怪我注意
─ブロロロロロ……
『便利なもんだな、このヘリってのは。』
『些かうるさすぎるのが難点だが、この人数をまとめて運べるかつ霊鷹と同じほどの速さときた。これもキヴォトスの技術か?』
『ええ、キヴォトスじゃこんな運送ヘリなんて結構あるものです。』
『この無線はどういう仕組みなんだろう?このヘリコプターも、魔術で動いてるわけじゃないし…』
現在、円卓よりヘリコプターを飛ばしてリムベルドへ向かっている最中。搭乗者は9人、パイロットは学徒だ。乗る時に学徒がパイロットじゃ不安じゃないかという話が出たが、当然誰も操縦できないため不安と期待を込めてそれぞれ乗り込んだ。
それからしばらく。
『あ、見えてきた!目標地点は…想像はしてたけど、キヴォトスとリムベルドが融合した感じになってるね。ただ、荒廃してるから見た目がいつもと違うだけで構造は特に変わらなさそう?』
『……いつものリムベルドより随分と広いな。2、3倍は下らない。中央砦が謎の柱になっていて、奥の左側が白、右側が砂漠。手前の左側が黒、右側が…なんだ?ノクラテオに似ているが…』
『多分ミレニアム、かな。簡単に言えばロボット…高性能なゴーレムを製造したり色んな便利な物作ってたりする工房みたいなところ。具体的にはちょっと説明しづらいけど…』
『既に滅んでいて誰も知らん場所の説明をにわかにされても混乱するだけだ。愚か者が更に愚か者になりたくなければ口を閉じておけ。』
『うわああん!ひどいんだぁああ!
(声にならない叫び)』
キィ───ン!
『ぅっ!』
『これは…グレイオールの咆哮!?』
『 』
『うっ、耳が…っ!』
追跡者が呻き、レディがカット率と攻撃力を下げられた。守護者は凛々しい目をしたまま口を開けて固まった。学徒は自滅している。
そんな事がありつつ。
『皆!着陸するから身構えておいて!私操縦はできるけど着陸だけは苦手でさ!多分失敗する!』
『防御を固めろーッ!』
『ふざけるんじゃあないぞ学徒貴様!失敗したらただじゃ済まさないからな!』
『先程の咆哮でカット率が下がっている。きっと私は倒れるだろう。誰か起こしてくれないか?』
『…俺もだ。』
『皆そうじゃない?あの咆哮は全体に向けられてたから。』
『…全てが終わる前に、お別れか?』
それぞれが学徒の言葉に慌てているのを見て学徒は笑っている。
『あっはっはっは!大丈夫だよ、ボタンひとつ押すだけで離着陸勝手にやってくれる機体だから!それに、これだけ広かったら基本的な移動もこのヘリになると思うから早々おじゃんにしないって!』
『二度と話すな。貴様の口は臭すぎる。』
『(グレイオールの咆哮)』
ヘリが着陸し、夜渡りたちが降りてくる。着陸地点はかつて栄華を窮めた砂の大地、アビドス。
「ヘリもいいけどやっぱり地に足つけると安心するね。…このアビドスに強敵はいないみたいだよ。キヴォトスが混ざってるからか、私には今の時点でも【強敵の位置が分かる】。…私情もあるけど、ちょうど近くにあるアビドス分校に行きたい。有用なものも見つかるかもしれないしね。」
その言葉に異を唱えるものは居なかった。
「この校舎の間取りは確か職員室にあるはず。まずはそこで情報を集めよう。もしかしたら、私絡みで敵の位置が分かるかもしれないし。」
1階にあるだろう職員室へと向かう。途中ではボロボロの人型の機械が銃を向けてくることもあったが撃たせる前に始末して止まることなく進む。
廊下は穴が空いて外と友誼を結んでいたり、天井が抜け落ちて上の階を覗くことができる。
「ここが職員室!荒廃してるしもはや見る影もないね。えー、見取り図は…これかな?」
見取り図を手に取り夜渡りたちと覗きそれぞれが持つ地図に書き写す。最初に写し終えた学徒は、己の勘と
「学校に潜む敵の位置がわかった。数は2、会議室と屋上に反応があるよ!」
「手分けして向かうか?」
「そうしよう。未知である地変だからこそ、他にも巡るべき場所があるはずだ。」
