Blue Archive…?   作:魚の名前はイノシシ

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長らくお待たせしたような…待っている人いるのかは置いておきますが。


DAY.1 ボス

 

─ミレニアムサイエンススクール

 

「あ、こんなところにロアの実が…拾っとこ〜っと!」

 

ちょくちょく拾い物や拾い食いをしながら進むことしばらく。特に何も無く、疾走しながら奥に行く。机や謎の壺やらがバキバキに割れているが気にする者は一人もいない。

 

「…ノクラテオに似た造りになっているが、あそこと比べると圧力は薄いが威圧感は強いな。砂漠同様、ここにも強者が待っているな。」

 

「道や建造物もほとんど崩れたりせずに残っているわ。襲いかかる敵にもこれといって目立つ劣化や汚れは無いみたいね。」

 

「ん?何コレこんなのあったっけ?」

 

「……そのスイッチがどうした?」

 

「こんなのミレニアムに留学した時にも見たことないなって。でも知らないだけであったのかも。…この辺りはこれで全部かな、次は──」

 

「…………」

 

「──に行こうと思って─?……!?」

 

「どうした?」

 

「急に何を固まって…」

 

「…………ふふっ」

 

「レディさん?もしかしてそのスイッチ押そうとしてますか?」

 

「………いや。押さないとも。ああ、押さないとも。宿命を超える最後の夜だ。今まで以上に足を引くようなことはしないとも。粛清ものでは済まないからな。」

 

「そこら辺は巫女様として信用できるので良いですが…ダメですからね、もし何かの起動に紐づくものだったら大変……隠者先生も聞いてますか?」

 

「……ん、ああ。そう、だね。押したら不味いね。誰かが押したらまずいから預かっておく。」

 

「わ、分かってるのなら…良いんですが…」

 

隠者にスイッチを手渡した学徒。隠者ならゆるふわに見えてしっかりしているからと夜渡りたちは皆安心していたが、その視線がずっとスイッチに向けられていることに気づかなかった。

同じく、スイッチをガン見していたレディを除いて。

 

「──隠者!スイッチから手を離せ!」

 

少し歩いて響く不意の怒号。驚き振り返る一同が目にしたのは左手で右腕を抑え、右手には親指に今にも触れそうなスイッチがある。

汗をかき、必死に理性を推し留めているものの、好奇心を煽るナニカがあるのか今にも押されそうになっている。

 

「ッ!得体の知れない(キラークイーンの)スイッチを押させるなぁーッ!」

 

「いいや限界だ!()()ね!今だッ!」

 

カチッ!

 

「あっ?!」

 

「隠者先生!?どうして!?」

 

「おい何してる!?」

 

「まずいぜこりゃ…何が起きるか分かったもんじゃねぇ!」

 

「押したのか?あのスイッチを??」

 

「…その様だ。何が来るか不明だ、構えておけ!」

 

「先生……何してるんですか……」

 

ウーーッ!ウーーーッ!!

 

喧しくなるサイレン。どこからともなく湧いてきた四角いロボット。機械的な女性のアナウンスが校内に響き渡る。

 

『ミレニアムサイエンススクール 防衛プログラム 起動』

『スクール内9名の身元をスキャン…登録情報、無し』

『──所属不明の9名による侵襲を確認。防衛プロトコル、【エリドゥシステム】起動。』

 

周囲の建物から、地面から、次々とスイーパーロボット達や海洋生物のようなロボットやらが溢れ出てくる。四角のボディに脚が着いただけの姿だが、数による物量圧殺は容易に行われるだろう。

 

『侵入者を排除します。』

 

「シッテム起動、サポート開始!全力で走ってぇええええ!?」

 

 

めちゃくちゃ走り回った。

 

 

「はぁ〜〜〜……勘弁してくださいよ隠者先生…隠者先生でも解けないような魔術的な仕掛けでもあるのかと思ったら……ほら、守護者さんがすごい目で見てますよ?あんまり好奇心にも負けないでください。苦楽を共にした仲間をこんな時に殺すなんて決戦前なのにダダ下がりですよ、テンション。」

 

「知恵が回れば知識も多く記憶する隠者ともあろう者がスイッチのひとつに惹かれていては世話がない。鉄の目のワンショットや無頼漢のトーテムで広範囲撃破と足止めができなかったら夜超えどころじゃなかったんだぞ。」

 

「姿を隠して音を消してもまさか体温で感知してくるとは思わなかったな。」

 

