デュエマプレイヤーは「カードが全ての学園島」で成り上がるそうです。 作:タク@DMP
──ゼニス・セレス。
それは、頂天を意味する種族。
白銀澪音が好んで使用する種族の一つでもある。
戦術は、裏向きとなった水晶マナの活用。
そして──真正面から相手を爆砕する圧倒的なカードパワーだ。
相手の嘘を見抜き、本音を読み取る事が出来る澪音は──相手のイカサマや駆け引きを事前に察知した上で、真正面から対戦相手をゼニスと無色カードのパワーで捻じ伏せてきたのである。
(ナメたファイアー・バードデッキで挑んできた奴は《「戦鬼」の頂天 ベートーベン》で詰ませて泣かせてやっタ。マーシャルループを握ってきた奴は《パルテノン》で分からせて寝込ませてやっタ)
特に所謂「環境上位」と呼ばれる強豪デッキに対しては特攻とも言える強力なカードが揃っている。
カードプールは狭く、カスタマイズの幅は小さいものの──組み合わせる文明次第では戦術も得意なデッキの相性も様変わりする。
(ゼニスが最強なんじゃなイ。この私が使うゼニスが最強なのヨ!!)
《「無」の頂天 タブラ=ラーサ》 無色 コスト12
クリーチャー:ゼニス・セレス パワー14541
「ひぃっ……ッ!! いつ見てもグロいカード……!!」
「気色悪い蠅の王……!!」
「あいつ見てると鳥肌立つんだよなあ……!?」
そして、《タブラ=ラーサ》の異様な威容に観客の生徒達も顔を引きつらせていた。
彼らの中には澪音のゼニスに蹂躙されたものも少なくない数が居る。
冥府の王・タブラ=ラーサは、無銘学園の生徒にとっては恐怖、そして圧倒的な支配の象徴なのだ。
「──《「無」の頂天 タブラ=ラーサ》の効果ヨ!! 裏向きのマナを2枚増やし、そして無色以外のクリーチャーのパワーを私の裏向きのマナの枚数の2000倍だけ低下させるヨッ!!」
澪音(マナ6→8:うち裏向きのマナ6)
パワーマイナス発動:5×ー2000=ー10000
「従って、貴方のクリーチャーのパワーはマイナス10000され、破壊されたってワケ!!」
「ッ……《御代紅海》の除去耐性は完全じゃない。パワーが0になったら破壊されてしまうのを知ってたか」
「この私を誰だと思ってるノ? サムライのカードも全部キッチリ把握してるワ」
この展開は勿論想定していなかったわけではない。
しかし、出来れば避けたかった、と照陽は歯を食いしばる。
リソースが無い状態で盤面が壊滅してしまったからだ。
(分かっててもキツいモンはキツいに決まってるだろ! 僕だってゼニスのカードは把握してる、今更驚きはしないけどさあ!)
そこは流石に六禍仙。
相手のデッキの種類で侮りはせず、《御代紅海》の弱点まで把握済みだったのだ。
むしろ澪音はサムライを展開デッキに対する強烈な対策デッキとして重く見ているまであった。
不死身の《一音の妖精》を超えられなければ澪音も一生動くことが出来ないのだから。
(《コハク》の効果が掛かっていればパワーが0になっても耐えられたんだが……《御代紅海》の耐性だけじゃパワーマイナスには耐えられない!!)
