銀麗の魔女   作:龍翠

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   ・・・・・

 

 誰が悪いのかと言えば、それは間違い無くソフィアでしょう。ここで探してもらおうと決めた時に、もう少しこの近辺を調べれば良かったのです。そのためフェンリルの気が治まらないなら、自分なら魔力でどうにでもなるので、気が済むまで殴らせようかな、とも思いました。

 でも、スピカたちに手を出すつもりなら話は別です。大事な友達です。万が一にも、傷一つつけさせるつもりはありません。

 故に久しく本気です。

 

 師匠譲りの、普段は抑えている魔力を解放。自然と、体にもっとも馴染んでいる魔力の色に染まります。これを見られるのは少し恥ずかしいですが、スピカがきれいだと言ってくれたので、むしろ好きになりそうです。単純です。

 その魔力で呼び出したのは、四聖獣と呼ばれる最上位精霊、“闘将”白虎。ソフィアの友達の精霊で、というより全精霊の中でも最高戦力とも言える子です。

 

 ずん、と腹の底から響くような音と共に、巨大な真っ白の虎が降り立ちました。その体は大きく、一般的な家よりもさらに大きな体です。威圧感もすさまじく、何も知らなければ見ただけで気を失ってしまいそうです。

 つまりは。

 

「きゅう……」

「ああ! フェルトちゃん! 気をしっかり! 水! 水をぶっかけないと!」

「落ち着いてスピカ! というより意外と豪快だね!?」

 

 大混乱です。

 

「ソフィアちゃん! もう少し考えて呼び出して!」

「へ!? あ、ご、ごめん! ごめんなさい!」

 

 珍しくスピカが本気で怒っています。助けるつもりがむしろ加害者に回っているのだから当然でしょう。あわあわと慌てる女の子二人。とりあえず落ち着けと、けれどこちらも右往左往の少年一人。

 白虎はその子供たちの様子を微笑ましく思いながら見つつ、そうして口を開きました。

 

「お嬢」

 

 腹の底から響く重低音。とても渋いお声です。

 

「あ、白虎! ごめんね、友達が怖がっちゃって……!」

「それは構わんよ。仕方あるまい。こやつはどうする? 戦意はないようだが」

 

 え? と振り返れば。エリアキーパーのフェンリルはその場に這いつくばり、戦意がないアピールをしていました。顔は恐怖一色です。

 

「えっと……。どうしよう? 私、一応この子に攻撃されたんだけど……」

「なんだと!?」

 

 白虎の周囲が揺らぎます。白虎から立ち上る濃密な魔力が景色を歪ませているようです。威圧感が五割増しです。

 つまりは。

 

「ああ! フェルトちゃんが! 泡吹いてる!」

「わああ! ばか! 白虎のばか! フェルトちゃんが死んじゃう!」

「あ、す、すまん。ほれ、エリクサーだ。これを使え。俺も魔力を抑えるから」

 

 大混乱です。

 とりあえずフェンリルは思いました。

 いっそひと思いに殺ってくれ、と。

 

   ・・・・・

 

 あれから随分時間が経って、ようやく落ち着いたところで、ソフィアが代表してフェンリルに事情を説明しています。スピカはそれを、もふもふの中から見つめていました。

 スピカたちは今、とても大きなもふもふの、つまりは白虎の背中に乗っています。落ち着いたところで白虎を見ると、とても柔らかそうな毛並みだったのです。こっそり足に触ってみると、そこもふわふわで。ソフィアに触っていいかと聞いてみると、乗っていいよという答えでした。

 これに白虎は怒るどころか、むしろ進んで身をかがめてくれました。それでも高すぎて乗れずに困っていると、大きなふわふわの尻尾で器用に乗せてくれました。もちろんフェルトとラークも一緒です。

 

「もふもふ……」

「もふもふですね……」

「これはくせになるなあ……」

 

 三人でごろごろ白虎の背中を転げ回ります。それを肌で感じている白虎は、少し呆れつつもどこか嬉しそうでした。

 

「お嬢にお前らのような友達ができていて、俺は嬉しく思う」

 

 白虎の声が聞こえます。スピカが体を起こして言います。

 

「お嬢って、ソフィアちゃんのこと?」

「そうだ。銀麗の弟子だからな。我らはお嬢と呼んでいる」

「え……? ソフィアちゃんが銀麗の魔女じゃないの?」

「ん? ああ……。先代のことだ。我らは代替わりする前から銀麗の魔女に使役されているからな」

「ソフィアちゃんって二代目だったんだ……」

 

 知らなかったな、と思うのと同時に、どこか納得もしました。スピカに青の魔法を教えてくれた先生は、外見を大人の女性のような言い方をしていました。きっとそれは、先代のことだったのでしょう。

 

「ソフィアちゃんが銀麗の魔女……。もしかして、お父様たちはそれに気が付いていて……?」

 

 フェルトがぶつぶつと独り言を言っています。今までの情報を整理しているようです。フェルトはソフィアが銀麗の魔女だと知らなかったようなので、未だ少し混乱しているようでした。

 

「お話終わったよー!」

 

 ソフィアが呼ぶ声が聞こえます。再び白虎の尻尾で地上に降り立ちます。

 

「今回は見逃してくれるって。話の分かるフェンリルで良かったよ」

「話が分かる……?」

 

 ちらりとラークが白虎へと振り返ります。何を言いたいのか察したソフィアが笑顔で言いました。

 

「何か?」

「いや何でも無いです」

 

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