ARMORED CORE 2199〜ルビコンの戦士たち〜   作:ルビコン侍

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今、解放戦線ルートが熱い!


第五話『方針会議』

 

 自由浮遊惑星バラン。

 この星は大小マゼラン銀河と天の川銀河系のほぼ中間の地点に位置している回遊惑星と呼ばれる星だ。

 この星は淡い赤外線を放つガス惑星で、大気圏内にはガミラスが天の川銀河へ侵攻するための補給整備拠点が置かれているが、それが置かれているのは単に立地がいいからだけではない。

 この星は惑星を包み込むように、巨大な構造物で囲われていた。その両極端には艦隊が丸ごと入りそうな直径を持つ円形状の亜空間ゲートが構築されているのである。

 これはアケーリアス文明と呼ばれる、太古の昔に存在していたと言われる超文明が作ったインフラだ。このゲートは、天の川銀河をはじめとした様々な場所に繋がっている。ガミラスはそれを間借りして利用しているのである。

 さてその日、銀河方面の司令官を務めていたゲール少将は、バランの鎮守府である人物を出迎えなければならなかった。

 700mを超える純白の巨大戦艦、ゼルグード級一等航宙戦闘艦〈ドメラーズⅢ世〉が、ランディングギアを展開してバラン鎮守府に降り立った。側面の搭乗タラップが降りてくると、そこから一人の男が鎮守府に降り立つ。

 やってきたのはドメル将軍であった。ゲールはドメルに対してガミラス式の敬礼を送ると、ドメルもそれに応えながら、総統からの伝言を伝える。

 

「……デスラー総統の命令を伝える。本日を持ってして、小マゼラン防衛司令官ドメルは、銀河方面作戦司令官に任命する。なお先任のゲールは、副司令としてドメルの指揮下に入る……以上だ」

「っ…………」

 

 ゲールはその命令に対し、不満そうな表情を隠さなかった。

 いや実際、階級が上なのはドメルの方なのでこの人事は正しい。尊敬する総統閣下からの命令なので受け入れることはできる。

 だが今まで自分が司令官だったのに、いきなり副司令官に降格されるというのに、それをすぐに納得できる人間は、なかなかいないであろう。

 その後、ドメルは早速バラン鎮守府にある会議室を使って、そこに艦隊の幕僚を全員呼んだ。ゲールにとってはドメル軍団との初の顔合わせである。

 

「……諸君、我々に次の任務が降った」

 

 堅苦しい挨拶を抜きにして、ドメルは開口一番そう言った。そして会議室のモニターに映像を映し出し、新たな命令を幕僚達に伝える。

 

「我々は銀河系に赴き、その外縁部に存在するカエサル星系の第三惑星を狙う。ここはテロン人の勢力圏だが、総統のご命令はこれを無傷で確保することだ」

 

 ドメルの説明を黙って聞いていた幕僚達だったが、最後の言葉に引っかかって口を出した。

 

「こんな辺境の星を無傷でですかい?」

「総統も難儀な事をおっしゃる。我々ドメル軍団なら、テロンごと捻り潰せるのに……」

 

 幕僚団のバーガー少佐とクライツェ少佐が口々に言った。

 普通に戦えばこのような辺境の星、すぐに手に入るというのに、無傷で手に入れろとは作戦にデバフをかけるような命令だ。

 幕僚団の何人かが納得していないのを見て、ドメルはすぐに釈明する。

 

「それではいかん。なにしろ総統は、この星に眠っている未知の物質に興味がおありのようでな」

「なんですかい、それ?」

 

 バーガー少佐が疑問と興味を示したのを受け、ドメルはその説明も行う。

 

「"コーラル"と呼ばれるものだ。これは単にエネルギー源として活用するだけでなく、情報処理技術や食糧生産、ガミラスフォーミングへの活用など、様々な分野での応用が可能な物質だと()()()()()