「そして場に無色クリーチャーが居るから、G・ゼロ発動ッ!! 《ゼロの裏技 ニヤリー・ゲット》!!」
G・ゼロ──それは条件を満たせばタダで使えるという能力だ。
それによりマナを支払わずに澪音は《ニヤリー・ゲット》を詠唱する。
その効果は、デッキから無色カードを更に呼び込むというもの。
絶望は集結する。デュエルの終結に向けて。
「山札の上から無色カード3枚を回収──そして《Dの寺院 タブラサ・チャンタラム》を展開ッ!!」
更に周囲の光景は巨大な蠅の石像が聳え立つ寺院へと塗り替えられる。
D2フィールド──それは場の全てに影響を及ぼす、非常に凶悪なフィールドカードだ。
《Dの寺院 タブラサ・チャンタラム》 無色 コスト2
D2フィールド:ゼニス
「チャンタラム……来るか!!」
「マナゾーンに裏向きのマナが5枚以上あるので、G・ゼロ発動。《奇妙の頂天 クリス=バアル》を召喚!!」
《「奇妙」の頂天 クリス=バアル》 無色 コスト10
クリーチャー:ゼニス・セレス パワー17371
現れたのは蠅人とでも言うべき異形。
そして、ゼニスの降臨と共に蠅の像が蠢き始める。
「ゼニスの召喚に反応し《チャンタラム》のD・スイッチが起動!! ゲーム中1回のみ、私のマナゾーンの裏向きのマナを全て復活させるワ!!」
澪音(残り裏向きマナ6)
会場がどよめく。
使い切ったマナを回復するのは、まるでもう一度自分のターンを行うに等しい蛮行だ。
「《クリス=バアル》は墓地の無色カードを回収する効果があるワ。《水晶設計図》を回収。そして《水晶設計図》で更に無色カードを手札に加えるワ」
捲ったカードを見て澪音は軽く舌打ちした。
その中には2枚目の《チャンタラム》は無い。
「私は2枚目の《クリス=バアル》を回収。ソシテ、G・ゼロで召喚するワ!! 更にッ!! 裏向きの4マナをタップ──」
澪音の残る水晶マナが再び全てタップされる。
「──水晶ソウル3、合計12マナ!!」
彼女の手に握られた──「切札」が不気味に輝いた。
「……貴方には見えるデショ? カードの精霊が」
「ッ……やっぱり君も」
そういえば、と照陽は思い出す。
理事長がサラッと「六禍仙は皆、精霊使いだ」と言っていた事を。
「残念だワ。これが真のデュエルじゃなくテ。この子の拳で──叩き潰してあげたのにネ!!」
「──この、気配は……!?」
澪音の影から伸びる巨大な影。
腕を組んだ純白の人型、そしてその背後に鎧のようにして顕現した純白にして起源のゼニス。
矛盾を消す為、自らを無にすることを選んだ──「理想郷」の名を冠するゼニス。
「──天上天下、唯我独尊、天地開闢──最上にして至上、即ち無上ッ!!」
六禍仙のデュエルは理不尽に始まり、理不尽に終わる。
──終結のゼニスが今、降臨した。
「これが私の
《「無上」の頂天 シャングリラ・ファンタジア》 無色 コスト12
クリーチャー:ゼニス・セレス パワー12321
現れた《シャングリラ・ファンタジア》の威迫は、ホログラムとは思えないものであった。
肌が震え、心胆が嫌でも冷え上がる。
だが、そこには一切の感情らしい感情は無く──只只、目的も無く存在し続けるのみ。
その無機質さが却って、照陽に違和感と生理的な危険を知らしめるのだった。
(シャングリラはヤバい!! 全てのゼニスの生みの親、はじまりのゼニス……!!)
背景ストーリーでもゼニスの生みの親として、ラスボスとして存在感を放ち続けた《シャングリラ》。
それに恥じぬ能力をこの《シャングリラ・ファンタジア》は持つ。
「──《シャングリラ・ファンタジア》の効果発動! 場のクリーチャーは全て場に出たターン、相手プレイヤーを攻撃出来ルッ!!」
──先ず。
全体に付与される疑似スピードアタッカー。
場の3体のゼニスはいつでも照陽を攻撃出来る態勢が整った。
そして──
「《「無」の頂天 タブラ=ラーサ》で攻撃する時、《ファンタジア》の効果発動!! このターン中、初めて攻撃した私のクリーチャーを破壊するワ!!」
──《照陽》に攻撃するなり爆散する《タブラ=ラーサ》。
しかしマナゾーンの水晶の華が砕けると、再び《タブラ=ラーサ》は再生して復活し、照陽に襲い掛かる。
「破壊しても生き残る……エターナル
「そうヨ!! ゼニス・セレスは、マナゾーンの裏向きのマナを表向きに戻すことで離れる代わりに場に留まるワ!!」
澪音(裏向きのマナ:6枚→3枚)
「ソシテ、こうしてクリーチャーを破壊した時、《シャングリラ・ファンタジア》の効果発動ッ!! アンノウンかゼニスを持つクリーチャーが出るまで捲るワ!!」
これこそが《シャングリラ・ファンタジア》の真骨頂。
攻撃したクリーチャーを破壊することで、山札から更にゼニスを呼び出すというものだ。
呼び込んだゼニスは当然、《シャングリラ・ファンタジア》の効果で相手プレイヤーを攻撃出来るのである。
「出るのは──2枚目の《「無」の頂天 タブラ=ラーサ》!! 更に2枚、裏向きでマナを増やすワ!!」
「また増えた……!!」
「ソシテ、1枚目の《タブラ=ラーサ》でT・ブレイク!!」
蠅の王の腕により、照陽のシールドが薙ぎ払われ、砕かれる。
その中にS・トリガーは無い。
照陽の中には少なくない焦りが募っていく。
(エターナル・Kでゼニスに除去カードは通用しない……ッ!! そればかりか……ッ!!)
