ARMORED CORE 2199〜ルビコンの戦士たち〜   作:ルビコン侍

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621の出番はまだ先になりそう……


第七話『重要会談襲撃:1』

 

 会談を行うメンバーを乗せたヘリコプターは、〈ストライダー〉のヘリ甲板に着陸した。

 ヘリが到着し、ハッチが開けられると、乗組員たちが一列に並んでささやかな歓迎をしてくれた。兵士たちは皆一列に並び、乱れる様子はない。

 その様子を見て、バレル大使は解放戦線という組織が、末端まで統率が行き届いている類の組織なのだと理解した。名前からしてただの武装勢力だと思い込んでいたが、考え方を改めなければならないかもしれない。

 そして艦内へ行く道中、バレル大使は一際目立つ〈ストライダー〉の構造物をチラチラと見ていた。それは巨大な目玉のような形をしたビーム砲塔であった。

 

「採掘艦と聞きましたが、武装しておられるのですね」

 

 バレル大使がそれが武器であることを悟り、前方を歩くフラットウェルに対してそう言った。フラットウェルはすぐに反応する。

 

「この船は、我々が企業に対抗するための目玉だ。武装は必要なのものだ」

「そうですか……一応お聞きしますが、警備の方は?」

「まだこの砂漠は敵の手に落ちていない。だが万が一に備え、うちのAC達に警備をさせている。我々が出来る最大限の警備体制だと言っておこう」

 

 AC、という言葉を聞いてバレル大使が反応した。砂漠に降り立った時、真っ先に目についたのが彼らの人型機動兵器だったのを思い出したのだ。

 

「AC……下で見えたあの人型兵器の事ですかな?」

「そうだ」

「ああいったものは、ガミラスでは見ないタイプの兵器です。どのような性能なのか、交渉が実現しましたら是非とも教えていただきたい」

「そうですな。良い話し合いができたら、こちらも開示しよう」

 

 フラットウェルは含みのある言い方をした。バレル大使は彼の言いたいことが「交渉の実現を願う」という意図のものだと理解し、無言で頷いた。

 一向はその後、艦内の会議室で会談を開始した。まずはお互いの自己紹介として、ガミラスが自分たちがどこからやって来たのかを解放戦線に伝える。

 

「……では、あなた方は地球から約16万8000光年の彼方からやって来たと?」

「はい。そうなります」

 

 その途方もない距離を表す数字には、流石のフラットウェルも言葉が出なかった。解放戦線側にも少しばかり動揺が走っている。

 

「想像を絶するほど遠い……我々人類もワープ航法を開発して長いが、まだ銀河系の外へ手を伸ばすには至っていない。それなのに、あなた方は銀河を渡り歩くことが可能なのか……」

「まあ、無理してやってることなので、問題が無いわけではありませんが」

 

 バレル大使は含みのある言い方をした後、それを追求される前に話を転換させた。

 

「我々ガミラスとしては、窮地に陥っているあなた方の独立を支援したい。我々の艦隊ならば、惑星封鎖機構とも互角に戦えます」

「なるほど。では、我々は何を対価に払えば良いのですかな?」

 

 フラットウェルは相手の意図を察し、バレル大使の話を催促させる。それを受け、バレル大使は単刀直入にこう言った。

 

「我々ガミラスの指導者である総統閣下は、コーラルと呼ばれる物質を探し求めています」

「…………」

「独立を支援していただく対価として、あなた方にはそれを探すご助力をいただきたい」

 

 やはりか、と言った具合で解放戦線側の反応は一致した。

 フラットウェルとしても予想通りである。こんな辺境の惑星、しかも災害で焼き尽くされた後の星。こんなところに援助を行うなら、対価として求められるのはコーラルだけだと確信していた。

 だが欲まみれの企業と違うのは、彼らは一応我々の味方になろうとしている事。コーラル探しはあくまで対価に過ぎない。それで解放戦線の長年の目標が達成されるのだとしたら……

 

「支援の申し出は感謝する。しかし、あの物資は我々の生命線……そして同時に危険な物質でもある」

「承知しております」

「それでもコーラルを求められると言うのならば……引き返す事は出来ない。やるなら覚悟しておいた方がいい」

「…………」

 

 フラットウェルが発破をかけるが、バレル大使は顔色ひとつ変えずにこちらを見据えていた。

 予想通り、食えない人物だと確信した。だが彼らの申し出は、解放戦線にとって必要な事である。フラットウェルは舐められないようこちらの条件を提示する。

 

