ARMORED CORE 2199〜ルビコンの戦士たち〜   作:ルビコン侍

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早くドメルとウォルターの対談を書きたいとワクワクしてます。


第四話『特一等デスラー十字章授与式』

 

 とある星系、地球人類の歴史の片隅に。

 その施設はあった。

 

「また来たのか」

 

 扉が開き、闇医者が振り向きそう言った。

 対する杖をつく男は、その言葉を気にせず手術室へと入る。

 

「よくもまあ、飽きない事だ」

「…………」

 

 憐憫にも似た闇医者の皮肉が、胸の奥底で何かに突き刺さる。

 だが、それは闇医者にとってはどうでもいい事だ。彼は杖をつく男を一瞥すると、手元のタブレット端末に目を落とし、自分の仕事に戻った。

 闇医者にとっては些細な事なのだろう。

 周りに積み重ねられているのは、人間だったものの成れの果て。地球から遠いルビコンで見つかった新物質、コーラルを応用した技術で作られた改造人間達だ。

 コーラルはエネルギーにも物体にもなり得て、薬品や食料の代用にもなる。まさに新時代の夢の物質だった。

 その物質が闘争を生み出し、時には非道な技術へと発展した。

 それが、強化人間という存在だった。

 

「617達はその後どうだ、ハンドラー・ウォルター?」

「……御託はいい。そろそろ621を起動してもらおうか」

 

 いつからか、称号のように言われるようになったその名前。ウォルターは闇医者の言葉を無視し、催促を促した。

 闇医者はため息を吐くと、手術台に近づきその身体が横たわるシートを剥がした。

 

「こいつだ。機能は半分死んでる」

 

 そこに横たわっていたのは、年端もいかない白髪の少年。

 生命維持装置に繋がれていなければ生きていけない、哀れでちっぽけで無力な子供。

 彼の手術はすでに完了しているのか、後はカーテルを切り離し、彼が横たわる手術台の目の前にあるAC──アーマード・コアと呼ばれる人型機動兵器──に繋げるだけだった。

 

「……二週間後にルビコンへ発つ。それまでに最終調節を済ませておけ」

「そうか。だがこの星系から飛び立つのは容易ではないぞ?」

 

 闇医者は言う。

 惑星封鎖機構の監視の魔の手は、ルビコンから十数光年離れた場所に位置するこの星系にも伸びていた。

 未確認の宇宙船の離陸があれば、即座に撃ち落とされる可能性がある。

 

「問題ない。すでに陽動作戦を立ててある」

「そうか。在庫処分の手間が省けるな」

 

 だがウォルターの中では、すでに作戦は決まっているらしい。闇医者は全てを察してそう言った。

 話すことは全て終わったので、ウォルターは鬱陶しい医者から距離を置くべく、その場所を立ち去ろうとした。だが扉に手をかけた瞬間、闇医者が言葉を発する。

 

「そういえばお前、ルビコンに行くなら、例の噂は聞いているか?」

「……なんのことだ?」

「宇宙人が出た、と言う話だ。謎の勢力が、ルビコンで何度も封鎖機構とやり合ってるそうじゃないか。計画に修正が必要なんじゃないか?」

 

 闇医者が言うのは、最近ルビコンの周りの星系で噂になっている謎の艦隊についてだった。

 どの企業とも惑星封鎖機構の船とも違う、謎の大艦隊。それらはルビコン星系の周りに現れては、封鎖機構と小競り合いをしては撤退することを繰り返しているという。

 

「……計画に変更はない。封鎖機構を陽動してくれるならむしろありがたいまである」

「そうかい。だがおそらく奴らは……」

「……奴らの目的がなんであろうと、俺の目的は変わらない。コーラルは処分する、それだけだ」

 

 ウォルターはそれだけ告げると、扉を開け、闇医者のガレージを去った。

 一人取り残された闇医者は、相変わらず食えないやつだと思いつつも、自分の仕事に戻った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ルビコン3から遠く離れた銀河系。

 小マゼランのとある外縁部の宙域。そこには、リングが二つ重なった美しいガス惑星があった。

 小マゼランの外れにあるこの星は、大マゼランに拠点に版図を広げるガミラスにとって、逆侵攻を防ぐための要のような土地だった。

 その惑星へ向け、多数の魚雷が放たれた。

 魚雷は熱核ナパーム弾を搭載した特殊魚雷。敵艦隊の正面で大爆発を起こし、突破口を開いた。

 

『着弾!敵艦隊、陣形を乱しています』

「敵を分断する!第七駆逐戦隊前へ!楔を打ち込め!」

 

 指揮官の男の言葉を受け、ガミラス艦隊が動き出した。

 まず艦隊前方でその時を待っていた駆逐戦隊が、エンジン出力を全開に、加速して敵艦隊へ突っ込んでいった。

 敵艦隊は熱核ナパームの爆発により陣形が崩れており、おまけに彼らの上方は、配置していた艦隊が全滅していた。

 すなわち、分断の好機である。

 敵艦隊が反撃をしてくる。緑色のビームが回転砲塔からいくつも放たれるが、駆逐戦隊とその旗艦のメルトリア級は、華麗な艦隊運動により被弾を回避。

 そして敵艦隊の陣形を分断して左側を押さえると、楔を打ち込むようにして、ビーム砲を撃ち込んだ。

 敵艦隊は次々と撃沈されていく。最後に残った空母が艦載機を発艦させて逃げ延びようとするも、一歩遅かった。

 数分後、敵艦隊は全滅していた。

 第七駆逐戦隊を指揮する最年少の艦隊幕僚が、指揮官の男に通信を送ってきた。

 

