星冠を戴く王女と試練の絆   作:ベル

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【01】セレナの目覚め

 これは物語が始まる500年前の戦い。

 女神アルテミスの祝福を受け転生する前の「アルテミスONLINE」の記憶――

 

 

 樹龍が眠りしの森深く、星光が聖なる霧を縫い、樹木が天を覆う聖域が広がる。

 太古より地脈が脈打ち、苔むした岩が微かな光を放つ。

 

 風が黄金の髪を揺らす。

 まだ若い妙齢の黒衣の乙女は七色の杖を握り、雷光がその先端で弾けている。

 

「セレナ様。樹龍シルヴァスの申し出を本気で受けるのですか?」

 

 少女の傍らに立つ、青い髪の娘が剣を構え、鋭い眼差しで前を見据えた。

 この地を守り樹龍を守護神とする青い髪の一族である彼女はセレナを信じてついてきた。

 その信頼に応えなければならない。

 

「戦いを試練というのならば避けられましょうか? アドリア」

 

 セレナが青髪のアドリアに答えた。

 

 眼前にそびえるのは、古の魔獣「樹龍シルヴァス」。

 緑の鱗が星光を浴び、巨大な翼が風を切り裂く。

 その咆哮に森が震え、聖域の空気が軋む。

 杖を握る手に力を込めたが、セレナは眼前の脅威に目を向けた。

 

(イベント戦だから仲間のルナっちとかは呼べないんだよねえ……ガチで強いから頑張って! て応援されたけど)

 

「これが星の意思だというのなら戦います! 樹龍シルヴァスよ!」

 

 セレナが杖を振り上げ、純白の雷が夜空を切り裂く。

 黄金の主に付き従う妖精が宙を舞い、「ピコ! ご主人様ビビってる暇なんてないピコよ、フルパワーで行くピコ!」と光の輪を青く瞬かせる。

 

 シルヴァスが巨体を揺らし、太古の声を響かせる。

 

「星の試練を乗り越え、我に勝利せよ! 敗れれば、魂は永遠に霧に呑まれるぞ!」

 

 その眼光は星々の怒りを宿し、まるで夜空そのものがセレナを見下しているようだった。

 シルヴァスが尾を振り下ろすと、大地が割れ、星光に照らされた土がまるで生き物のように舞い上がった。

 倒れた巨木がセレナの足元で砕け、彼女はとっさに跳び退く。

 アドリアが一歩踏み出し駆けると、剣に地脈の緑光を宿し魔法の剣と為した。

 

「我らの守護神といえど刃を交えるというならば、私は戦う! 私がセレナ様を守り抜く!」

 

 アドリアの声が、霧が漂う木々の間を走り抜け、剣が緑光を帯びて、まるで風のように弧を描く。

「翠嵐の刃!」と叫びながら、彼女はシルヴァスの尾を狙って斬りつけた。

 竜燐の尾に火花の残光を残し、森が彼女の覚悟に応えるかのようにざわめいた。

 守護者の一族たる彼女の意志が魂を震わせ、全身をさらなる緑光が包む。

 

 シルヴァスが咆哮し、巨大な尾が大地を叩く。

 樹木が裂け、星光に照らされた土が舞い上がった。

 セレナが白雷を放つと、アドリアは即座にその隙を突いて前に出た。

 

「セレナ様、前は私に!」

 

 二人の息はまるで長年の戦友のように合っていた。

 

(なんてプレッシャー! でも戦いは始まったばかり! 五聖獣を倒して道を切り開くっ!)

 

 セレナの雷光が七色の杖に収束し、特大の雷を生み出し杖を振り上げた。

 

「アルテミスよ! すべての力を開放せよ! 『星脈解放っ!』 来たれっ! 雷神の星槌!!『トール…ハンマーっ!!』」

 

 聖域の霧が二人の動きに揺れ、閃光が戦場を揺らす。

 星の試練を賭けた死闘が幕を開ける――

 

 これは「私」が初めてMMOでメインクエストを踏破していった頃のお話……

 はじめはメインクエストクリアしたら卒業でいいか、と思っていた私の長い長いお付き合いになることを知らなかった頃だ。

 そして10年が過ぎて──

 

 

「も―到着寸前に豪雨とかやばかったなあ……」

 

 時計が深夜を指した頃、帰宅した私はフラフラとPCの前に座る。 

 濡れたスーツを脱ぎ捨て、速攻シャワー浴びて、着替えて、くたびれた高校のジャージ姿の手にはビールが一本。

 28歳OLは本日終了!