「(下を指す)」

 

「…ごめんなさい、皆。」

 

「次やったら''コレ''ですからね!私がリーダーですから私がケジメをつけますし、つけさせますので!」

 

手持ちの銃を隠者の頭に突きつけ、頬を膨らませ怒っているアピールをする学徒の目は、どこまでも蒼かった。

 

 

 

 

 

『─だから、スライムは粉でクリティカルになってプレイヤーがネギになるの!何回も説明させないでよ!』

 

『わっかんないよ!なんでクリティカルになったらネギになるの!?』

 

『もぉおお!もう1回言うけど、スライムは……あれ、──じゃん!』

 

『あ、──!?聞いてよ、お姉ちゃんがまた…!』

 

『それはミドリがキレテツな敵欲しいって…!』

 

どうしたの?あと奇天烈じゃない?

TSCの新作の話?あとキレテツじゃなくて奇天烈ね。

 

TSCの新作の話?あとキレテツじゃなくて奇天烈ね。◀

 

『そうなんだけど、クリティカル攻撃をプレイヤーが与えたら、与えたプレイヤーキャラクターが一生ネギになるって…しかもタマネギ。』

 

『何がおかしいの?人は皆、タマネギなんだよ?ほら見てコノ重さのある外見!かっこいいタマネギだと思うよね!?』

 

人は人だよ、タマネギは食べ物

モモイはタマネギだけど、人はタマネギじゃないから。

 

 

モモイはタマネギだけど、人はタマネギじゃないから◀

 

『私もひとだよぉー!!もういい、何がなんでもぜーったいタマネギにしてやる!!』

 

『来たわよー。あら、──じゃない!今ゲーム開発部はどんな『大魔王ユウカだって大根からタマネギにしてやるもんね!!』……モ〜モ〜イ〜!!』

 

『ユ、ユウカ!?違くて、これは、その……ちょ、やめっ!

誰かた、助け──おあーっ!?』

 

 

 

 

 

 

「懐かしいな、なんやかんやあってこの部室で人類タマネギ化計画を立てたっけな。最終的にタマネギと青ネギと球根の三竦みができたんだっけ。全部まとめてC&Cに掃除されたんだけど……留学も良かったなぁ。」

 

「なんだその…なんだそれは?頭いいやつの集まりなんじゃなかったのか?」

「珍妙な戦いもあったんだな。」

「なんやかんやで誤魔化していい所なのか?それは。」

 

 

「ふふ、途中で勃発した魔王と四天王のレイドバトルに発展したけどキノコ、タケノコ、アルフォートの派閥が力を貸してくれて切り抜けられたのもあるんだよねぇ。」

 

 

「…話に着いて行けないな。」

「荒波みたいで面白いな!ガッハッハ!」

「学徒の群れは複数あったのか?」

 

「いや、私が群れに紛れてたって感じかな。本来はアビドス、こっちには遊びに来た時にモモイが勇者一行の仲間に入れてくれたの。他のミレニアムの子達との橋渡しも、本人は自覚がないんだろうけど仲良くなれるように立ち回ってくれたよ。」

 

「優しい子、だったんだね。」

 

「うん。実力は1人だとあんまりだったしやる事大体めちゃくちゃだけど、一途だった。それが厄介な所でもあったんだけどね。それに、皆で力を合わせて強大な存在に立ち向かう時は…誰よりも強かったよ。」

 

 

 

 

 

『ゲームの新鮮なインスピレーションは、未開の土地にこそあるとみた!』

 

それで、どうするの?◀

 

『ゲヘナの火山にロマンを求めて密航します。』*1

 

だから気に入ったッ!

いつ出発するの?私も同行したい

 

だから気に入ったッ!◀

 

『イクゾォ!!デッデ(略』

 

 

 

 

 

「今思い返すとまともな記憶が無いな〜、ココは。新素材開発部に付き合ったら列車、江ル電が爆発して移動手段が無いトレインになったから歩きでゲヘナまで向かったんだけどその間に風紀委員会に保護(収監)されたり美食會に狙われたりしたんだよね…大変だったなぁ」

 

「おう、キヴォトスってのは退屈しなさそうだな!」

「移動中に事故が起きやすい都市なのに存続できていたのは凄いな。運営も学徒と同じ年頃の子供たちが行っていたんだろう?」

 

「うん、その分トラブルがあったり横領癒着圧政支配とかそこそこ闇の部分があったりもしたけど…っと、話の途中だけどセミナーの会長室だよ!奥のデスクにミレニアムのシステム制御を担うマスターキー的なアレがあるはず……」