選択せよ。
「屋上は俺が行こう。この狭い部屋ん中じゃ獲物を満足に振れないからな。」
「ならオレも屋上に行こう。」
「私は会議室だ。狭い場所でも私の機動力なら充分戦える。」
「(上を指す)」
「私は屋上かな。会議室はうっかり通り過ぎそうだから。」
「会議室だ。お前もどうせそうなんだろう?」
「以心伝心ってこと!?流石、私の相棒だね!」
「俺は屋上だな。狭い中での狙撃は分が悪い。」
「…バランス的に、俺は会議室か。」
決まりだ。
「倒せたら救援に向かうことで合流しよう。入れ違いなら、校門の前!GO!」
─廃れた会議室
ホワイトボードの隅には様々な種類の色つき丸磁石で写真が貼り付けられており、中央辺りでは水性マジックで何かが書かれていた。内容はかすれてしまって読み切れないものの、写真には笑顔の
──かつては学校を守るために会議が開かれた一室。今や残っているものは熱い冷水を被ったユメとオモイデだけ。ただそれだけだ。
輝ける少女たちの懸命の砂の青春は全て、風に吹かれる砂のように、蛇口から延々流れる水のように跡形もなく消失した。
教室の扉から気配を消して覗いた学徒は、ソコに佇む2人の敵を視認すると、身体を震わせながらそっと扉から離れる。青ざめさせ、今にも吐きそうな顔で座り込む。
「…ああ…なんで、なんで……」
「…友人だった奴か?」
「……ううん、友達で、尊敬する先輩。たとえ夜に飲まれていてもね。……覚悟は出来ているつもりだったんだけどなぁ。」
「ここで待っているか?」
「…いや、【アヤネ】先輩も【セリカ】先輩も、きっと今も苦しんでる。介錯してあげたい。」
「まだ他にも学園というのはあるんでしょう?貴女は案内をする役割もある。あまり無理はせず、私達に任せても責めはしないよ。」
「…ありがとう、でも大丈夫。目の前で苦しんでいる友達がいるのに私だけ何もしないのは私が許せないから。」
「…なら躊躇はするなよ、殺るなら殺れ。良いな?」
「うん。アヤネ先輩自身に戦闘力はあんまりないけど、セリカ先輩は普通に固くて強い子。だからセリカちゃんの方は私とレディに任せてアヤネ先輩の方は追跡者さん達とリンチしといて。…よし、行くよ!」
バァン!
「開けろ!夜渡り警察だ!
大人しく首を差し出し速やかに死ね!」
追跡者がセリカにフックを飛ばし腕に引っ掛け引き寄せたのを、学徒が廊下に向けて蹴り飛ばす。追跡者が今度はアヤネにフックを飛ばし、引き寄せて大剣に炎を纏わせながら切りつけるのを見て、セリカに集中する。
「セリカ先輩!私の挑戦状を!受け取って…くださぁい!」
容赦なく、キヴォトスの人間であっても致命的なダメージを負う頭に鉛の
「……っ!」
ダダダダ!
「はっ!」
急所への攻撃によろめきながらもセリカは【シンシアリティ】を連射する。レディを狙うも、彼女が狙いの分かる射撃にあたることは無く、【レディの短剣】で4連撃を食らってしまう。
一度距離をはなすためステップを踏み、学徒達から離れるセリカ
「なるほど、硬いな。」
セリカの耐久力は、夜道に奇襲で砲撃を食らっても気絶はすれどもほとんど怪我をしないほどだ。いかに斬撃であろうとも、急所に当たっていない4回だけでは殺すに至らない。さらに、
「狭い通路で、背後を取らせない動きもできるのか。」
彼女の特性は猫である。それ即ち、身のこなしが軽く警戒心による挟み撃ちを許さない立ち回りを可能とする。
「私が注意を引きます、その隙に攻撃を重ねてください!」
「ああ。」
セリカと正面から撃ち合う。ここは廊下で、障害物もない。いかに躱していかに当てるか。レディと、レディから身のこなしを教わった学徒の連携が試される。
「
ダダダダ!
「先輩が黙ってるとムズムズしますね!いつもなら何かしら喋りながら撃ち合っていたから、尚更!」
「………」
ダダダダ!ダダダダ!
「先輩、まだそこに居るのなら!やってやりかえしての言葉の応酬を希望します!」
「……」
ダダダダ!
