デュエマプレイヤーは「カードが全ての学園島」で成り上がるそうです。 作:タク@DMP
《
G-NEOクリーチャー:メカ・デル・ディネロ/スーパーカー・ドラゴン パワー14500
【進化元となるクリーチャーの構成カードの枚数×2だけコストが軽減。ただしコストは2以下にならない。】
【軽減発動:コスト9→コスト3】
──《轟䡛合体 ゴルギーオージャー》。
それは、5機のスーパーカー・ドラゴンが組み上がったことで完成した機神。
そして──天戸円架に憑依していたカードの精霊の正体でもあった。
「──我々は必勝の機神……個にして群、群にして個、この拳で太平の黄金郷を築き上げん──ッ!!」
振り下ろされる巨大な二つの腕。
次の瞬間、真っ白だった空間が大量のコイン降り注ぐカジノへと塗り替えられる。
「ッ──背景が変わった!?」
「……どんな切札も出る前に勝負が決してしまえば意味がない、か。やはり六禍仙は伊達ではない、な」
「そんな! まだ《ゴルギーオージャー》が出ただけです! 勝負はついてません!」
「いや、もうついているよ」
《ゴルギーオージャー》の手に掬い上げられたコインは大量のマナとなり、円架のマナゾーンへと注ぎ込まれていく。
「──《ゴルギーオージャー》の効果発動ッ!! 登場時に、このカードの構成枚数までマナを増やすッ!!」
《ゴルギーオージャー》構成カード4枚→増加マナ4枚(円架のマナ:8枚)
一気に4枚のカードが円架のマナゾーンへ追加された。
「──そして、同時に構成カードの枚数までマナゾーンからカードを回収しても良い!! マナゾーンから2枚目の《ホールインランド・ヘラクレス》を回収する!!」
そして、畳みかけるように円架は《ゴルギーオージャー》の上に《ホールインランド・ヘラクレス》を重ねるのだった。
「──進化!! 再び《ホールインランド・ヘラクレス》!! 効果で今度はマナを5枚アンタップ!! そして呪文、《超魂設計図》を使って、山札から2枚目の《ゴルギーオージャー》を回収──ッ!!」
「ダ、ダメだ、止まらない……!! 止まってくれない……!!」
「なんでわざわざ《ゴルギーオージャー》より弱い《ホールインランド・ヘラクレス》に重ねたんでしょう……? パワーが下がってしまってます」
「見てれば分かるよ、空木。《ゴルギーオージャー》の恐ろしさがね」
「──更に2枚目の《ゴルギーオージャー》を《ホールインランド・ヘラクレス》に重ねて進化ッ!! 今度は6枚ブースト!!」
「ろ、6枚ブーストォ!?」
既に円架のマナゾーンのカードは15枚を超えていた。
そしてそこから今度は3枚のカードを円架は回収していく。
「──マナゾーンから《ゴルギーオージャー》、《ホールインランド・ヘラクレス》、《一音の妖精》、《
最早、こうなると止められない。
円架のマナは増加とアンタップにより、尽きる事がない。
すぐさま《ホールインランド・ヘラクレス》の上に更に進化クリーチャーが重ねられていく。
そして──その頂点に3枚目の《ゴルギーオージャー》が重ねられたのだった。
《
「──《ゴルギーオージャー》は──構成カードが10枚以上の時、
先程よりも大きく、強大な《ゴルギーオージャー》が円架の背後に聳え立つ。
照陽は覚悟するように歯を食いしばった。
これこそが《ゴルギーオージャー》及び、それを主軸にしたデッキの恐ろしさだ。
圧倒的なリソース回復を誇る《ホールインランド・ヘラクレス》と《ゴルギーオージャー》が絡むことにより、4ターン目に構成カードが10枚以上の《ゴルギーオージャー》は「かなり現実的な確率で」誕生する。
そして、完成した《ゴルギーオージャー》は──特殊勝利能力を持つ。「攻撃しただけで相手に特殊勝利する」のだ。
それを知っていた照陽だったが──あまりにも速い完成に、阻止することが叶わなかったのだ。
「す、すごいよ円架……こっちに来てから頑張ったんだね」
ぽつり、と照陽は呟いた。
「デュエルはずっと僕の領分だと思ってた……だけど、違った。君は……とても強くなった──ッ」
「終わりだッ!! 我々の前に膝を付けッ!!」
大量のコインが弾丸のように照陽へ襲い掛かる。
「ッ──痛──!?」
それは凄まじい勢いで彼の肉を切り裂いていく。
そうして彼をコインが埋めていく中──《ゴルギーオージャー》の拳が振り上げられた。
「──《ゴルギーオージャー》で攻撃──ゴールド・ラッシュ!!」
ぷるるるるるるる……。
その時である。
円架のスマートフォンが鳴り──《ゴルギーオージャー》の手が止まった。
覚悟をしたように目を瞑っていた照陽は──恐る恐る目を開ける。
待てども待てども《ゴルギーオージャー》の攻撃は襲ってこない。
「なんだ……攻撃が止まった……?」
