デュエマプレイヤーは「カードが全ての学園島」で成り上がるそうです。 作:タク@DMP
竜に騎乗した射手は──落ちたカード目掛けて撃鉄を引く。
「……《旅路》の効果発動。コイツは手札から捨てたジョーカーズの効果を使える。先ずは《メラベンチャー・ザ・ジョニー》を捨てるぜ」
指でピストルを撃つ仕草をしながら──耀は更に2枚のカードをバトルゾーンへ放る。
「その効果で手札からジョーカーズ2体を場に出す。《キング・ザ・スロットン7》、来いッ!」
豪勢にコインを吐き出す巨大なスロットマシーンのクリーチャーが現れた。
そして、その隣には黒い瘴気と共に──歪に繋ぎ合わされた合成獣が立つ。
「……頼むぜ」
それを複雑そうに眺めながら──耀は逆札をエニグマに突きつけた。
「これが俺の
──《勝敵逆夢王 モウジャキンガ》ッ!!」
妄執に満ちた叫び声と共に、逆夢の主が瘴気から這いずり出でる。
片側は龍、片側は鬼。
相反する二つが繋ぎ合わされたそれは巨大な刀を虚空から掴み取り、振り払うのだった。
「その効果により、相手の手札、場、そしてシールドを1枚ずつ破壊するッ!!」
「パーセントォ!?」
《フカフチノカミ》が一刀両断され、更に余波だけでエニグマの手札とシールドが焼け落ちる。
・エニグマ
残りシールド5→4
「そして、破壊されたシールドは墓地へ行く。S・トリガーは使えねえよ」
「め、滅茶苦茶だパーセント……!! これがオマエの、エクスドリーマー……!! 金剛様のドギラゴン逆と同じ……ッ!!」
遂にエンジンがかかり始めたジョーカーズ。以前、澪音が使っていたそれとは比べ物にならない出力を見て照陽は呟いた。
「……始まった。そして多分、勝負ありだ」
「照陽、どういうことだ?」
「ジョーカーズは一度回り始めたら止まらないんだ……! しかもあの人、相当な手練れ……複雑な動きをするコンボデッキなのに淀みが無い!!」
「《キング・ザ・スロットン7》の効果発動。山札の上から3枚を表向きにし、それが全てジョーカーズなら1体を選んで場に出す」
「ッ……!?」
スロットの目に映るは3枚のカード。
《ヤッタレマン》、《ジョジョジョ・ジョーカーズ》、そして《メラベンチャー・ザ・ジョニー》だ。
耀のデッキは全てジョーカーズで構成されている。外れる事は絶対に無い。
「場に出すのは──2枚目の《メラベンチャー・ザ・ジョニー》。こいつを《旅路》から進化だッ!!」
《ジョニー》が灼熱の炎に包まれ、そして燃え盛るビートボードに飛び乗り、戦場を駆け抜ける。
火文明の力を手に入れた姿、それが《メラベンチャー・ザ・ジョニー》だ。
「キャ!? ま、待て、ソイツの効果は確か──」
「そうだ。また手札からジョーカーズを2体場に出す。俺は──2枚目の《旅路》と《にやにYAH》を出す」
場に次々に並んで行くジョーカーズ達。
妖精のような姿の《にやにYAH》が《モウジャキンガ》の黒い瘴気を身に纏い、投げ付ける。
「《にやにYAH》の効果で俺はJビッグ1を発動。場の《モウジャキンガ》の出た時に発動する効果を使える」
・Jビッグ1
(自分の他のジョーカーズの、Jビッグ1以外の、出た時にトリガーする能力を1つ使う)
「キャ!? ちょ、ちょっと待て、それじゃあまた……」
「ああ。ハンデスとシールド焼却だ」
・エニグマ
残りシールド3
斬撃が衝撃波となって襲い掛かり、それをシールドが守る──しかし、敢え無く燃え落ちた。
「ヒッ、ヒィ……なんて威力……!!」
2度目のシールド焼却、そしてハンデス。
エニグマはじりじりと下がる。
嫌でも感じさせる死の予感。
「さらに今度は《旅路》の効果でカードを1枚引き、《キング・ザ・スロットン7》を捨てる。効果で山札から出すのは──《ヒトリダチ キャンベロ》。こいつもJビッグ1を持ってるぜ」
つぅ、とエニグマの額に冷や汗が伝った。
それはつまり──再度、《モウジャキンガ》の効果が発動することを意味していた。
またしても斬撃が襲い掛かり、シールドが燃え落ちる。
ずり、ずり、とエニグマは後ずさる。
場のジョーカーズの殆どが何らかの効果で場に出てすぐに攻撃出来るようになっており、先ずはこの軍勢の攻撃を耐えきらなければならないのである。
更に、仮に耐えたところで──今度は破壊された手札でこの盤面をひっくり返さなければならない。
「……《メラベンチャー・ザ・ジョニー》でシールドをW・ブレイク」
炎の弾丸が残るシールドを砕く。
その中にS・トリガーは無い。
いよいよ命の危機を感じたエニグマは腰を抜かしてしまった。
「ま、待てッ!! 話す!! 話すよ!! 何でも話す!! い、命だけは、命だけはーッ!!」