「知ってますか、先輩!ゲルマニウム麦飯石ブレスレットって、ミレニアムの非公式部活が売ってたらしいですよ!?ミライって人が、自分から教えてくれました!先輩なら出元が分からず効果だけ聞いて買ってそ─」
「……っ!」*1
ダダダダダダダダダダ!
「─うだか…いだだだだ!?わた、私に当たらないで下さいよ!?悪いのは出元を調べず耳障りの良い言葉に騙されるあなたでしょう!?」
目の前のセリカにバレないよう、自らの銃を顔の前に上げてレディに目配せをする。次で確実に仕留めるのだ。
「そうやって八つ当たりするの、よくないと思うんですけど可愛いから許しましょうか!?─それよりも、聞きたいことがあります!」
「………」
学徒の質問のなげかけになんの反応もせずシンシアリティ照準を学徒の脳天に定め、トリガーを──
「小鳥遊委員長は、今どこにいるんですか?」
「────っ」
「はっ!」
「──…!」
──引けなかった。その明確な隙を持って、レディがセリカの背後より致命の一撃を叩き込む。背筋を断つように短剣を突き刺し、背中を蹴って地に伏せさせる。
「卑怯とは言うまいね?私だけを見てたあなたが悪いんですから。よそ見なんてさせるつもりありませんでしたけど。」
「………」
何時もの狭間の地の敵とは違い確かな【生命への致命の一撃】は届き、それで尚立ち上がろうとするセリカの額に銃口を突きつける学徒。背後にはレディ、眼前には学徒、自身は血に伏している状況は詰みであった。
「…さようなら。貴女と会えて良かった。一緒になって働いたことも、ラーメンを食べたことも、誘拐されたことも忘れません。ゲルマニウムブレスレットを私にも買わせたことも、絶対。絶対に。」
「…………」
どこか気まづそうな顔をしているようなセリカに、トドメを撃とうとした時。
バガン!
「うわっ!アヤネ先輩!?」
「………」
会議室の壁が爆発で吹き飛び、立ち込める煙の中アヤネが飛び出しセリカを攫っていく。向かう先は、
「…グラウンド?」
「ちっ、あと少しの所で!学徒、奴らはどこへ行った!」
「グラウンドに向かって行った!会議室から外に飛び出したところの!」
「…追うぞ。」
アヤネ達を追ってグラウンドに向かうと、屋上に行ったメンバーもちょうどグラウンドに集まってきていた。
「こっちも向こうも合流しちまったみてぇだな。」
9対4の人数差は、アビドスの彼女たちが合わされば合ってないようなものである。
「シロコ先輩に、ノノミ先輩…!」
傷の見える2人が前に出て、後ろではアヤネがセリカを手当している。与えたダメージが半分以上回復されてしまった。そして…
「あれは、先生!…の、幻影!」
彼女たちの背後に光が漏れ、忌み鬼の強襲のようだがそれよりも遥かに静かに、ゆっくりと赤黒い先生の幻影が出現した。
「先生が指揮を執るなんて、聞いてない…!」
「そんなに不味いのか?」
「ええ。断言します。誇張的かもしれませんが彼が指揮するのなら、一欠片の油断もミスも許されない。彼は正しく、勝利の導きそのもの。」
ひぃん、と鳴きながら緊張を見せる学徒だが。
「なら、今までとあんまり変わらないね。」
「そうだな。油断もミスも、夜に飲まれる敗因だ。今誰1人飲まれていないのは、それらを油断なく完璧に打ち倒して来たから。そうだろう?」
「この期に及んで指揮官が着いたからとしり込みしているんじゃない。敵に着いたのなら、こちらもつかせればいいだけだ。」
「そうだ。狙撃手は、ターゲットがいて完遂される。」
「そうかな…そうかも…?」
「そうだとも。風はなくとも空は飛べるが、追い風はあるに越したことはない。そうだろう、隠者先生?」
「そう。魔力回路、詠唱、術式。どれも魔術を使うにあたって大事だけど、巡らせる魔力がなければ何も起きないのは教えたね?」
「…え、私が風になって魔力になるの?なんで!?復讐者ちゃんが1番合ってるんじゃないの?うわ、シッテムの箱が起動した!なんで!?」
