ARMORED CORE 2199〜ルビコンの戦士たち〜   作:ルビコン侍

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※内容を一部変更しました。


第二話『カエサル第三惑星調査:2』

 

 現れた二隻の大型艦艇が迫ってくる。

 シュルツは敵艦の威容を確認した。艦首がハンマーのように膨れ上がったその艦影は、距離と艦影から推測するに、全長はガイデロール級とほぼ同等かそれ以上と見られる。

 武装も見える限り大口径の砲塔を二基、艦首方向に背負式で搭載しており、さらには多数のVLS発射管や、未知の武装なども見受けられる。

 しかも、二隻一組で並走しているのを見るに相当な練度と見えた。

 

『惑星封鎖機構より、ルビコンに不法侵入した艦隊に告げる。直ちに武装を解除し、封鎖圏外へと退去せよ』

 

 対峙するザルツ旅団のシュルツ大佐は、二隻の艦を前に様子を窺っていた。相手の船から未知の言語で警告らしきものが発せられている。

 

『繰り返す。封鎖圏外へと退去せよ。これ以上の進駐は……』

 

 同じ言葉が二回連続で発せられたのを、シュルツは見逃さなかった。

 これは警告だ。しかも繰り返し行われるタイプの機械的なもの。シュルツは艦橋にいる部下に、言語の分析結果を聞き出す。

 

「どこの言葉だ?」

「はっ……銀河系外縁部、テロン星の準公用語と思われます」

「テロンだと……?」

 

 テロン星、確か銀河系の外縁部に存在する田舎のような星だったはずだ。

 天の川銀河へ旅立つ前に見たデータベースによれば、数百年前から観測されているという知的生命体のいる星に数えられていたはずだ。

 流石に記憶にとどまるほどの奴らではないと思っていた。まさか、こんな辺境の星にまで出張ってくるほどの技術力があったとは。

 

「同じ言語でこちらも勧告しろ」

「はっ」

 

 とにかく、相手の勧告にはこちらも返さなければならない。

 幸いにも、相手が放った言葉はガミラスが大昔から観測していた言語だった。

 翻訳は容易に済んでおり、ガミラスが天の川銀河系へ旅立つ際に役立つデータベースとして記録されていた。

 それを用いて、テロンの艦隊へ向け降伏勧告を打電した。

 

『テロン艦隊へ告げる。直ちに降伏し、武装を解除せよ』

 

 ザルツ旅団が降伏を促すが、相手の二隻は止まらない。

 両者の艦隊は、それほど遠くない距離ですれ違おうとしていた。シュルツの額に汗が滲み始める。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『コード31。敵艦隊から降伏勧告を受けてる』

「……奴らめ、やる気か?」

 

 相手からの降伏勧告を受けた〈ムラサメ〉の艦内では、緊迫した空気が流れていた。

 相手が不明な戦力である以上、なるべく刺激は避けてルビコン星系からご退去願いたいが、相手は止まる気配なく、しかも逆に降伏勧告を受けてしまった。

 これが非常にまずい。惑星封鎖機構のシステムは、これを相手からの宣戦布告、もしくはそれに準ずる行為だと見做しかねない。相手を刺激しないようにするこちらの意図とは全くの逆方向だ。

 そんな風に考えていた大吾に対し、オペレーターの一人がこちらを横目に不安そうにあることを口を開いた。

 

「あの船、まさか宇宙人の船だったりしませんよね……?」

 

 オペレーターの懸念は、大吾も同じだった。

 この広い宇宙だ。未だ出会っていないだけで、未確認の地球外知的生命体が居るかもしれない。

 敵艦の陣容が未確認なのはその可能性が否定できない。だとすればこれは、ファーストコンタクトということになる。

 

「……もしそうだとしても、侵入者は侵入者だ。俺たちはシステムの判断を仰ぐしかない」

 

