デュエマプレイヤーは「カードが全ての学園島」で成り上がるそうです。   作:タク@DMP

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第9話:暴覇斬空、荒れ狂う

 ──天下無双の二刀龍が今、現代に蘇る。

 伝説のサムライ、《ボルバルザーク・紫電・ドラゴン》。

 その名を受け継いだ、新たなる伝説が今幕を開ける。

 

「ま、マズい、そいつは確か──ッ!!」

「《暴覇斬空SHIDEN-410》は下のカードの枚数だけ、パワーが上昇する。今は1枚だから、パワーは+2000」

 

《暴覇斬空SHIDEN-410》 光/自然/火 コスト3

G-NEOクリーチャー:アーマード・ドラゴン/テクノ・サムライ パワー4000+

・下のカードの枚数×2000だけパワーが上がる。

 

「そして、《SHIDEN》はパワーが6000ごとにシールドを1枚追加でブレイクする。今はシールドを2枚ブレイクできる」

 

 澪音の顔が蒼褪めた。

 澪音のシールドは残り3枚。

 そして今の《SHIDEN》の下にはよりによって《デスモナーク》が重なっている。

 

(《デスモナーク》!! アイツは確か、超魂Xを持つ──ッ!!)

 

 その効果は単純明快。

 《デスモナーク》が重なった進化クリーチャーは、攻撃の終わりにアンタップするのだ。

 つまり、このままでは《SHIDEN》の攻撃だけでシールドを削り切られてしまい、《忍蛇の聖光 c0br4(コブラ)》にダイレクトアタックされて負けてしまう。

 しかし──

 

(デ、デモ!! だから何!? このデッキにはG・ストライクが何枚も搭載されてル!! 1枚でも引けば、止まるワ!!)

 

「《SHIDEN》で攻撃する時、効果発動。山札の上から2枚を表向きにして《SHIDEN》の下に重ねるよ」

 

(《SHIDEN》の下にはカードが3枚ッ!! まだパワーが10000!! シールドは2枚しかブレイクされなイ!!)

 

 表向きになる2枚のカード。

 1枚目は《無頼BEN-K1000》。

 そして2枚目は──

 

 

「──《場和了GO-YAMA-58》ッ!! これで、《SHIDEN》のパワーは+6000されるッ!!」

「ッ……え、あッ……!?」

 

《場和了GO-YAMA-58》

超魂X:構成カードが3枚以上の時、パワーを+6000してパワードブレイカーを付与する。

 

 

 

 

 従って《暴覇斬空SHIDEN-410》の現在のパワーは16000──

 

 

 

 澪音の余裕は一気に打ち砕かれた。

 《SHIDEN》の斬撃が彼女の残るシールドを全て叩き斬る。

 バラバラになったシールドからは、G・ストライクを持つ《ニャハン》が見えた。

 だが、攻撃の終わりにアンタップする《SHIDEN》と《c0br4》がアタッカーとして残っている以上、1枚のG・ストライクでは止められない。

 

「どんなツキの仕方、してんノよ……!? 折角、G・ストライクを捲ったのニ……ッ!! これじゃあ、結局私の敗けじゃなイ──ッ! こんな運命、認めないッ!!」

 

 否。

 有り得ない事など有り得ない事は澪音が一番分かっていた。

 目の前の少年はイカサマなどしていない。

 ウソ偽りなく、真正面から勝負を挑み──細い線を手繰り寄せて勝利を掴んだ。

 ただ、それだけの話なのだ。

 

(裸を覗かれタッ!! オマケに公衆の面前で敗北を晒されタッ!! 私が同じ相手に二度も屈辱を──まさか)

 

 ドッドッドッと心臓が高鐘を打つ中、澪音の目は照陽に釘付けになっていた。

 

(運命、運命、運命……まさか、この男が運命……!? そんなの、絶対にありえなイ……!!)

