Blue Archive…?   作:魚の名前はイノシシ

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明けましておめでとうございます!
今年も遅遅として進まない本作をどうかよろしくお願いします!


番外
アビドス砂漠


 

――円卓

 

「……つまり、新たな年を迎えるにあたってこの円卓を掃除したい、と?」

 

「YES!なのでこちら、復讐者にはヘレンさん達を出してもらって庭の掃除、重いものの運搬、屋根上の掃除や補修を手伝ってもらっています。召使い人形さんには図録やジャーナルの整頓、あとヘレンさん達と協力して掃除をしてもらってます。」

 

「だからいつもより賑やかだったんだね。本の整理なら、私も手伝うよ。」

 

「魔女様なら本の扱いに慣れているから適任ね。」

 

「では隠者先生、お願いしてもいいですか?」

 

「任せて。」

 

「追跡者さんと巫女様には料理を作ってもらいたいんです。習わしとして、刃物を持つのは縁起が悪いとされているんです。だから、長持ちするようなピタパンがあれば丁度いいかな、と!……追跡者さんの身体が辛くなければお願いしたいです。」

 

「問題ない。いつもより雰囲気が違うからか、調子が良い。いくら作る?」

 

「夜渡りの皆が3日食べられるくらいですね。もし人手がなければヘレンさんや召使い人形さんに声をかけてください。」

 

皆に断られるかもって思っていたけど、ノリ気で良かった!さて、フレデリックさんと無頼漢さんはずっとベッドとか邪魔な岩とかを運んでくれているから私もそろそろ屋根の補修に戻らないと!…あれ、鉄の目さん?

 

「…俺は何か出来そうなことは……」

 

「あー……えと、鳥でも見ていて貰えますか?」

 

 

 

「鳥…鳥か。つまり守護者の事か?」

 

「はい、なんでしょうか。」

 

「お前を見ていろと言われた。」

 

「なんと……」

 

 

 

 

 

 

「よーし!大分綺麗になったかな!」

 

穴が開き日が差す入口の広場は、天井が塞がれ雑草もさっぱりと抜かれている。床板もカーペットもどこからか調達してきたようでピカピカのフサフサになっている。

 

「おーう、学徒!こっちも片付いたぜ!」

 

汗だくで輝くフレデリックと無頼漢は大仕事を終えた爽快感でイカつい顔が浄化されている。親指で後ろを指す2人に、背後を覗いてみれば岩どころか木すら残って居らず…視界一面爽やかな草原が広がっていた。

 

「へい!」(よっ)

 

珍しく喋った執行者に呼ばれたのでフレデリック、無頼漢、学徒はその後を着いていく。到着した先は浜辺で、いつもならゴロゴロと流木やら岩やらがあったが、それら全て綺麗に斬られ、流木は三方、岩は餅の形になり、草木は御幣や四方紅に形作られ、彩りも付けられた見事な鏡餅が作られていた。

 

「うぉおーー!!さすが絵描き!技神S!葦名出身は伊達じゃないですね!見事な鏡餅ですよ、これはっ!」

 

「初めて見るが、目出度い代物だと分かるなぁ!」

 

「―――!」

 

無頼漢もフレデリックも、異文化に触れてはしゃいでいるようだ。鏡餅をつついては盛り上がっている。壊さないように二人で丘の上に設置するようお願いしつつ、学徒は次の場所へ移動した。

 

「隠者先生〜!整頓の方はどう、な…だ、大丈夫ですか!?うわ、すごい綺麗になってる!」

 

「が、学徒ちゃん…終わったよ……!」

 

いつもなら乱雑とは言わないが、棚から溢れてそこら辺に積み上がっていたり落ちていたりする本がすっかり無くなっている。見回してみれば棚が増えているではないか。

 

「本棚を作ったんですね!カテゴリー分けもされていてとっても綺麗です!…でも本棚を作る資材なんてありましたっけ?」

 

「うん、残っていたみたいだから少し貰って、加工は召使いさんが。」

 

「寒色の明かりがそのままだから、ザ・書庫!って感じしますね!」

 

一新された書庫を見て、床に本がない寂しさを滲ませながらも学徒は感嘆の声を漏らし、カテゴリー別の本の位置について話したあと、次の場所へ向かった。

 

 

―――厨房

 

雑草が抜かれて、これまた床板が新しくされている。風通しの良い食卓の先、丘に続く道も草木が切り揃えられ、月や星々が煌めいているのが見やすくなっている。

 

「追跡者さーん!巫女様ー!みんな頑張ってくぅッ!!」

 

「学徒か。丁度いい、そこの大皿を持ってきてくれ!」

 

「は、はい!ただいま〜!」

 

人数に対して調理場が狭いと猛抗議した(駄々を捏ねた)過去が生み出した一室、厨房。ゲヘナの給食部の戦場をモチーフにした仕様になっているちゃんとした厨房。

 

その扉を開ければ、むせ返る熱と蒸気、香ばしいピタパンの香りがムンムン沸いている。中には追跡者、レディ、召使い人形がエプロンとシェフ帽を外しているところだった。

 

「凄いですね!こんなに沢山のピタパン、初めて見ましたよ!これなら3日分以上ありそうですね!」

 

「ふふ、喜んでくれたなら良かった。」

 

「英雄サマの空腹を満たすことも、ワタクシの使命。全力でやらせて頂きました!」

 

「良くサポートをしてくれたからすぐに作り終えることができた。感謝する。」

 

「ワタクシもお呼びいただき恐悦至極に存じます!」

 

(おっきめのかご三つ分とこの大皿のピタパン、みんなきっとお腹すかせているから喜んでくれる!)