「何ィ!? 投資していたポプコン社の株が急暴落したァ!?」
「……はい?」
スマホを耳に当てている円架から、そんな怒鳴り声が飛んでくる。
「新作モンキーハンターマイルズの人気がガタ落ちで、買った株が──ち、畜生、折角金を出したってのにこれじゃあ大損じゃない!! すぐに行く、怒鳴り込んでやるんだから!!」
「……あのー、円架さん?」
「こんな事をしてる場合じゃない! あたしの金がこのままじゃ台無しッ!!」
カジノもコインも、そして目の前の《ゴルギーオージャー》も跡形もなく消え失せる。
周囲はいつの間にか、壁が破壊された応接間に戻っていた。
円架はすぐさま外に止まっていたスポーツカーに乗り込む。
「──弱い奴の相手をしてる時間なんて無いの! タイムイズマネー……あたしは暇じゃないんだから! じゃあね!」
「ッ……見逃された、んでしょうか……?」
こころがポツリ、と呟く。
「……いや、だとしても結果は同じだよ」
だが──緊張の糸がほつれて切れた照陽は膝をつき──言った。
試合の結果など分かり切っていた。
「……試合は僕の負けだ」
「そうだねぇ。そして、あのまま《ゴルギーオージャー》の攻撃を受けていれば、少年は只では済んでいなかった」
「痛ッ……」
「うわっ、服が破れて血が沢山……!!」
照陽の身体には無数の切り傷と痣が出来ていた。
「……これでもまだ攻撃の予備動作だ。もし、あの特殊勝利攻撃を受けていれば……少年も、そしてカードの精霊のボルメテウスもただでは済まなかったねぇ?」
「これが……真のデュエル……そして、これが……六禍仙……! 照陽さんでも勝てないなんて……ッ!!」
受けたダメージがプレイヤーにそのまま襲い掛かる。
それが、真のデュエル。今回はたまたま助かったものの、それが如何に危険なものであるかを照陽は思い知る事になるのだった。
だが──自分の受けた傷など、今の照陽にとってはどうでもいいものだった。
「……円架を、助けられなかった……!」
※※※
理事長室に帰還した照陽たち。
だが──瀬野理事長以外は、その顔は浮かないものであったことは言うまでもない。
「大丈夫ですか、照陽さん……」
「ありがとう、空木さん。でも聊か絆創膏の数が多すぎるように見えるけど──」
絆創膏塗れになってしまった照陽を横目に──瀬野は高笑い。
「ハーハッハハハ!! 良いモノが見れたよ。真のデュエルにカードの精霊、か。六禍仙は皆、精霊使いであると聞いていたが……まさか暴走してしまっているとはね」
「笑いごとじゃないですよ、理事長ッ!! 照陽さん、自分の妹さんがあんなになってて落ち込んでるのにッ!!」
「良いんだ、空木さん。円架を助けられなかったのは……僕が弱かった所為だ」
「そんな……」
「だが、こんなところで落ち込んでいる場合ではないぞ? 少年。天戸円架は忙しい身だ、ああやってデュエルを挑む機会は早々無い」
「じゃあ、次は円架に会う事も──叶わない、と」
「だろうね? そうじゃなくても、カードの精霊である《ゴルギーオージャー》が君と会うのを拒絶するだろう。だから──君には道が一つしか残されていない」
瀬野は──愉快そうに言った。
「──この学園島で成り上がるんだ、少年。頂点まで駆け上がれ。そうすれば──六禍仙と戦う機会もあるはずだ」
「ッ……!! 良いんですか!? 僕、この学園に入って……!!」
「だが、その為には先ず、この学園に入学しなければならない。君のような貴重なサンプルの為ならば入学費用を援助する事も可能だが……それでは他の生徒達や教員も納得するまい」
「そっか。いきなりトクベツ扱いだと怪しまれちゃいますもんね。真面目に学費を払ってる他の生徒からすれば堪ったものじゃないでしょうし」
「だからこそ──自分の実力を認めさせろ、少年。数日後に入学試験を行い、君の実力が特待生クラスだと認めさせれば学費も免除させられるはずだ」
「入学試験……ッ!! 分かった、やります!! 円架ともう一度戦う為なら僕、何でもやりますッ!!」
照陽の答えなど最初っから決まっている。
異世界で半年間、一人で頑張ってきた妹が──変わり果ててしまったまま放っておくことなど出来はしない。
「──僕、この学園で成り上がってみせますッ!! そして──円架を必ず助け出しますッ!!」
「──フゥン……いいだろう。それならば此方でも入学試験について色々手配しておこう。実技試験ならば君の対戦相手から考えなければならないからね」
「実技試験って、デュエマなんですか?」
「当然。少年、相応の準備をしていきたまえよ」
「……はいッ!!」
過るのは──先程の敗北。
照陽は──自らが首にぶら下げたボルメテウスを手に取り、眺めた。
(ボルメテウス。君に誓って……僕はもう、負けない……負けるわけにはいかないんだ……ッ!!)