 

「……あれほどの威力を持った武器がそこら中で使われていたのなら死人も相応に多かった筈だ。いくら頑丈だとしても、ここまでの道だけでも死因になりうる危険域は見受けられた。」

「砂漠では遭難、脱水、熱中症、砂嵐。誘拐や暗殺に適した土地でもあるわ。この都市部では……」

「防衛ロボットによる過剰防衛、化学技術の暴走、制作者の意図しない使用目的での道具を巡っての争い、かな?」

 

「言われてみれば特に無かったね、そういうのは。大体薬品を作る系統はセミナーに申告しなきゃしたら行けないルールがあったし、武器を作ってるところだと何回も失敗して部室の天井吹き飛んだりしてるけど死人どころか怪我人もあんまり出てなかったかな。」

 

電気もつかない暗く、広い部屋。入口からでは奥も見えない程の暗さ故誰も気づかなかった。音がするわけでも、呼吸を感じる訳でもなくただただ機械的な空気が続いていたから。

 

だから。

 

…果てなき雨を、夜を晴らさんとする勇者たちよ、よくぞここまでやってきた。

 

奥の玉座とも言うべきか?セミナーの会長のみが座ることを許された物があった場所、成れ果てた姿となった瓦礫の山。そこに彼女はいた。

 

「ぁ…アリス、ちゃん?」

積み重なった瓦礫の頂点に、その矮躯には不相応な巨大な銃を傍に突き刺し、柔らかく…しかし刺すように鋭く夜渡りを見定める。

 

「しかし残念ながら…ここが果てしない使命の終わり、罪の精算所…終着点です。予言しましょう、あなた達の願いは何一つ叶わず、それぞれの道を分かたれて──''運命の死''に直面すると。これはその断剣、【デブリ・アンノヴァ(堕ちた聖剣)】。」

 

アリスがスーパーノヴァ──デブリ・アンノヴァを引き抜くとゆっくりと瓦礫の山を降りていく。それに対し、学徒が夜渡りたちより1歩前へ出て言葉を返す。

 

「そうはならないよ。私たちがどれだけの夜の荒風や王の暴威を超えてきたと思ってるの?」

 

その言葉を聞いてか否か、アリスの目は寂しげに優しく、柔らかく細められ……1つ瞬きをした後には冷たさを帯びる。

 

「ならば私は無名の魔王としてお前たちを始末しなくてはなりませんね。あなたの事はもうあまり記憶に残っていませんが敢えて言います…お久しぶりです、──。ここにいるのは人間ではなく、名を失った魔王、ただ司祭たちに作られた、感情を持ってしまった欠陥兵器です。…大切だと思っていたものを何一つ守れず、挙句には資格たる聖剣を汚した恥知らず。」

 

アリス──否、無名の魔王。雨に流され、名も、唯一の''鍵''も、そして今まで支えてきた心の支柱を失い壊れた終末兵器AL-1S。

学徒には、ずっと堪えるような苦しげな表情を浮かべているように見えた。それは学徒だからこそ見抜けたことであり、''助けを求める顔''を見抜けたのはかつて勇者一行の一員として共にクエストとして人助けをしていたから。

 

─無名の王ではなく、無名の魔王。前はもっと明るく、楽しげな話し方をしていた彼女。もはや彼女自身に影響した意味不明で愛のこもっていた大好きだったゲームとは反対だ。

 

「ねぇ、アリスちゃん。勇者に憧れて、そうなるために経験値を積んできたアリスちゃんが何故そんな所にいるのか、モモイ達はどうしたのかとか…色々知りたいけど、そんな顔して……」

 

「…警告はしました。では、これより冒険者たちの掃討を開始します!さあ、勇敢なる冒険者たちよ!宝を守る魔王を倒して奥の玉座に見事座ってみせよ!」

 

「……その道を歩くしかないのなら。私が終わらせてあげる。全力で殺すよ、貴女を(大好きだよ、勇者様)。」

 

 

そう告げると同時に、学徒は無頼漢、レディ、復讐者、執行者を前に出し、後ろに隠者と鉄の目を配置。守護者には自身を守らせて、追跡者には襲ってきた敵を守護者と連携して迎撃するように頼った。

 

 