「惑星封鎖機構と企業をこの星から追い払った後でも、我々ルビコニアンの自治独立を認める事。これがコーラル探しの条件だ。両者の立場については、独立してから考えたい」

「……わかりました。大ガミラスの名に誓い、その約束を守りましょう」

 

 バレル大使は少し考えてからそう言った。

 ひとまず、解放戦線はガミラスと協力する方針で一致できそうだった。

 その後は協力する上での調整などが話し合われた。両者のホットラインの構築、バレル大使がルビコンに滞在して在ルビコン大使を務める事、そして資金についてもだ。

 

「──改めて自己紹介します。クラウス・キーマンです。私からは、この星で我々が活動する資金についての問題について話し合いたいと思います」

 

 バレル大使の補佐官と名乗って来た男、クラウス・キーマンが立ち上がり、説明を始めた。

 フラットウェルとしては、彼の方も何か怪しいと感じていた。それこそバレル大使よりも遥かに食えない人物だと確信している。

 

「実は我々はこの星で使える資金を持ち合わせておりません。燃料、弾薬等はガミラス本星から補給が来ますが、残念ながらこちらの通貨が使えないので、早急に資金源を確保する必要があります」

「なるほど。では現物を持って来て換金すると言うのは?」

「それに関しては、我々とテロンとの間で為替ルートがないので無理です」

 

 彼が言うのはルビコンでガミラスが活動する上での資金源についてだった。

 ガミラスとテロンとでは通貨が違う。お互いにコンタクトが取れておらず、極秘裏に事を進めたい以上、資金の両替は望めない。なんとかする必要があった。

 

「それならいい方法がある。そちらの腕利きを派遣して、このルビコンで仕事を得ると言う方法だ」

「それはどういう……?」

「つまりは、傭兵ですよ」

 

 バレル大使の疑問を、解放戦線のアーシルが答えた。それをフラットウェルがさらに補足する。

 

「軍隊なら、腕に自信のある要員がいくらかいるはずだ。あなた方にはACが存在しないと聞いたが、ACは適性のある者なら大体乗りこなすことが出来る。ここルビコンは傭兵たちの稼ぎ場所。適当にやっていれば資金は集まる」

「なるほど……では、こちらの人員が傭兵になる上で、初期費用に関しては?」

「それくらいは我々が見繕おう」

 

 つまりはガミラス人の傭兵をこのルビコンで立ち上げると言う話だ。

 フラットウェルとしては相手の資金調達先を提供できる上、ガミラスから戦力となる人員を引っ張って来れるので、一石二鳥に思えた。

 だが無論、それは彼らが金欲しさに目が眩み、独立傭兵のようにこちらに牙を向いてくる可能性もある。

 しかしリアリスト染みた思考も時に必要と考えるフラットウェルにとっては、それも折り込み済みであり、コラテラルダメージのようなものだと割り切れた。

 そうして会談が着実に進む中、突如として部屋の電話が鳴り響いた。艦長が一言断ってからそれに出る。

 

「失礼、内線のようだ。私が出る」

 

 艦長が内線電話に耳を当てると、向こう側から逼迫した声が聞こえた。

 

『艦長!緊急事態です!』

「何事だ?」

『付近を哨戒中のMT部隊より報告!アーキバスの部隊が、この砂漠を目指して強行進軍中です!』

「なんだと……!?」

 

 艦長はオペレーターからの報告に冷や汗をかいた。この重要な会談中に、敵襲が起こるとは……

 

『敵は、ヴェスパーのAC二機です!』

「しかも番号付きだと……?だとすると会談の情報が漏れたか……!」

 

 迂闊だった。ガミラスへの返信は暗号化していたつもりだったが、何処で暗号が企業に漏れていたのかもしれない。

 艦長は即座に叫ぶ。

 

「仕方ない、すぐに戦闘体制を整えろ!私は艦橋に行く!」

「はっ!」

 

 その様子を見て、フラットウェルは立ち上がって戦闘体制を整える同志たちに加わった。

 

「バレル大使、残念ながら緊急事態だ」

「そのようですな」

「私は防衛のためこれより出撃する。あなた方は急いであの小型艦に隠れたほうがいいだろう」

「……わかりました」

 

 バレル大使は戦闘要員ではないので、その時は素直にそれに従うことにした。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ボナ・デア砂丘の砂の大地。

 そこにブースターの陽炎を燃やしながら、二機のACがオーバーブーストで接近していた。

 二機はそれぞれ流線を帯びたデザインを持っていたが、機体構成はまるで別物だった。

 

