デュエマプレイヤーは「カードが全ての学園島」で成り上がるそうです。 作:タク@DMP
※※※
──理事長に部屋を用意してもらい、今日はそこに泊まる事になった。
今日だけであまりにも色々ありすぎて頭がパンクしそうになる照陽。
だが──明日には、もう入学試験が控えている。全校生徒の前で、最強の六禍仙の一人である澪音との戦いが。
(強いだけのデッキならいくらでもあるけど……今の僕の手元にあるのは、このサムライデッキだけだ)
現在の照陽の持つカードは、サムライデッキとその改造用のパーツの束のみ。
それも必要最低限のものしか持ってきていない。だが、それでも──
(でも、だからこそ。僕は納得して勝負に挑むことができる。少しでもデッキを組み替えよう。円架のゴルギーオージャーを受けて分かった、やっぱり《一音の妖精》は強力だ)
改造用パーツから、照陽は──円架も使っていた《一音の妖精》と《ソウルサンライト コハク》を取り出す。
サムライメクレイドに特化させた構築であったが故に、サムライではないこの二種類をデッキから抜いていたのだ。
しかし、円架との試合で改めてこのパッケージの恐ろしさを思い知らされたこと。そして何より──
(六禍仙”零”──水晶の魔女・白銀 澪音。使用するデッキはジョーカーズ、ゼニス、いずれも無色カード中心の展開系デッキだ)
──部屋に置いてあるパソコンでは、インターネットで五色島のデュエル大会の情報が閲覧できる。
これは五色島の学生ならば誰でも手に入るものだ。
(母親が元・プロのデュエリスト、白銀
(その母の下でスパルタ指導でデュエルのいろはを叩き込まれた。海外留学を長年していたが、帰国後は無銘学園に進学。強化されたジョーカーズやゼニスで勝ち上がっている……と)
澪音の過去に使用したデッキの傾向から照陽は《一音の妖精》が彼女のデッキに突き刺さる──と判断する。
そもそも《一音の妖精》が突き刺さらないデッキの方が少ないのであるが。
(当然サムライにもゴルギーオージャーにも《一音》は刺さる。こうなると不毛な先投げゲーになってしまうから、根本的な解決にならない。ゴルギーオージャー相手は《一音》を
しかし幸い、今回の白銀澪音は《一音》を積めるようなデッキではない。
相手の使うのは無色カードばかりであることが分かり切っているからである。
(だが、そんな事は白銀さんだってわかっているはずだ。無色カードには《一音》を超えられるカードが幾つもある。自分のデッキの弱点を理解しているのは使っている本人。六禍仙と呼ばれる程のプレイヤーが、それを予期していないわけがない)
故に。
照陽は──改造用パーツの中の1枚に目を向けた。
(相手がこっちの対策カードを乗り越える前提で勝負プランを組み立てるのが重要だ)
「……今回は、君の力を借りるとしようか──」
※※※
「──あいつも不運な奴だなァ?
夜。
パチリ、とこころは目を覚ます。
こころに話しかけるのは──最も付き合いの長い「友人」だ。
「……確かにそうですね。六禍仙と立て続けに」
「それだけじゃない。よりによって、妹がカードの精霊に食われちゃってることだ。あれはなかなか手強いぞ。いっそのこと、オレが直々に出向いて──」
「やめてくださいッ……! 貴女が出たら、
「おい、オレのデッキを勝手に使って奪われたヤツが何か言っているな?」
「あ、あれは絡まれていた中等部の女の子たちが見過ごせなくて……貴女のデッキだったら勝てると思ったから」
「オマエは大馬鹿野郎だな──オマエが、オレのデッキを使いこなせるわけがないだろうが。オレのデッキを使って1回。そして、自分のデッキを使って1回。鉛ハジキ等という小物に、
「こ、小物だなんて……あの人は照陽さんだったから勝てただけで、戦極学園の生徒はほぼ全員がうちの上位ランカークラスで……」
「言い訳は聞いていない。デッキをオマエに勝手に貸した覚えはない。以後、こんな事はないようにしろ」
「貴女のデッキは全部、私のお金から出ているんですが……」
