ようこそ孔明のいる教室へ 旧バージョン   作:tanuu

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政治、すなわち手段としての権力と強制力に関係する人間は、悪魔の力と契約を結ぶものである。

『マックス・ウェーバー』


6章・愚か者は自分を賢いと思い、賢いものは自分が馬鹿だと知っている
36.革命家


<暗闘>

 

 

「緊急のお呼び出しにも拘わらずご参集頂き感謝申し上げます」

 

 中央軍事委員会連合参謀部情報局。人民解放軍の情報部とも言うべき組織。アメリカならばCIA、イギリスならばMI6に例える事が出来るであろう。厳密にはここの所属では無い物の、同じ情報機関の頭の要請に、応じない訳にはいかなかった。それに、今の時代はリモートでの会話が可能である。パソコン1台あれば会議は容易だった。

 

「諸葛少将、手短に」 

 

 退役間近の局長が言う。上将(大将相当官)を務めるベテランの老人だった。半世紀近く年の離れた者同士の会話だ。

 

「実はつい先ほど、少しばかり気になる情報を入手しました」

「お前の管轄、日本のか?」

「はい。私の記憶が正しければ、李上将閣下には私の赴任前に日本に関するお持ちの情報を頂いたと記憶しておりますが」

「その通りだ。不備でもあったのか」

「その中には国内に存在する宗教結社、秘密組織、左翼ゲリラ、右翼団体等数々の組織・結社についても記録されていました。ただ、今回そこに載っていなかった組織らしきものを発見致しました。その名はホワイトルーム。名前しか分かりませんが、確かに存在しておりかつ国民には内密の機関であると思われます」

「儂は知らんな。おい、林中将。貴官が日本担当の責任者であったはずだ。掴んでいなかったのか」

「…………」

 

 林と呼ばれた小太りの男は画面越しでも分かる青白い顔をしている。

 

「林閣下、失礼ながら……貴官の身辺調査をさせて頂きました」

「な、何の権利があって!」

「我々は粛清機関の役割も持っている。お忘れか?」

「いや、忘れてはいないが……私は潔白だ」

「いくつもの地点を経由して、日本から毎年かなりの高額が振り込まれているようですね。暫く泳がせて置こうと思っていましたが、この際はっきりさせてしまいましょう」

「し、知らん。知らんぞ!」

「綾小路という名に聞き覚えは?」

「誰だそいつは!」

 

 叫んではいるが、明らかに動揺している。名前を出した瞬間にその動揺はもっと激しくなった。

 

「そうですか。お話頂けないとは残念です。上将閣下、如何しますか」

「疑わしきは、罰せよ」

「承知しました。林中将、地獄でお会いしましょう」

 

 プツンと林の通信が切れる。画面には李上将と諸葛孔明だけが残っていた。

 

「後でヤツの資料は調べさせよう。処分はしていないだろうからな。大方、握りつぶしているのだろう。部下から聞き出せばいい」

「分かりました。早急にお願いします」

「勿論だ」

 

 通信は途切れ、諸葛孔明は精神を切り替えて体育祭の打ち上げへと向かう。彼が旧友と飲み食いしている最中、中国国内で急発進しようとした車が爆発炎上する事件が発生した。白昼堂々の事故でありながら、目撃者も報道も無く、翌日の新聞の人事欄で小さく中央軍事委員会連合参謀部情報局の人事異動があった事のみが発表された。13億人の大国は、今日も平和に動いている。

 

 

――――――――――――――――――――――――――

 

 

 演説と言うのはえてして退屈なものだ。喋っている方は楽しいのかもしれないが、聞いている方は暇である。それが、興味のない内容なら尚更。軍人と言うのは指導者様の演説をジッと不動の姿勢で聴かねばならない。あれはかなり苦痛だ。1つだけ良い事があるとすれば、大体ああいう演説会や閲兵式を狙ってテロしようとする集団を叩く仕事をしていたから並んでいる一般兵士のような事は殆どしたことがないという事のみ。

 

