ARMORED CORE 2199〜ルビコンの戦士たち〜 作:ルビコン侍
次元潜航艦の潜望鏡は、通常空間で行われているACの戦闘をしっかりと捉え、艦内に中継していた。
クイックブーストの閃光が迸り、周辺にグレネードやプラズマライフルの爆発が巻き起こる。砂漠は派手な戦場と化しており、ガミラス人達は戦闘に見入っていた。
「おおっ!すげぇ、速いぜこいつら!」
「これがACとやらの戦闘か……」
ハイネやフラーケンらは、初めて見るAC同士の戦闘を見て少々興奮気味であった。
ブースターを噴かして空を飛び、クイックブーストで攻撃を回避するその高い機動性。人型のロボットが縦横無尽に飛び回り、戦っているという光景の非現実味。
ロマンある光景だった。ガミラスの考える地上戦とは一線を覆している。ガミラス人達が興味を惹かれるのも頷ける。
そんな中、艦内に避難して来たクラウス・キーマン中尉は、戦闘の様子を冷静に分析し、それをバレル大使に伝えていた。
「ブースターを瞬間的に吹かし、高速で飛び回る兵器……非常に高い機動性です。空間戦闘機のそれをも凌駕するかもしれません」
「ふむ、あれは単なる陸戦兵器かと思っていたが、案外侮れない兵器かもしれないな……」
キーマンの言葉を受け、バレル大使は頷く。
彼らから見てもACは単なる陸戦兵器かと思われたが、あの機動性、そして空中を浮遊する事が可能な性能を見るに、侮れない兵器かもしれない。そう思った。
だがそんな分析をしている最中、戦闘が片方が不利になりつつあるのを見て、ハイニが怪訝そうに口を開いた。
「それよりもよぉ……なんかあいつら押されてるみたいだですが、大丈夫なんですかい?」
「だな。あの男はともかく、女のパイロットはそこまで練度が高くないらしい。それであの四脚と逆間接を足止めするのは骨が折れるだろう……」
その言葉を受け、バレル大使が口を開いた。
「フラーケン艦長、どうにかして援護することはできないか?」
「本艦の武装では、あの高機動兵器を相手にできることは限られます。なんとかして動きを封じられらば話は変わりますが……」
援護とは言っても、次元潜航艦の武装は主に魚雷だけ。それも対艦戦闘使われる鈍足なタイプであり、あの高機動兵器相手にどれだけ通用するかは未知数だった。
手を出すべきか迷う状況だったが、その言葉を聞いたクラウス・キーマンは、フラーケン艦長に向かってこう言った。
「艦長、要は奴らの足を止められればいいんだな?」
「ああ」
「それなら──」
戦闘は解放戦線側が不利であった。
主に練度と性能差によるものだ。ACの数は二対二で、尚且つ解放戦線側には多数のMTも合わさり数的優位はあったが、いかんせんヴェスパーの番号付きなだけあって相手の練度は高く、ACの性能も一線を覆すものだった。
特に相手の武装が厄介だ。単純に火力が違いすぎる。
V.Vのプラズマライフルは直撃しなくても発生したプラズマの火球でMTは大破してしまい、ACの機動性すらも削いでいる。
対するV.Ⅷはパルス兵器の火力もそうだが、パルスシールドによってこちらの火力が一切通ってない。パルス兵器で統一された彼の機体は、攻防とともに高水準でまとまっていた。
ツィイーとフラットウェルの機体は、彼らに対抗するには不十分だった。特にツィイーが付いてこれてない。実質的にフラットウェルが単機で受け持っているに等しかった。
『しぶとい奴らだ』
『予想以上に手こずってしまってるね。ペイター君、ちょっと本気出そうか』
激しい戦闘の最中、EN回復のために地面に着地したV.VとV.Ⅷがそう言った。フラットウェルはその言葉を聞いて歯軋りをする。
「こいつら、まだ全力ではなかったのか……」
彼らの周りには、すでに残骸になったMTが散乱していた。すでに解放戦線側のMTはほぼ全滅、残るはツィイーとフラットウェルのACだけであった。
そして、彼らのACが再び動き出した。まずV.Ⅷの機体が真っ直ぐ接近して来る。フラットウェルはバーストライフルでそれを狙うが、彼の機体は上に跳躍すると、フラットウェルの上方を狙ってきた。
「甘いっ!」
その戦術は事前情報からお見通しだ。相手は機動性で翻弄して来るタイプなのは分かっている。
ならば相手を懐に入れないよう、こちらは相手をロックしたまま、即座に前へクイックブースト。位置を入れ替える。
そしてクイックターンで後ろを振り向き、相手との距離を保ちながら、こちらはバーストライフルで射撃。