「オレは、あの鉛ってヤツに同意するね。デュエマの才能に優れたオレと出がらしのオマエ。才能の無い奴がデッキを使っても腐らせるだけだ。その点、俺はあの天戸って奴には期待している」
「……期待って」
「オレを楽しませてくれる……ってことだ。クククッ……久々に面白くなりそうだ。この島でどれだけ持つか見物だなッ」
そこで──「友人」の声は途絶えた。
部屋の中には他に誰も居なかった。
「……照陽さん……大丈夫でしょうか……」
※※※
──翌日。
無銘学園のアリーナには多くの学生が詰めかけていた。
全校公開の入学試験ということで、生徒達も興味津々で押しかける。
そんな中、控室で──照陽と澪音は相対していた。
「……ケダモノ君。キミのビクトリーロードは此処で終わリ。だって私が、君の道を喰らい尽くしちゃうかラ」
「残念だけど試合は勝たせて貰う。それと、ケダモノ君はやめてくれないか。まるで僕が本当に変態みたいじゃないか」
「ぐっ、事故だったのは分かるシ、私も不注意……誰かの所為にしたいけど不思議と私の顔しか思い浮かばないネ!!」
「すごいな、そこまで分かってるんだ」
「ならせめて、貴方をコテンパンに打ちのめして、この気持ちを晴らすヨッ!!」
「とんでもない意地っ張りで、オマケに暴君だ……」
「貴方は逃げないだけ立派だネ、正直見直したヨ。最近、私の顔を見ただけで怯えるヤツばかりで辟易してたノ。何処までその余裕が持つか見物だけド」
「怯える? 君みたいな可愛い女の子を見て怯えるヤツが居るのか。ソイツは随分と勿体ない事をしたな」
「ッ……!?」
「可愛い」と言われ慣れてはいないのか──はたまた不意に褒められたからか、澪音は戸惑いと共に頬を赤く染めた。
尚、照陽としては完全に皮肉交じりだったのではあるが、それでも澪音が「可愛い容姿」であることは否定のしようがない本音だ。
ツインテールに結った銀色の髪に青い宝石のように輝く目。まるで、アニメの世界から飛び出して来たかのような姿だ。
「つ、付き合っても無い相手に”カワイイ”だなんて……き、キレイだとか美しいだとかは、よく言われるけど……ま、まあ、私がカワイイのは……当然の帰結だけド? このバツグンのスタイルはお母様譲りだシ!」
(何だこの子……露骨に照れているな。そういえば貞操観念が昭和通り越して明治時代で止まっているんだった。もしかしたら上手く煽てたら──)
「ちょっと今上手く煽てたら有耶無耶に出来るとか思っタ!? その手には乗らないワ!!」
(やっべ顔に出てた、この子多分相手の考えてる邪な事は一発で見抜けるタイプだ気を付けよう)
「私、相手の考えていることが分かるノ。微妙な表情の変化、仕草、声色から……ほぼ100%の確率で相手の本音もウソも見抜けるワ」
「そりゃあ怖いな……ブラフなんて通用しないじゃないか」
「だからカワイイって思ったのはウソじゃない……みたいだけド……煽てるのはやめテ! 昔、ママが言ってたノ」
──澪音。貴女は私の娘として恥じない頭脳の持ち主です。しかし──聊か調子に乗りやすく、頭のネジも数本外れているフシがあります。重々気を付けるように。
「……ってネ!!」
「見た目だけじゃない。無色カード中心のデッキで此処までの勝率を叩き出せるのは異次元だ。世間は君を天才だなんてもてはやすが、きっと違う。絶え間ない努力の賜物さ」
「……フッ、フゥ~ン……ど、努力家、ネ……貴女なかなか見所あるじゃなイ」
駄目そうであった。
照陽の言っている事はウソ偽りがない。
故にストレートに澪音へ響いてしまうのだった。
(マズいな、この子……本当に心配になるレベルでチョロいぞ……なろう系でも此処までチョロいヒロインは早々居ない)
「ちょっと今、チョロいって思ったデショ!!」
(ここまでくると読心術レベルだな。でも──この能力、カードゲームではあまりにも強すぎるスキルだ)
──水晶の魔女。
それが白銀 澪音の異名だ。