 体育祭も問題なく終わった10月中頃。生徒会関連のイベントが発生していた。この前、葛城から連絡があり、どうも同じ堀北派として動いていた一之瀬の様子がおかしいと言われた。南雲に嵌められたのか、本人が選んだのかは分からないが、十中八九前者だと思っている。しかし、このタイミングは非常にいい時期だ。上手くやったと思う。

 

 契約は堀北会長の指示に従う代わりに生徒会入りをするというものだった。この契約は堀北会長がいなくなってしまった以上、実質的に効力を失う。万が一離反した際のペナルティが解任だったが、このタイミングでなら堀北会長は既に人事権を喪失している。解任はさせられない。あの時したもう1つの方、過去問の契約はまだ生きているが、それには違反していない。こちらから彼女にアクションは起こせない。暫くは泳がせておくしかないだろう。

 

 それに、南雲と手を組むほど追い詰めさせたのはこちらに原因がある。少しやり過ぎたようだ。反省する必要はあるだろう。

 

「それでは、堀北生徒会長より最後のお言葉を賜りたいと思います」

「約2年、生徒会を率いて来られたことを誇りに思うと同時に感謝します。ありがとうございました」

 

 短すぎる言葉を言い、足音すら立てずに戻って行った。そして、生徒会メンバーの名前が発表されていく。中には我らが葛城の姿もあった。Aクラスからの偵察兵である。頑張って絶対思想の合わない南雲と仲良くして欲しい。彼ならそつなく立ち回れるだろう。

 

「堀北生徒会長、今までお疲れ様でした。それではここで、新しく生徒会長に就任する2年Aクラス南雲雅君より、お言葉を頂戴いたします」

「2年Aクラスの南雲です。堀北生徒会長、本日まで厳しくも温かいご指導のほど、誠にありがとうございました。歴代でも屈指のリーダーシップを発揮した最高の生徒会長にお供できたことを光栄に思うと共に、敬意を表したいと思います」

 

 本心はどうであれ、しっかりとするべき儀礼行為はした方が良い。そういうのを大切にしないと、思わぬところで足をすくわれる。TPOというやつだ。

 

「改めまして自己紹介させて頂きます。南雲雅です。この度、高度育成高等学校の生徒会長に就任させて頂くことになりました。どうぞこれからよろしくお願い致します」

 

 詐欺師は礼儀正しい。これも世界の鉄則だ。何故かと言われれば簡単な話で、信頼を得ないといけないからだ。相手の懐に入り込んで騙すには、まずは外面が良くないといけない。暴力的だったりアホそうな相手の話に一般人は乗らない。

 

「早速ではありますが、まず始めに、私は生徒会の任期と任命、総選挙のあり方を変更することを公約します。堀北前生徒会長が、例年12月に行われていた総選挙を10月に変えられたことは1つの試みだったと思います。早い段階で次の世代に移れるようにした配慮は一定の効果を生み出しました。そこで新しい生徒会は新たなステップへと踏み出す時期と判断し、生徒会長及び生徒会役員はその任期を在学中無期限とし、卒業まで継続できるように変えていきます」

 

 共産党じゃん。これ、ウチの党じゃないか。在任期間無期限とかまさにそれだろ。独裁者のテンプレート。祖国は好きだし、私は漢民族のアイデンティティを持っている自覚はあるが、党は死ぬほど嫌いである。あの忌まわしき我が祖父が共産党だからだ。

 

「同時に総選挙の制度と規定人数の制限を撤廃し、生徒会役員を常に受けいれられる体制を作り上げて参ります。つまり優秀かつ必要な人材はいつでも、そして何人でも生徒会のメンバーとして活動できるようにしていきます。万が一、任期中不適格だと判断された人材がいれば、会議にて多数決を行い、それをもって除名する規約も作ります」

 

 一見良い事を言っているように見えるが、問題は最後の不適格云々のところだ。ただ、攻略法はある。多数決なら会長を放り出すことも制度上は可能と言う事だ。まぁなかなか厳しいだろうが……。自分の意に沿わない人間を排除できるんだぞと脅せる仕組みになっている。逆にイエスマンは必死に取り入ろうとするだろう。