「ピィーッッッ!!」
──その時、照陽の手からボルメテウスのカードが消えた。
カードを手に持っているのは──理事長の飼い鳥のピーちゃんだった。
「って、おい!! 返せ!! それは僕のボルメテウスだ!!」
「ピーッ!!」
「おやおや、ケージには鍵を付けていたはずだが、また逃げてしまったようだね、ハハハハ!!」
その鳥かごは──金網がペンチでねじ切ったかのように穴が開いてしまっている。
「前から思ってたけど、あの鳥勝手に脱走することが多くないですか理事長ォ!?」
「はて、何のことやら……」
「飼い主失格だァーッ!?」
「ピーッ!!」
「まーてーッ!? 僕のカードを返せーッ!! それは、僕の一番大事なカードなんだぞーッッッ!?」
ボルメテウスを足で掴んだまま、部屋の扉の隙間を押し開けて脱走するピーちゃん。
それを照陽は追いかけるのだった。
「理事長……良いんですかアレェ!? 飼い主の管理不行き届きじゃないですかぁ!!」
「ハハハハハハハ!! ……ピーちゃんは
「……?」
何処か意味深長に答える瀬野。
その真意を、こころは図り取る事が出来ないのだった。
「それにしても六禍仙か……
「
「忙しいって何だ。確かアイツ──色んな部活の助っ人に借り出されているだけだろう」
「いえ……進んで自ら手を貸しに行ってるんです」
こころは──呆れたように言った。
この無銘学園にも、在籍しているのだ。
六禍仙の称号を頂く──強豪プレイヤーが。
しかし例に漏れず「彼女」も一癖ある人物なのである。
「──……
「やっぱり何度聞いても頭のネジが外れてるとしか考えられん」
「何でも良いんで、私達も追いかけませんか? 飼い主としての責任を取ってください理事長」
「えええー? 何でだい?」
「行きますよッ!! 理事長ッ!!」
※※※
──時刻は6時30分。
部活は終わり、最終帰宅時間を過ぎている。
そんな中、女子更衣室の中で一人、テニス部のウェアを脱ごうとしている少女。
彼女の名は──白銀
無銘学園高校の2年生である。
汗に濡れたヘアバンドを解くと、首まで長いロングヘアの銀髪が露わになった。
(全く困っちゃうナ──幾らこの私が運動神経バツグン、頭脳明晰だからって……ま、今日の練習試合も私のおかげで圧勝だったシ?)
ウェアを脱ぐと、他の追随を許さない豊満なバストが束縛を外れて溢れ出る。
(完全無欠……文武両道。それこそが私のモットー。名実共に、この学園のトップである事こそ私の美学ッ! その全ては──)
澪音は自分のロッカーを開ける。
そこには白いウェディングドレスに身を包んだ女性の表紙が付いた婚活雑誌が置かれていた。
(──いずれ現れる運命の人に出会う為ッ!! 完全無欠の花嫁となって、最高のウェディングを飾るノーッ!! キャーッ!!)