無名の魔王は横並びに小柄な人型の機械を3体呼び出した。背丈やシルエットが一致している猫耳尻尾付きが2体、ブカブカな印象があるコートのようなものが生えているのが一体。どれも顔がのっぺりとしていて服のようなものはボタンと袖にラインが入っているだけで色や細かな装飾は何も無い。モチーフとなる人物がいたと想像させるが、造り手の記憶の薄らぎも分かる。

 

 

「この記憶を最優先にセキュリティを幾重にも重ね続けていますが、侵食は時間が経つほどに強くなり、今やセキュリティの精製が追いつかなくなりつつあります…けれど。けれどね。」

 

 

無名の魔王たちの後ろから、夜の罪人たちが現れるような靄が立ち込め、やがて人型を作った。…見覚えのありすぎるその姿は、白い紙に落とした墨の雫を叩き広めたような。あるいは純粋な玉にヒビが入ったような。赤黒いシルエットに侵しえない夜のヒビ割れが入ったその人は、アビドスの姿よりも侵食が強い姿で現れた。

 

 

「…()()()()()()()()()()()()()()()()()でしょう。このヒトの記憶はほとんどないけれど、命懸けで守ろうと奔走してくれていたのは解ります。自身の侵食を顧みずに。そして今も……もう生徒なんかではないのに、助けを呼べば来てくれるんです。」

 

もはや人としても邪道に堕ちた──と続けようとするのを遮って。学徒が声を上げ、幻影の''先生''がアリスの肩に手を置いた。

 

「それは違うよ、アリス。」

''─────、──。''

 

「……え?」

 

それはまるで、言葉を話せない幻影の代わりに伝えているようで。

 

「アリスは今も、ちゃんと先生の生徒だよ。」

''─────。''

 

離れている学徒の代わりに、今も己を傷つける魔王の肩に触れているようで。

 

「……はぁ、確かに先生ならそう言います。それでも、──。ここに居るのは幻影です。私が最後に見た先生に縋って、先生が答えてくれているだけで…彼本人ではない。しかして指揮に劣り無し。

さあ!最強の魔王と傀儡たちに勝てますか?蛮勇なる──勇者たちよ!」

 

先程と比べてほんの少しだけマシな顔つきになった。

 

先生はそのままの位置でシッテムの箱によるアシストを開始。同時に学徒もシッテムの箱を起動し、アシストを受け入れる。

 

「なるほど、シッテムの箱のレベルが上がったら負担が抑えられている。キツいのは変わんないけど長く指揮できそう。」

 

 

''──、──!''

 

「先手必勝ですね──夜よ」

 

「──#!」

「──♪」

「───!」

 

3人の影は無頼漢たち4人に向けて斉射された。

無名の魔王の銃口からは、悪を浄化するような青い光ではなく、全てを飲み込む黒い光線が学徒に向けて射出される。

 

「『レディさんと復讐者は無頼漢さんと執行者さんの陰に。戦技、輝剣の円陣とヘレンさんを召喚して。隠者先生は無頼漢さん達から炎属性を回収して迎撃、鉄の目さんは無名の魔王にアローレインを。』っ守護者さん!」

 

「重い、な!だが防げないものでは無い!」

 

「……襲ってくる、機械も大して強くは無い。守護者、そのまま学徒の護りに専念してくれ。」

 

「『無頼漢さんとレディさんはモモとミドリの双子を、復讐者フレデリックさんをブカブカに向かわせた後、執行者さんと無名の魔王に集中。鉄の目さんと隠者先生はとにかくフレデリックさんの援護。鉄の目さんはマーキングを切らさないように、隠者先生は積極的に混成魔術を撃って。』…守護者さん、数が多くなったら追跡者さんを手伝って欲しい。」

 

 

「無名の魔王…躱したり拳で応戦したり…いや、これはっ!『復讐者、執行者!無名の魔王に銃のトリガーを引かせるなっ!!』」

 

「──モモイ、ミドリ、ユズ!私を、助けてください!」

 

「──ッ!」

「この波動、近づくだけで…!学徒、行進を使うぞ!!」

 

人モドキから、精巧な人間の姿になり、各性能も段違いに跳ね上がる。まるで、魂が乗っているように。

 

「俺と隠者が、妨害すら出来ないだと!?」

「この子のこと舐めていたけど、肝心な時に役に立つタイプだった!」

 

隠者、鉄の目も遠距離から無名の魔王を妨害しようと試みるも、鉄の目が視線を向けた瞬間、隠者が意識を向けた瞬間に、どう察知しているのかユズ擬きの的確な妨害攻撃が入る。