 

「これを手始めとし、ここに集まっている生徒、先生方、そして前生徒会長の率いた生徒会の皆さんに宣言させて頂きます。私はこれからの学校作りとして……まずは歴代の生徒会が守ってきた、こうあるべきという学校の姿を全て壊していくつもりです!」

 

 伝統が伝統である理由を理解していないのがまるわかり。面倒なことになった。壊すのは誰でも出来るが、建設するのは難しい。それを理解しているのだろうか。

 

「本来なら、今すぐにでも私の考える新体制として動き出したいところなんですが、残念ながらそうもいきません。新米生徒会長には色々としがらみも多いもので」

 

 堀北会長留年して、ずっとしがらみでいてくれないだろうか。思わずそう思ってしまう。絶対来年以降狙い撃ちされるのウチのクラスじゃないか。嫌だなぁ。坂柳に面倒な部分だけ全部押し付けたい。

 

「近々、大革命を起こすことを約束します。実力ある生徒はとことん上に、実力のない生徒はとことん下に。この学校を真の実力至上主義の学校に変えていきますので、どうぞよろしくお願いします」

 

 最初のは良いと思う。例えば、堀北(妹)はコミュニケーション能力に多大な問題を抱えている訳だが、あれが改善されたら一角の人物にはなるだろう。そうなった時、結局卒業まで他の生徒に足を引っ張られ続けました、と言うのはやや可哀想である。スタート地点がDクラスでも、内省し改めてもなおそうしない、もしくは出来ない多数のせいでどうにも出来ないのは問題を指摘できるポイントだろう。

 

 例えば、現実社会でも転職という手段があるように、2000万ポイント以外にも何らかの方法(現実社会での入社面接など)を経れば上に行けるようにしても良いとは思う。と言うか、転職には2000万もいらない。

 

 もしくは、クラスで人事評価をつけてそれを元にポイントを決めるとかだろうか。そうすればもっと努力する生徒は増えるだろうし、クラスのせいで割を食っている人間が報われるかもしれない。連帯責任と言ってしまえばそうなのだが、現実社会ではその泥船から抜け出す事が出来る。ここではそれが容易に出来ない。

 

 ただ、実力のない人が下に集められているだけでは絶対に破綻する。なんだろう、スラムツーリズムかなんかだろうか。人間は自分より下の人がいると安心する。その性質を使い、差別階層を作って社会を維持することは可能だ。倫理的問題が山ほどあるが、出来無いわけではない。共産主義は嫌いだが、その平等性は評価している私には認められない思想だ。

 

 クラスで団結できるところに利点がある。集団行動を学び、色んな能力を結集して勝つ。集団で勝つとは単に数の暴力で押し切る事ではない。こういう個性を集めて1つの大きな武器にすることだ。だから私の配下は個性の塊みたいなのが多い訳だし、今の環境下でも龍園のように支配はせずにかなり自由にしている。合議制にしているのも色んな意見を出して多角的に判断するためだ。

 

 

 

 冷めた目で壇上の自称革命家を見る。これを革命家と呼ぶのは革命家に失礼か。レーニンやゲバラに謝った方が良いかもしれない。2年生は歓声をあげている。教祖の勝利宣言に酔ってる信者のようだ。これが日本の最高峰……?中華の未来は明るいと報告しておくとしよう。

 

「最後に1つ、主に下級生に向けた伝達があります。先ほども言ったように、これからの生徒会の目標は真の実力至上主義です。その中で、勿論色々な意見が出るでしょう。反対意見を持っていたとしても、生徒会は実力者の入会を歓迎します。大いに激論を交わそうではありませんか。それに年齢は関係ありません。どうぞ、いつでもかかって来て下さい。以上です」

 

 彼の目は完全に冷めた目の私をガン見している。迷惑だなぁ。私に生徒会入りの意思はない。誰がアイツの下で働くものか。せめて雇い主くらいは選ばせて欲しい。今はAクラスが私の雇い主だ。