「うだうだ言うな。奴ら、夜に飲まれた分際で事が纏まるのを待っているぞ。選べ、道半ばで死ぬか、お前が指揮を執るのか。その箱も何のために持ってきた?」
「誰も反発などしない。…俺たちを上手く使え。分かっているな?」
「…ええ、やりますよ!みんなの期待に応えるために!円卓のスーパースター、学徒が指揮をします!」
シッテムの箱から出てきたインカムを流れるようにポイポイと皆に渡し、装着するのを見る。
''────''
「「「「………」」」」
話が終わったのを感じてか、あるいは消耗した体力が回復しきったからか、相手も動き出す。先生が指揮を執りアヤネが後ろに、ノノミ、シロコ、セリカが前に出る。
対する円卓側は、学徒が指揮を執り隠者、鉄の目が後ろに、無頼漢、守護者、レディ、追跡者が前に出る。復讐者と執行者は学徒に流れ弾が行かないようにするための護衛役として待機。
(シッテムの箱ってこんな感じなんだ…ちょっとキモイ!)*2
「この箱は戦闘指揮を補助してくれるけど前衛4人、後衛2人までの制限があるから皆頼むよ!私、なんか動けないから!」*3
「やはり手強い…!《隠者先生、シロコ先輩に混成魔術をお願いします。鉄の目さんはセリカ先輩にダガーでマーキングを。傷をつけたら足を狙って狙撃お願いします!》」
(分かっては居たけど皆強い!ドローンの操作だって狙撃を交わしたり動きにフェイントを掛けてる。火力ドローンの方は撃ち落とせてるけど、回復ドローンには何度かすり抜けられているし、1個壊してもどこからか湧いてくる…)
「ほぼ死んでるみたいなもんだからヘイローも弱ってると思ってたのに!元気すぎるよ〜!」
「言ってる場合か!距離を取られて追っている間に攻撃を仕掛けられて幾らか被弾している、このままじゃこちらが削られて終わりだぞ!」
「わ、分かってるけどどうしたらいいのか分かんないよ!?指揮のアドバイスとか、何をしたらいいのかとか、なんかこう!いい感じの意見ない!?」
「私にわかるわけが無いだろう!?ヘレンたちを呼んでいるのだって指揮のためじゃなく共闘のためだ!魔術師に教えられたことで使えそうなのとかないか?」
夜渡りたちが戦っている中、わちゃわちゃワタワタと焦り散らかしている学徒と復讐者。幻影とはいえ先生がいる戦場でそんなことをしていればあっという間に負けてしまうが、それを見ていた先生はシロコ達に後退するよう指示を出した。
「退いた?なんで?と、とりあえず…『皆さん1度戻ってきてください!仕切り直し、のようです…?』」
''───、───''
''────。───?''
「…………。」
「…………!」
「………☆」
「…、………。」
大きく後退したシロコ達に何かを伝えた先生。それをセリカは、呆れた、信じられないと言いたそうにしながらも頷いた。他の【生徒】達も表情は窺えないがどこか満足気にして頷き、夜渡り達を見据える。
「あれは?」
「奴から奴の持つ箱に夜が流れて…?」
「どうなってる?箱を介して子供にも夜のエネルギーが流れてるが、何も変化は起きていない…?」
「…彼は幻影でも先生だから何か教えようとしている?」
「だが奴は夜が創り出した紛い物だ。感情などがあるはずが……」
「…何か分かるか?学徒。」
振り向くと、そこには涙目になりながら寂しげに笑みを浮かべている学徒がシッテムの箱を胸に抱いていた。
「…やっぱり先生は【先生】なんだね。…先輩たち、先生。苦しくて辛くて、絶望の中に閉じ込められてるのに…ありがとう。それしか言う言葉が見つからない。」
「何とかなりそうか?」
「何とでもする!」
「ガハハハ、頼もしいじゃねぇか!そのまま第2ラウンドも頼むぞ!」
再び両陣営とも配置につき各々闘志を滾らせる。
「第2ラウンド、行きます!」
シッテムの箱に力を込めるイメージをすると透き通るような【青と黄金のオーラ】が溢れ流れ込む。そのエネルギーは学徒の指揮下にある夜渡り達のステータスを底上げする【
(追跡者さんに鍛えられて【第六感】には劣るけど勘が良くなったのに加えて【目利き】のコツを応用してそれをアシスト!)