 だが大吾達執行官には、自ら考え行動する権限がない。

 惑星封鎖機構はAIシステムによって運営されており、艦隊の運用も執行対象への攻撃の是非も、全てシステムが握っている。すなわち人間は介入できない。

 まさか、宇宙人とのファーストコンタクトでも、AIはお堅いアルゴリズムに従って攻撃を命令するつもりだとしたら……

 

「艦長。システムから発砲許可が降りました。応戦し、これを排除せよとのこと」

 

 そのまさかだった。

 大吾の懸念は当たってしまった。彼の額に冷や汗が滴る。

 

──どうやら宇宙人とは友達になれなささうだ。

 

 大吾は覚悟を決めた。

 そして艦長の帽子を被り直し、オペレーター達に命令を下す。

 

「……了解した。二番艦"ハグロ"と共に隊列を組め。主砲のショックカノンで砲戦を行う」

「了解です。正面砲撃戦、用意!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 突然、艦内に警報が鳴り響いた。

 それは敵艦からレーダー照射を受けている事を警告するものだった。

 

「敵艦からレーダー照射を確認!」

 

 つまり、戦闘は避けられない。相手は降伏感覚に従わず、戦うというのだ。

 ガンツは呆れたように口を開いた。

 

「やる気のようですな」

「勧告は無視された。全艦、発砲を許可する。砲撃せよ!」

 

 こうなればガミラス側の思う壺だ。

 ガミラスは侵略の口述として、相手を挑発して発砲されるのを誘うことが多い。今まで抵抗してきた文明も、相手から発砲してきては叩きのめされていた。

 シュルツは馬鹿な奴らだと思った。異星人との接触、しかも一番大事なファーストコンタクトでこちらをロックオンし、戦闘を決断するとは、愚かしいにも程がある。

 自前でワープ技術を持っていたのは意外だったが、今までの敵と同じく武力で制圧してしまえばいい。ついでにあの第三惑星まで手に入るなら一石二鳥だろう。

 

──今までと同じ敵ならば。

 

 これがガミラス人やザルツ人の知っているような文明なら、容易く屈せられただろう。そういう意味では、テロンと呼ばれる人々は一味も二味も違っていた。

 

「敵艦発砲!」

 

 敵が青い閃光と共に、砲塔に搭載された三連装の主砲を一斉射してきた。

 それらは渦を描きながら直進し、一本に収縮して最前列にいたクリピテラ級航宙駆逐艦へ向かっていった。

 

 その瞬間、青白い閃光はクリピテラ級を貫通した。

 

 爆発が起きた。駆逐艦ながらも実弾やレーザー火器に対して一定の防御力を持つはずのクリピテラ級が、一撃でひしゃげて轟沈した。

 轟沈したクリピテラ級は、跡形もなく粉々になって宇宙空間を漂っていた。そして艦隊の後方へ破片が流れていく。

 

「なんだと……」

「こ、こちらの船を一撃で……!?」

 

 ガンツは駆逐艦を一撃で貫通する未知の武器に対して目を見開き、そんな言葉を漏らした。他の部下たちからも素っ頓狂な声が上がる。

 それもそうだ。今までマゼラン銀河で駆逐艦ですら無敵を誇ったこちらの船の装甲が、最も容易く貫通されたのだから、狼狽しないわけがない。

 

「狼狽えるな!相手はたかが二隻だ。砲撃の手を緩めるな!」

「は、はっ!」

「駆逐戦隊を前に出して牽制しろ!魚雷戦を試みる!」

 

 狼狽するガンツに対し、シュルツの判断は早かった。

 その言葉を聞き、シュルツの部下たちはすぐさまその通りに動いた。クリピテラ級が前に出て、相手を囲い込むように両翼から接近する。

 正面からの砲撃戦は分が悪いだろう。ならばガミラスが最も得意とする機動戦を持ってして、あの二隻を葬る。

 

「よし、本艦の魚雷も使用する!メルトリア級二隻と共に一斉射撃!」

「了解!魚雷発射用意!」

 

 シュルツの号令により、二隻のメルトリア級航宙巡洋戦艦が〈シュバリエル〉と並列に並んだ。

 そして艦首に備え付けられた魚雷発射管を開く。

 