 

「──《暴覇斬空SHIDEN-410》でダイレクトアタックッ!!」

 

 《SHIDEN》の斬撃が剥き身の澪音を叩き斬る。

 勝負は決する。

 一瞬の沈黙が会場を包み込んだ。

 そして──

 

 

 

「対戦……ありがとう、ございました」

 

 

 

 ──緊張の糸が切れた照陽が酸欠になりかけながら言い放つ。

 歓声が、会場を包み込んだ。

 

(G・ストライクがあったのか……二度とこんな心臓に悪い試合はゴメンだ……)

 

 只管、紙一重としか言えない試合だった。

 鉛ハジキとの戦い以上に、最後は全てが綱渡りだったのである。

 放心しそうな照陽だったが──

 

「う、運命……キュ、キュウ……」

 

 先に澪音の方があまりのショックで膝を突き、天井を仰いだまま魂が抜けてしまうのだった。

 

 

 

 ※※※

 

 

 

「おめでとう少年。いやぁ、ヒヤヒヤしたねェ?」

「……此処に来てから楽な試合なんて一つも無かったですけど……今回のは飛びぬけてヤバかったですよ。リソースを残せない状況で全体除去喰らいましたから」

 

 試合が終わった後──照陽は理事長室に呼ばれていた。

 未だに生きた心地がしない彼は溜息をつく。

 ギリギリの戦いだった、としか言いようがない。

 

「結果は後々発表されるだろうが、まあ合格だ。六禍仙に通用する腕であることを君は証明した。特待生入りは堅い」

「トリガーと引きが奇跡的にかみ合ったから良かったものを、殆ど負けでしょ、アレは……」

「まあ殆ど負けだろうな。だが、()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()のは少年だろう?」

「そうですけどね……バクチでしたよ。殆ど賭けのようなものだ。ゼニスデッキは──クリーチャーのトリガーを止めるカードが無い。それに賭けたんです」

 

 尤も、それでも尚多段攻撃とハンデスで最大限のケアをされ、危うく敗北しかけたのである。

 単なる力押しではなく、持てる手札で最大限相手を追い詰めてくる。六禍仙の恐ろしさを嫌でも思い知らされる試合だった。

 

「……それで、白銀さんの具合は?」

「ハッ、良い薬だ。最近あいつは勝ちすぎて天狗になっていたからな。真っ白になった顔で寮に戻っていった」

「ええ……でも、試合が終わったらノーサイドですよ。ちょっと心配だ」

「いずれにせよ、手続きは此方の方で進めておく」

 

 手を振り──理事長は椅子に座り込んだ。

 いずれにせよ照陽は、無銘学園というこの世界での拠点を手に入れた。

 だが、それでも1つだけ疑問が残る。

 あまりにもこの状況は照陽にとって都合が良すぎるものだった。

 それを手放しで喜ぶ程、照陽はお人よしではない。

 

「理事長は──どうして僕の事を助けてくれるんですか?」

「うん?」

「幾らその手の知識があると言っても違う世界から来た僕を助けて自分の学園にまで入れてくれる。見返りが欲しいなら早めに言ってほしいんですがね」

「ククッ。流石に敏いな。少年──運命、というものを君は信じるか?」

「運命──」

 

 照陽は首を横に振った。

 

「そんなもの、僕は信じません。だって勝負は最後まで分からないじゃないですか」

「……そうか。そうだな。君はそう言うと思った。いや、良い。聞きたかっただけなんだ。忘れてくれ」

「……?」

「私はカードの精霊とそれを扱う人間に強い興味を持っている。彼らは──カードに愛され、時に望んだカードすら手繰り寄せる。所謂──”主人公補正”かな」

「それこそオカルトだ。望んだカードをいつでも引けるなら、デュエマは面白くない」

「そうだろうな。仮にそんなものがあったとして、精霊はどうして人間にそのような加護を与える? 私は──カードの精霊がどういうものか解き明かしたい」

 

 照陽はボルメテウスのカードを手にした。

 精霊が宿っているはずのそのカードは口を利きはしない。

 常に「お守り」として彼の傍にあるだけだ。

 

「言った筈だ、君は貴重なサンプルなんだよ。異世界人であり、カードの精霊を最初から手にしていた。貴重なサンプル」

「……僕も知りたい。どうしてボルメテウスが僕に力を貸してくれるのか」

「そういうわけだ。我々は協力関係なんだよ。君がどういう道筋を辿るのか──是非、私に見せておくれよ、照陽君」

「……」

 

 要領を得ない答えだったが、一先ず照陽はそれで納得する──

 

(いや、助けてもらってて悪いけど、絶対怪しいなこの人も……何だかきな臭いぞ)

 

 ──はずもないのだった。

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