ARMORED CORE 2199〜ルビコンの戦士たち〜   作:ルビコン侍

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第三話『調査報告』

 戦闘の後、星域外にあるガミラス側の領域に撤退したザルツ旅団は、上司への報告を行っていた。

 そう、あのゲールに報告をしていたのである。

 

『何をやっとるんだ貴様らは!弛んどるのか!?』

 

 画面越しでも唾が飛んでいきそうな勢いで噛み付くこの小男が、シュルツの上司であるゲール少将だ。

 

『あんな少数の艦隊相手に遅れを取るとは……ガミラスの恥晒しめ!』

「……しかしゲール少将。敵艦隊はこちらを一撃で貫通可能な未知の兵器を有しており──」

『そんな言い訳通用するか!数ではお前らが上回っていたはずであろうが!』

 

 ガンツのフォローも虚しく、ゲールはさらに声を荒げ、シュルツを叱咤した。上司が叱責される様子に部下たちは見ていられない。

 

『しかもむざむざと撤退するなどと……!貴様ら、本国に帰還したら覚えておけ!』

「ゲール少将──」

 

 と、シュルツが何かを言いかけた途端に通信が切られた。

 シュルツはため息をついて頭を抱えた。

 

「……いかがなさいますか?」

「ゲール少将からの任務は情報収集だ。我々はそれに徹する」

 

 シュルツは頭を抱えながらも、任務を全うせんとそう言い切った。

 その時、艦隊内の通信が呼び掛けられたのを受け、シュルツは通信に出た。

 

「どうした、ヤレトラー?」

『司令、分かりましたぞ!あの星で何があったのか!』

 

 相手はヴォルト・ヤレトラー、ザルツ旅団の作戦参謀として知られる男だった。

 彼には情報収集を担当させていたはずだったが、どうやら成果を上げたらしい。

 資料が送られてくる。そこにはこの星系で得られた通信や回線から得られた情報がたくさん載せられていた。

 その記事の一つを見る。そこには"ルビコン3"と"コーラル"の単語が──

 

「これは……!」

 

 それを隅々まで読んだシュルツは、未知の物質の在処に身震いした。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

帝政ガミラス 帝都バレラス

 

 豪華で絢爛な装いの風呂場に、一人の男が疲れを癒していた。

 ここは帝政ガミラスの本拠地、帝都バレラス。その中心地に聳え立つ総統府の中にある風呂場。

 それもこの帝政ガミラスを統べる総統、アベルト・デスラーの個人的な浴室だった。

 彼が湯船に浸かり、寛いでいると、突然傍に置いてあった防水端末に通信が入った。

 

『総統閣下、お寛ぎのところ失礼します』

「どうした、タランよ」

 

 相手は総統の副官、タランだった。彼は相当に失礼のないよう、手短に要件を伝える。

 

『銀河方面の一部隊より、総統閣下に直接ご報告したいことがあるそうです。いかがなさいますか?』

「ほう……」

 

 デスラーはにやける。

 たかが銀河方面の一部隊が、ガミラスの総統たる自分に伝える要件とは、一体何事か。そもそも上官をすっ飛ばしているが大丈夫なのかとも思ったが、興味の方が優った。

 

「よろしい。繋げ」

『はっ』

 

 デスラーがそう言うと、タランが手元の端末を操作して通信を繋いだ。超空間通信により、天の川銀河にいるその部隊の司令官と繋がった。

 

『ガーレ・デスラー。お初にお目にかかります。私は銀河方面軍所属、ヴァルケ・シュルツ大佐です』

「……要件は?」

 

 型式の挨拶などどうでもいいとばかりに、デスラーはシュルツを催促する。

 

『は、はっ……我が方は銀河方面にて作戦行動中でしたが、その途中、奇妙な星系に立ち寄ることになりました。そこで我々は、ある新物質の情報を得たのです』

「ほう……?」

 

 新物質、と聞いてデスラーは少し興味が出てきた。

 この広大な宇宙、未知の物質は数多くあるだろうが、一体どんなものなのか。面白ければ使ってみようと、期待半分だが聞く気にはなった。

 

『カエサル星系第三惑星に、"コーラル"という物質があります。この物質は、エネルギー源となるだけでなく、情報伝達物質にもなるとか』

 

 デスラーの興味は維持されていたが、シュルツの言葉はこちらの反応を伺っているようだった。それが気に入らないので、催促するように言い放つ。

 

「……で?」

『し、しかも!それだけではございません!この物質は熱を発し、熱源、麻薬、食糧生産、果てには星の環境改造までできると──』

「っ……!今なんと言ったか?」

 

 デスラーは最後の言葉に食いついた。思わず風呂場から立ち上がり、水が跳ねる。

 

『はっ……ですから、様々な分野での応用の他、星の環境改造までも……』

「そうか、それは……それは面白い……!」

 

 デスラーが急に興味を持ち始めたのを受け、画面越しのシュルツは少し困惑したが、彼が何かを言う前にデスラーが指示を発する。

 

「……その星については、こちらの方でも調べさせてもらうよ。座標を送ってくれないかね?」

『は、はっ……こちらになります』

「ふむ……要件は以上のようだね。ありがとう。今後も軍務に励みたまえ」

『は、はいっ!ガーレ・デスラー!!』

 

 内容を確認したのち、デスラーはシュルツとの通信を切った。そしてそれを即座に、音声を聞いていたタランの方へ話題を流す。

 

「タラン」

『はっ』

「今の話をどう思う?」

『どうと言われましても……そのような万能な物質がこの宇宙に存在するなど、到底信じられませんが……』

「しかし、もし存在するとしたら?」

『……その場合、我がガミラスは永遠の発展を約束されるでしょう』

 

 コーラルの万能さが本当かどうかはわからないが、もしそのような物質が存在するなら、確かにガミラスは間違いなく発展するだろう。

 だが、デスラーの興味が惹かれているのはそこではなかった。

 

「タラン君。君の方でもカエサル第三惑星について調べてみてくれ。大至急だ」

『はっ……』

 

 デスラーに告げられ、タランは早速仕事に取り掛かった。通信が切られるのを見計らい、デスラーは湯船から立ち上がる。

 

「(コーラル……どのような物質かはわからないが、もしそれが存在するなら是が非でも手に入れたい……)」

 

 従者たちに体を拭かれながら、デスラーは考える。コーラルという物質、そしてその有用さを。

 

「(そしてそれは、全てのガミラス人の生存のために使う……!そうだ、この星の寿命が尽きる前に、第二のガミラス星を作るのだ……!)」

 

 デスラーは改めて、確かな決意を胸に抱いた。服を着替えを終えると、総統の印であるマントを羽織って、自分の玉座へと向かっていった。

 だがこの決意が、カエサル第三惑星──もといルビコン3──どころか、帝政ガミラスすら揺るがす大事件にまで発展しようとは、彼らも想像してすらいなかった。

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