 

 体育祭で闘志に火を付けてしまったのかもしれない。本当に面倒なことになってしまった。少しばかりあそこで勝利したことを悔やんだのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 ただ、彼が改革を叫んだところで一朝一夕で何かが変わるわけではない。いつも通り流れにそって日常は進行し、定期テストが行われた。ここでは多少の順位変動が起こる。普段は中くらいの生徒も、体育祭での得点によって上に上がっていたりした。特に点数を必要としない生徒はポイントに換算している。

 

 私の成績なんてどうでも良い。基本ずっと1番上にいるんだから。坂柳も同率だが、残念なことにテストでは100点までしか測れない。自分の事よりも大事なのは教えている生徒の事だ。書かれている名前の中から神室真澄を探す。上から10番目に入っていた。確かに体育祭ではかなりの競技で1位をかっさらっていたのでそういう結果にもなるだろうとは思っていたが、それでも素の点数が低くては90点以上でないと入れないトップテンにはランクインできない。順調に成績が伸びているようで助かった。最初は最下位の方をうろうろしていたのだから。そして悲しき不名誉な最下位は戸塚。彼はなぁ……うん。見下しているCクラスやDクラスの生徒の1部に負けていることを反省した方が良い。堀北の方が頭は良いぞ。

 

「平均点においてもAクラスは安定の学年トップだ。慢心することなく勉強を続けているようで何より。これからも精進するように」

 

 先生のありがたいお言葉である。先生だってそういうところで競い合っていたりするのだろうから、自クラスが問題ない状況なのはありがたいのだろう。

 

「さて、既に各教科の先生方から繰り返し聞かされているだろうが、来週期末テストへ向けて10科目の問題が出される小テストを実施する」

 

 テストの次にまたテスト。何回もやるのは疲れる。またカリキュラムを組んで教えないといけない。まぁもっと凄い勢いで真澄さんの成績を伸ばす方法もあるのだが、それをやるほど緊急性がないので今はゆっくりやっている。それに、英語や国語(特に日本語力)は大学以降でも通じるものを教えてるつもりだ。最終的には海外大学でも平然と過ごせるような感じになって貰いたい。日本の英語はリーディング中心なので、それ以外も教えているためかなり時間がかかる。

 

「この小テストは全100問の100点満点。内容は全て中学3年レベルの問題で成績には一切影響しない。0点だろうと100点だろうと取って構わない。と言ってそのまま受け取る者はもういないだろうがな。その小テストの結果に基づき、クラス内の誰かと2人1組のペアを作り、そして次の期末試験はそのペアが一蓮托生で挑むことになる」

 

 ルールとしては、

 

・試験は5教科10科目の各100点満点、各科目50問の合計500問、1000点満点。

 

・各科目でペア同士の点数を合計して、60点未満なら赤点となり2人とも退学。

 

・総合点もペアで合計して、学校が設定したボーダーを下回れば赤点となり2人とも退学。ボーダーは例年だいたい900点前後。

 

 1人当たりの必要点数は45点か。まぁそれなら普通に突破できるだろう。例年退学者が出るそうだが、このクラスの最低点の戸塚ですら60点前後をキープしている。いわんやそれより上位者をやだ。ペーパーシャッフルと呼ばれる試験名である事も発表される。今のところシャッフル要素は無いが、きっとまだ発表されていない部分にその名前の由来があるはずだ。

 

「では、残る説明事項について話す。日程は期末試験は1日5科目で2日に分けて行われる。科目の順番もまた後日発表となる。ただし、勿論科目順に左右されないように勉強する事が肝心だ。万が一、体調不良で欠席する場合は、学校側が欠席の正当性を問い、やむを得ない事情が確認できた場合には、過去の試験から概算された見込み点が与えられる。がしかし休むに該当しない理由であった場合、欠席した試験はすべて0点扱いとなるので注意するように。なので、体調管理に気をつけることだ」

 