「……《モウジャキンガ》」
「か、革命ゼロトリガー……!! ヒィッ!! お、俺様の勝率が0パーセントォーッ!?」
エニグマは墓地を見た。頼みの綱たる革命ゼロトリガーはとっくに《モウジャキンガ》のハンデスで墓地に落とされている。
ふらふらと意思も理性も感じさせない足取りで迫る亡者の剣鬼。
巨大な大太刀が乱雑に──エニグマ目掛けて振り下ろされる。
「何でもするから、た、助け──ごぱっ」
真っ二つにエニグマの身体は裂かれ、そのまま──白い灰となって消えるのだった。
──勝者、白銀耀。
「……命欲しさに仲間を売るようなヤツ、猶更信用できるかよ。それに俺は──最初っからオメーらを許すつもりなんて粉微塵もねーんだ」
「ッ……」
空間が崩落し、風に吹かれて消えていくエニグマだったものを眺めながら──照陽は言葉を失っていた。
あまりにも早すぎる決着。そして、圧倒的で危なげのない試合運び。
明らかに目の前の男と自分の実力が隔絶していることを嫌でも思い知るのだった。
「ところでオメー、気付いたか?」
「えっ、あっ、なにを……!?」
「……コイツ、死人だぜ。最初っからな」
砂遊びをするようにエニグマだった灰を手で掬い取りながら耀は言う。
「……何らかのクリーチャーの力で生き返ったんだろ。連れてたオーパーツも同じだ。今じゃあ、物言わぬ屍だぜ」
散らばったカードの中から《完璧団長オーパーツ》を拾い上げる耀。
確かに、もうカードからはマナは感じなかった。
「それも、ドギラゴン逆の力、なんですか……?」
「そこまでは分からねえ。だけど、かつてのアイツに仲間は居なかった。今こうしてクリーチャーと人間の仲間が居るのは……誰かしら協力者がいるってことだろ」
「敵は、金剛だけじゃない……ってことか」
「尤もこいつが生きた人間だろーが、俺は手加減するつもりは無かったけどな」
「えっ……」
散らばったデッキのカードを拾い集めた耀は、改めて照陽の方を振り向く。
「俺は、娘の為なら鬼にでも悪魔でもなってやる、泥も悪名も被る。お前はどうだ?」
「ッ……」
「……どっちみち、そんな身体じゃあ無駄死にするのがオチだぜ。……澪音が悲しむ」
そう言って耀はモウジャキンガの背中に飛び乗る。
呻き声を上げた合成獣は、辛うじて耀の言う事だけは聞けるのか、そのまま浮遊島の方まで凄まじい勢いで飛んでいくのだった。
「あっ、待って……!!」
「クソッ、一緒に乗せてくれるつもりはないようだな……!!」
「ッ……鬼でも、悪魔でも、か……」
空へ小さくなっていく耀を見ながら──小さく照陽は呟く。
「それくらい強くならなきゃ、覚悟を決めなきゃ、ドギラゴンには……金剛には勝てないのか?」
「照陽……」
「そんなの随分と、気が遠い話じゃないか。澪音は今この瞬間も苦しんでるはずなのに」
耀の覚悟は決まっている。
そんな事、照陽は痛いほど分かる。
だが──それでも、照陽が澪音を助けたいという気持ちが偽物のはずが無かった。
「……ブイ。僕は、鬼や悪魔にはなれない。甘っちょろくて、なよなよしてて、ショージキ頼りないって自分でも思う」
「ッ……」
「でも。それでも僕は今まで色んな人と戦って、色んな試練を乗り越えてきた。僕は……僕にしかなれない。天戸照陽は、天戸照陽のまま強くなって……色んな人と縁を繋いできた。違うかい?」
照陽はデッキから1枚のカードを取り出す。
たった1つだけ、手があった。
シエルから託されたカード。そして元々は──この世界に住んでいた照陽の切札だったカード。
「まさか照陽! そいつを……ッ!」
「これもまた、僕じゃないと紡げなかった縁だ。カッ飛ばすよ、ブイ!!」
カードに宿った精霊が実体化する。
真紅の機体を持つロボットのクリーチャー・レッドゾーンが照陽を見下ろしていた。
「レッドゾーン!! 僕らをあの島まで連れていってくれ!!」
静かにレッドゾーンは頷き、照陽を背中に乗せた。
そして前傾姿勢を取ると──空に炎のサーキットが実体化し、レッドゾーンはそれを疾走していく。
サーキットはレッドゾーンが進む先に展開されていき、止まる事を知らない。
そして振り落とされないようにしがみつきながら──照陽は叫んだ。
「耀さーんッッッ!!」
「……!? ……いっ! ウッソだろオイ!? オマエ、まだそんな力が──」
耀は驚愕の表情を浮かべた。
後ろから疾走してくるレッドゾーン、そして背中にしがみついた照陽。
彼らは、あくまでも耀に喰らいついてくる。
「僕、諦めだけはすっごく悪いんです!! 喰らいついていきますから!」
「……諦めの悪さは俺の専売特許だと思ってたんだがなあ……」