「されている?」

「詳しいことはわからない。何せこの情報は、現在この惑星の付近で威力偵察を行なっているザルツ旅団がハッキングで得た情報だからな」

 

 そこまで説明したドメルは、傍に立っていたゲールの方を向いた。そして皮肉をこめて言う。

 

「どうもザルツ旅団のシュルツ大佐は、諸事情あって直属の上官をすっ飛ばして報告してきたそうだが……」

「ぬうっ…………し、しかし!そんな万能な物質が、本当に存在するなど信じられませんぞ!」

 

 ゲールはそう言うが、彼が部下からの報告に耳を傾けなかったのは事実だ。ドメルはそれを知った上で皮肉を言ったのだ。

 そしてドメルは言葉を続ける。

 

「総統はあると信じておられる。その証拠と言えなくはないが、この星ではコーラルを巡って争奪戦が行われている」

 

 ドメルはそう言いながら、モニターの情報を切り替えた。そこにはテロン人の回線から入手した様々な情報が載っていた。

 

「今から50年ほど前、この星系は一度災害によって大規模な被害を被り、コーラルはその時に消失したとされている」

「えっ、結局ないんですかい!?」

「落ち着けバーガー。……消失したと思われたコーラルだったが、今から数年前、"レイヴン"と名乗る独立傭兵がコーラルが存在するという証拠を周辺の星系にリークした。その結果、この星はテロン人同士がコーラルを巡って争い合う星になってしまった」

 

 ドメルはそこで一呼吸置き、さらに続ける。

 

「テロン人の正規軍組織……惑星封鎖機構は、二度目のコーラル災害を防ぐためにこの星系を封鎖している。だがコーラルを求めたテロン人の企業は、その封鎖を突破して星系に侵入を続けているらしい」

「おいおい、そんな事していいのかよ……ガミラスでそれやったら本社お取り潰しだぞ……」

 

 バーガーがテロン人企業の傍若無尽っぷりに呆れてそう言った。テロン人の政府は彼らを規制するなどの措置をしていないのかと。

 

「どうやら彼ら企業は、テロンの本星で政府と同等の発言力を有するとの事だ。そしてその発言権を駆使して政府を黙らせ、星々を渡って利益を掻っ攫ってるのが彼らのやり方らしいな」

 

 その説明にドメル幕僚に呆れと困惑が混じった沈黙が流れた。

 たかが企業が、政府の決定を無視できるほどの発言力を有している。ガミラスでは考えられない体制だ。無法と言ってもいいのではないだろうか。

 そこまで説明され、沈黙の中でハイデルンが口を開く。

 

「信じ難い話ですな……政府の方針を無視するような企業を、そのまま野放しにしているとは……」

「星が違えば考え方も違う。どうやらテロン人は、我々の常識が通用しない種族らしい」

 

 ドメルはそれだけ言って、テロン人の政府の小ささはあえて無視して考えないようにさせた。そして、言葉を続ける。

 

「そしてそれら企業に狙われ、この星は侵略されていると言っても過言ではない。つまり我々の敵は惑星封鎖機構とテロン人企業、目下この二つだ」

 

 ドメルはそこまで言ったが、含みのある説明の仕方をしたので、幕僚の一人のゲットー少佐が口を開いた。

 

「……ドメル将軍、その言い方だとまるでカエサル第三惑星には味方がいるかのように聞こえますが?」

 

 そこに気づいたゲットー少佐の言葉を受け、ドメルはそれについての説明を始めた。

 

「ああ。その可能性が高い。実はザルツ旅団が威力偵察を繰り返す最中、惑星の地表から"ルビコン解放戦線"を名乗る組織がコンタクトを試みていたらくてな」

「解放戦線……?」

「勇ましい名前だこって」

 

 クライツェ少佐がその名を口に出し、バーガー少佐は鼻で笑うようにそう言った。

 名前からして何かのゲリラやパルチザンの類にしか聞こえないが、ドメルは補足説明をする。

 

