銀麗の魔女   作:龍翠

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 触るだけでは満足できなかったのか、いつの間にかスピカがヴェノムに抱きついています。体全体でそのひんやりすべすべを堪能しているようです。スピカの表情がだらしなく緩んでいて、見ているこちらが和みます。

 

「こうして大人しいドラゴンを見ていると、これはこれでかわいいかもしれないわね」

 

 特にスピカという女の子とのコンビがいいです。絵になります。

 

「でもドラゴンですよ。これってもしかして、ミオさんが今のところ冒険者で一番強くなってませんか? あのドラゴン、今のところ冒険者は誰も勝てないでしょうし」

 

 それはそうかも、と言おうとしたところで、

 

「そうでもないよ」

 

 ソフィアが首を振りました。

 

「使役しているモンスターも冒険者の実力のうちなら、多分まだスピカが一番だと思うよ。鑑定魔法を使えるなら、あのウルフにしてみるといい」

 

 不思議に思いながらも、言われた通りにスピカがいつも連れているウルフに鑑定をしてみます。

 そして、絶句しました。

 

「なにこれ……。ミニリル? ステータスがずば抜けてる……」

「ドラゴンでも桁違いだったのに……。ああ、つまりスピカちゃんがウルフに乗れるのは、実はウルフじゃなかったから、なんですね」

 

 どこで使役したのか気になるところでもありますが、きっと銀麗の魔女絡みなのでしょう。答えて貰えないだろうことに悲しくなりますが、それは仕方がないことだと分かります。

 やはり普通のウルフでは無理なのか、と思っていると、

 

「うん? スピカがあの子に乗ってるのは、進化前からだけど」

 

 ミオが凍り付きました。

 進化前。つまりはあのミニリルというモンスターも、最初はウルフだったようです。そしてスピカはそのウルフの時から乗っている。やはり、何か方法があるのでしょう。

 

「あの……。どうやれば乗せてもらえるかな……?」

「乗りたいの?」

「是非……!」

 

 テイマーになった以上、やはりウルフに乗るというのは憧れがあります。狼に乗って移動する主人公たち。映画の中での光景は、とても格好良いものでした。それを自分ができるかもしれないと思うと、乗りたいと思うのも当然でしょう。

 

「ふうん。そっか」

 

 ソフィアは鷹揚に頷くと、待機しているミオのウルフたちに近づきます。そして彼らの耳元で、小さな声で何かを言いました。

 

「これでいいよ。乗せてくれるって」

 

 そんなばかな、と思いながらも、側のウルフに乗ってみます。

 つまりは。いとも簡単に乗れました。

 

「ええ!?」

 

 驚くミオに、ソフィアが淡々と答えます。

 

「ウルフたちは自分の主だからとすぐに仲良くなれるわけじゃない。信頼関係がしっかりとしていれば、乗せてくれるよ。まあ、使役する時に攻撃していると無理だと思う」

 

 ウルフにのる条件。それは信頼関係を勝ち取ること。もしくは、攻撃せずに使役すること。聞いてみれば納得できる、とても単純なものでした。

 

「それじゃあ、無事に解決したし、私は行くよ」

 

 ソフィアがそう言いました。どうやらお別れの時間のようです。

 

「スピカちゃん。私はそろそろ行くからね」

「あ、うん! またいつでも呼んでね!」

 

 ドラゴンに抱きついたままスピカが答えます。いつまでやっているのでしょう。

 同じことを思ったのでしょう、ソフィアが少し呆れながらも、らしいなとばかりに笑っていました。

 

「それじゃあ、協力ありがとう。このお礼は、いずれ必ず」

 

 そう言って、ソフィアが姿を消しました。転移魔法、羨ましい。

 あとに残されたミオとレナは、スピカへと視線を向けます。満足したのか、ドラゴンから離れたところでした。満足満足、と嬉しそうなスピカはどこかつやがあるように見えます。

 

「動物。好きなんだね」

 

 ミオの言葉に、スピカはもちろんと大きく頷きました。

 

 

 

 その後、せっかくだからとミオとレナはスピカとフレンド登録をしました。今、ミオのフレンドリストにはスピカの名前がしっかりと刻まれています。

 ミオはヴェノムと一緒に歩きながら、いつも見ている掲示板に書き込みをしました。内容はシンプルに、ウルフ少女とフレンドになりました、という報告。

 そして巻き起こる阿鼻叫喚に、ミオは勝ち誇った笑みを浮かべました。

 不意に一つの書き込みが目につきます。プレイヤーの情報をくれ、というもの。

 

「はは。教えるわけないでしょ、ばーか」

 

 同じことを書き込みながら、鼻で笑います。

 友達を売るようなこと、するはずがないのです。

 

   ・・・・・

 

 ふんふんふん、とスピカの鼻歌が森の広場に小さく響きます。スピカの目の前にはたくさんの動物が並んでいます。皆、行儀良く座って待ってくれています。

 スピカがしているのはブラッシングです。始まりの町で購入した小さなブラシで、一匹ずつ丁寧にブラッシングしています。どの子も気持ち良さそうにするので、スピカとしても嬉しいものです。

 ウルとラビはそんなスピカを襲うやつがいないかと、常にスピカの隣で監視しています。

 わふ、とブラッシング中のウルフが言います。スピカは頬を緩めて、

 

「機嫌良さそうに見えるの? うん。いいことがあったんだよ」

 

 わん。

 

「友達が増えたの。なんとドラゴンのテイマーさん! かっこいいドラゴンだよ」

 

 わふ?

 

「怖くない怖くない。鱗がすべすべで気持ち良かった。今度、ここに誘ってみるね。来てくれるかなあ」

 

 にまにましつつ、鱗の肌触りを思い出します。この子たちのもふもふもいいものですが、すべすべもいいものです。機会があれば、スピカもドラゴンと友達になりたいものです。

 あのドラゴンは、最初はスピカと契約しようとしていました。それを受け入れても良かったのですが、あの時にスピカがしたことは、逃げることだけでした。やっぱりドラゴンには、勇敢な人が似合うというものです。

 

「はい、終わり。次の子どうぞー」

 

 みんなのブラッシングというとても幸せな時間の中、スピカは新しい友達のことを思い出して、また嬉しそうに笑いました。

 

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