 相方が100点を取りまくってくれれば生き残れるだろうが、そうでないと厳しいだろうな。

 

「ペアの決定方法は小テストの後に発表する。そしてこの試験の神髄はここからだ。期末試験では出題される問題をお前達が作成し、その問題を他の3クラスのどれかに割り当てる……つまりどれか1クラスに対して攻撃を仕掛けてもらう。お前達と相手のクラスの総合点を比べ、勝ったクラスが負けたクラスから50ポイントを得るというルールになっている」

 

 お、来たぞ私の時代。よし、では早速東大入試の過去問から引っ張ってくるとしよう。

 

「また、直接対決になった場合は1度に100ポイント移動する。また滅多に無いとは思うが、総合点が同じの場合ポイントは変動しない。さらに、提出された問題は我々教員が公平かつ厳正に審査する。指導要領を超えていたりよほど引っ掛けが悪質な問題等はその都度修正が指示され、そのチェックを繰り返すことによって問題文と解答を完成させていくことになる」

 

 言ってくれるじゃないか。私が指導範囲内でクッソ難しい問題を作れないとでも?選択肢を長くしたりするなど、対応は幾らでも出来る。簡単な単語しか使っていないのに難しい英語のテストだってこの世界には存在しているのだから。

 

「問題を作る際の方法には特に制限は存在しない。他クラスや他学年の生徒を頼ろうが教師に相談しようがネットを参考にしようが、全てお前達の自由となっている。万が一問題作成が間に合わなかった場合学校側が用意することになるが、難易度がかなり低めになるだろう。そして肝心の相手クラスがどこなのかだが、お前達が攻撃したいクラスを私に報告し、その際別のクラスと希望が被った場合は代表者を呼び出してくじ引きを行う」  

 

 ここだけ随分と古典的なやり方になった。

 

「逆に指名が被らなければそのまま確定し、そのクラスに問題を出題する。どのクラスを指名するかは小テストの前日に聞くので、慎重に考えて決めるように。質問がなければ説明を終了する」

 

 そしてその日の授業は終了し、放課後に突入する。

 

 

 

 

 

 

 

 

 大手を振って何か試験の際に前に出れるのは案外楽なものだ。こういう立場になってから気付く。一々推戴を待っているのは手間がかかる。こうして何も言わずとも私が指揮を執るのが当たり前になっている環境と言うのはかなり楽なのだ。反発する声も無い。坂柳がやや不安だが、現状出来る事など何もないに等しい。暫く泳がせておいて、決定的なところで捕まえれば良いだろう。

 

「ペアの組み合わせは大方予想が付きます。恐らく、小テストの1番上と1番下がペア、のように上の人と下の人が組み合わさって行くのでしょうね。でなければ、例年もっと退学者が出ていてもおかしくはありませんから。尤も、このクラスにボーダーを下回ってしまうような生徒が存在するとは思えませんが。それでもどうしても不安という生徒は相談に来てください。2名限定ですが、小テストで0点を取って貰います。そうすると、私か坂柳さん辺りがペアになるので、問題なくクリアできるでしょう」

 

 そんな奴いないと思うが、まぁ一応そういう措置もあるよ~とちらつかせることで安心感を与える。誰だって大丈夫と思っていても退学は怖いものだ。小さな不安でも、取り除いておくことがパフォーマンスを向上させることに繋がる。

 

「問題はどこのクラスを攻撃するかという事です。選択肢は3つ。では、意見を募りましょうか。はい、葛城君」

「俺はDクラスを攻撃するべきだと提案する。Dクラスにも成績優秀な生徒は存在しているが、その大半はやはりお世辞にも成績上位者とは言えない。攻撃するならば最も安全な相手だと言えるだろう。平均点的にはさして差のないBクラスはこちらを攻撃する可能性が高いと言える。ならば、下位クラスを狙って最悪の場合でも±0に抑えるべきだと思うが」