「──トリガー無いノ? じゃあ畳みかけるヨ!! 《クリス=バアル》で攻撃する時、革命チェンジッ!!」
革命チェンジ。
それは、攻撃するクリーチャーと手札のクリーチャーを入れ替える能力。
条件は──ゼニスが攻撃する時。
絶望の化身は姿を現す。
「──来たれ冥府の王ッ!! 《蠅の王 クリス=タブラ=ラーサ》ッ!!」
《蠅の王 クリス=タブラ=ラーサ》 無色 コスト15
クリーチャー:ゼニス・セレス パワー57975
現れたのは青白い光に包まれた、更に巨大な蠅の王。
その不気味な光が放たれると共に、照陽の手札は全てマナゾーンへと裏向きで叩き落とされる。
そして澪音の手札も全て、裏向きで置かれていく。
周囲には大量の水晶の華が咲き誇った。
「手札を溜め込んだ甲斐があったワ!! 《蠅の王 クリス=タブラ=ラーサ》の効果で互いのプレイヤーは手札を裏向きで全部マナに置くノ!!」
「ッ……逆転の芽を刈り取るってわけか!!」
此処で重要なのは《タブラ=ラーサ》の手札破壊だ。
シールドブレイクは相手に手札を与えるリスキーな行動。
仮にS・トリガーで反撃され、仕留められなかった場合、残りの手札で逆転されてしまう。
だが、澪音は先に3枚のシールドをブレイクした後で《蠅の王》を投げる事で照陽の手札を破壊。
可能な限り逆転のリスクを低減したのである。
「仮に止められても、手札は2枚。そのうち1枚は少なくともS・トリガーで、次のドローで手札は2枚ッ!! さあ、どうやって反撃するのカシラ!!」
「……そうだね」
蠅の王により砕け散る残り2枚のシールド。
場にはまだ、2枚目の《「無」の頂天 タブラ=ラーサ》、2枚目の《クリス=バアル》、《シャングリラ・ファンタジア》が残っている。
おまけに《「無」の頂天 タブラ=ラーサ》と《シャングリラ・ファンタジア》は大量に増えた裏向きのマナによって除去耐性は強固そのものだ。
「……それでも、先ずは止めるよ。S・トリガー発動」
それでも照陽は揺るぎはしない。
太陽は──まだ、沈んでいないからだ。
S・トリガーによる逆転は、デュエル・マスターズの王道である。
「S・トリガー発動、《忍蛇の聖光
除去できないならば止めてしまえば良い。
一見、絶望的な状況でも光明があるならば天戸照陽は諦めはしない。
「ッ……止められタ!! デモ、シールドはゼロ!! 場にはクリーチャー1体ダケ!! 手札も1枚!! どうやって勝つって言うノ!?」
「……勝つさ。その為には先ず、引かなきゃいけない」
照陽は山札に手をかけた。
幸い、《蠅の王》の効果によってマナは十分にある。
(このドローは激しく重い……でも……僕は引いてみせる……ッ!! 此処で引かなきゃ、男が廃るッ──!!)
──強者のドローは、いつも「必然」がある。
この日、天戸照陽は見事にそれを手繰り寄せてみせた。
妹の顔が過る。
必ず乗り越え、そして助けるべき家族の顔が。
「──ドローッ!!」
未だ、陽は沈まず。
手札に来たカードを見て照陽は笑みを浮かべた。
「単純明快だ。そう、単純明快な話だッ!! 此処から僕も始めてみせよう──3マナで《魔誕の悪魔 デスモナーク》を召喚!!」
「ッ……ウソ、引いタ!?」
《魔誕の悪魔 デスモナーク》は登場時に進化クリーチャーまたはNEOクリーチャーを手札に加える効果を持つ。
照陽は手札に加えたそれを、すぐさま《デスモナーク》に重ねた。
「更に3マナ──火、光、自然──《デスモナーク》からNEO進化」
迸るは紫電。番う稲妻。
「さあ、勝負を始めよう。《