 

「この連携、このパワー!?」

 

「押されている!」

 

緑の猫耳にじっとりと開かれながらも笑うミドリ。

とても楽しそうな顔をしながら銃を乱射するモモイ。

双子の連携はレディと無頼漢を留めるばかりか、逆に押し返し始めている。

 

 

復讐者がその矮躯に不死のエネルギーを蓄え始めるが、それと同時に無名の魔王の発射準備も整った。夜の力を蓄えた銃を地面に向けて構え、腕を上に向けた先生の合図を待っている。

 

 

 

『復讐者!!』

「──ぁぁああああああ!!」

 

不死の力を解放し、

 

''───''

「───夜の力よ!!」

 

同時に発射される まおうの いちげき!

 

 

チュド──────

 

ヒュァァアアアア!

 

 

 

柱を残して部屋は消し飛んだ。空いた空からは夜空が浮かんでおり、壁があったさらに先を見れば青い炎が円を描いて、夜渡り達が皆力尽きるのを今か今かと待っている。

 

 

…復讐者のアーツはギリギリ間に合った。無名の魔王による技の余波で、近寄る敵性ロボット、近くで戦っていた全ての精巧な人擬きは親指を立てながら地面に溶けるように消滅し、夜渡り達の体は焼けた。特に執行者と無頼漢のダメージが大きい。

無頼漢は近くに居たレディを庇い武器を構えて正面から受けた為、いくら強靭な彼の肉体といえど限界を迎え膝を着いた。

 

執行者は復讐者の前に出て、誰よりもいちばん近い場所で妖刀の弾きで大技を受けた。妖刀で庇いきれなかった左腕は消し飛び、両足は熱された地面に焼け付き、爛れた関節が自重を支えきれなくなり膝からくずおれた。大技をギリギリ弾けたものの、至近距離で受けた余波でこれ程のスリップダメージを受けた。もし復讐者が間に合っていなければ、そのまま夜に取り込まれていただろう。

 

 

夜渡り達に宿る祝福に影響を与える。

その理外の力こそ、魔王たる所以である。

 

 

「筋肉のおじさんも、この坩堝の人も最早まともに戦えないでしょう。実質2人ですね。この状況でどうしますか?学徒。」

 

無名の魔王は目の前で崩れ倒れた執行者が立ち上がってこないのを見て、学徒に視線を向けてそう煽る。

 

「くそ…!『執行者、無頼漢!今すぐ回復を──』」

 

悔しげに、苦しそうに、心配そうな表情を浮かべ、手のひらを口元に当てながらインカムを通じて支援しようとする。

 

「させません!ドローンをいくら飛ばそうと、私の前には無意味です!」

 

回復支援用にと、収穫していたロアの実をドローンで送ろうとするも、ドローンを破壊され容易に阻まれる。

 

「はぁ……まさか、打つ手無しですか?本当に…残念です。数々の王を破ったと識り、あなた達ならと期待しましたが…私は、私たちはこの程度の……!」

 

どこから湧いてくる感情なのか、魔王本人にも分からない。しかし、全て流され失っている中でも、その感情はは本物。心底失望したような、堪えきれぬ苦しみをその顔に浮かべ──

 

 

不意討ち

 

 

──ザン、と。背中に一太刀。紅い艷めきの人の血が噴き出す。

 

「なっ?!」

 

「………っ!」

 

ズグッ…シャア!

 

下手人は反撃を食らう前に切り口に刀を差し込むと一捻り加えて思いっきり、されど技巧を感じるほど美しく引き抜いた。

 

 

「ぅ、あああ!?」

 

夜の影響か、彼女の生まれが生まれだからか…それとも生徒だからか。不意打ちによる大きなダメージは堪えた様子を見せつつもまだ余力はあるようだ。しかしこれ程の致命傷、命に指がかかる程のダメージはキヴォトスでもそうそう無い為に、魔王は狼狽えた。

 

 

「ごめんね?無名の魔王。でもどんな手を使ってでも私達は勝たなきゃならない。夜を討たなきゃいけない。」

 

「っ、学徒…!」

 

「それはそっちも同じことでしょ?同じようなことは、前にそっちが先にやったんだ。*2まさか……」

 

 

「卑怯とは、言うまいね?」

 

To Be Continued……

 

*1
※このキヴォトスでは申請すれば密航しなくても行けます。

*2
99年。後ろからキングボンビー押し付け続けた昔の記憶




次回─「無名の魔王」
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