 

「ん~~~しみるーっ!」

 

 疲れを吹き飛ばすしゅわしゅわを飲みながら立ち上げた画面には「アルテミスONLIE」が浮かぶ。

 もはや一日の終わりにこれがないと眠れないほどだ。

 

「お、ルナっちインしてる。めずらしー。【おっはー!】」

 

 ログインしてすぐにメンバーリスト確認で、久しぶりのフレンドに挨拶だ。

 

「おひさー! セレナ―! 元気してるー?」

「まあね、なぁ、ルナ、アルテミス2やらん? って他のフレに誘われたけど、速攻断っちゃったよ。いくらグラが良くてもこっちのがいいわ」

「ハハ、セレナ、相変わらずアルテミス命だね! 10年もハマって、リアルで彼氏できたってのに」

「ルナっちはどうしてんの?」

「あたしはー、子供の寝かしつけ終わってやっとログインしたよ、疲れた~ セレナと同じで新しくゲームする時間ないって!」

「うわ、ルナ、子育て大変そう! 私は会社で調整役やって文句言われまくりだけど、パートさんとは仲良いんだよね。私は地味子すぎる人生、変えたくてダイエットで死んだ」

「おー、ダイエットカンストおめでとう! 頑張り屋のセレナらしいね」

「うんうん、頑張ってスリムになったよ! んで、ついに明日は三回目のデート!」

 

 まだ手すら握ってない、驚異の過去デート二回……いや、相手にされてないなら三回目はないはず!

 

「マジ!? セレナ、スリム化成功!? めっちゃ進化したじゃん! 彼氏どんな感じ? イケメン? てか、このマイハウスもさぁ、10年分の資金注ぎ込んだだけあって豪華すぎるよ~ 1億ガネルは伊達じゃない~」

「ふふ、これぞ私の城! 彼氏は……まあ、まあまあかな?(超イケメン!)  デートは映画のチケット予約したよー」

 

 スマホ操作して「彼」のスクショを呼び出す。

 顔スペックは最強クラス、実家も太いらしいというのは付き合い初めて知った情報だが、今が楽しければそれでよかった。

 

 黒い髪は繊細できれいなんだよね。

 どこか目力があって、あの目に見つめられちゃうとドキドキしちゃうんだ~

 そういえば、どこかカリスマ性もあって名家の人でも通じそう。

 彼と会ったのは仕事の出先でだったっけ……

 あ、メール来てた、後で見よう。

 

「映画w あのさ、お前、中学生かよーwww なにそれ」

「いーじゃん! 彼、奥手なんだよ」

「あー、もう落ちないと」

「うん、じゃあねー」

「セレナ、デート頑張ってね!」

 

 ルナがログアウトし、ビールをちびり飲みつつ、今日を振り返る。

 

 会社では上司のミスをカバーして書類を作り直したら、「書類遅い!」に般若と化したが、パートのおばちゃんに「あなたは優しいね」と癒された。

 彼氏とのデートを楽しみに今日も乗り切ったなあ~ 

 

 彼のメール着信を確認する。

『明日のデート! 楽しみにしてるよ!』(ピース写真が添付)

 うわ、イケメンすぎ!  おお、かわいい、かわいい! 返信しよ!

 デートの服はカジュアルに決めてたけど、やっぱ白いワンピース着ようかな?

 

「うん? もう一件……君はゲームとか興味あるの? 例えばオンラインゲームとか?」

 

 うわぁ、ドキ! 

 これは探りを入れられている!?

 もしかして、ネトゲーム10年もはまってるオタク女だとばれたら速攻で切られるパターンか?

 いや待て……百歩譲って彼もなんかゲームやってるサインかも?

 落ち着け私……ここは正念場だぞ!

 

「よし落ち着いた……『えーと、私はね──』。く、これを押せば元には引き返せないー!!」

 

 遠くでゴロっと鳴る音が聞こえた。

 

「あれ、停電? うわ! ごろごろ雷ヤバイ!」

 

 ちかちかし消えた電灯を見上げ、窓の外で雷鳴が響き、部屋が一瞬白く光る。

 次の瞬間、轟いた音がこの世界最後の記憶だった。

 




第一話、投稿しました!
星冠や試練の謎はこれからガンガン明かすから、次回も雷みたいにビビッと期待しててね!
ゲーマーあるあるやピコとのやりとり楽しんでくれたかな?
みんなと一緒に楽しみたいから、応援、感想待ってまーす!

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