「なるほど。確実な勝利を目指すのであれば、最適解と言えるでしょう。では他に何か……はい、坂柳さん」

「私はBクラスの攻撃を主張します。Cクラスの龍園君はDクラスにご執心。Dクラスも目下の敵はCクラスである以上、下位2クラスは相争うのは見えています。で、あればこそ上を目指して攻撃してくるであろうBクラスを叩き、一気に100ポイントを得る。これが至上では無いでしょうか」

「リスクはありますが、その分得るリターンも多い作戦ですね。他に何かアイデアは?……無いようですね。分かりました、では多数決と行きましょう」

「それで問題ないのか?諸葛の考えもあるだろう」

「う~ん葛城君の言うように私の考えはあるんですが、今回は私は別にどこのクラスを攻撃しても構わないと思っています。それに、このクラスはどこのクラスに攻撃されても問題ない学力帯にいると考えていますので、極論何でも良いんです。皆さんの意見に従いますよ。では、多数決と参りましょう」

 

 決を採った結果としては、39人中Bクラスを攻撃が20人、Dクラスが19人。僅差でBクラスとなった。不安要素は消しておきたいのと、一気に点数を突き放したいという気持ち、さらにはCとDが不俱戴天なのは有名な話だ。下は下で足を引っ張り合ってくれと思っている生徒の多い事を意味する。

 

 こういう結果にはなったものの、葛城としてはそれならそれで良いようだ。あくまでもリスクを考えての提案であったのだろう。攻撃的な作戦立案は坂柳に任せ、自分は保守的な作戦立案に徹する。意見を複数出すことに意味があると言うこの制度の本質をしっかり理解してくれていると思って良いだろう。

 

「では今回の試験ではBクラスを指名することになりました。ただし、勿論予想が外れ、被ってしまう可能性は存在しています。その際は抽選で勝てる事を祈っておいてください。これからの皆さんの身の振り方ですが、今日はこのまま帰っていただいて構いません。明日以降はまた別途ご連絡します。また、特定の方にテスト問題のサンプル集めのために問題回答の御協力をお願いすることになるかと思います。具体的には今回の定期テストでトップテンに入っていた方になるかと。お忙しい中ではあると思いますが、どうぞよろしくお願いします」

 

 全く申し訳ないとは思っていないが、頭を下げた。これで問題は無い。後は自分で問題を作ればいいのだ。問題を作り、サンプルとして優秀な人間に解かせ、難易度を測る。難しすぎるなら簡単にするなどの措置が必要だろう。

 

 元より私の仕事はなるべくこの学年の全員の実力を把握すること。これまでは主にAクラスと他クラスのリーダー格の実力調査に傾けてきたが、これからは次のフェーズに入る。なので、出来るだけ退学して欲しくない。この学校には優秀でない人間も一定数いる。どうしてもっと優秀だったはずの受験生を振り落とし、そうでない生徒を入れたのか。その基準は何なのか。それを知りたいのだ。なので、Bクラスから退学者を出すつもりは無い。半分くらいは普通の問題にしてあげようじゃないか。

 

 ただ、南雲陣営に寝返った事への皮肉くらいは込めてあげよう。

 

 

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

 

 

「それで、私にどうして欲しいんですかねぇ、櫛田さん」

 

 体育祭が終わった後、龍園と組んで堀北を嵌めようとしていた櫛田だったが、あっさりとその罠をDクラスの、恐らく十中八九間違いなく綾小路に看破され、逆に醜態をさらす結果になった。確かに私が彼女を綾小路に売ったのは事実だが、ちゃんと契約していなかった方が悪いと思う。なので、私に罪悪感は一切ない。

 

「諸葛君のせいで……!」

「私のせい?元はと言えば、貴女の迂闊な行動のせいでは?Dクラスの何名かは、貴女が裏切り者であることに薄々感づいていましたよ。私に聞いたのは、最後の確認のためですよ」

「もうこの際それはどうでも良いの!誰にも言ってないでしょうね!?」

「何をです?」

「全部よ!」

 

 ヒステリックに彼女は叫ぶ。そんなに体面が大事なのか。承認欲求を満たすために良い人を演じているのだろう。それには敬意を表するが、この醜態を見るとそれも消えそうだ。

 