 片方は足が四本あった。AC"リコンフィグ"、図太い胴体に小柄な頭部パーツがアンバランスに乗っかっている。

 武装は腕部にプラズマライフルとレーザーブレード、肩部にレーザーキャノンとプラズマミサイル。典型的なアーキバスのエネルギー系火力特化構成である。

 

 対する相方の機体は、AC"デュアルネイチャー"。逆向きの関節を有する特殊な脚部構成。細身で華奢なデザインの機体に、アンテナのような頭部パーツが特徴的だった。

 機体の武装はパルスマシンガンにパルスブレード、パルスキャノンにパルスシールド。全てをパルス系と呼ばれる音波兵器で固めた構成だった。

 

『解放戦線の武装採掘艦を確認。周辺にACの護衛が複数います』

『どうやら情報は本当みたいだね。よほど重要な会談だったようだ、ペイター君』

『仕掛ける好機です』

『そうだね。行こうか、ペイター君』

『はっ』

 

 四脚の機体に乗っているのは、ヴェスパー第5隊長のホーキンス。兵站部門の責任者であり、人柄の良さで知られる強化人間である。

 そして逆間接の機体に乗っているのは、その補佐官の第8隊長のペイター。ホーキンス相手では畏まった人物だが、人格に少々難があるとされる強化人間である。

 

「ヴェスパーの番号付きが二機……排除しなければこちらの被害が拡大するな」

 

 すでに入手していた彼らの情報を照らし合わせつつ、フラットウェルは〈ストライダー〉の格納庫で出撃準備を整えていた。

 すでに護衛のMT──マッスルトレーサーと呼ばれる汎用兵器──が、二機のAC相手に損害を拡大させている。

 これ以上好きにやらせれば、最悪の場合〈ストライダー〉まで危険に晒してしまう。そうなれば大損害だ。

 

『帥叔、ACは頼みます』

「了解した。ミドル・フラットウェル、AC"ツバサ"、出るぞ!」

 

 フラットウェルはそう宣言すると、〈ストライダー〉のカタパルトから愛機のAC'ツバサ"を射出させ、南側で展開されている戦闘へ加勢するべく、オーバーブーストで飛んでいった。

 

『うらぁぁぁぁぁっ!!』

 

 その南側では、リトル・ツィイーが愛機のAC"ユエユー"を駆り、ヴェスパー部隊相手に果敢に立ち向かっていた。

 彼女にとって、ヴェスパー部隊とは仲間の仇である。彼女は感情を露わにして叫び、突っ込んで行った。

 

『お前らが!みんなを!』

『……解放戦線の旧型ACを確認。ガラクタです』

『目標は重鎮の暗殺だよ。ペイター君、手早く片付けよう』

『こんのっ!』

 

 AC"ユエユー"が手持ちのバズーカを放つが、二機のヴェスパー機体はそれを華麗に散開して避けると、二手から接近してくる。

 ツィイーのAC操縦技術はあまり高くない。その証拠に、後ろから接近してくるペイター機に気づかず、ホーキンスに感情をぶつけていた。

 

『私だってルビコニアンなんだ!やれる!戦える!』

『邪魔だ』

『なっ──』

 

 武器を乱射して突っ込もうとした"ユエユー"に背後から、ペイターの"デュアルネイチャー"が接近。

 パルスブレードを展開して彼女を一刀両断に斬りかかろうとするが、その一撃は新手のACによる蹴り攻撃によって弾かれた。

 

『くっ……!新手か!』

 

 蹴りを入れられ、多少よろけた"デュアルネイチャー"であったが、すぐに体勢を立て直した。頭部が姿勢安定性能の高いパーツであるが故の芸当である。

 ペイターの隣にホーキンスが駆けつけて来て、両者は並んで対峙する。ペイターは冷静な口調で新手のACについて分析した。

 

『……排除目標を確認。ミドル・フラットウェルのようです』

『確認したよ。じゃ、スネイル閣下の言う通り排除しようか』

「舐めおって……!」

 

 フラットウェルは相手の二機を見据えながら、睨みつけるようにそう言った。

 そして体制を立て直したツィイーが、立ち上がりながら我らが指導者の名を叫ぶ。

 

『帥叔……』

「ツィイー、間も無くアイボールが起動する。お前は敵機を誘き寄せろ!」

『は、はいっ!』

 

 この際ツィイーが戦闘は に追従するのは困難だ。彼女にはアイボール起動までの時間を稼いでもらって、敵機の撃破ではなくおびき寄せる事を徹底させた。

 そうして両者のACが揃い、第二ラウンドが開始される。ルビコンを企業の魔の手から守るため、解放戦線は戦う。

 

 その戦闘の様子を、次元の裂け目から〈UX-01〉が監視していた。

 




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