彼女の脳内に溢れ出る存在しない記憶。
いずれ現れる運命の人と挙げる至高のウェディング。
その為に──彼女は自らを「完璧」に近付けるべく日々努力しているのだった。
しかし。
「ピーッッッ!!」
澪音は一瞬で現実に引き戻される。
更衣室の窓から、甲高い鳴き声を上げて赤黒い鳥が飛び込んできたのである。
それが理事長の飼い鳥であることを知る彼女は目を丸くするのみにとどまったが──更に立て続けに、更衣室の扉が思いっきり開いた。
「待てーッッッ!! この部屋に逃げたはず──あっ」
「あっ……」
全開になる扉。
そこには──見知らぬ少年。
彼の目は当然、釘付けになってしまうことになる。
部屋の真ん中で、フリルの付いた下着姿の澪音に──
「えーと、あの……ごめんなさ──」
「~~~~~~ッッッ!!」
澪音の顔が林檎のように真っ赤に染まっていく。
直後、少年の顔に、テニスラケットが真っ直ぐにぶっ飛んだ。
「へぶぅっ!!」
「この、変態ッ!! 私のパーフェクトな身体をッ!! あろうことか白昼堂々盗み見るなんテーッッッ!!」
そして後から──理事長がスッ飛んでくる。
「ああ、いけないッ!! 遅かったかッ!! 此処が女子更衣室だと知っていれば……てか、何で鍵がかかってないんだい?」
「この男をーッ!! 今すぐしょっ引きなさイッ!! 理事長ーッッッ!!」
「待ってくれ白銀君! 話を聞いてくれないかいッ!」
「一体何の話を聞くって言うノ!! 問答無用で通報ヨ、通報ーッ!!」
※※※
「──つまり? 理事長の飼い鳥が、そこのケダモノのカードを盗んでいって……それを追いかけて、更衣室に突入した、ト?」
「鍵もかかってなかったし、部屋の看板はよく見てなかったんだ……本当にごめんなさい」
正座させられる照陽。そして──瀬野理事長。
理事長の首からは「私は監督不行き届きで飼い鳥を脱走させました」と書かれたプラプレートがぶら下げられていた。
しかし、全く悪びれることなく、正座したまま瀬野は銀髪の彼女を紹介する。
「──少年、見たまえ。彼女が白銀
(もう見ました……不可抗力だけど……)
思わず照陽は、澪音から目を逸らしてしまった。
見た事のないほどの巨峰。今彼女が着ている制服の上からでも分かってしまう程だ。
「この鍛え上げたパーフェクトな肉体はッ!! いずれ現れる運命の人の為にとっておくつもりだったのニッ!! あろうことか、こんな奴に覗かれるなんテッ!!」
「貞操観念が明治時代から進んでないのかい? 裸を見られたら結婚って、いつの話だ?」
「とにかくッ!! うら若き乙女の体を覗いた責任、取って貰うワッ!!」
「その件については本当に済まなかった、僕も見たくて見たかったわけじゃなくて」
「この身体が見るに値しないって言うノ!?」
(この子自信過剰と自意識過剰が過ぎて面倒くさすぎるな……通報されてないだけマシだけど)
流石の照陽もだんだん罪悪感が薄れてきてしまうのだった。
「オイオイ待ってくれ給えよ白銀君。そもそも着替え中なら、何故女子更衣室に鍵がかかっていなかったんだい?」
「……」
黙りこくる澪音。
理由は単純明快だ。
テニスの練習試合で勝利して浮かれていた彼女は──女子更衣室の鍵をかけるのを忘れていた。
ただそれだけの話なのである。
「……コホン。落ち度は私にもあったってことネ。でも、それはそれ、これはこれ!! 私の裸を見た責任は取って貰うワッ!!」
「傍若無人が過ぎる……」
「なら丁度良いじゃないか!! そこの少年は、今度入学試験を受ける予定でねぇ? 丁度良い相手が欲しかったんだが──」
「丁度良い相手ェ?」
ぴくり、と澪音の瞼がヒク付いた。
丁度良い相手──という言葉に我慢ならなかったのである。
何故ならば白銀澪音は六禍仙。この無銘学園で最上位に位置するプレイヤー。
「父から受け継いだ無色カードたち。母から受け継いだ圧倒的デュエルセンスッ!! そうして生まれた希代のサラブレッドこそが、この私!!」
故に。
澪音は自らの実力に大きな自信を抱いている。
「……この白銀澪音が丁度良い相手だなんて、良い度胸ネ? そこのケダモノ君には……荷が重いんじゃなイ?」
「──いえ、デュエルなら……受けて立つ。そして、貴女に勝ってみせる」
──しかし。だからと言ってもう照陽は気圧されはしない。
「私に勝つゥ? ハッ、出来るモノならやってみなさイ。……勝ったら特待生入学でも何でも認めてやるワ!!」
「らしいねえ、少年。言質は確かに取った」
「……ええ」
相手は六禍仙。
しかし、彼女相手に臆しているようでは──円架に勝つなど夢のまた夢だ、と照陽は自らを奮い立たせる。
「入学試験は明日!! 全校生徒の前で執り行うッ!! ……覚悟してなさいナ!!」
「明日──望むところだッ!!」
その流れを見ていたこころは──あまりの話の速さにへたり込んでしまうのだった。
(あ、あの六禍仙と立て続けにデュエル……? 信じられない……でも、もしも勝てれば全校生徒を納得させるに足る……!)
そして、こころは行儀よく理事長の頭に乗っているピーちゃんを見遣る。
(……理事長はピーちゃんを”賢い”って言ってたけど、まさかこの展開を予期して……?)