その異名が意味するのは、カードゲームにおける心理戦が彼女にはほぼ通用しないという点であった。
ずば抜けた観察眼と洞察力により、相手の感情の機微を読心術レベルで読み取る技能。
相手のイカサマを見抜いたことも一度や二度ではない。
ただし──プレイングスキルも相当のもので、そのイカサマを前提として正面から対戦を叩き潰してみせたのであるが。
「──とにかくッ!! 私は貴方には負けなイ。ただの名無しが六禍仙相手に何処までやれるか楽しみネ」
「……いや、勝たせて貰う。僕はもう負けられないから」
澪音は己のプライドと沽券の為に。
そして照陽は妹の為に。
互いに譲れない戦いが始まろうとしていた。
二人は──それ以上は口を利かず、試合会場へと足を進める。
「新しく入ってくるヤツ、あの鉛を倒したヤツだってよ」
「デッキ狩りの鉛を!?」
「だが、相手が悪すぎる。よりによって──白銀だ」
「白銀はヤバイだろ。何でラスボスと対戦させられてんだアイツ?」
「可愛そうに、あれじゃあ公開処刑だ。まさかと思うが白銀を怒らせでもしたか?」
「ああ怖い怖い……あいつ、かなり気が強いからな」
ギャラリーたちは、試合会場に入ってきた澪音に目を向けた。
「今季の優勝回数は学年内トップ。更に、学園対抗リーグ戦でも今期は負けなし」
「しかも凍土学園の六禍仙”自然”を負かしているからな……それ以外では六禍仙との試合は無かったけど」
「実際、まだ白銀は六禍仙になったばかりだ。他の学区の”もっとヤベーやつら”に比べれば聊か地味だがな」
ギャラリーたちは、試合会場に入ってきた澪音に目を向けた。
今日の髪形は左右に短く結んだツインテール。その銀の髪が全校生徒の目を引く。
「帰国子女であり文武両道。当然デュエルの腕はトップクラス。俺達からすりゃ雲の上の存在だ」
「スタイルもバツグン……」
「あんたら白銀さんを見る目が厭らしいんだけど」
「ほんっと男子ってサイアク」
そんな中──こころは、身を乗り上げて挑戦者である照陽に注目していた。
勝ってほしい。どうか。
助けて貰った恩は勿論ある。だが、これはこの世界にやってきた照陽がこれから成り上がるための第一歩なのだ。
「照陽さん、頑張ってください──ッ!!」
「──入学試験、実技テストは勝敗のみならず試合内容によって審査する」
立会人である教師がステージに上がり──片手を上げた。
「両者、対戦準備は出来たか?」
「白銀澪音、対戦完了したワ」
「……こちらも、準備できました」
「制限時間は30分──では、始めッ!!」
シールドが目の前に展開される。
この瞬間を以て、勝負が幕を開けようとしていた。
ニィ、と澪音は嗜虐的な笑みを浮かべてみせる。
「……水晶の魔女として、完膚なきまでに貴方を叩きのめス。ただ、それだけだかラ!!」
【天戸 照陽】VS【六禍仙”零”──水晶の魔女・澪音】
2ターン目
照陽(先攻:2マナ)
澪音(後攻:1マナ)
照陽のターン。
手札には既に《超魂設計図》が握られている。
彼は堅実に手札補充から滑り出した。
「僕は……2マナで《
《
クリーチャー:ドリームメイト/テクノ・サムライ パワー1000
「私は、2マナで《策士のシダン ニャハン》を召喚ッ!!」
《策士のシダン ニャハン》 無色 コスト2
クリーチャー:オラクル・セレス パワー2222
澪音の場に現れたのは長毛の猫のようなクリーチャー。
《ニャハン》の効果で澪音は自らの手札からカードを1枚マナゾーンに置いた。
次の瞬間、彼女のマナゾーンに1つ、水晶で出来た華が咲く。
「こっちも手札から、カードを裏向きでマナゾーンに置くワ!!」
澪音(3マナ:そのうち裏向きマナ1)
それを見た照陽には、このデッキが最早何のデッキであるか明らかだった。
このデッキは──ゼニス。
マナゾーンにある「裏向きのカード」の枚数を効果発動の際に参照するデッキである。
故に《ニャハン》を始めとして、マナゾーンに裏向きでカードを置くカードが多数投入されているのだ。
(こっちも早く動かないと……!)