「どうやら彼らはルビコン──カエサル第三惑星での災害を生き延びたテロン人によって構成された土着組織らしい。我々としては彼らを懐柔し、内部から切り崩す事を考えている」

「なるほど。この星を侵略から解放する、手助けするとでも言っておけば……」

「そうだ、彼らが味方になる可能性は高い。実際、彼らは惑星封鎖機構によって支援を絶たれ、密航してきた企業によって星が荒らされている最中だ。我々がそのバックにつくことができれば攻略の布石になり得る」

 

 ゲットー少佐の納得した言葉を受け、ドメルは確信を持ってそう言った。

 だが肝心の惑星を攻略する方法についてはまだ説明がない。それに気づいたゲールが問いかける。

 

「し、しかし……奴らと接触するにしても、テロン人に封鎖されているようでは……」

「それについては、第6機甲師団を用いて封鎖を突破してもいいが……今回は命令が命令だ。こちらも一工夫を凝らす」

「え?」

 

 ドメルが何をやろうか分かっていないゲールは、頭に「?」を浮かべながらそう聞き返した。

 

「なに、我々もテロン人企業を見習うのだよ」

 

 ドメルはそう言って、不敵に笑った。

 それを可能にする特務艦は、目標に向けすでに動き出している。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 次元潜航、と言う技術がある。

 これは文字通り、次元の裂け目を作ってそこを航行すると言う技術だ。

 地球やガミラスが有するワープ技術が、紙を折りたたんで穴を開ける航法技術だと例えるならば、こちらは紙の裏を航行する技術である。

 そしてこの太古の昔の潜水艦に似た威容を持つ次元潜航艦〈UX-01〉は、それが可能な機関を持つ、ガミラスでも数少ない特務艦であった。

 

「羨望鏡を上げろ」

 

 淡い光が周りを包み込む、まるで水中のような空間を航行する〈UX-01〉の艦内にて、艦長のヴォルフ・フラーケンが指示を出した。

 その命令を受け、〈UX-01〉の上方向に次元の裂け目ができて、そこから通常空間に羨望鏡を出した。フラーケンは外の様子を映し出したモニターを見ながら、目標の惑星を確認する。

 

「現在地、カエサル第三惑星の月軌道上。惑星から約11万キロの地点です」

「あれがカエサル第三惑星か……」

 

 フラーケンは不気味な赤い輝きと雪に覆われたその星を見て、顎に手を当てながら独りごちた。

 モニターから見えるカエサル第三惑星は、彼らを誘う悪魔のような星に見える。「狼」と呼ばれたフラーケンでも、何かを感じ取って不愉快な表情をした。

 

「しっかし、補給を受けたと思ったら、こんな辺境の星に進出しろとは。ドメル将軍も人使いが荒いぜ」

 

 そんな中、次元潜航艦UX-01の副長、ゴル・ハイニがそう言った。彼は星の不気味さを気にしていない様子だった、

 

「そう言うな。我々の任務はかの星の土着組織とコンタクトを取る事。しかも、テロン人の正規軍の封鎖を掻い潜っての任務だ」

「つまり、俺たちにしか出来ねぇ任務って訳ですね!」

「その通りだ」

 

 フラーケンは喜怒哀楽や気持ちの切り替えが激しいハイニの事を面白く思いつつ、時間を確認して部下に告げる。

 

「頃合いだ……ブイを浮上させろ。星の全土へ向かって交信を試みる」

「了解っ!」

 

 その命令を受け、〈UX-01〉の艦尾方向から物体を浮上させた。

 それは広域通信が可能な通信ブイであり、まるで水上にゴムボートを浮かせるかのように、次元の裂け目にそれを浮かべる。

 そして、アンテナを展開して惑星の方へ向けて一つの通信を放った。それはガミラスが初めてルビコン3へアクセスした最初の通信である。

 その通信の結果、ルビコン3で回っていた歯車に一つの転機が訪れた。

 




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