銀麗の魔女   作:龍翠

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「するわけないでしょ! ……ちなみに、念のため聞くけど、いじめちゃった場合は?」

 

 もちろんミオにそんなつもりがないことは、ここにいる全員が知っています。ただ、やはりプレイヤーの人数が多いとそういうことも起きるでしょう。ソフィアは頷いて、

 

「追放」

 

 そう短く言いました。補足として、島からの転移で始まりの町に強制転移させるそうです。それはつまり、そのプレイヤーにとってのイベントの終了。イベントの邪魔をしたのだから当然の罰則でしょう。

 

「よく分かったわ。こちらの連絡手段で冒険者全員に広めておいてもいいかしら」

「ん。むしろお願いするよ」

「お願いされたわ」

 

 ミオが引き受けてくれたことに、ソフィアはどことなく満足そうです。これなら馬鹿なことをするプレイヤーはきっと少なくなるでしょう。

 その後、ラークとミオ、レナの三人はふれあいコーナーで動物たちをたくさん撫でてから帰っていきました。

 

 

 

 ソフィアが作ってくれたスープを食べ終えて、三人一緒に仲良く眠った翌日。あの湖の側に秘密基地を作る計画を三人で立てていると、ついに冒険者一行が広場に姿を現しました。祝、初冒険者。

 

「ここが掲示板にあった広場か」

「地下迷宮とかわくわくするな!」

「私はむしろふれあいコーナーかなあ。もちろん後ででもいいけどさ」

 

 最初のお客様は四人です。男二人、剣士とタンク役。女二人、身軽そうな人と魔法使いのような人。その四人はほこらの前に立つソフィアを見て、動きを止めました。

 

「え、まさか……」

「銀麗の魔女?」

 

 驚く四人へと、ソフィアは言います。

 

「ここには何をしにきたの?」

「え? あの……。ダンジョンを攻略しに……」

「そう」

 

 ソフィアは頷くと、困惑する彼らへと続けて言います。

 

「ここの地下迷宮は三層構造。どの層も他のダンジョンよりとても広いから気をつけて。層ごとの入口に休憩部屋があるからうまく使ってね。休憩部屋の転移の魔方陣はこの広場への片道の転移で、途中からの再開はできないから気をつけること」

 

 どうやらソフィアの仕事はダンジョンの説明のようです。プレイヤーの皆さんは驚きつつも、真剣な表情で聞いています。さすがの切り替えの早さです。

 

「なるほど。ちなみに、このダンジョンを攻略すると、何かいいものがあるのか?」

 

 剣士が聞いて、ソフィアが頷きます。

 

「三層目に宝箱がたくさんある。宝箱には武具が入ってる。数に限りがあるので早い者勝ち。ただし、人数分の武具を宝箱から取り出した時点でここに強制転移」

「ふむ。自分の使わない武器なら宝箱から取り出さずにふたを閉めろってことか」

「ん。理解が早くて助かる」

「その武具の性能は?」

「むかーしの人が優秀な武具を封印した。きっと満足できるはず」

「へえ!」

「という設定」

「ちょ」

 

 付け加えられた言葉にプレイヤーの皆さんが頬を引きつらせます。聞きたくなかった、と口々に言いますが、それでも四人とも笑顔でした。

 ありがとう、とお礼を言いながら、プレイヤーたちがほこらへと入っていきます。それを見送ってから、ソフィアは頷きました。

 

「終わった」

 

 ひょっこりと、スピカとフェルトが顔を出します。

 

「ねえ、ソフィアちゃん。設定は言わない方がいいよ?」

「ん? そう、かな?」

 

 ソフィアに悪意がないのは分かりますが、あまりそれを聞きたくないというプレイヤーが必ずいるでしょう。今回は四人とも笑っていましたが、次もそうとは限りません。スピカがそれを簡単に説明すると、そんなものかと納得してくれたようでした。

 

「じゃあ、次は黙ってる」

「うん」

 

 その後から冒険者のパーティが来るようになりました。誰もがソフィアに驚き、説明を受けて、そして迷宮へと潜っていきます。未だ帰ってきた人はおらず、ソフィア曰く最初の人たちですら未だ二層目だそうです。

 冒険者以外にも、ふれあいコーナー目当ての人も増えてきました。たくさんの人が柵の中で動物たちと戯れています。みんな楽しそうです。

 

 スピカとフェルトはテントの中から見ていました。二人の側にはウルやリルがいます。ソフィアの仕事を見守りながら、自分たちの子をもふもふしていました。ウルたちも嬉しそうです。

 お昼前になって、ソフィアが唐突に地面に魔方陣を書きました。突然の行動に、ふれあいコーナーにいた人がちらちらとソフィアを見ています。ソフィアが魔方陣を書き終えると、ぼふんという音とともに看板が増えました。

 その看板を確認して、ソフィアは満足そうに頷いてテントの方まで戻ってきました。

 

「ただいま」

「おかえり。お仕事はもういいの?」

「ん。看板に全部書いているはずだから大丈夫」

 

 先ほど魔方陣で出した看板のことを言っているのでしょう。どうやらソフィアが説明しなくても、看板を読めば大丈夫のようです。

 

「あれ? じゃあ最初説明してたのは?」

「ただの雰囲気作りだよ」

「うわあ……」

 

 聞きたくなかった裏話。スピカとしてはソフィアたちと遊べれば満足なので構わないのですが。

 お昼ご飯は今から準備すると時間がかかるので、町に食べに行くことになりました。ソフィアの転移で町の側に移動、三人で入ります。もちろんウルやリルも一緒です。

 三人が町に入った瞬間、なぜか一瞬静かになりました。周囲の視線がスピカたちに突き刺さります。が、もうそれにも慣れたので気にせず歩きます。

 

 スピカが案内したのは、昨日ミオたちと訪れた飲食店です。このお店は広い庭があって、綺麗に咲いている花に囲まれたお庭で食べることができます。

 三人が頼んだのはチーズがたっぷりと使われたピザです。とても大きなピザなので、自分で食べる分を確保した後はウルたちにあげます。地面に置かれた皿から、ウルたちは嬉しそうにピザを食べ始めました。

 

「ソフィアちゃんは、ダンジョンの前にずっといないといけないの?」

 

 たくさん遊ぼうと勝手に考えていたスピカとしては、とても残念です。残念ですが、ソフィアも仕事なので無理は言えません。

 ですがソフィアは否定して首を振りました。

 

「別にそういうわけでもないよ。時折顔を出せば十分だって言われてるから」

「そうなんだ……」

 

 ただ今日は冒険者がダンジョンに入っていく初日ということもあり、食べ終わったら戻るとのことでした。その代わり明日からはもっと自由な時間を増やすとのことです。

 結局その後は、スピカはフェルトと一緒に湖でのんびり遊ぶことにしました。

 

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