カードを引く照陽。
そのトップは──《一音の妖精》だ。
「来たッ──2マナで《ソウルサンライト コハク》を召喚ッ!! 更に《一音の妖精》に進化ッ!!」
自らの効果でバリアを展開した《ソウルサンライト コハク》。
そして、その上から《一音の妖精》が置かれて無敵の《一音の妖精》が誕生した。
これにより澪音は1ターンに1度しかクリーチャーを召喚出来ず、呪文を唱える事が出来ない。
「よ、よしっ!! 照陽さんもあのコンボを……!!」
観客席のこころも思わずガッツポーズ。しかし──それを受けた肝心の澪音は涼しい顔だった。
「残る手札はたったの1枚。リソースを使い過ぎネ──って言いたいところだけど」
序盤からの大量展開もあってか、照陽の手札は残り1枚。
しかし──肝心の手札は《PERFE910-御代紅海》。
次のターンに引いたカードが多色カードだったとしても、《ソウルサンライト コハク》の効果でコストを軽減して出す事が出来るのである。
「……肝心の手札が切札ってところカシラ?」
「何もかもお見通しか。じゃあ、《一音の妖精》でシールドをブレイクだッ!!」
砕け散る澪音のシールド。
そこにあったカードは《シャングリラ・クリスタル》。
(G・ストライクの無駄打ち……だけど、良いカードが来てくれたワ)
《シャングリラ・クリスタル》は相手の攻撃を止めるG・ストライクを持つカードであり──このゼニスデッキが動き出すエンジンでもある。
この攻撃は少なからず澪音にとっても利益のあるものであった。
「私は3マナで《シャングリラ・クリスタル》を使うヨ!! これで、山札の上から2枚を裏向きでマナゾーンに置くかラッ!!」
澪音(5マナ:そのうち裏向きマナ3)
一気に水晶の華が2つ、澪音のマナゾーンに咲いた。
着々と澪音の準備は進みつつある。しかし──それでも照陽のやることは変わらない。
「──僕は《
「──出てきたネ。テクノ・サムライの切札──ッ!!」
「《御代紅海》はマッハファイターッ!! 出たターン、相手アンタップしている相手のクリーチャーに攻撃出来る!!」
狙いは当然《ニャハン》だ。
(あのデッキが僕の推測通りなら……《ニャハン》を残しておくとロクな事にならない)
(……って考えてるんデショ? 正しいし冷静な判断ネ)
「そして、攻撃時に山札の上から1枚をマナゾーンに置いて、《御代紅海》の下に重ねる!!」
こうして。
構成カードが3枚以上になったことで《御代紅海》の効果が起動する。
「カードが3枚以上含まれている時、《御代紅海》は場を離れないッ!! 《ニャハン》をバトルで破壊だ!!」
爆散する《ニャハン》。
後に残るのは無敵化した《御代紅海》だけだ。
《
・NEOクリーチャーが攻撃する時、山札の上から1枚をマナに置き、マナゾーンから1枚を手札に加えるかそのNEOクリーチャーの下に置く。
・構成カードが3枚以上の時、自分のNEOクリーチャーは場を離れなくなる。
・構成カードが3枚以上の為、現在場を離れない。
そして。
《御代紅海》の効果は自分のNEOクリーチャー全体に波及する。
照陽は《一音の妖精》に手を掛けた。
「──今度は《一音の妖精》でプレイヤーに攻撃! その時、《御代紅海》の効果でカードを下に重ねる! これで《一音の妖精》も無敵状態になった!!」
《一音の妖精》
・《御代紅海》の効果で構成カードが3枚以上の為、現在場を離れない。
これが照陽のデッキ、
《御代紅海》の除去耐性にものを言わせて、盤面に無敵の《一音の妖精》を維持しながら相手を攻撃するデッキだ。
円架のゴルギーオージャーは、必ずしも《一音の妖精》を維持し続けられるわけではない。
それに対し、このリースギャラクシーは盤面が揃えば恒常的に相手をロックしながら戦い続ける事が出来るのである。
「アハッ!! ──無敵状態なんてマヤカシだワ。全て無に返してあげル」
──尚、それでも程遠いと言わんばかりに澪音は嗤う。
「私は2マナで《
「そのカードは……ッ!!」
「裏向きに置かれた私のマナは
水晶の華が光り輝く。
「即ち、貴方より
そして。
澪音のマナが全てタップされた。
「冥府統べるは蠅の王。
巨大な蠅のような影が澪音の背後に現れる。
女体を模したような女神像と、巨大な蠅が組み合わさったような見るも悍ましい怪物が。
「──これが私の
悍ましい瘴気が辺りに満ち満ちる。
澪音のマナゾーンに、水晶の華が咲いていく。
そして──無敵だったはずの《一音の妖精》が、《御代紅海》が腐り落ちるようにして消滅した。
「ッ……《一音の妖精》と《御代紅海》が……破壊された……ッ!!」