『こちら第七駆逐戦隊、バーガー少佐。敵艦隊の七割を殲滅、奴は尻尾を巻いて逃げ出していますぜ』

「敵を侮るな、バーガー」

『は、はっ!』

「第七駆逐戦隊は残存艦隊の追撃にあたれ」

『ザー・ベルク!』

 

 バーガー少佐は素直に男の言う事に従うと、敬礼を挟み、戦闘を継続した。

 そんなお調子者の艦隊幕僚に頭を抱えるの眼帯の男は、第6空間機甲師団の先任参謀、ヴェム・ハイデルンだった。

 

「バーガーのやつめ、調子に乗りおって……まあ、これで奴らもしばらく仕掛けて来んでしょう」

「フンッ。貴様も楽しみがなくなるな」

「全くです!はははははっ!」

 

 そんなふうに笑う先任参謀を見て、小マゼラン方面軍司令官のエルク・ドメルは、不敵に笑った。

 ここ数ヶ月間の戦闘で、小マゼランに巣喰らう敵対勢力はほぼほぼ一層した。確かにこれで一通りの仕事は終わっただろう。奴らの仕掛ける余力を削いだからだ。

 

「ドメル将軍、帝星司令部より入電です」

「誰からだ?」

「航宙艦隊総司令官、ディッツ提督です」

 

 ドメルはその名前を聞くと、艦橋のメインモニターに映像を回すように伝えた。

 しばらくすると、帝都バレラスから通信を繋いできたディッツという男が、画面上に現れた。

 

『元気そうだな』

「閣下もご壮健そうで何よりです」

『うむ……ドメル、君に召喚命令が出た。総統から、特一等デスラー十字章が授与される』

 

 勲章の授与と聞き、艦橋の乗組員たちは色めき立った。

 自分たちの上司が、ついにデスラー十字章の中で最も栄誉のある勲章を受容されるのだから、誇らしい気分だろう。

 だが、ドメルはあまり色めき立つ様子がなかった。

 

「……お言葉ですが、ここは帝都防衛の要です。勲章のためのはいえ、指揮官が前線を離れるわけには──」

『分かっている。これは政治パフォーマンスだ。だが、総統には何かお考えがあるらしい……』

 

 ディッツからそう言われ、険しかったドメルの表情が少し反応した。単純に、総統の考えが気になったからだ。

 

『代わりの機甲軍はすでにそちらに向かっている。彼らに任せたまえ』

「……わかりました。召喚に応じます」

『ああ。では、バレラスで会おう』

「ザー・ベルク」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 一週間後、帝都バレラス。

 大ガミラスの首都となるこの都市には、多くの富と人口、そして政治と軍事の中枢が集まっている。

 流線が美とされるガミラスの建築様式で建てられた巨大なビルが、所狭しと並べられ、この都市の発展具合を物語っていた。

 その都市にて、今日は大通りでパレードが行われていた。それは、ドメル将軍の叙勲式のためだった。

 

『ガーレ・ドメル!』

『ガーレ・ドメル!!』

 

 多くの人々が、ドメル万歳と唱えている。それほど人望あるドメル将軍の人気ぶりを表していた。

 ドメル将軍を乗せた軍用車は、そのまま凱旋門をくぐるとそこで止められた。そこで降りたドメルは、広場の階段を登り、そしてそこでデスラー総統の姿を見た。

 

「ガーレ・フィゼロン!」

 

 ドメルはデスラーの前に立ち止まり、彼に敬意を示すべく、最大級の敬礼と言葉で挨拶をする。

 デスラーはそんなドメルを見据えつつ、こう口を開いた。

 

「何故私が君を招集したのか、計り兼ねてる顔だね?」

 

 ドメルにとっては図星だった。彼はすぐに釈明する。

 

「小マゼランは帝国防衛の要です。指揮官の不在は、敵を利する事になりかねます」

「分かっているよ」

 

 デスラーもドメルを召喚したことにより、防衛が手薄になることを理解していた。

 彼はそれほど優秀な将軍であり、指揮官の質の違いは戦局にも現れるほど。しかし、デスラーはそれを分かった上で彼を招集した。

 デスラーは小声で経緯を話す。

 

「実は銀河方面で妙な星を見つけてね。カエサルと名付けられた星系……次の目標はそこだ」

「噂は耳にしております。なんでも、未知の物質があると噂の……」

「流石はドメル君。情報が早い」

「情報も戦局を左右するものです。それにあの星を見つけたシュルツという男は、かつて私の部下でしたので」

「なるほどな」

 

 傍で従者が勲章を持ってきた。それを拾い上げ、ドメルの胸に装着する。それをしながら、デスラーは言葉を続けた。

 

「かの星はテロンの勢力圏だ。入り込めば闘争は避けられまい」

「…………」

「だからこそ、君に頼みたい。君にはその星を無傷で手に入れてもらいたいのだよ。やってくれるかね?」

 

 勲章が付けられ、ファンファーレが鳴り響く。そしてドメルは一呼吸おき、こう言った。

 

「……自分は帝国にこの身と忠義を捧げた男です。ご命令とあらば」

「ふんっ、そう言うと思ったさ」

 

 新たな任務を引き受けてくれたドメルに対し、デスラーは嬉しそうにそう言った。

 ファンファーレがなり響き、叙勲式が終盤を迎える。ドメルは敬礼を挟み、一歩下がってから回れ右をし、去っていった。

 

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