「発射!!」

 

 その瞬間、三隻の船から数十本にも及ぶ魚雷が放たれた。牽制として放たれたそれは、確実に二隻の大型艦を飲み込もうと迫った。

 だが狙われた敵艦二隻は、即座に迎撃を開始。いくつかの魚雷をレーザー砲で撃ち落とした。

 それでも掻い潜ってきた魚雷が、後少しで当たるという時、敵艦の艦首からいくつもの眩い光が迸った。

 

 その瞬間、前方の魚雷が一斉に爆ぜた。

 

 どうやら相手の艦首には、複数の砲門が搭載されていたようだった。

 そこから放たれた光線により、正面から放った魚雷の全てが撃墜されたようだ。どうやら迎撃制度もいいらしい。

 

「……ドメル将軍殿のようには上手くいかんか」

 

 かつての上司であり、手堅い軍人だった人物の名を独りごちる。

 彼なら何かしらの工夫をして魚雷を何番かは命中させていただろう。どんな方法があるのか、まだシュルツは理解しきれていないが、彼ならやれるだろう。

 

「敵艦上方より、こちらの駆逐戦隊が接近します!」

 

 部下の報告を受け、シュルツは思考を切り替える。

 そして、敵艦の上方から迫る四隻の駆逐戦隊にたいし、祈るような気持ちでそれを眺めた。

 敵艦は上部の武装を持ってして迎撃にあたる。いくつもの光線がクリピテラ級を掠めるが、それらのレーザー光線を華麗に避け、ついに魚雷を放った。

 クリピテラ級二隻が敵艦に向けて放った魚雷は、およそ数十本。

 敵艦は即座にVLS発射管から迎撃ミサイルを放つが、間に合わなかった。

 魚雷は艦橋らしき構造物を直撃した。

 その結果、敵艦は動力炉に引火したのか一撃で爆散した。

 

「敵艦一隻を撃破!」

 

 シュルツがよくやったと思った。

 だが次の瞬間、レーダーを見張っていた乗組員が悲鳴のような報告を上げる。

 

「ゲシュタムジャンプアウトの反応を多数確認!増援です!」

 

 シュルツは歯軋りをした。

 しかも、レーダー上の次元振動を見るに、増援は多数いる事が確認できる。たった二隻相手にこれだけ苦戦したのだから、何隻も来られるとまずい。

 シュルツはこれ以上の現有戦力の損害は許容できないと判断。すぐさまこう叫んだ。

 

「時間をかけ過ぎたな……撤退だ!現宙域から一時離脱せよ!」

 

 その言葉を受け、ザルツ旅団の艦隊は一斉に回頭。敵艦隊から離れ、ゲシュタムジャンプを開始した。

 閃光に彩られ、歪んだ空間へと船が突入していく。前方で戦闘をしていた駆逐戦隊も、一斉にゲシュタムジャンプを開始した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『コード23。現場に到着』

「"ムラサメ"より全艦へ、敵艦隊は撤退した。取り越し苦労だったな」

 

 強襲艦〈ムラサメ〉の艦内にて、冷や汗をかいていた大吾 執行一佐は、遅れてやってきた複数隻の増援に対してそう言った。

 すでに宙域に展開していた敵艦隊は撤退した模様であり、辺りには船の残骸が散らばっているだけである。

 

『了解した。現宙域での脅威の排除を確認。しかし……奴ら一体なんだったんだ?』

「詮索はシステムが行う。今は"ハグロ"の救助を優先しろ」

 

 大吾は撃沈された僚艦の〈ハグロ〉の救助を優先させるよう、増援の艦隊は指示。

 そして本人は艦長席を深々と腰掛け、帽子を外して一息ついた。

 敵の正体は分からないままだが、これで終わりではないだろう。

 今は休息をとり、システムが早めの結論を出してくれることを祈るしかなかった。

 




強襲艦がショックカノン撃ってきてるのは某南重工のせいです()
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