ぎょろりと《ワダカニノミコト》を睨むと、そのまま大口で喰らってしまうのだった。
「《フカフチノカミ》……相手がカードを実行したら、手札の枚数以下のコストを持つロスト・クルセイダーを出す……だったな?」
「そうだパーセントォ!! これでお前の行動を妨害できる確率は100パーセントォ!!」
キャキャキャと高笑いするエニグマ。
更に《フカフチノカミ》の効果でドローが入り、それで引いたカードを見て、更に彼は笑みを浮かべる。
(キ、キターッ!! 《
《フカフチノカミ》はパワー8000の水のクリーチャー。
《オーパーツ》と革命チェンジが出来る。そうすることで、耀の盤面を破壊し、更にカードの使用を大幅に制限することが出来る。
次のターンが来れば、エニグマは一気に勝利が近付く。
「おい、ところでお前が元気なうちに一つ聞きてえんだけどよ」
「キャ? 俺様は今、機嫌が良いでパーセント! 何でも答える確率100パーセントォ!!」
「……澪音は何処だ?」
「キャキャキャ! 冥土の土産に教えてやるでパーセントォ!!」
調子に乗ったエニグマは親指で宙に浮かぶ島を指した。
「白銀澪音は、あの空の島に居るでパーセントォ! そして金剛様と派手に結婚式を挙げるのでパーセントォ!!」
「け、けっこん……!! あいつ、本気で言ってるのか!?」
「……」
耀が沈黙する中、更にエニグマはわめきたてた。
「今頃金剛様と白銀澪音は、それはそれはもう熱烈なラブを交わしているに違いないでパーセントォ!! キャキャキャ!! オマエにも見せてやりたかったでパーセントォ!!」
「あの野郎……ッ!!」
怒りのあまり、出て行きたくなる照陽。
しかし──耀の反応は想像以上に淡泊なものだった。
「言いたい事は……それで終わりか?」
「キャ?」
「オマエの次のターン、来ないけど……言いたい事はそれで終わりだな?」
「き、貴様ァ……何を言ってるのでパーセントォ!! オマエは次のターンで終わりでパーセントォ!!」
「……言ったろ? 超超超・可及的速やかに勝つって。《フカフチノカミ》の効果はカードを
ざばん、と音を立てて再び巨山のクリーチャーが温水から這い出て飛び出す。
白衣を纏ったDr.富士山ッピングはその剛腕を振り回しながらエニグマ目掛けて殴りかかる。
「……する時に、革命チェンジ」
「ッ!! しまっ、革命チェンジは実行に含まれないでパーセントォ……!?」
故に。《フカフチノカミ》は発動しない。
・実行
カードのコストを支払って使用する行為を指す。呪文であればコストを支払わずに唱えても実行に当たる。
「チェンジ条件はコスト5以上のジョーカーズ。《Dr.富士山ッピング》とコイツを入れ替えるぜ」
耀がカードを手札から抜いた。
それは《Dr.富士山ッピング》と重なり、入れ替わる。
「あ、あのクリーチャーは……!?」
照陽は驚愕の声を上げた。
「……これが俺の
咆哮を上げる巨竜。
それに跨るは赤い帽子を深く被ったガンマン。
銃には耀の握る切札たち──即ちジョーカーズが弾丸となって装填されていく。
「──《ジョギラゴン&ジョニー 〜Jの旅路〜》ッ!!」