 

「3人とも、ありがとうございます!では、いい時間なので食事にしましょう。みんなを呼んできますね!」

 

「では、ワタクシはご用意の方を。追跡者様と巫女様はおやすみになってください。」

 

「ありがとう。では、追跡者。少し空でも見ながら……」

 

「いや、俺も手伝―――」

 

「ゴホンッ!…英雄サマ、ワタクシは今とてもやる気と動力に満ちておりますので手助けは不要でございます。ぜひ、巫女様とお休みになられてください!」

 

「……では、丘の上で話そう。」

 

鈍い追跡者の発言にしょも……としおれたレディを見て召使い人形が援護をかけたのを尻目に、ゆっくり各人を招集しに行った。丘の上に鏡餅があるのを伝え忘れて。

 

 

 

 

「明けましておめでとうございまーす!今年も夜の王達をぶっ殺すことを目標に、必勝の新年を祝いましてー!かんぱーい!!」

 

「「「「「「「「乾杯!!」」」」」」」」

 

ロアの実を蒸留した酒とジュースで乾杯をする。

大皿にはピタパンや鳥脚漬け、勇者の肉塊など絶品グルメが置いてあり、各々が好きなように取っては食べている。

 

「――そこで逆上してきたやつを渾身の力でぶん殴って倒した俺はこう言った!『たった一つの敗因…てめーは俺を、怒らせた』ってな!大切な風見鶏に呪いなんてものをかけやがったんだからその時はスカッとしたぜ!」

 

「きゃー!カッコイイー!!」

「仲間の為に立ち向かう、最高にイカしてるな。」

「それでこそ漢だ!」

 

無頼漢の海賊武勇伝を聞いて皆で盛り上がり。

 

 

「そして、振り返った彼女の顔は……まっさらで、何も無かった!!それに驚いた男は腰を抜かしながら暗闇の中、遠くへ遠くへ逃げていきましたとさ……どうでしたか!?結構怖いお話で有名だったんですよ!」

 

「敵だな。」

「一般人は顔がないだけで腰を抜かすのか。」

「野良犬が夜の王より強かったりいきなり飛んでくる鈴玉狩りが怪異過ぎて、その……」

 

「(´・ω・`)ソンナァ」

 

「怖い話なら、私も出来るよ。きっとみんな楽しめると思う。」

 

「隠者先生の怖い話…!きっとすごいんだろうな〜!」

 

「……ある職場に着いていた若い男がいました。その男は毎晩悪夢に魘され、まともに眠ることができない生活をしていた。ある日、とある不治の病にかかってしまったため、治療を求めて【ヤーナム】と呼ばれる……――そして、若い男は永遠に悪夢に囚われ続けた。……どうだった?」

 

「ひぇええ…!な、なんて恐ろしい所なんでしょうか…!?」

「ふん、だが所詮は作り話だろう?そう怯えるなんて笑えるな。」

「な…復讐者は怖くなかったっていうの?!獣、血、上位者!狂気と狂乱と狂殺入り交じった魔境ヤーナムが!」

「そうだぞ、復讐者。この話は本当に怖かった……!」

 

「とはいえな。作り話では――」

 

「?実話だよ。」

 

「おわっ!」

「学徒、私から離れるなよ。」

「むふ、実話だと怖いんぐぇえ!」

 

「…大丈夫か?」

「ええ。でも…暫くはこうさせて?」

 

「おい見ろ!守護者が口開けてフリーズしてるぞ!」

「がははは!騎士の中々お目にかかれない姿だ!貴重だぞ!がははは!」

 

隠者の怖い話に冷えたり盛り上がったり。

 

「ね、復讐者!月が綺麗だよぉ〜!」

 

「本気で言っているのか…?」

 

「え、満月だよ!綺麗だよ〜!うへへ!」

 

「……そうか。そうだな。確かに、月が綺麗だな。」

 

「でしょ〜!!」

 

 

「脈アリか、あれは?」

「アリの方に海賊コイン賭けるぜ。」

「ならナシの方にワンショット用の弓だ。」

「人の色恋で賭け事をするのはどうかと思う。…私はアリの方に懐中時計を。」

「ナシの方に〜…ローブを賭けようかな。」

 

間違えて酒を飲んだ学徒で賭けを始めたり。

 

 

――楽しい年末年始だったなぁ。

 

1人、夜の砂漠を見上げてそう呟く。

首飾りを掛け

髪飾りを着けて

ローブを羽織り、

懐に種子を隠し持ち、

懐中時計を握りしめ…

傍らに大きすぎるほどの弓を置き、

翼の描かれた盾を携え。

……リラを奏でてそうごちる。

 

背後に感じる喧騒と、こちらに向かう足音を知らんぷりしながらアニメの最終回のように星空を見上げる。

 

「こんな年末年始が1番だからね!皆、明けましておめでとう!!」

 

笑顔で振り返り、砂だけが続く世界にそう言った。

 

 

 

 

              

 




今年もよろしくお願いします!
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