V.Ⅷはタイミングよくシールドを展開しそれを防ぐが、フラットウェルは攻撃を続ける。バーストライフルの弾丸はシールド相手に跳弾を起こしているが、耐久力は削れている。
その時、後方から警告音がした。網膜投影の視界の端に、四角い警告コンテナが表示されているのを見て、それがなんなのかを確認するより前に、フラットウェルは攻撃の射線からクイックブーストで逃れた。
左へブーストし、レーザーキャノンの攻撃を難なく回避。そして着地する。モニターを見れば、そこには独特の四脚を展開し、空中に浮遊してそれを援護するV.Ⅴの機体がいた。
『帥叔!』
「くっ……やはり手強い……!」
激しい戦闘により、フラットウェルはの機体には損傷が蓄積していた。
脚部の関節部分にダメージが蓄積しており、跳躍力が鈍くなっている。ブースターも少し焼き付いてノズルの性能が悪くなっている。
どちらも無理をさせているが故の損傷だ。ツィイーが戦闘についてこれない中、フラットウェルに目立った被弾がないだけまだマシだった。
その時、後方の味方から通信が入った。
『アイボール起動!ショックカノンにエネルギー充填!』
『味方ACに警告!』
「──来たか!」
マーカー情報が更新されたのを受け、フラットウェルは即座に跳躍。クイックブーストでツィイーと別れ、味方の射線から回避する。
『灰被りて、我らあり!』
『アイボール、照射っ!』
その時、後方にいる〈ストライダー〉から、強力な
『っ、第5隊長殿!』
『散開!』
その青白い光は、並の宇宙戦艦ですら貫通して破壊するレベルの強力な一撃。
流石のヴェスパーの二機も脅威を察知し、即座に左右に散開して距離をとった。
彼らがいた地点を、ショックカノンの光線が焦げ臭く耕した。地面が抉れ、その威力の高さを物語る。
『……強力なショックカノンの攻撃を確認。アイボールからのようです』
『あれは食らったらまずいね……ペイター君、採掘艦の懐に潜り込むよ』
『はっ』
アイボールからの不意の一撃は、残念ながら彼らを撃破するに至らなかった。
気がついたヴェスパー部隊の二機は、即座にアイボールの死角となる採掘艦の懐に潜り込もうと進路を変えた。
「まずい……!」
このままでは、採掘艦まで危うくなるもしれない。フラットウェルは相手を追いかけふべく、オーバーブーストで奴らを追いかけた。
「(せめて奴らが撤退してくれれば……)」
飛びながらそう考えて、フラットウェルは策を講じる。だが彼らはまだ継戦能力を有しているのか、未だ撤退する気配がない。
どうすれば……
『……こちら次元潜航艦〈UX-01〉、援護する。指定したポイントに敵を誘き寄せたし』
「っ、なんだと?」
そんな時、裂け目に潜航して隠れていたはずのガミラス艦から通信が入った。
それと同時に、マップ上に幾つかの指定ポイントとマーカーが現れた。どうやらそれは何かの射線のようであり、指定したポイントに誘導するようにされていた。
謎のデータを受け、ツィイーが疑問を投げかける。
『帥叔、これは……?』
「どうやら彼らに策があるらしい。ストライダーと連携し、指定ポイントまで敵を追い込むぞ」
『は、はいっ!』
何をするのかわからない。
だが彼らならフラットウェルはこの状況を打開できるかもしれないと思い、彼らの提案に乗った。
一方で、ヴェスパー部隊の二機は戦闘を継続していた。
最優先目標は解放戦線の重鎮、ミドル・フラットウェルの殺害。そのためストライダーの懐に入っても、ストライダーのことは無視していた。そちらの破壊はいつでもできるからだ。
「(さて、思ったより苦戦してしまったけど、そろそろ終わりにしようか)」
V.Ⅴ"ホーキンス"は、敵の討伐に予想より時間がかかっている事を気に掛けながらも、フラットウェルを確実に抹殺する事に集中した。
この際、もう一機のカラフルなACは無視する事にした。彼女を放っておいても問題はない。それよりもほぼ単機でヴェスパー二機を相手にしているフラットウェルの方が脅威である。
さて、どうやって隙を作ろうかと考えていた……その時だった。
『っ、警告!第5隊長殿!』
ペイターが警告する。ホーキンスが網膜投影のレーダー画面を見るとどこからともなく大型のミサイルがこちらに高速で接近していた。
「っ!?」
どこから現れた?と疑問が脅威に変わる前に、ホーキンスはミサイル回避の機動を行う。
追ってきているミサイルに対し、その旋回半径の内側に入るよう、右手方向にクイックブーストで回り込んだ。