「連射銃の掃射!守護者ハイガード!レディはその隙を攻撃!追跡者、シロコの右半身目掛けてフック射出!無頼漢は右に避けた所をカッ飛ばして!隠者、セリカに集中攻撃!魔力と炎の属性痕集めといて!鉄の目、溜まった?」
「何時でも撃てる」
「なら合図出すからその時に!」
─戦いは円卓側の有利で進められている。肩やわき腹を撃たれても強靭な肉体で堪え、片腕を撃たれ使えなくされても行儀の良いふりを辞めた強烈な蹴りともう片方に握った短剣で反撃し、分厚い盾に穴が開きそうになるほど連射を受け止め続け壊滅級のダメージを押さえ込み、フックで引き寄せ炎を纏った追撃で着実にダメージを蓄積させていった。
「─《無頼漢トーテム・ステラ!ドローン出そうとしてるシロコ抑えて!追跡者ノノミ引き寄せ!守護者ノノミブロック!レディはセリカ引き付けて!合流させる!隠者混成魔術で固まったところを囲って!》」
「皆下がって!鉄の目、ノノミに向けて発射準備───今!てぇーー!」
「はぁ───!」
─ダンッ! ビュォ──!
前衛が敵をまとめあげたところを鉄の目の【ワンショット】で一網打尽。回復される前の削られていた体力は強烈な一撃の元に消し飛んだ。直で受けたノノミは右肩から先が無くなり耳も飛んだのか上半身が真っ赤に染まった。ソニックブームを受けた他の面々も目や耳から血が出ており、所々骨折もしているのか腕が上がらない様子。
セリカは足が、シロコは腕が動かず、口から血を吐いている。
「力を合わせて大勝利!ってね。……さて。殺す気でやってもらったけどまだ死んでないのは夜が影響してる?ただもう動けないでしょ。戦闘ルールは私ももう知ってる…前衛が戦闘不能になれば後衛が元気で残っていても敗北判定。力が奪われて立つことも出来ないでしょう?」
「………」
「…………」
「……☆」
「…、………。」
「……」
これから先輩方を葬る。私の持つシッテムの箱に流し込んだエネルギー、アレがプレナパテスの弱点属性の『神秘』。直感だけどこの神秘は夜に飲まれた先輩方を葬る…夜明けを示すに必須な力。
「夜に飲まれる瞬間はさぞ恐ろしかったことでしょう。苦しくても楽しい日常が突然侵食侵略されて、抗えど抗えど抗いきれず夜に飲まれて。私だけがどうして夜渡りとして生き残ってしまったのか、今なら分かります。」
「柴関ラーメンに連れて行ってくれてありがとう、ヘリの操縦を教えてくれてありがとう、銃を買ってくれてありがとう、覆面をくれてありがとう。
私を、学校は違えど大切な後輩と呼んでくれてありがとう!
…柴大将に猫派か犬派かしつこく聞いてごめんなさい。
自分のと間違えてロードバイクに油性マジックで私の名前、書いててバレないように同色のシール、貼っててごめんなさいっ
メガネを外す瞬間を…っ写真に撮ってムツキさんに売り渡してて、ごめんなさい…っ
勝手にミニガンにペロロ様を、15体っ貼り付けてごめんなさいっ…!」
先輩方と見たユメとオモイデは、きっと忘れません。先輩方に受けた恩は必ず誰かに返します。先輩方にかけてしまった迷惑は許してください。謝るので絶対に。*4
「この感謝が、謝罪が届くことは無いと分かっているけれど!本当に本当に、ありがとうございました!!皆さんのことは絶対に忘れません!」
「「「「………!!」」」」
「さようなら!次に会う時はきっと初対面だけど『また会いましょう』!新たな夜明けの先で!」
バンバンバンバン!
4人は、それぞれ潜在する能力を落とし消えていった。
「…最後は貴方だけですね。」
''……''
「夜の具現である貴方を見逃すことは出来ません。例え先生の分見であっても。別れの言葉もなしですか?」
''
「…はい。さようなら。【アビドスの先生】。」
バン!
幻影は霧散し、跡には1つの祝福以外何も残らなかった。ただ戦場となった痕跡だけが残っていた。まるで悪い夢のように。
──ピコン!
霧散した幻影は1部シッテムの箱に流れ込む。
──シッテムの箱のレベルが上がった!
「学徒はイベントクエストをクリアして勇者レベルが上がりました、ってところかな?」
微かに黄金を宿した瞳でメンバーを見回す。学徒に微笑みを向け寄り添う頼もしい仲間と共に話し合い、次の学園へ向かうのだった。
To Be Continued……
次回─「Day.1」