「言っていませんよ。必要性を感じなかったので。遅かれ早かれ、貴女のそれは暴露されるでしょうからね」

「そんな……」

「堀北さんは貴女を追い出す気は無いようですね」

「……は?」

「退学させる気があるのなら、貴女の本性や裏切りの事実、過去の出来事を全部洗いざらい話すでしょう。証拠もある今なら、容易だ。でもそれをしていないという事は、彼女は貴女を必要としている」

「……」

「諦めたらいかがですか」

「諦める?そんな事、出来る訳!」

「先ほども言ったように堀北さんは黙っていてくれると思いますよ。恐らく墓場まで。しかし、滑稽な話ですね。承認欲求に踊らされる貴女の真の理解者は、うわべだけしか見ていない他の誰でもなく、貴女が蛇蝎の如く忌み嫌っている堀北さんだなんて」

「うるさい!」

「ご忠告申し上げておきますがね。早くどうにかした方が良いですよ。でないと、全てを失うことになるでしょう」

「あんたの言う事なんてもう信じないから」

「そうですか」

「誰にも言うんじゃないわよ」

「先ほども言いました。今はそうする時ではありませんし、そうする理由もない」

「……絶対いつか退学させてやる」

「頑張って下さいね」 

 

 荒々しく彼女は去って行った。Dクラスは内憂外患。大いに大変だろうが、これをどう御するかで今後が変わって来るだろう。綾小路と堀北のお手並み拝見と行こうじゃないか。




<要求>

ホワイトルームに関する情報は入ったか?

<返答>

現状人員を大幅増員して調査中。林元中将の秘匿していた情報も入ったが詳しい所在地や構成員までは不明。ただし、綾小路清隆に一切の公的機関利用歴並びに受診歴がないため、その存在はほぼ確定的。引き続き大至急で調査を続ける。



<テストです。皆さんも解いてみて下さいね?なお、ガバガバなので間違ってたらごめんなさい>

以下の英文を読み、空所に入る正しい選択肢を4つの内から1つ選び、記号で答えなさい。

Yoshiaki promised to go shopping with Masumi. However, having stayed up late the night before, he was late for the appointment.

Masumi:「You are 30 minutes late (1) your appointment. I think you have something to say to me.」

Yoshiaki:「Sorry」

Masumi:「You should be thankful (2) I was your rendezvous.」

Yoshiaki:「Please don't be so angry. It doesn't mean that I have forgotten my promise to you.」

Masumi:「This time I forgive you.」

Yoshiaki:「Thank you!」

Masumi:「Come to think of it, what's the difference between a promise and a contract? Contracts are something we do a lot in this school, but I don't think we see them all that often around us.」

Yoshiaki:「No, it's not. (3), let's say you and I get married.」

Masumi:「!?!?What are you talking about!?」

Yoshiaki:「It's just for example. Marriage is also a contract. A marriage certificate can be described as a contract, although people may not be aware of it.」

Masumi:「Hence we have to pay alimony when we cheat.」

Yoshiaki:「That's right. I think there are many differences between a promise and a contract. The easiest way to explain the difference among them would be the difference in severity.」

Masumi:「What do you mean (4) severity?」

Yoshiaki:「Promises are often not legally binding even if broken. But contracts often involve the law. That's just my opinion.」

Masumi:「Surprisingly vague.」

Yoshiaki:「It's hard to explain (5) detail. Even if there are any differences, they are both important. If you want people to think you are a respectable person, you should keep your contract.」


(1) a; for b; on c; to d; at
(2) a; what b; which c; that d; as
(3) a; If that's the case b; For example c; Even so d; At the same time
(4) a; in b; to c; by d; that
(5) a; to b; on c; at d; in


諸葛孔明作で実際にBクラス向けに作られた英語の問題の最後の大問がこれです。一之瀬さんは(特に最後の台詞を読んで)顔面蒼白だったそうですけど、何ででしょうね?答えは次回!
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