ホバリング体制を解除し、地面に着地したホーキンスは、滑る脚部を踏ん張らせながら周囲を見渡す。
「一体どこから……?」
『第5隊長殿、後ろ!』
突如として警告が鳴った。
振り返りと、真後ろにミサイルが接近してきていた。それもごく至近距離から突然現れたように見え、ホーキンスは冷や汗を流す。
やられる……そう思ったその時、一機のACが間に割って入った。
『っ!』
「ペイター君!」
ペイターの機体だった。
彼はシールドを最大出力で展開し、爆発したミサイルの破片を一挙に受け止め、ホーキンスを庇った。
煙が晴れると、ペイターの機体がなんとか立っている状態で現れた。ホーキンスは可愛がってる補佐官の機体状態を聞き出す。
「ペイター君、損傷は?」
『肩のシールドがやられただけです……』
「そうか、ならよかったが……」
『今の攻撃はどこから……?』
「分からないけど、これは見えない敵がいるね……」
ホーキンスは突如として出現したミサイルに関して、そう感想を漏らした。
どうやらミサイルを放っているのは見えない敵らしい。
そう考えていた時、またも警告音。
『っ、また来ます!6時の方向!』
「後ろかっ!」
彼らの後ろの方から、ミサイルが接近してきたのを受け、ホーキンスはクイックターンで背後を警戒。
その方向はプラズマライフルを構えるが、何も見当たらない。ホーキンスは敵機を探すのを諦め、クイックブーストでミサイルの回避に専念した。
幸いにもミサイルは明後日の方向へ逸れていったが、ホーキンスは歯軋りをする。
「くっ……なぜ居ない……?」
『第5隊長殿、上を!』
「──っ!?」
その時だった。
彼の頭上に巨大な影が降りてきた。
無視していたストライダーの脚部が、ホーキンスの真上から彼を踏み潰そうとしていたのだ。
それを感知し、ホーキンス慌ててオーバーブーストでそれを避ける。そして砂漠の地面に滑るように着地した。
「危うくペシャンコになるところだったよ……!」
『第5隊長殿!』
「体制を立て直すよ!とにかく今は、重鎮の殺害に集中すれば──」
そう考えてい時だった。
彼らの通信に暗号化された通信が入る。
「む、暗号通信……?」
彼らが通信を開くと、向こう側から見知った声が聞こえてきた。
『……こちら、第2隊長スネイルです。V.ⅤとV.Ⅷに通達。苦戦しているようですが帰投を命じます』
「なんですと?」
V.Ⅱスネイルからの突然の帰投命令。それを受け、ホーキンスは激しく困惑した。
『スネイル閣下、我々はまだやれます。時間をください』
『ダメです。後方の前哨基地が解放戦線に襲撃されています。今すぐ帰投し、基地を防衛してください』
『なんだと……?』
どうやら後方のアーキバスの基地が、この機に乗じて解放戦線からの攻撃を受けているらしい。
なるほど。やはり解放戦線は相手が嫌がることをするのに長けている。ホーキンスはそう感じた。
「後背を脅かされちゃあ、しょうがないね。ここは素直に撤退しようか、ペイター君」
『……はっ』
今は素直に従うほかない。
そう思い、ホーキンスはペイターと共に退却することを決断。その戦場から撤退していった。
次元潜航艦の艦内にて。
相手のACが退却していくのを見て、解放戦線の人々が歓声をあげたのが、彼らの通信でも聞こえていた。
『解放戦線のAC、撤退していきます!』
『やった!やったぞ!!』
解放戦線の面々が歓声に包まれる中、すぐにミドル・フラットウェルが次元潜航艦に通信を繋いできた。彼は感謝の言葉を述べる。
『フラーケン艦長、援護に感謝するぞ』
「気にするな。お互いのことを考え、最善を尽くしたまでだ」
フラーケン艦長は謙虚にそう言うが、ハイニは得意げだった。乗組員達も得意げだった。
フラーケン艦長は、AC戦が行われている最中に、相手が嫌がる方向から魚雷を放って援護していたのだ。
彼らのACに次元潜航艦を見つける手段はない。こちは地形も気にせず、一方的に妨害行為を行うことができた。あの採掘艦の艦長も、それに応えて脚を動かしてくれたのも大きかったのだ。
「さて……本艦はこれより再び浮上。交渉再会のため、お客さんをまた下ろす」
「了解!メインタンクブロー!」
そうして敵ACが退却したのを皮切りに、解放戦線とガミラスとの間でまた交渉が再開される運びとなった。
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